あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

機械仕掛けの使い魔-第01話


機械仕掛けの使い魔 第1話


 世界の壁を超え、時間をやや巻き戻し、所はトリステイン魔法学院。
その敷地内のアウストリの広場では、新2年生にとってメイジ人生の最大の岐路と言える、使い魔召喚の儀式が行われていた。

 広場中心からやや離れた位置に集まっている生徒たちは、既に使い魔の召喚『サモン・サーヴァント』と、
使い魔との契約『コントラクト・サーヴァント』を済ませ、広場の中央に注目している。

 注目を集める広場の中央には、一人の少女が立っていた。
小柄な体躯、腰の辺りまで届く桃色がかったブロンドの髪。強い意志を感じさせる鳶色の大きな瞳。

(落ち着くのよルイズ、私は喚び出してみせる。この場のどの使い魔よりも強く、美しく、高貴な使い魔を…!)

 最初こそ、皆好奇に満ちた目で彼女『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』を見つめる。
だが彼女の強い想いとは裏腹に、サモン・サーヴァントを唱えた結果は、先程の5回まで全て爆発。
自分たちの期待を裏切らないルイズの様子に、彼らクラスメイトは、いつものように囃し立てる。

「もう爆発はいいから、早く使い魔を喚べよ!」
「そろそろ飽きたぞ、ゼロのルイズ!」
「後何回でゼロのルイズが使い魔を呼び出せると思う?」
「俺は3回に賭ける!」「いや、俺は5回だな!」「皆ひどい…私は9回ね」

 口々に飛んでくるからかいに、ルイズは下唇を噛む。一度クラスメイトをキッと睨みつけ、再び意識を集中させる。
(もう『ゼロ』だなんて呼ばせない…呼ばせたくない! だからっ!)
「宇宙のどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ! 我が導きに…応えよ!」

 周囲の人間の頭上に『?』を浮かばせる、彼女にとって引けない一線を乗せた言葉と共に振り下ろされる杖。そして発生したのは…

ドオォォォォォォォンッ…

世界の壁を超えた先の、まさに同時刻に起きた爆発。これまでの爆発よりも、明らかに威力が上がっている。
 クラスメイトたちが咳き込みながらも、「また爆発かよ…」とつぶやきながら視線を広場中央に移す。未だに煙が立ち込め、爆心地がどうなっているかは解らない。

 それはルイズも同じだった。爆心地から1メイルも離れていなかったというのに無傷、しかし彼女の心は、不安に支配されていた。
(今までより爆発は大きかったけど、成功かは解らない…。それに何より、他の皆は爆発さえ起こしていない…)

 と、ここでルイズは、ある事に気がついた。
(何、かしら…この匂い。火薬…?)
先程までの爆発と相違点が1つ。それは、匂いだった。
これまでの5回の爆発は、ほぼ無臭と言ってもよかった。だが今回は違う。煙と共に、火薬のような匂いが、ルイズの鼻腔をくすぐった。しかも、今までに嗅いだ火薬とは、匂いが違う。
 何かの予感を憶え、ルイズは煙が晴れるのを待った。徐々に煙が薄くなる。そしてようやく煙の向こう、爆心地に何かの影を認めた。
(黒くて…小さい…)
 よく目を凝らし、その影が何なのかを確認する。
小さな影が、俯せになっている。頭には大きな三角の耳。お尻の辺りには尻尾。
 そこにいたのは、まるで影のような漆黒の毛をまとった、猫だった。

「…猫ぉ!?」
 サモン・サーヴァントには成功した。そこは素直に喜ぶべき点である。事実ルイズも、煙越しに影が見えた瞬間は、影の正体に対する好奇心と共に、少なからず成功への喜びも抱いていた。
 しかし蓋を開けてみれば、召喚したのは小さな黒猫。当然、幻獣などではない。どこにでもいる、普通の、雑種の黒猫だった。
 喜びと希望が、途端に絶望へと変わっていく。

「何だ、成功したと思ったらただの黒猫じゃないか!」
「さすがはゼロのルイズ、使い魔まで能無しとは!」
 もはや自分が召喚した黒猫には目もくれず、クラスメイトの嘲笑を背に受け、ルイズはすぐ側にいた担当教師、『コルベール』の元へ、早足で歩み寄った。
「ミスタ・コルベール! やり直しをさせて下さい!」
「ミス・ヴァリエール、それは出来ません。サモン・サーヴァントは、やり直しなど許されない神聖なる儀式。さ、コントラクト・サーヴァントを」
「ですが…!」

 ルイズはなおも食い下がるが、コルベールは伝統ある儀式、例外は認められない、と、頑として譲らなかった。
 と、そんな折…

「てめぇら…」
背後から、声が聞こえた。言葉そのものはごく短い。だがその声は、悪魔も裸足で逃げ出すかのような、凄まじい怒気を孕んでいた。ルイズはその怒気に気圧され、ゆっくりと後ろを振り向いた。そしてコルベールも、周囲のクラスメイトも、息を飲んで声のした方を見やる。
「この野郎…オイラを本気で怒らせたなぁぁぁぁぁッ!!」

 声を発したのは、ルイズが召喚した黒猫だった。立ち上がり、凄まじいまでの怒りに顔を歪ませ、辺りの空気を震えさせるほどの怒声を放つ。
 この時点ですでにおかしい。なぜなら、普通の猫は、人語を放つことなど決して無いのだから。だが、その黒猫はそれだけに留まらず、次の行動で周囲の人間を驚愕させた。
 腹が…開いた。ガシュッ、と小気味よい音を立てて、黒猫の白い腹が四角く割れたのだ。それだけに飽きたらず。そこから緑色の円筒を取り出し、左腕に装着すると、上空へ向け――

「猫が喋った!?」

たところで、ルイズの声と、周囲の光景に気付き、動きを止めた。
「…あン?」
凄まじい形相から、ポカンとした表情に変わり、黒猫は辺りを見渡す。
「ここ…どこだ?」
「ここは…ですね」
意思の疎通が可能である事、そして怒気に伴う殺気が治まった事を確認したコルベールが、黒猫の疑問に応えるべく、一歩前に出た。

「魔法…学院だぁ? 何だそりゃ?」
とりあえず、黙って説明を聞いていた黒猫は、まず最初の疑問を口にした。
「第一、何だよこの古くせぇ建物は…。アンタも含めて、周りの連中は妙なマント羽織って、これまた妙な棒なんざ持ってるしよぉ…」
そして、疑問は止まらない。黒猫にとってコルベールの説明は、それこそ突っ込みどころ満載な代物であった。
 桜町どころか、日本ですらもない、という事は察した。桜町にも日本にも、『トリステイン』などという地名は存在しない。そもそも、徹頭徹尾横文字の地名そのものがありえない。
(となると…またか?)
 なまじ経験があるだけに、黒猫はある可能性に行き当たった。自分が今いるここは、あの砂漠の世界のような、”異世界”である、という可能性に。
 ただでさえ普段から、常識では考えられないような事件を経験しているが故に、黒猫はむしろ、驚くよりも次のステップへ思考を進めていた。
黒猫を召喚した当のルイズは、というと、当たり前のようにコルベールと会話を進める黒猫を、人知れず歓喜に震えながら見つめていた。
 人の言葉を理解し、なおかつ喋る猫。これってすごくない? 聞いた事ないけど、敢えて言うなら、『韻竜』ならぬ、『韻猫』ってところかしら…。私ってばもしかして、今まで誰も見たこと無いような、レア中のレア使い魔を召喚しちゃったって事!?
 あぁ、きっとこれは、普段から『ゼロのルイズ』って馬鹿にされてる私への、ブリミル様からのプレゼントなんだわ…! ブリミル様、この奇跡にルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、一生の信仰を誓いますッ!

 フフ…フ…フフフ…、と、傍から見ればまるで危ない人のように、俯き加減で小さく笑うルイズ。一方、召喚された黒猫も、笑みを隠せないでいた。
コルベールからもたらされた情報を頭の中で整理し、彼に確認する。
「つまり、だ。オイラはそこの嬢ちゃんに、”ツカイマ”ってのになる為に召喚された。んで、ここはガキ共に魔法とやらを教えるための学校、と」
「ガキ共という言い方は些か乱暴ですが…かいつまんで言うと、そうなりますな」
「その魔法ってのはアレだろ? 火の玉飛ばしたりとか、水をバシャーってやったりする、アレなんだろ?」
「他にも様々な魔法がありますが、そういった魔法もありますね」
「なるほど、ねぇ…」
(魔法が主流の世界か…。って事は、ドンパチは魔法…コイツぁ楽しめそうだぜ…)
 根が暴れん坊であり、自身の与り知らぬところで『破壊のプリンス』という物騒極まりない二つ名で呼ばれていた黒猫は、「”一般的な”、読み切りに始まり、長期連載化、アニメ化、ゲーム化、玩具化まで果たした作品」の主人公とは思えない、邪悪な笑みを浮かべた。
 “彼のいた世界”、そしてあるきっかけで飛ばされた先の”砂漠の世界”では、基本的には銃が戦闘に用いられていた。彼自身も、例外はあれど所持する武装の大半は重火器である。銃ではなく、全く別のものを使用する戦いに、黒猫は湧き上がる期待を、隠せないのであった。

 不気味な笑みを発するメイジと、凶悪な笑みを浮かべる黒猫に、周囲のクラスメイトたちは、不安を掻き立てられずにはいられなかった。
 後にとある生徒は、こう語る。
「黒猫? バカを言ってはいけない。アレは…いや、やめておこう。口にするのも恐ろしい…」

 かくして、小さなメイジと黒猫は出会った。同時に、彼女たちを中心とする小さな歯車も、音を立てて回り始め、そして歯を噛み合わせながら、この世界――ハルケギニアという、大きな歯車をも動かしてしまうのだった。


新着情報

取得中です。