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使い魔はじめました-23


使い魔はじめました――第二十三話――


 アルビオンでの戦争を、済し崩し的に終結させたルイズとサララ。
彼女らは、救国の英雄としてアルビオンの王党派から、盛大に称えられた。
しかし、あまり長く滞在する訳にもいかず、出来るだけ足早にトリステインへ戻った。
杖を取り上げ、縛り上げたワルドを連れて王城へルイズ達が現れた時には、
一触即発になりかけたが、アンリエッタの一言により騒ぎは収束。
そうして、ワルドを別室に監禁した後、アンリエッタの私室へと移動した。
チョコは、ワルドを見張る、と称し、めんどくさくなりそうな話から逃げている。
そこで、ルイズとサララは事の顛末を、アンリエッタ、マザリーニ、マリアンヌに告げた。
「まあ、まあまあルイズ! 私のお友達! あなたには感謝してもしきれませんわ!」
感極まったアンリエッタは、ぎゅむぎゅむとルイズを抱きしめる。
「本当に素晴らしいですわね! 流石、カリンの娘!」
反対側から、マリアンヌもルイズを抱きしめていた。
この親子、実に良く似た者同士である。
カリンとは何方ですか? と少し離れて座っていたサララが問う。
「私の母様よ。先々代の陛下にお仕えしていたの」
「そう! とても強くて素敵でしたのよ! 女の子だと解った時は、
 三日三晩泣き明かしたものでしたわ!」
未だ若々しい太后は、目をキラキラと輝かせながらまるで少女のような笑みを見せる。
「今のルイズのように、スラリとした手足をしていて、とても華奢で、
 それなのに信じられないくらい物凄い魔法を使って、どんな相手にも立ち向かって!
 何でしたら、その当時の絵姿などお見せしましょうか、ミス・サララ?!」
がたり、と席から立ち上がりそうな程、熱の入った物言いにも、
サララは表面上はひるまない。ただ、彼女にしては珍しく、普段から笑みを浮かべる口元が、
ひくひくと困ったようにひきつっていた。
「あー、コホン。太后陛下、それはまたいずれ。姫殿下も、ミス・ヴァリエールを
 お離しせねば、息が止まってしまわれますぞ」
華やかな場の雰囲気にそぐわない、枯れ枝のような男、マザリーニが二人を諌めた。
二人にぎゅうぎゅうと抱きしめられていたルイズは、ようやくホッと一息つく。
「アルビオン側からの書類によれば、レコンキスタに所属していた人々は、
 あちら側で処分を決定するそうですが……、まあ、大半が悪魔の手で
 洗脳されていたもの、そうそう厳しい処分にはなりますまい」
ルイズが持ち帰ってきた、ウェールズからの書類を読みつつマザリーニはそう告げる。
「それでは、ワルド子爵の沙汰だが」
「そ、そのことですが、僭越ながら申し上げます!」
緊張した面持ちで、冷や汗をかきながらルイズが叫ぶ。
「ワルド様、いえ、ワルド子爵は、あ、悪魔に操られていたからこそ、
 祖国を裏切るなどという、大罪に手を染めたのです、ですから、あの、その」
「つまり、彼の沙汰にも酌量を、と?」
マザリーニの鋭い眼光に怯み、一瞬目をそらす。
目をそらした先で、サララが音に出さず小さく口元を動かす。
がんばってください、と。それに励まされ、再びマザリーニに向き直り、頷いた。
「ほう……」
しかし、さらに鋭く睨みつけられる。体がガタガタと震える。
なんとかその震えを押さえようと、サララの手を握りしめた。
 「まあまあマザリーニ、そんなに苛めてはいけませんよ」
場の雰囲気を打ち砕くように、マリアンヌがころころと笑いながら、
ルイズに優しく微笑みかける。
「我が国は優秀な人材が不足しているのです。彼のように優れた人材を、
 どうして処刑したり、牢に入れたりすることがありましょうか」
その言葉に、ルイズは呆気にとられる。
「で、では、その、ワルド様は?」
「……半年の減給と、一か月の謹慎、といったところでしょうな。
 罪状を明らかにするわけにも行きませんから、まあせいぜい、
 姫殿下の命令で勝手に動いたこと、に対する処分ですよ」
真面目くさった顔で、しかし目には愉悦を湛えながら、マザリーニが告げる。
「よ、よかったぁ……」
全身から力が抜け、ルイズはへなへなとサララによりかかった。
お疲れ様です、とばかりにサララはルイズの頭を撫でる。
「ワルド子爵は、ルイズの婚約者ですものね。心配するのも、当然ですわね」
アンリエッタも、労いの言葉をかける。
しかし、これがとんでもない事態を引き起こした。
「あら、貴方の? でしたら、良いことを思いつきましたわ」
楽しそうに、マリアンヌが笑う。
「謹慎の間に、サンド……いえ、ヴァリエール伯爵と、カ……、夫人に、
 そのワルド子爵とやらを、鍛え直してもらいましょう」
「え、いえ、その、太后陛下、それは」
ぴしり、とルイズが固まる。
「カリンのことですから、娘の婿になる相手が命令違反を行った、というだけで、
 言わずとも鍛錬を行うに決まっていますわ。でしたら、やりやすいように、
 こちらから書状を出せば、きっと喜びますね」
それは、ある意味でワルドに対しては死刑宣告とほぼ同意だった。
しかし、ニコニコと笑う彼女に対して、誰も文句は言えない。
悲しいかな、彼女こそが、この国一番の権力者なのであった。
 よろしいでしょうか、とサララは場の空気を変えるために言葉を発した。
「む、何ですかなミス・サララ」
サララは、エンペルの話や酒場の噂の中で、特に気になっていたものの話をする。
すなわち、人間が蛙になってしまう呪いについて。
「何と……ゲルマニアの流行り病は、呪いであったか」
マザリーニが驚きを隠せぬ様子で目を見開く。
「人間を蛙にしてしまうなんて、何と恐ろしい呪いでしょうか……」
「同じハルケギニアに生きるもの、どうにかしたいものですわね」
そこで、とサララは告げる。実は、その呪いをかけられるのに使われたであろう薬剤を、
自分は持っている、その成分を解析すれば、解呪の薬が作れませんか? と。
「成程……、そうすれば、ゲルマニアにも恩が売れますし、良いかもしれませんな」
マザリーニは考える。大国である隣国ゲルマニアに、恩を売るに越したことはない。
第一、放っておいてその呪いがトリステインにまで広がらない、とも限らないのだ。
早急に解呪薬を大量に精製する必要がある。
と、すると問題となるのは、誰にその精製を頼むか、であった。
「あの……マザリーニ卿。その、もしかして、研究を頼む相手について、お悩みですか?」
その顔に浮かぶ表情から、彼の心境を読み取ったルイズが問う。
「でしたら、その、アカデミーに」
「アカデミーに? ……ふむ、そうですな、国家危急の可能性もある事態です。
 神に近付くための研究ではありませんが、始祖もお許しになるとでも言い含めれば、
 どうにか、頭の固い評議会共を納得させられそうですな」
本来ならば、アカデミーで行う研究は、神の御心を探るためのものばかりである。
しかし、知的好奇心に負け、異端ギリギリの研究を行うものも少なからずいるのだ。
「その、アカデミーにご依頼なさるなら、ある二人を推薦したいのです」
ルイズは、ちらり、とサララを見た後で、一度息を飲む。
アカデミーは恐ろしい研究を行う所、というイメージしかまだ若い彼女にはない。
ともすれば、サララを危険に晒すかもしれない。
だからこそ、彼女の知る二人の人物を、推薦した。
「一人は、ヴァレリー・ミシェリーヌ・オーラ・ド・ヴォングダルジャム。
 そして、エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ヴァリエール。
 ……私の姉、です」
 それから二週間後。ルイズとサララはアカデミーのエレオノールの研究室に居た。
マリアンヌ達のサインが入った書類と、鍋から出した役立ちそうなアイテムを持って。
チョコは、遠出が面倒だからと学院に残っている。今頃は昼寝の時間だろう。
書類に目を通す二人を、サララは観察しながら、
失礼が無いように、と予めルイズから教えられていたことを反芻する。
金の髪をした方がエレオノール。メガネをかけた目元が少々キツい。
姉妹だけあって、その表情や顔立ちは、ルイズのものと似ている。
もう一か所似ている部分もあったが、
そこに関してはサララもどっこいどっこいなので敢えて言わない。
もう一人、黒髪をひっつめ、これまたメガネをかけた妙齢の女性が居て、こちらがヴァレリー。
エレオノールの数少ない友人で、ルイズもそこそこ親しいのだとか。
「書類は確かに預かったわ。それにしても、ルイズ、あなた使い魔が人間だなんて、
 どうしてそんなこと黙ってたのよ」
「う……それは、その、叱られるかと、思って」
ルイズが堅い表情で答える。それを見て、ヴァレリーはおかしそうに笑った。
「そんな顔することないわよ、ルイズ。エレオノールはね、
 折角可愛い妹が魔法を成功させたっていうのに、そのことを詳しく教えてもらえなかったのを


 ちょっとスネてるだけなんだから」
「ヴァヴァヴァ、ヴァレリー! 誰がスネてるんですって!」
エレオノールが杖を振るう。机の上にあった文鎮が、ヴァレリーの頭を軽く叩いた。
「やだもう、図星突かれたからって怒らないでよ、エレオノール」
ヴァレリーも彼女の反応は慣れたもので、笑っている。
ああ、ちょっと素直じゃない所も似た者姉妹だ、とサララもつられて笑った。
「でも、おかしいわ。平民が呼ばれるなんて、前例がなさすぎる」
「へ、平民だけど、一応魔法使いの血筋ではあるのよ。
 その……ちょっと、色々あって魔法が使えないだけで」
「あら、そうなの?」
その説明を聞いたヴァレリーが、好奇心に駆られて杖を振るった。
唱えた呪文は、ディテクトマジック。
優れた水のメイジが使えば、その体内の魔力などの流れさえ把握できる呪文である。
「……あら?」
故に、ヴァレリーはサララの魔力の流れに首を傾げた。
「魔力の質、っていうのかしら? それが、少し普通のメイジと違う気がするわ……」
「どういうことよ」
「んー……、だめ、お手上げ。サンプルが少なすぎるもの」
ヴァレリーが集中を解くと、サララの周りを覆っていた光の粒子が消える。
「まあ多分、その魔力の質の違いが、あなたが魔法が使えない理由じゃないかしらね?」
「とにかく、人間なのには間違いないのね?」
「ええ」
エレオノールとヴァレリーの会話を聞きながら、サララはただ笑みを見せるだけだ。
しかし、内心では冷や汗をかきつつも、安堵のため息をついていた。
人間と少し違う、と言われてサララは焦っていたのだった。
 サララの世界では、魔法使いと魔女は、ある一点おいて大きく異なる。
魔法使いは魔法を使う人間で、魔女は、魔女という種族なのだ。
獣人と同じような、亜人だ。
その魔女という種族の中であっても、サララの血筋は、格別に特殊であった。。
何しろ、血の繋がった直系ご先祖様の中には、新たな魔王と結ばれた魔女やら、
吸血鬼の伯爵と結ばれた魔女やらが居るのだから。
そういったイレギュラーを起こしたのが、全て魔法の使えない魔女で、
なおかつ、皆『サララ』という名だったのには、因縁を感じざるを得ない。
サララ自身に入っている魔族の血も吸血鬼の血も、すっかり薄まっているが、
いざその血筋がバレたとしたら、退治されていたかもしれないのだから、
それがバレずに安心してしまうのも、仕方のないことだろう。
「とにかく、これは国を救うために必要な、しかし極秘で行わなければならない、
 極めて重大な研究よ。ルイズ、ゆめゆめ他言することのないように」
「は、はい、解りました!」
「そして、貴方。その術に使われているという薬を出しなさい」
はい、と頷いて袋の中から、液体の入った革袋を取り出す。
薬の名は『ガマの油』。魔族間では、世話になった相手に送る程、ポピュラーな薬だが、
ダンジョンの中で入手することは稀である。サララがこれを手に入れたのは、
とある奇妙な事件に巻き込まれた際の偶然によるものだ。
「直接触ったり、嗅いだりしても大丈夫かしら」
ヴァレリーが問う。ある工程を経た上で、口にしなければ大丈夫だとサララが答える。
以前は判らなかったが、今は、はっきりとその工程や成分の情報も頭に流れ込む。
ただ、サララには調合が出来ない。故に、協力者が必要だったのだ。
今、直接の戦闘とは別の、サララの戦いが始まろうとしていた。




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