あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

萌え萌えゼロ大戦(略)-33



「本当にうまくいくんですかねぇ」
 薄暗い船倉で男はつぶやいた。言葉とは裏腹に、その口調は軽い。
まるで朝食に向かうかのようなそれに、目元に大きな火傷の痕がある男、
メンヌヴィルが答える。
「今回もやることは同じだ。殺し、焼き尽くす。それで報酬を得る。
簡単だろう?」
 そう言って、メンヌヴィルはにやりと笑う。彼らのいる船倉には、
メンヌヴィルを筆頭に十数名ほど。歴戦を語る激しく汚れた革のコートを
まとい、危険な雰囲気をまとった彼らは、重槍騎兵一個大隊にも匹敵する
威圧感を持っていた。
「違ぇねぇ」
 男は軽く口笛を吹く。メンヌヴィル小隊――『白炎』のメンヌヴィルと
いえば、傭兵の世界で知らぬ者はない。残虐で狡猾……そして有能。
彼に率いられた小隊は、彼らが去った後には消し炭しか残らないと
言われていた。


「……ねえ、シエスタ。『改めて』ってことは、キュルケたちが見た
『竜の羽衣』には何か隠されていたわけ?」
 日も暮れて。釈放されたタバサとともに宿屋に泊まっているキュルケたちとは
別に、ルイズとふがくは村外れのミジュアメ製造所近くにあるシエスタの家に
泊まっていた。突然の貴族の来訪、しかもシエスタの雇い主とあって、
シエスタの家族の驚きは大変なものだった。
 来客用に整えられた部屋で、シエスタはルイズの問いかけに答える。
ふがくの部屋は別に割り当てられ、ここには二人しかいない。
「うーん。そういうわけじゃないんですよ。
 ただ、普段人にお見せするときには『こんなおもちゃなんてインチキだ』って
思ってもらうようにしているんです。アカデミーの方も昔は何度も来られました
けど、外見だけ見て帰っちゃったそうです。『ディテクト・マジック』を
使っても魔法のかけらも見当たらないって。ルイズさまたちみたいに
ふがくさんを知っていればまた違った結論を出したと思うんですけど」
「ふうん」
 そう言って、ルイズはベッドに転がる。学院のベッドとは比べものに
ならないが、適度な反発があり寝心地はよい。聞けばシエスタの育ての
曾祖母が使っていた部屋らしい。調度などもほぼそのままらしく、長く
使い込まれたそれらは落ち着いた雰囲気を見せていた。
 ふと、ルイズは脇机の上に置かれた小さな額に目が行った。そのとたん、
ルイズの目の色が変わる。飛び上がって額を手に取り、シエスタに
問う。
「……なんで、これがここにあるの?」
 それは不思議なセピア色の絵だった。歳も様々な十二人の男女が
まるで生き写したかのように精緻に描かれたそれは、ルイズにも見覚えの
あるものだったのだ。
「それですか?ひいおじいちゃんとひいおばあちゃんたちが三十年前に
戦友と一緒に撮したものだそうです。フィリップ三世陛下もいらっしゃるので、
大切にしています。
 その中で今も生きていらっしゃるのは、タルブ領主アストン伯爵さまと、
魔法衛士隊マンティコア隊隊長だったド・マイヤールさま、竜騎士隊
第二大隊隊長になられたギンヌメール伯爵さま、それにルリおばあちゃん
だけだと聞いています」
「これ、お母さまの部屋にあった絵とまったく同じよ。お母さまも戦友との
記念だって言ってたけれど……」
「明日、ルリおばあちゃんに聞いてみましょうか?」
 シエスタの提案に、ルイズは「そうね」と頷いた。


 ――そして早朝。四時過ぎ。
 未だ日が昇らず、暗い空の中。タルブの村の上空に、一隻の小さな
フリゲート艦が現れた。
 メンヌヴィルは甲板に立ち、まっすぐに宙を見つめている。眼下には、
まだ朝食の準備すら始まらぬ寝静まった村。煌々と明かりに照らされる
ミジュアメ製造所と、村外れのまっすぐに伸びる道のようなものがここからなら
はっきりと見える。艦は上空を照らす死角に位置し、その存在は未だ
秘せられていた。
 彼らに与えられた任務は、この村でひそかに開発されているはずの
新型銃を奪取、または製造施設ごと破壊すること。そのためには、最悪
村ごと灰燼に帰してもかまわないと言われている。トリステインにいる
内通者よりの情報で、製造施設はミジュアメ製造所の地下に隠されていることが
分かっている。ここまでメイジの使い魔やピケット船、そして竜騎士隊が
行っている哨戒ラインに引っかからなかったのも、その内通者のおかげ
らしかった。
「何にしても、やることには変わりない」
「そうね。やることは同じね」
 そうつぶやいたメンヌヴィルの頭上で、年若い女の声がした。
 年若い女――ふがくは、機関短銃をメンヌヴィルに向ける。電探で
不審なフネの接近に気づいたふがくは、念の為上空待機していたのだ。
その左手にはデルフリンガーが握られ、魔法への対策としていた。
「ずっと奇妙な感じが消えなかったが……お前だったのか」
「官位姓名を名乗りなさい。それと目的と」
「……目的か?それはな……」
 機関短銃を突きつけながらふがくが問う。メンヌヴィルはにやりと
笑うと、いきなり無骨な長い鉄棒のような杖を引き抜き炎を放った。
 ふがくが自分に迫る炎をデルフリンガーでなぎ払う。その一瞬の隙に、
メンヌヴィルは部下に命令を下しフネから飛び降りた。
「予定通りだ!全員降下!」
 その号令で船倉の扉が開かれ、フネに乗っていた全員が飛び降りる。
高度は千メイル近い。だが……
「飛んだ!?全員メイジだったの?!」
「やべえ!相棒!」
 ふがくが追いかけようとしたが、メンヌヴィルたちが飛び降りた
フリゲート艦が急速に高度を落とし始めた。落下予測地点は村の真上。
ふがくはやむなく機関短銃の代わりに取り出した対空爆弾でフリゲート艦を
爆破する。その爆発が、この惨劇の幕開けとなった。

「あれは何だ!?」
 村の上空で突如として起こった爆発に、歩哨として立っていた銃士が
空を見上げる。その陽に焼けたのど元に、鈍い光を放つ冷たい刃が
食い込んだ。
 メンヌヴィルたちはあらかじめ降下ポイントに定めていたうちの、
村の入り口、『竜の道』、村長の館に分かれて降り立つ。『フライ』を
使っている間は魔法が使えないため、障害となるものには容赦なく
投げナイフの洗礼を与える。フリゲート艦の爆発でミジュアメ製造所に
近づけなかったのは誤算だったが、村長の館の前に立ったメンヌヴィルは
素早く命令を下す。
「ミジュアメ製造所はオレがやる。ジャン、ルードウィヒ、ジェルマン、
ついてこい。残りはここを押さえた後で入り口と堀の向こうに降りた
連中と合流し、村を制圧。手向かうヤツには平等な死をくれてやれ!」
 メイジたちは頷いた。

 爆発の衝撃が宿屋を揺らす。タバサは目を覚ますと、急いで身支度を
整える。杖を手に、扉を開けると、今まさにノックしようとしていたギーシュがいた。
二人で隣室のキュルケを起こしに向かう。キュルケもタバサほどではないが、
すでに身支度を整え始めていた。
「タバサ、それにギーシュ?」
「ここは危ない」
 タバサは短くそれだけ告げる。キュルケは軽く耳を澄ますように目を
つむる。その足下で、サラマンダーのフレイムが、うるるるるる……と
階下に向けてうなっていた。
「そうね」
 身支度を終え、杖を胸に挟んだ瞬間、階下で扉が破られる音が響いてきた。
「いったん退く」
「ちょ、モンモランシーは?」
「もう間に合わない」
 タバサがつぶやき、階段の反対側の窓から不審者がいないことを確認して
飛び降りる。近くの茂みに身を隠し、キュルケがギーシュに問うた。
「先生は?」
「僕が気づいたときにはもう部屋にいなかった。ああモンモランシー、
今君を助けに」
「そんなことしたら見つかっちゃうでしょう!ああもう、肝心なときに
先生がいないんだから。ルイズの様子を見に行ったのかしら。あの子が
一番危なっかしいし」
 キュルケが歯がみする。辺りは暗い。落ちてきた火の粉が宿の反対側を
照らすだけ。日の出はまだのようだった。

 アニエスもその頃、詰所の寝室で目を覚ましていた。この村には自分の
暮らしていた部屋もあるのだが、公私の区別をつけるためと詰所で寝起き
していた。
 枕元に置いた剣と、一挺の長銃を素早く手に取り、剣を鞘から抜き放つ。
そのまま部屋を出ようとして……妙な気配を感じ扉のそばで待ち受けると、
何者かが扉を蹴破り炎が渦巻いた。
 アニエスは炎の下をくぐり、剣を振り上げる。赤い雨が降り注ぎ、
哀れな傭兵メイジは絶命する。そのまま剣を横に突き立て、驚いた顔の
もう一人をお供に送ってやった。
「アニエスさま!大丈夫ですか!」
 銃士たちが飛び込んできてそう尋ねる。アニエスは返り血を浴びたまま
頷いて見せた。
「問題ない。状況は?」
「敵襲です。上空で大きな爆発が起こった後、村長の館と『竜の道』、
そして村の入り口に敵が降り立ちました。村の入り口の敵は今ので最後
ですが、村長の館と一部居住区が制圧されています」
「してやられたな。アルビオンの狗か……ミジュアメ製造所は?」
 アニエスは侵入者のなりを見て、そう断じた。上空から降下侵入するほどの
メイジばかりで構成された小部隊。間違っても物取りのたぐいではない。
第一、物取りはわざわざ銃士隊と事を構える度胸など持ち合わせていない。
それに初戦で村長を狙われたのは明らかな失態だ。
「現在各個応戦中ですが、健在です。
それと、『竜の道』にミス・エンタープライズが向かわれました。
第三小隊が援護に回っています」
「なんだと!?くっ……敵の目的は新型銃と『竜の羽衣』の装備か!
 第一小隊はわたしに続け!第三小隊はそのままミス・エンタープライズと
ともに『オヤシロ』と『イェンタイ』の確保。残りは村長の館と居住区の
奪還に向かえ!いいか、施設の確保と非戦闘員の安全を第一だ!」
「はっ!」
 銃士たちは敬礼すると伝令のため走り去る。アニエスも自らの部隊を
率いてこの戦況を覆すべく足早に焼けた部屋を後にした。

 モンモランシーの目覚めは最悪だった。いきなり扉を蹴破られ、
寝ぼけ眼のまま革のコートをまとった人相の悪い傭兵メイジと目が合った。
「ひっ!?」
 モンモランシーは強制起動された意識のまま思わずベッドの上で後ずさる。
その様子に、傭兵メイジは下卑た笑みを浮かべた。
「はっ。客がいたか。しかも、上玉だ」
 傭兵メイジは杖を向けたまま、モンモランシーに近づいてくる。
彼女の杖は手が届くところにない。丸腰のまま、ベッドの上で震える
モンモランシー。
「……い、いや。助けてギーシュ」
「彼氏の名前か?ここには誰もいやしねえよ!」
 傭兵メイジの手がモンモランシーの頬に触れる……が、その力が
いきなり抜けた。声もなく崩れ落ちる傭兵メイジ。モンモランシーが
目を開けると、そこには見たこともない出立ちの男が立っていた。
「あなた……は……?」
 それは上下がつながったカーキ色の革の服を身につけた男だった。
両方の上腕部に描かれた白地に赤丸の紋章がよく目立つ。額に桃色の
見たこともない果物の紋章が描かれたカーキ色の革の兜をかぶり、
レンズの奥が見えない大きな革の眼鏡。それに白いマフラーで口元を
覆い、その顔は見えなかったが、その雰囲気はモンモランシーに恐怖を
与えるものではなかった。
「そのままじっとしているといい。もうすぐ助けが来る」
「あ、あの……もう少しここにいて下さいませんこと?それに、お顔を
見せて下さいませ」
 モンモランシーは頬が紅潮するのを感じていた。あなたがいないのが
悪いんだから――そう心の中で言い訳する。男はしばらく無言のまま
だったが、やがて口元に手をやりマフラーを下げようとして……
そこに銃士たちが大きな音を立てて入ってきた。
「だ、大丈夫ですか!?お怪我はありませんか!?」
 銃士たちは息を切らせつつも貴族の前で礼を失しないように必死に
平静を装っていた。傷つき返り血を浴びながらも、村長の館と一緒に
最優先でここを奪回したのだろう。しかし、そんなことに興味がない
モンモランシーは、無粋な人たち、と思いつつも、小さく咳払いをしてから
振り向き優雅に言い放つ。
「こちらの殿方が賊を倒して下さいましたわ」
 その言葉に、銃士は不思議な顔をした。
「……あなたが、倒したのではないのですか?」
「え?だってそこに……」
 モンモランシーが振り返ると……そこには誰もいなかった。

 上空で爆発音がしたとたん、ルイズの意識は一気に夢心地から現実に
引き戻される。この感覚……それはあの『イーグル』号の艦橋で
ライトニング姉妹の放った『ジョーカー・ペア』の衝撃に振り飛ばされた時に近い。
それは奇しくもギーシュも同じだったのだが、それは彼女の知るところではない。
急いで制服に着替え、愛用のタクトを手に取った。
「ルイズさま!ルイズさま!起きて下さい!」
 そこにシエスタが激しく扉をノックする音がする。ルイズが扉を開けると、
シエスタは朝の訓練に出るところだったのだろう、動きやすいズボン姿
だった。
「敵襲?」
 落ち着いたルイズの言葉に、シエスタも少しは平静を取り戻したのか、頷く。
それを見たルイズはきびすを返して部屋に戻り、自分の荷物を手に取るのではなく、
脇机の上の額を布にくるむと大切に懐にしまい込んだ。
「行きましょう。ふがくとシエスタの家族は?」
「ふがくさんは夜遅くに出て行ったきりです。家族はミジュアメ製造所へ
向かいました。あそこはうちの管理ですから」
「それならいいわ。わたしたちも安全な場所に逃げましょう。
どこか隠れられるところはある?」
「『イェンタイ』に入れれば確実なんですけれど、『竜の道』の方からも
火の手が上がってますから……ここからだと墓場の森ですね」
「贅沢は言っていられないわね。行きましょう」
 そう言って、家から出る二人。だが、迂闊にも周囲を確認しなかった
その目の前に、今もっとも出会いたくない相手がいた――

 メンヌヴィルは突然目の前の家から出てきた二人に意識を向ける。
若い女、それも突然のことに驚いているのが手に取るように分かった。
「ア、アンタたち!いったい何のつもり?」
 女の一人、ルイズがタクトを向ける。だが、メンヌヴィルはルイズではなく
後ろに向けて杖を振るった。
 火薬が炸裂する音と女のうめき声。メンヌヴィルの杖から放たれた
炎をまともに受けて、銃士たちが抱えていたマスケット銃の火薬が暴発
したのだ。
破裂した銃身が食い込んだ顔と指が飛んだ手を押さえ、銃士たちが地面を
のたうち回る。その惨状にシエスタが悲鳴を飲み込み、ルイズのタクトも
ふるふると震えた。
「オレが怖いか?」
 そう言ってメンヌヴィルは微笑む。悪魔のような笑み。その瞬間、
ルイズは気づいた。
「アンタ、ひょっとして……目が」
 メンヌヴィルは答えず、その代わりに無骨な鉄棒のような杖をルイズに
向けた。そのとき、メンヌヴィルに向けて炎が放たれる。とっさに炎の
魔法を唱えて相殺するメンヌヴィル。その向こう側には――
「わたしの教え子から、離れろ」
 硬い表情で杖を構えるコルベールの姿があった。



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