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ゼロの戦闘妖精-12

Misson 12「伝説のフェニックス」(その5)

ハルケギニアの大地に 太陽は没した。
残照すら消え去った薄闇の空を 雪風が飛ぶ。
沈黙のコクピット。無言の搭乗員 二名を乗せて飛ぶ。
翼下の専用ラックに固定された 『お喋り魔剣』のデルフすら、何も語ろうとしなかった。雪風経由のLinkなど、使わなくとも判る。
〔嬢ちゃん、ヤル気だな〕

長い沈黙を破ったのは ルイズだった。
「隊長。」 いつもの溌剌とした明るい声ではない。
「ん、何だい?」
それが判る。判るからこそ ワルドはそれに触れず、普段通りの調子で返す。
「戦列艦の搭乗員って、何名位ですか?」
「う~ん。そりゃフネの規模にもよるから一概には言えないけど、最新鋭の艦 ヤツ等が勝手にに改名した『レキシントン』で八百弱ってところかな?」
「そうですか。」
ルイズは、炎上する巨艦の姿を思い浮かべた。爆発と煙の中 竜騎士と脱出艇が兵を満載して離脱する。
全乗員の半分も逃げられれば良い方だろう。そして、残りの半分は…
「ニューカッスル城付近に展開している レコンキスタの艦隊、あれ 全部沈めたら、流石に攻撃中止にはなりますよね。」
「ああ、そうだね。」
「城攻めを本格的に再開するまで、どのくらいの日数を稼げると思いますか?」
「そうだなぁ。少なく見積もっても三ヶ月、上手くすれば半年…
 だけど、本当に『出来る』のかい?」
「はい、『雪風』なら。
 でも 『私』は…」

「もし君が 正規の騎士だったら、僕が言うのはたった一言。『やれ!』、それだけさ。
 だが まだ君は見習いだ。迷っているんだったら、止めた方がいい。
 如何に雪風が強くても 君が迷っていれば、不測の事態も起きかねない。」
眼を閉じて 深く考え込むルイズ。
「『迷い』… いいえ、迷いは捨てたはず。
 あの日 雪風と共に進むと誓った あの時に。
 だから 今、感じているもの。これは 身勝手な『ためらい』。私が騎士を名乗る為に 自ら乗り越えねばならない障害なんです。」
「ルイズ…」
そして コクピットに響く警告音。モニタの表示と 雪風からルイズへの報告。
《レーダーに反応。ニューカッスル城攻略艦隊 捕捉。有効射程まで120秒》
来た! 迷いもためらいも その瞬間に吹っ飛んだ。ルイズは 雪風が背中を押してくれたような気がした。
そんな事は有り得ない。それも 判っている。それでも そう信じたかった。
「雪風、SET AAM-L、AAM-M、AAM-S及びAMM。
 ターゲット レコンキスタ艦艇群。
 信管は内部爆発に。
 優先破壊箇所は竜骨・風石庫・火薬庫の順。目的は、確実に目標を修理不能の状態にすること。
 照準は任せるわ。トリガーは…私に!」
《RDY. All Target ROCK ON.》
「アイツ等に 雪風の力を見せ付けてやるわ!
 派手に行きましょう、『ジャムセンスジャマー』展開!!」
《JSJ ON.and ECM ON.》
雪風の機体全面に 紅く光る縞模様が蠢く。ジャムセンスジャマー。本来は、同様の迷彩を行うジャム戦闘機への眼晦ましである。
だが ルイズは、出来るだけ多くのレコンキスタ兵に雪風を認識させようと 敢えて目立たせる為に使用した。
ハルケギニアの戦場において『最強』の兵器 戦列艦。その群れに 異世界の空で最強を誇った戦術偵察機が襲い掛かる!
それは ルイズにとっては、トリガーに掛けた指に ほんの少し力を入れるだけのこと。彼女は、もう ためらわない。
「全ミサイル 斉射っ!!!」

『風石』を使って空を飛ぶ いわゆる『フネ』が何時頃から存在したのか 定かではない。
しかし、現在の『戦列艦』という形態の艦艇が造られて以降 ハルケギニア最強兵器の座は揺らぐ事は無かった。
如何に巨大な地上砲台といえど、充分な高度をとった戦列艦を その射程に納める事は出来なかったからだ。
戦列艦を攻撃可能なのは 同じ戦列艦か竜騎士等の天翔るモノだけ。
空軍を伴わない地上部隊は 一方的に攻撃を受けるしかない。
戦列艦の欠点と言えば 巨額な建造費ぐらいだろう。
だが、それゆえに戦列艦が沈む事は まず無い。
貴重な戦力に無理をさせて 結果沈めてしまっては、例えその場を勝利したとしても 戦略的には負けに等しい。
よって、戦列艦はある程度損傷すれば 修理の為に戦線を離れるのが常だ。
加えて ハルケギニアには、メイジという優秀なダメージコントロール要員もいる。
戦史を紐解いて見ても 戦場で沈んだ戦列艦は ほぼ無いと言ってよい。
『不沈』 それは船乗り達の『誇り』。しかし 誰も気付かぬうちに、『誇り』は『驕り』へと変質してはいなかったか?
レコンキスタ艦隊旗艦「レキシントン」艦長 サー・ヘンリ・ボーウッドは、ブリッヂを離れようとしなかった。
戦勝気分で浮付いた クルーの甘さを叩き直す為、そして 自身の抱えた『迷い』と向き合う為に。
彼は 『よき艦長』であり『よき軍人』であり 『よき兵士』だった。軍人一家に生まれ、幼い頃より軍人として教育されてきた。
軍の常識が 彼の常識だった。
だからこそ、艦隊司令が『レコンキスタ』支持を唱え 王家に反旗を翻した際、軍隊における『上意下達ノ原則』に基づいて 何の疑問も無く上官に従ったのだった。
今になって思う。果たして それで良かったのだろうか?
現王家の政策について、思うところが無い訳ではない。モード大公への処罰の頃から、国内に違和感や不満がたまっていったのも事実だ。
それに乗じて勢力を伸ばしたのが レコンキスタなのだから。
では、レコンキスタは果たして 『正義』なのか?
レコンキスタ艦隊に編入されて以降、各艦には『御目付役』と称する役員が派遣されるようになった。
彼等は皆 レコンキスタの幹部であるが、軍にあっては全くの素人だった。にもかかわらず 艦の運用に口を挟み 己の間違った意見を押し通し 無用の混乱を起こす。
あまつさえ、平民の女性 それも一目で如何わしい職業と判る女達を『専属秘書』と称して乗艦させ、艦長室を勝手に使用 女郎部屋も同様の状態にして入り浸っている。
他の艦でも似たり寄ったりらしい。
幹部がコレでは、レコンキスタの程度も知れたものである。
こんな連中に国家の運営を任せてよいのか? こんな俗物共の為に戦うべきなのか。
(始祖ブリミルよ、お答えください。私は どうすればよいのでしょうか?)

神との脳内対話に耽るボーウッド艦長を現実に引き戻したのは、いくつもの爆発音だった。
幸い 音源はかなり遠く、自艦内からのものではなかったようだが、
「監視員、何事があった!」
「わっ 判りませ・」
当直の兵士が返答する間も無く、強烈な爆音と共に レキシントンが激震した。
「各員は担当箇所の状況を確認 速やかに報告せよ!」
ボーウッドは自ら伝声管を掴み 全艦に指示を飛ばす。だが 返答があったのは ごく一部のみ。他は連絡すら取れない。
一発目の大爆発から間を置いて 小規模の爆発音が連続して響く。弾薬の誘爆か? 
船室の床も ゆっくりと傾きつつある。
被害の規模は 相当に上るようだ。
にもかかわらず、何が起きたのか どのような攻撃を受けたのか 自艦の損傷状況すら、不明だとは…
苛立つ館長が 艦窓から外に眼を向けると、そこには信じられない光景が!
隣に停泊していた僚艦が 二つ折になって炎上していた。
艦の中央付近が大破 艦艇の構造上最も強固であるはずの竜骨までもへし折られて 船体は巨大なV字を形作っている。
日没直後の薄闇の中 燃え上がる船体に照らされて、天に昇る白い筋は、破損箇所から漏れ出した風石だろう。
見渡す先には 同様の『浮かぶ篝火』が連なっていた。ニューカッスル城攻略艦隊、いや 艦隊だったモノの残骸だった。
(我が艦も、あれ等と同じか?!)
怒り 悲しみ 後悔 驚愕 混乱が一時にボーウッドに押し寄せ 我を忘れかける。
だが 『自分は軍人である』という 第二の本能が、艦長の職務を放棄させない!
「残念だが、本艦は…沈む。損傷は、修復可能な域を超えていると思われる。
 よって、総員に退艦を命じる!
 メイジは平民兵を抱えて飛べ!降下揚陸艇と竜騎士は 一名でも多くの船員を乗せよ!命を無駄にするな!
 伝声管は 殆ど使えないと思え、今 此処に居る者は、それぞれ艦首と船尾方向へ 命令を直接伝えながら走れ!
 これは 艦長としての最後の命令だ。『こんなところで 死ぬ事は許さん!』
 以上だ。では 行けぇぇぇ!」
部下達が艦内各所へ散り 一人残ったボーウッドは、操舵室を出てメインマスト頭頂部の見張り篭へと昇っていった。
身を晒す事で 謎の襲撃者から攻撃される恐れもあったが、それ以上に『相手』の姿を見てみたかったのだ。
残照すらも既に無く 刻一刻と闇の濃くなる空で、果たしてそれが見えるのか。まだこの空域に留まっているのか。そんな事は考えなかった。
ただ、「せめて 自分の艦をこんな目にあわせたヤツのツラを拝んでやらなきゃ、此処を去る気になれない!」それだけだった。
そして 彼は見た。
遥か彼方で百八十度回頭する 赤い光を。
艦隊を壊滅させ 駆け抜けていった怪物が戻ってくるのを。

ターンを終えたソレは、ほぼ真正面から突っ込んできた。
距離感はつかみにくかったが、徐々に大きくなる轟音から 高速で接近してきているのは判った。
そして 擦れ違う。
ほんの一瞬。ボーウッドが目視確認できたのは 一秒にも満たなかった。
細部など判らない。にもかかわらず、ソレが与えた印象は 眼に、いや 頭の中に焼き付いて 生涯消える事は無いだろう。
巨大な鳥を思わせる姿、甲高くも 重く響く鳴き声、全身に纏った 縞模様の炎。
そこから導き出されるのは……数多の幻獣が存在するハルケギニアにあっても、なお幻と呼ばれる聖獣。神の御使い。
「フェ、フェニックスだとぉっ!!」
(…我々は 神の怒りを買ってしまったのか?)
ボーウッドは、燃え上がる艦から離脱する事も忘れ、ただ呆然と立ちつくすのだった。

戦列艦の墜落(撃沈というべきか)は、地上部隊にも多大な被害を与えた。
燃え盛る破片は、天幕を焼き 落下した大砲は兵士を押し潰し 更に暴発して周辺の兵をも血塗れの肉塊に換えた。
興奮した騎獣は暴走(スタンピード)し、あらゆる物を跳ね飛ばし 轢き殺して逃亡した。
偶然にも ある艦の本体は、物資集積所を直撃するように落下し 多くの兵糧・弾薬・医薬品等が失われた。
降り注ぐ炎の雨と巨大な塊、レコンキスタ兵は皆 地獄絵図の中に居た。
そして レコンキスタ上層部は、現実を受け入れられずにいた。
眼と耳を塞いで蹲る者、「こんな事は有り得ない、有り得ない!」と喚き続ける者等。平時に どれほど高い地位に居ようが 官僚系の貴族など、戦場では棒切れ一本よりも役に立たない。では、軍人系は?
これも同じ いや もっとヒドかった。余りの被害にショックを受けたのか、錯乱する者、気絶・意識不明 果ては心臓停止する幹部が続出した。
聊か 奇妙な事ではある。いくら主家を裏切った不忠義者の集まりとはいえ、アルビオン軍人として『勇将』『猛将』という評価を受けていた者もいる。それが、文官以下の醜態を晒すとは…

自分だけは生き延びようと 逃げる算段をする者もいた。
その代表が オリバー・クロムウェル 自称皇帝にしてレコンキスタ司令官だった。
彼は 三日後に控えていたニューカッスル城総攻撃の陣頭指揮を執る為 本陣入りしていた所で この襲撃に出くわしてしまったのだ。
組織の長が責務を全うする為に 優先的にその身を守ろうとすることは正しい。
しかし、未曾有の混乱の中 トップとその取り巻き連中が何の指示も出さずに逃亡すれば、誰が現場をまとめ 事態を収拾するというのか?
無責任にも程がある!
これが、連戦連勝の勢いだけで此処まで勢力を伸ばしてきた レコンキスタの実態だった。
艦隊を殲滅した『不死鳥』は、その後も暫く レコンキスタ陣地を上空から睥睨するかのように旋回していた。
結果 多くの兵士が聖獣(と思われるモノ)の姿を目撃し、
「神の御使いが、罰を下す為に降臨されたのだ!」
「始祖の血統を継承する王家を滅ぼさんとする者に 神はお怒りだ!」
「レコンキスタは御仕舞だ。フェニックスの炎が 全てを焼き尽くすだろう。」
といった噂が 急速に広がっていった。

ブリミルの教えは、ハルケギニアの民の心に深く根付いている。
普段 神など信じないと公言して憚らない 傭兵や盗賊ですら、無意識のうちに宗教関係の施設には手出しを控えている程だ。
そこに 『神罰』等と言う噂話が流れれば 如何なる事になるか。
公称五万人のレコンキスタ地上部隊は、約二割が死亡又は負傷の為無力化され 約三割の兵士が逃亡した。
残った兵も武器を失い食料も無く 士気の低下が著しかった。とても城攻めなど実施できる状態ではない。

ルイズの目論見は、当初の予測を超えて成功したと言えた。

その偉業を成し遂げた少女は、愛機のコクピットで泣いていた。
雪風のカメラアイは 攻撃の効果確認の為、地上の惨劇を詳細に捉えていた。それは Linkしているルイズに リアルタイムでも伝えられる。
燃え盛る炎 逃げ惑う兵、燃え移る 焼け焦げる、のたうちまわる。
水魔法 消火、間に合わない。力尽きるメイジ。火薬の誘爆、阿鼻叫喚 モノへと変わる人々 死体。それすら焼き尽くされていく。
こうなる事は判っていた。雪風が見せてくれた 向こうの世界での戦闘記録は、もっと悲惨だった。それをルイズは見続けてきた。
眼を背けたりしなかった。自分でも意外な程 冷静に見ていた。絵空事とは思わなかったが やはり何処か『異世界』での出来事だった。
だが 眼下に散らばる数多の骸は、すべて自分が殺したものだ。ハルケギニアに、アルビオンの大地に地獄を生み出したのは 自分なのだ。
怖かった。人が死ぬのが こんなにも簡単に死んでいくのが、こんなにも簡単に殺せてしまう事が。
怖かった。殺せる事が 殺せる『力』が 殺せる『力』を持ってしまった事が。
そして、これからも 『力』を使い続けるであろう 自分が。殺し続けるであろう 自分が。

紅の迷彩を解除して 雪風がアルビオンを去ってゆく。
《Misson complete》
雪風は 一切の感情が篭らない『声』で報告する。
レコンキスタから受けた反撃は皆無。雪風に一切の損傷は無い。もちろん ルイズにも。
彼女は 理性という鎧を纏って戦場に臨んだ。挫けそうな決意を 支える為に。
初めての戦いが終わり ルイズは、己の心情世界で、剥き出しの魂を 真っ赤な返り血に塗れた腕で抱きしめていた。
強固な筈の鎧は 『ひとごろし』という現実の前に 脆くも崩れ去った。
恨みと憎悪の込められた 死者の血の呪いが 二本の腕を侵していく。魂すら染めてしまおうとする。
だが 魂は光り輝く。這い寄る穢れを払いのけるかのように 眩しく輝く。それは ルイズの本質。
戦闘…… 手にしたものは『勝利』と、一人の少女が背負うには重すぎる 『何か』。
ルイズの精神は、ギリギリの所で 外道に落ちることなく踏み止まっていた。
そして 差し延べられる『救いの手』。
「ようこそルイズ、『こちら側』の世界へ!
 嘘吐きだらけの『大人』の世界へ。金と欲望の『俗物』の世界へ。
 そして、血塗れ 泥塗れになりながら それと戦い続ける、人殺しの『騎士クラブ』へ!」
インカムから流れるのは ワルドの声。普段通りの ひょうげた口調。
「…隊長ぅ?」答えるルイズは 喉を詰らせた涙声。
「君は 騎士になるのだろう? 騎士なら、泣くな! 
 と言いたいところだけど、泣いてイイよ。むしろ 死んでいく者の為に 泣いてやってくれ。」
ワルドに「泣いていい」と言われ、逆にルイズの涙は止まった。
「僕も含め 騎士ってヤツは皆 人殺しに慣れ過ぎちまってる。そうでもなきゃ こんな職業続けられんからね。
 でもルイズ、君は、君だけは 今の気持ちを忘れずにいてほしい。君は 雪風の主人だから。」
(何故?)ルイズには判らない。(何故 雪風の主人だと、泣いてもいいの?)
「雪風は凄い、予想を遥かに上回って強かったよ。そして 僕らよりもずっと 人殺しを禁忌としていない。それも判った。
 君と雪風は、二人で一つだ。だから 君は雪風と同じになっちゃダメだ。自分のココロを殺しちゃいけない。
 人を殺して 何も感じられなくなったら、雪風と同じ殺人機械だ。
 機械じゃ 機械の間違いを止められない…」

「間違いを、止める?」
(雪風は、私よりずっと賢いわ。間違ったりするとは思えないけど。)
ルイズは 全面的に雪風を信用している。依存していると言っても過言ではない。
「僕らが戦う目的は 『守ること』。国を 民を 自軍の兵を、皆を守る為に戦う。
 雪風は違うような気がする。こいつの目的は たぶん『勝利すること』。違うかい?」
はっとするルイズ。心当たりは ある。
雪風に行動プランを問う。ほぼ 瞬時に回答がある。それは常に、最も早く 最も効率がよく 最も確実なプランだ。
だが ある事が欠けている。『ルイズ以外の人間の 安全確保』だった。
ルイズは自分の『マスター』だから 守る。それ以外の人間は 関知しない。むしろ 障害となるなら、排除する。
ジャムに勝利する、それだけを目的とした FAF最強の電子戦術知性体が、コントラクト・サーヴァントの強制力に対して 折り合いを付けた『妥協点』がそれだった。
だから 雪風は、ルイズが指示しない限り 自分とルイズ以外を守ろうとしない。

惑星フェアリイの戦場、FAFの兵士は、永らくジャムと戦い続けることで 徐々に人間らしい感情を擦り減らしていくという。
ただし それは、正体不明の異星体・ジャムとの戦いで顕著な症例であるだけで、戦場ならば何処でも発生する神経症である。
もちろん ハルケギニアにおいても。
もし ルイズが、他人の行動に一切感心を示さない『ブーメラン戦士』になってしまったなら、誰が雪風に『人間を守れ』と命じるだろうか?
命令がなければ 雪風は、街一つ いや国一つを犠牲にしてでも、『勝利』を目指して戦場の空を駆けるだろう。
それでは 雪風こそが『人間の敵』になってしまう。
「判りました 隊長。
 雪風は 機械として、私は 人間として戦います。戦いの中でも 心を捨てたりしません。
 立派な騎士になれない、いつまでも 泣き虫の騎士かもしれませんが、それでいいですか?」
何かをふっ切れたのか、明るさの戻ったルイズの決意表明に、ワルドが答える。
「ああ それでいい。
 でも また一つ 君に苦労をかけることになってしまうね。すまない。
 戦場じゃ 何も考えず 機械のように相手を殺し 殺した相手の事はすぐに忘れちまった方が、精神的には楽なんだよ。
 君の目指す、『人間的な騎士』は、戦う相手の事を常に気にかけ 殺した相手は忘れないって事だ。
 こりゃ 一戦終わるごとに かなり落ち込むだろうね。」
すると ルイズはにっこり笑って
「そこのところは 隊長にフォローしてもらいます。
 そうですねー、うん ブルドンネ街でスイーツでも奢って下されば、機嫌ぐらい すぐに直して見せますよ!」
「おいおい あの辺りの店って言えば、高級店ばかりじゃないか?
 勘弁してくれよ、僕はこれでも、『貧乏隊長』なんだから…」
どうやら スイーツなしでも、ルイズの機嫌は よくなった様子。
空気が重かった往路と違い 復路はコクピット内に笑い声が響いていた。




さて、同じ頃 トリステイン国内では…
                         (続く)

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