あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

滅亡(ゼロ)の使い魔

「何…コレ…?」

その日、トリステイン魔法学院において進級を賭けた使い魔召喚の儀式において少女…
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエールは幾度かの失敗の後、ついに初成功ともいえる魔法で使い魔を召喚するに至った。

その際に彼女はこう求めた。

--この宇宙のどこかにいる神聖で強力な使い魔よ--
と…

しかしどうだ…目の前にいるのは幻獣とも人とも言い難い形状。

いや、そもそも生物であるかどうかすらも怪しい物体であった。
大きさはおよそ4メイルほど…目や口、鼻や耳どころか手足すらないただの巨大な白い球体がそこに鎮座していたのである。

「おい、ゼロのルイズがワケのわからないもんを召喚したぞ!」
「本当だ!なんだよあれ、流石ゼロのルイズだな!」

「……ッ!!」
こんなはずではなかった…。
本当なら赤髪の同級生が呼び出した火蜥蜴よりも、青髪の同級生が呼び出した風流よりも強力な使い魔を召還し、周りを見返す筈だったのに…!

遠くから聞こえてくる野次を背に受けながらルイズは屈辱にぎりりと血が滲みそうになるほどの力で己の杖を握りしめた。

「ミ…ミス・ヴァリエール、早くコントラクト・サーヴァントを…。」

頭の薄い教師・コルベールがルイズに促すが、正直口も何もあったもんではないこの物体にどうやって契約させるべきかコルベール本人もわからずにいた。

…しかし次の瞬間、轟音が周囲を包み込む。
その轟音を放ったのはつい今使い魔(?)を召喚してみせたルイズ本人であった。

あろうことかルイズは召喚した物体に向けて何度も爆発を起こすしかない魔力を込めた杖を振り下ろしていたのである。

「ミス・ヴァリエール!一体何を!?」
「止めないでくださいミスタ・コルベール!
これは何かの間違いなんです!
私ならもっと美しく強力な使い魔を呼び出せます!だから、だからこんなものは間違いなんです!!」

半ば錯乱したルイズは静止するコルベールの声など気にするでもなくソレに向かい爆発の失敗魔法をぶつけてゆく。

……それが後に恐ろしい事態を引き起こすとも知らずに。

「はぁ…はぁ…」

ひととおりの精神力を使い尽くし、肩で息をするルイズ。
眼前の物体は爆発による粉塵に包まれ今や見る影もない。
いや、ゼロの名を持つこの少女は系統魔法に関する成功率は皆無にしても、失敗魔法における破壊力だけは軽く教室ひとつを吹き飛ばすほどのものである。

そんなものを連続で受けたのだ。
誰もが召喚されたばかりのソレは跡形もなく消し飛んでいると感じた。


……しかし!


--ドクン…

もうもうと立ち上る砂塵の中、粉々に砕け散った筈のソレはついに恐るべき脈動を始めたのである。

それに最初に気付いたのはつい先程同じく使い魔召喚の儀式で風竜を呼び出した青髪の少女であった。
彼女の名はタバサ。本名シャルロット・エレーヌ・オルレアン。
大国ガリアの王族にして国の危険な汚れ仕事を請け負う北花壇騎士7号。
これまで彼女は幾度となく命懸けの危険な任務をこなし、その小さな体に百戦錬磨ともいえる危機管理能力を宿していた。
その彼女の第六感が今まさにこの場における危険性を電流の如く伝え、全身を駆け回っていた。

『アレは危険だ…!
オーク鬼やエルフなんて生易しいもんじゃない!!

危険……キケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケン!!!!!!』

タバサは生まれて初めて経験するともいえるその圧倒的な気配に蛇に睨まれた蛙のように立ち尽くすしかなった。

「どうしたの、タバサ?」

突然かけられた声にタバサは、はっと我を取り戻し声のした方向を見る。
するとそこには頭ひとつ分は身長の高い赤髪の親友キュルケが心配そうに自分を見下ろしていた。

「…………逃げて。」

キュルケの瞳をまっすぐ見つめながら、蚊の泣くような声でタバサが言葉を紡ぐ。

「…え?」
何のことだ?とキュルケが訪ねようとしたその瞬間、普段寡黙なはずのタバサが喉も裂けんばかりの声を張り上げた。

「早く逃げて!!みんな、みんな死んでしまうッッ!!」

その言葉に周囲にいた誰もが『何を馬鹿なことを』という表情を浮かべる。

だがその僅か数分後、彼らは彼女の言葉の意味をその身を持って思い知らされることとなる…。

そして“滅び”が幕を開けた。

--グルルル…

どこからか聴こえてきた不気味な音。
いや、音ではなくそれは声…。それも高位の獣が有する獰猛な唸り声であった。

獣であれば周りにはつい今しがた召喚されたばかりの使い魔たちがいる。
しかし今聴こえてきた声の質はまるで地獄の底から響くかのような音量と威圧感を孕んでいた。

「な…なんだ今の…?」
「さ、さぁ。でも確か音がした方って……」

生徒のひとりがゆっくりと指をさす。
そこは未だ砂塵が巻き上がるルイズが作った爆心地。
まさかそんな場所に大きな獣などいるわけがない。いるわけがないのだが…。

--ルル…グルルルルル…

「!?」
聴こえた、今度こそ確かに聴こえた。
誰も目配せをし、一斉に煙の向こうにいるであろう何かに目を凝らす。
彼らはタバサの必死の警告などすっかり忘れていた。

…それがいかに愚かなことであったかも知らずに。

その時、一陣の風がふわりと砂煙を吹いた。
それを合図にしたかのように徐々に濃さを失ってゆく砂塵。

その向こうでうっすらと視界に飛び込んできたものを見た誰もが、驚愕に目を見開いた。

「な…何なの…あれ…」
その中でも一番驚いていたのは他の誰でもないルイズだ。
そこにあったのは先程の白い球体などではなく長い棘を無数に生やし、5倍近くの大きさに成長した黒く巨大な物体であった。

もしかしてさっきのものは幻獣の卵か何かだったのだろうか?
そんなことを思いながらルイズがそれに近付こうとした瞬間、突如として轟音とともに中庭の一角が吹き飛んだ。

「…え?」

ルイズにはそれが何であったかがすぐに理解できた。
それもそうだ、何もない空間を爆発できるのはゼロと蔑まれてきた自分の特技ともいえる失敗魔法だけなのだから。

「ルイズ!何すんだよ、危ないじゃないか!!」
「そうだ!もうちょっとで大怪我するとこだったんだぞ!」

周辺にいた生徒たちから罵声が飛ぶ。

「違うわよ!今のは私じゃない!私じゃないの!!」
「じゃあお前以外に誰があんな爆発起こせるっていうんだよ!?」
「そ…それは……でも、本当に違うんだってば!!」

ルイズが身の潔白を晴らそうと大声を張り上げたそのとき、再び巨大な爆発が発生した。
それも一発や二発ではない。
打ち上げ花火の如く巻き起こる無数の爆発は地面を、木々を、
更には厳重に固定化の魔法がかけられたはずの学院の外壁や校舎すら破壊し始めたのである。
突然の出来事に一瞬にして魔法学院は蜂の巣をつつくどころではない大騒ぎとなり、崩壊してゆく教室から逃げようと無数の学生たちが我先にと外へと駆け出してきた。

「くそっ、一体何が起きてるというのだ!!」
魔法で防御壁を作り、生徒たちを守りながらコルベールは呟く。
この学院の防護壁はスクウェアクラスのメイジでさえ破壊するのは難しいというのに目の前ではそれがいとも簡単に砕け散ってゆく。
だがコルベールは脳内で瞬時に状況を整理し、そしてあることに気付く。

(あの物体の周囲には爆発が起きていない!…つまり!!)

「みんな!伏せなさい!!」

防御を解除したコルベールは皆にそう指示し、詠唱を始める。
(出来ることなら、もうこの力を破壊に使いたくなかったが…やむを得ん!!)

そして魔力を極限にまで高めたコルベールは、杖から高温を示す青色をした灼熱の炎を走らせた。

炎は大蛇のように黒い物体に絡みつくと、一瞬にしてそれを業火で覆い尽くす。

すると、あれほど激しかった爆発がぴたりと止んだではないか。

「…やったか。」
その様子にコルベールはふぅと息を吐く。

「おぉ!ミスタ・コルベールがなんとかしてくれたようだぞ!!」
「すごい。見直しましたよコルベール先生!!」

学院の危機を収拾してみせたコルベールに生徒や他の教師たちが歓声を上げながら続々と集まってくる。

「はは、なんとか上手くいったようですな。
しかしミス・ヴァリエール、申し訳ありません。せっかく召喚した貴女の使い魔を殺してしまいました。」
「い…いいんです!元はといえば召還した私が悪いんですからどうか頭をお上げになってください。」
自分の召喚した使い魔が引き起こした事態にも関わらず
それを鎮めてくれた恩人にすまないと頭を下げられ、ルイズは慌ててフォローを入れる。

「でも、あれは一体何だったんでしょうか?いえ、もう終わったことですが…。」
何とか話題を逸らすためそう口にしたルイズ。
しかしそのすぐ近く、青い髪の少女だけが髪と同じように顔色を真っ青にしながらぽつりと呟いた。

「………まだ。」

「…え?タバサ。何か言っ……」
ルイズがそう聞いた瞬間--

『グルル……ギィイイィィイィジャァアアァアアァアアアアアアァアァアッッッッ!!!!』

燃え盛る火炎を払いのけた悪魔が天を揺るがすばかりの雄叫びを上げながら姿を現した。
その姿は先程と違い、鋭い3本の爪を生やした2つの腕を持ち
血のように真っ赤な双眼を爛々と光らせ、無数の牙の覗く口からは粘液の糸を引かせている。
一見すると蜘蛛のようにも見えるが、その姿は蜘蛛と呼ぶにはあまりに禍々しく、邪悪であった。

「うわぁあああああっ!!」

突然現れた怪物に各所から一斉に悲鳴が上がる。
真っ先に逃げ出す者が多数であったが、中には少数だが震える手で杖を向ける者もあった。
そして怪物に向かい攻撃呪文の詠唱に入ったそのとき、怪物は2本の腕で地を這いながら凄まじい勢いで前進を始めたのだ。

なんという醜悪さ。
なんという威圧感。

そのあまりにもおぞましい光景に大半の温室育ちの貴族たちはひっとスペルを紡ぐことを止めてしまう。
そこへ向かい怪物はひと鳴きすると全身の無数の棘から一斉に青い灼熱の火炎を迸らせた。
あまりにも一瞬の出来事に、最前列にいた貴族たちは悲鳴を上げる間もなくその業火に焼かれ崩れ落ちてゆく。

「ば、馬鹿な…!あの炎は…私の…」

それを見ていたコルベールは驚愕した。
それもそうだ、その炎は今しがた自分が目の前の怪物に向けて放った炎と同様のものだったのだから。

「うぉおおおおおおおおお!!」
刹那、炎を放ち続ける怪物に向かい四方から暴風、雷、氷の槍、火球に濁流、大地の礫が放たれた。

それを皮切りにして更に他の生徒や教師たちも、ありとあらゆる属性の攻撃魔法を放ち始める。
この魔法学院にいる数百にも及ぶメイジたちからの一斉攻撃。
これならばいかに強力な幻獣といえど塵ひとつ残さず消滅できるであろう。
誰もがそう思った。
…そう思っていた。


「はぁ、はぁ…どうだ化け物め。」
肩で息をしながら呟いたのは学院屈指の風の使い手、疾風のギトー。
その高慢な態度から生徒たちからの人気は皆無に等しいが、実力は学院でも数少ないスクウェアクラスの教師である。
彼は風の上級魔法『偏在』で分身を作り出し、その全員でもってドラゴンすら一撃で落とすといわれる強力な攻撃魔法、『ライトニング・クラウド』を怪物の頭上から無数に放っていた。
普通ならばそれだけでどんな相手でも即死は免れないはずである。
それに加えてあれだけの量の魔法を叩きこまれたのだ。まず生存は有り得ないであろう。

ギトーは偏在を解除し、あの怪物の死を確認するべく巻き上がる砂塵を風魔法で吹き飛ばそうとした。

だがそのとき、砂塵の向こうから一条の閃光が走る。

それがギトーがこの世で見た最後の光景であった。

「……え?」

多くの者が目の前の光景に間抜けな言葉を漏らす。

それもそうだ。
何故、何も残っているはずのない場所から 閃光が走る?
何故、一瞬でギトーが黒こげになっている?

そしてその疑問は最悪の形で彼らに答えを示した…。

『ジィィィィイイイイャァアアアアアアアアアアッッッ!!!!!』

巻き上がる煙を払いのけた怪物が悪魔の叫びを上げながら再びその姿を現したのである。
なんとその姿は以前より更には多くの棘を全身に生やし、体格はこれまでの倍近くにまで成長しているではないか。

その姿に誰もが悲鳴を上げ、杖すら放り出して逃げ始める。

腰が抜けて無様に這い蹲る者・恐怖の余り失禁する者・全てを諦め呆然と座り込む者。

そこにはもう貴族の誇りなどというものは存在していなかった。

それでも悪魔は容赦なく逃げ惑うアリ達に向け、全身の棘から破壊と絶望を振り撒き始めたのである。

「嘘…だろ…」
生徒のひとりは眼前に広がる惨劇を目にした直後、飛んできた巨大な岩石の槍に体を貫かれた。

ほんの刹那…残った意識の中で彼はこう思いながら息絶えた。

(……何であいつは僕たちの魔法を使えるんだよ?)

そう、今怪物が放っているもの…それは先程自らが受けたはずの4系統からなる様々な攻撃魔法なのである。

それも、杖も詠唱もなく…全身から同時に火炎・突風・濁流・岩石・雷に氷の槍まで放っている。

おまけにその威力は一発一発がスクゥエアのそれを遥かに上回ると言ってよいほどの破壊力があり
もう誰にもこの怪物を止めることなどできなかった…。

そして召喚から僅か30分弱。
阿鼻叫喚の地獄絵図とともに、かつてトリステイン魔法学院があった場所はたった一匹の怪物により数百の死者を出しながら瓦礫の山と化した。
怪物は破壊の限りを尽くした後、その歩みを首都であるトリスタニアに向け前進を開始。
後に大陸全土を震撼させることとなる。

…………
……

遥か遠い世界、ハルケギニアとは別の宇宙に存在する青い惑星ではこのような記録がある。


--決してその者に触れてはならない。
さすれば世界は滅びへと向かうであろう。
その者を目覚めさせてはならない。
それは開けてはならないパンドラの箱なのだから。

力を以てその者を倒すことは不可能。
力は同じく力によって滅ぼされるであろう。

その者、完全にして究極の生命。
その者、破壊の化身にして他者の愚かさを映す鏡。

その者の名は、『完全生命体 イフ』--



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