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機械仕掛けの使い魔-第04話



機械仕掛けの使い魔 第4話


 再びぬいぐるみを着込んだところに、轟音に驚きやって来た、近くの部屋に住む女生徒たち。
彼らをお得意の猫スタイルでかわしたクロは、洗濯物を放り込んだ籠を背中に乗せ、器用にバランスをとりつつ、中庭に来ていた。
「あなた喋れたでしょ!」
と、召喚の儀式の場にいた女生徒全員からのツッコミ重奏が響いたが、完全にシカトを決め込み、澄ました顔でここまでやって来た、
というワケだ。余談だが、背中の籠はジェスチャーを駆使し、褐色の肌に燃えるような赤い髪、ナイスバディの生徒に乗せてもらった。

「…困った」
 周囲の様子から、洗濯機がないのは解っていた。そして、使い魔に頼む仕事となると、手段として魔法が使われる事は、まずないはず。
という事は、洗濯の手段は手洗いとなる。さらにジーサンバーサンと一緒に見ていた時代劇では、洗濯場所は井戸端と相場が決まっていた。
 だが、肝心の井戸が見当たらない。クロのいる場所からは死角になっている場所もあるが、クロの身体の大きさに比して、この中庭はあまりにも広すぎる。
「虱潰ししかねーかなぁ…。メンドくせー…」

 バランスをとりつつ、ゆっくりとした足取りで中庭を歩くクロ。
 ちなみにここトリステイン魔法学院は、その構造上、鬼のように中庭が広い。
中央の本塔と、学院外壁の頂点にそびえ立つ各塔を結んだエリアに、個別に名前が付いているレベルである。
クロの体躯に比して、学院の中庭はあまりにも広大すぎるのだ。
 クロが女子寮のある寮塔を出た時点で足を踏み入れていたのは、本塔・土の塔・寮塔・水の塔を結んだ、アウストリの広場。
クロがハルケギニアに召喚された場所でもある。

「お、案外近くにあるじゃねーか」
 結論から言えば、クロは最短ルートで井戸――と言うよりも、水場を発見出来た。
たまたま寮塔を出て左方向へ歩いたからであるが、もし逆方向の左へ歩き出したとしたら…1時間以上は経過していたであろう。
恐るべし、トリステイン魔法学院。

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「あら? あれは…」
 1時間半くらい前に、ルイズに紅茶を入れたメイド『シエスタ』は、同僚のメイドと共に、世にも珍しい光景を目の当たりにしていた。
 2人は、寮内の生徒達から頼まれていた紅茶を届けた帰りであった。寮塔から中庭に出て、ふと土の塔方面に目を向けると、水汲み場の傍に座り込む黒猫がいたのである。
シエスタも見覚えのある、桃色の髪の生徒が連れていた使い魔のようだ。
 黒猫の横には、籠が1つ。よく見ると、黒猫は何度も首を傾げている。
「ごめんなさいアイナ、先に厨房に戻ってもらっていい?」
「え、それは別に良いけど…。どうしたの?」
「あの黒猫さん、何か困ってるみたいなの」「黒猫ぉ?」
アイナの返事も聞かず、シエスタは駆け出した。後には、アイナのぼやきだけが残っていた。

 ゆっくり、こっそりと黒猫に近づくシエスタ。ここで気づいたが、籠の中身はどうやら、あの生徒が着ていた制服のようだ。
彼女が、この黒猫に洗濯を頼んだのだろう。
「黒猫さん、お洗濯ですか?」
「あぁ、ルイズのヤツに頼まれてよ」「…へ?」
 何の気なしに、ただ聞いてみただけだった。もちろん、返事が返って来ない事など解り切っている。
しかし、シエスタの問いかけに、誰かが応えた。
「だっ…誰ですか!?」
シエスタが辺りを見渡すが、黒猫と自分以外には、誰もいない。
「オイラだよ」「おいら…?」
先程は驚きのあまり、声のした方向も解らなかったが、今度はハッキリと解った。
自分の足元から聞こえる。そして今、自分の足元にいるのは…
「さっきはありがとな、メイドの姉ちゃん。紅茶、うまかったぜ」
「黒猫さんが…喋った…?」
 足元にいた黒猫は、シエスタの目を見ながら、二本足で立っていた。

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「噂は本当だったんですねぇ…」
 仕事場から運んだ桶に水を溜め、ルイズのシャツを洗いながら、シエスタはまじまじとクロを見つめた。
「噂?」「はい、ミス・ヴァリエールが喋る猫を召喚したって…」
クロも同じ桶に手を突っ込んで、スカートを洗っていた。夕闇の中、洗濯をしているメイドと黒猫。なかなかに異様な光景である。
「そうだ、自己紹介がまだでしたね。私はこの学院で、貴族の方々のお世話をさせていただいています、シエスタと言います」
ニッコリと笑うシエスタ。鼻のてっぺんに付いた泡が、そこはかとなくキュートだった。
「オイラ、クロってんだ。…鼻に泡付いてっぞ」「あら、いけないっ」
こしこしと鼻をこするシエスタ。頷くクロを見て、また顔を綻ばせた。
「喋る猫さんなんて、初めて見ました…」
「そうかぁ? オイラのいたトコだと…最低でも100匹くらいはいたぜ?」
「ひゃくっ!?」
無論、その大半がサイボーグだが、修行して喋れるようになった猫も2匹ほどいる。
どんな修行かは…ここで語る事ではない為、原作あるいはアニメ参照の事。
「喋る猫さんがいっぱい…。素敵な場所なんですねぇ」
「しょっちゅう喧嘩売られる程度にはなー」
目を輝かせるシエスタとは裏腹に、クロはうんざりしたような表情を作っていた。

 洗った制服を十分に脱水し、籠に戻す。石鹸のいい匂いが立ち上り、クロの心にも、わずかながらの充足感が顔を見せた。
「助かったぜ。オイラ1人だったら、どうしていいか解んなかったわ」
「いえいえ。ミス・ヴァリエールのお部屋に干すまで、私もお手伝いしますよ」
「おぅ、何から何まで済まねーな」
クロは先程までの2本足ではなく、普通の猫同様の4本足で立ち上がり、身体をブルンブルンと振って、洗濯の際に濡れた身体を軽く脱水した。
「よっし、それじゃよろしく頼むわ」「はいっ」
元気一杯に返事したシエスタと共に、クロはルイズの部屋へと向かった。

 行きと違い、籠はシエスタが抱えている。道中、彼女は何度かクロに話しかけたが、返事は猫語ばかりだった。例えば。
「お洗濯物、綺麗になりましたねー」「ニャっ!」
「部屋干しでも大丈夫なように、普段とは違う石鹸なんですよー」「ウニャ?」
「ミス・ヴァリエールのお部屋、覚えてますか?」「に、ニャア…」
「くすっ、私が覚えてますから、安心して下さい」「ニャンニャンっ!」
 シエスタも何となくだが、クロの心情を察していた。
 生徒が行き来する寮塔の廊下。もうじき夕飯だから、それほど人がいるわけではない。
だが、この少ない人の前であっても、自分が喋れる猫だという事を、明かしたくないのだろう。
 と、ここで1つ疑問が起こる。なぜ私の前では、あんなに簡単に話してくれたのだろうか。私が平民のメイドだから…?
「洗濯の仕方、解んなかったからな」「え?」
唐突に、クロが喋った。シエスタの顔を見ている。辺りに人影は、なくなっていた。
「それに――紅茶、うまかったから」
ぶっきらぼうに言葉を続けるクロ。
 シエスタにとっては、貴族である生徒に紅茶を淹れるのは当然の仕事だった。
だが例え当然の事であっても、クロにとっては、”恩”であった。”恩”は必ず返す。
それがクロの――オス猫の、誇りであった。
「…はいっ!」
なぜか無性に嬉しくなったシエスタは、笑顔でクロの礼に応えたのだった。

 ルイズの部屋。そのドアの前には、2人の女生徒がいた。
「はぁい、猫ちゃん」「…」
1人は、先程クロの背中に籠を乗せた赤髪の女生徒、
もう1人は、ルイズとさほど変わらない身長の、青い髪とメガネ、長い杖が目を引く女生徒だった。
「ミス・ツェルプストーに…ミス・タバサ?」
「あら、メイドも一緒なのね」
コツコツと足音を響かせ、ミス・ツェルプストーと呼ばれた女性とは、クロに近づいた。
そして、前後左右、視点を変えて、クロを観察し始めた。
「どこからどう見ても、普通の猫よねぇ…」
顎に右手の指を添えるミス・ツェルプストー。そんな彼女をよそに、ミス・タバサは分厚い本を読みふけっている。

「そう言えばオメーら2人って、さっき広場にいたよな?」
「あら、やっと喋ってくれたのね?」「…!」
クロの発言を受け、待ちくたびれた、といった様子で髪を掻き上げるミス・ツェルプストーと、パッと見では解らない規模で目を見開いたミス・タバサ。
見る者が見れば、ミス・タバサは怯えていると取っただろう。
「どうしたの、タバサ?」
『見る者』がここにいた。横目で見ただけで、タバサの異変に気づいたのだ。
「ば…化け猫…」
よーく見ると、ミス・タバサはうっすらと汗をかき、小刻みに震えている。そしてその瞳は、クロに釘付けだった。
「化け猫ぉ? 何だ、こっちの世界にも化け猫なんていんのか?」
「聞いた事ないわねぇ。メイド、あなたは?」
「祖父から聞いた事はありますが、さすがに見た事は…」
「これ…」
ほんのりと青ざめた顔で、ミス・タバサが、持っていた本の題名を指さした。
「何て書いてあんだ?」
「『ハルケギニア妖怪伝承』…。ほとんど古文書じゃないの。よくこんな骨董品、見つけたわね」
「妖怪は…、人類の敵…」
震える声で言いながら、杖をクロに向けるミス・タバサ。よくよく見てみると、眼の焦点が合っていない。
「ちょっ…! タバサ!?」
「おいおい、この嬢ちゃん、目がマジだぞ…」
そうこう言っている間に、ミス・タバサがルーンの詠唱を始めた。

「ラグーズ・ウォータル…」
 ここまで聞いた時点で、ミス・ツェルプストーは、ミス・タバサが本気だという事に気づいた。
 ミス・タバサは風のメイジ。しかし彼女の詠唱には、水のルーンが組み込まれている。
つまり、単純な風の魔法ではなく、風と水を組み合わせた氷の魔法。氷の魔法は、そのいずれもが高い殺傷能力を有している。
ミス・タバサは…殺る気だ。
「やめなさい、タバ「ホイ、っと」サ…?」
 ミス・ツェルプストーが、その詠唱を止めようとした矢先…クロの右手が”ポンッ”と軽快な音と共に射出され、杖を持つタバサの手に命中、その杖を弾き飛ばした。
「や~れやれ…」
 呆気にとられる3名をよそに、クロはミス・タバサの足元に落ちていた右手を拾い上げ、再び装着した。
「あ、あなた…ててて手が…今…」
「くくくクロちゃん…? 見間違えかもしれないですけど、手が…ととと取れませんでした…?」
「や…やっぱり化け猫…!」
驚き、怯える3人。とっさの事とはいえ、ロケットパンチはまずかったか、と思いつつ、クロは頭をポリポリと掻いた。
「わーった、わーったよ。オメーらにも説明してやっから、その前に洗濯物干すの手伝ってくれ」

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 眠っていたルイズは、不機嫌極まりない表情で目を覚ました。先程まで静かだった自室が、やにわに騒々しくなった為だ。
「アンタたち…何やってんの?」
眠りについてから、3時間程度経っているだろうか。外は夜の帳を下ろしている。
「ミス・ヴァリエール! すみません、騒々しかったですか!?」
「あぁ、いいのよ気にしなくて。こんな時間からグースカ寝ていたヴァリエールが悪いんだから」
「って、何でアンタまでいるのよ、ツェルプストー!」
 学院の中でも視界に入れたくない人間ダントツ1位のミス・ツェルプストーの姿を認めたルイズは、顔を真赤にして怒鳴りつけた。
「何でって…、あなたの制服を干すために決まってるでしょ? そこの猫ちゃんに頼まれて、ね」
「おぅ、起きたかルイズ」
ミス・ツェルプストーの指差す先を見てみれば、カーペットに寝そべっている使い魔の姿が。呑気に耳掃除などやっている。
「まぁ、気にすんな。オイラの身長じゃ、ロープもかけれねーからな」
「気にするわよ、このバカ猫っ!」
「誰がバカだってんだ!」
「あー、もうヴァリエール! あなたも手伝いなさい! 自分の制服でしょう!?」
「化け猫…退治しなきゃ…」
「あ、ミス・ツェルプストー、シャツはもうちょっと張って頂けますか?」
「こんな感じかしら?」「はい、ありがとうございます」
「ア ン タ た ち は ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 ルイズも加わり、寮塔の一室は、過去類を見ないほどの喧騒に包まれたのであった。



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