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ゼロの黒魔道士-79


ボクと、ボク達の、全部をこめた一撃を、
クオンの頭から思いっきりふりつけた。

「うぐぁああああああああああああぁぁぁああああああああああぁぁあああぁああぁ
 あぁあぁぁあぁぁぁあぁぁあぁああぁぁぁぁあああぁああああぁあぁ!!!!!!」

これは音の洪水だ。
それもとびっきり濁った、沼の底にたまった泥水のような嫌あな音の。
絶望の嘆きが、悲しみの旋律が、轟音になって噴き溢れてくる。

「ァあぁぁぁあぁぁアぁああぁぁぁぁあああアアアアアァァアア!!!」
「くっ……」

押し流される。押し流されたくない。
もう少し、もう少しだ。
ボクはこの手を離さない。
全部を無駄にするなんて、そんなのは嫌だ。
みんなの力に……

「えぇぃいっ!!!」

ボクの力を、ほんのちょっとだけ足して、振り抜いた。
重い、ビリビリくる手ごたえが、瞬間軽くなる。
抜けた。霧を越える飛空挺みたいに、暗闇を抜けた。

「――っ」

絶望色に染まった煙が、ゆるやかに消えていく。
驚くくらいの静かさ。
終わった……終わったんだ……!!

「ビビっ!!」
「ぃいやったぁあああっ!!流石っ!流石ライバルっ!!」

だけど、ちょっとだけ問題があったんだ。


ガンダールヴの力とギーシュのお陰で、
クオンに届くほど高く跳べた……のはいいんだけど……

「……ぅ、うぅわゎわわわっ!?」

おしまいから言ってしまえば、ボクは頭から落ちていたんだ。
痛い。目がチカチカ、クラクラするぐらい、痛い。

「相棒――最後ぁちーっとばっかし締まりぁ無かったな」
「い……痛たたた……」

手の中で、デルフがしょうがないなぁって揺れていた。
『トランス』が解けて、ぐったりとした疲れが全身に広がる。
頭がまだクラクラする。
でも、その1つ1つが、「あぁ、まだ生きてるんだな」って感じがして……

「でもよ――よくやったな、相棒!」
「……うん!」

ボクは、デルフの言葉に頷いた。
これ以上ないってくらい、しっかり頷いたんだ。



ゼロの黒魔道士
~第七十九幕~ 明日へ続く道


頭をさすっていると、ルイズおねえちゃんに飛びつかれてしまった。

「ビビ!大丈夫?怪我は?頭から落ちたみたいだけど大丈夫よね!?」
「る、ルイズおねえちゃ……わたたたたたた……」

正直なことを言ってしまえば、
ルイズおねえちゃんのゆさぶりの方がきつかった。
なんかこう、ブンブンってゆさぶられていると……
ちょっと気持ち悪……うん、大丈夫、大丈夫なんだけど、ね……

「あぁ、良かった!ビビ!本当に良かった!!」
「――疲れたねぇ。
 久々の檜舞台は神経を使うよ……」

クジャの顔が、ルイズおねえちゃんの後ろに見えたとき、
ボクがどんな気持ちになったのか、
ボクはボクの言葉ではうまく言えない。

「クジャ……」
「ん?どうしたかい?悩んだ顔をして。
 誇らしげな顔をしたまえ!勇者はかくも立派に業を成し遂げり、だ!
 主役に喝采と花束を!!盛大なる祝福を!」

「いや、そうじゃなくて、その……」
「ん?」

帽子を、ぎゅっとかぶりなおした。
深呼吸。すぅ~っと吸いこんで、ふぅーっとゆっくり、ゆっくり吐き出す。
うん、落ちついた。

「ボク、立派になんて……それに……それにね、あの……」

ボクは、決めたんだ。クジャに言うべき言葉を。
うまく、言えないけど……
多分、ボクの考えていること全部が、この言葉にこもっている気がして……

「――おいおい、ミョズ~!
 勝利宣言には早すぎるだろう?幕引きにもな?」

ボクの言葉は、張りのある男の人の声で邪魔をされてしまったんだ。
カツンカツンと、クリスタルでできた道を、
大股で歩いてくる男の人。
海よりも深い青い青い髪のおじさん……

「だ、誰っ!?」
「――これはこれは、御身自らとは……」

ルイズおねえちゃんは知らないけれど、
クジャは知っているらしいその男の人……
の、後ろには、ボクも知っている女の子が見えたんだ。

「え、タバサ君っ!?」
「来た」

戦闘でもしてきたのか、マントはちょっとボロボロになっている。
それでも相変わらず、淡々って感じだった。

「……きゅい?もう終わっちゃってるのね?
 なーんだ、ちょっとガッカリなのね」

シルフィードも相変わらず……
今は女の子の姿だけど……
相変わらずだった。
みんな、無事。
本当に……本当に、ホッとしたんだ。

「韻竜よ、お前もゲーム運びが分かっていないなぁ……
 ミョズ、お前もお前だ、『神の頭脳』はどうした?ん?」

1つ、分からないのはこの男の人。
なんで、ここにいるのか。
なんで、タバサおねえちゃんと一緒なのか。
なんで、クジャを知っているのか……

「――あぁ、そういうことですか。
 美味しいところは、王のためにお取り置きしておりました、
 とでも言い訳いたしましょうか?」
「ふむ、そういうことにしておこう」

クジャの言い訳めいた台詞に、その男の人はガハハと大きく笑った。
王?王様……?
青い髪の毛の……
もしかして、タバサおねえちゃんの……

≪我――ハ――不メツ!!!!≫
「きゅいっ!?」

考え中の頭に、突然冷や水をかぶせられたみたいだった。
さっき消えたはずの声が、頭の中に入り込んできたんだ。
まだ……終わっていない?

≪不滅フメツフメツフメツフメツフメツフメツフメツフメツ!!
 光アる限リ影が永遠デアるヨウニ!!!
 生キる『絶望』アる限リ、死ノ『希望』モマタ『久遠』ノ存在!
 我は何度デも蘇ル!!!お前達ガ『絶望』すル限リ!!!≫

壊れたオルゴールみたいだった。
調子っぱずれの音が、気持ち悪くなるぐらい何回も何回も繰り返されて。
クオンは、『記憶』をエネルギーにするから……
『記憶』が無くならない限り、完全には死なないってこと!?

「――しっつこいわねぇ……!!!」

ルイズおねえちゃんが、杖を構える。
ギーシュは薔薇を。
ボクもデルフを……

「っ、何を……」

構えようとしたところで男の人に遮られた。
多分、タバサおねえちゃんの伯父さん……
タバサおねえちゃんのお父さんとお母さんに酷い目に合わせた……

「さて、ワイルドカードを切ろうか――」

ボクの方を見ようともせず、
その男の人は後ろを振り返った。
タバサおねえちゃん?いや、その後ろを見ている。

「手はず通り、頼むぞ?」

深緑のローブ姿。
王様の影に隠れていて見え無かったけど、
もう1人、誰かがいたみたいだった。
丁度、タバサおねえちゃんとシルフィードに守られるようにしている。
杖を構えて、そのローブをざっと取り払……

「は、はいっ!!」
「て、テファッ!?」

テファだ。アルビオンの森の中で会ったテファだ。
なんで、なんでこんなところに?

「え、ちょ、お、おいおいおいおい!?
 ビビ君、何時の間に君こんな女の子と知り合いにってエルフぅっ!?」

ギーシュが騒いでいる間に、テファの口が呪文を紡ぐ。
少し悲し感じはするけども、

「これって……」

間違いない。これは、ルイズおねえちゃんと同じ、『虚無』の魔法だ。
そう直感で分かるほど、似たような響きをもったメロディーだった。
空気が、白く染まる様な、そんな綺麗な歌だった。

≪なニヲ……ナニヲスルッ!!!!≫

頭の中に響く、クオンの声が焦っているのが分かる。
このメロディーを恐れている。
ボク達には優しく聞こえる、このメロディーが。

「『虚無』にも色々あってな?」

王様が……確か、ジョゼフ、って名前だっけ?
ジョゼフ王がニンマリと、
耳まで唇の端が届くんじゃないかってぐらいニンマリと笑ったんだ。

「ただ足が速くなるのもあれば、破壊だけの力も、
 あるいは遠くへの扉を開くものもある……
 カードが多いから戦略を立てやすくて助かるよ」

≪ぐ、グォォォォォオォォオオオオオ!!!!!??!?≫

耳を塞いでも、クオンの断末魔が聞こえてくる。
さっき倒したときとは比べ物にならないくらい、
弱々しい断末魔だ。

「同じように、『記憶』にも色々あってな?
 全部が全部綺麗なもんじゃない。
 良い想い出もあれば、想い出したくも無い忌まわしい物もある。
 それに、『忘れてしまう』って記憶もある
 最も、『忘れたい』というのが本音だがなぁ……」

ジョゼフ王のニンマリはいよいよ大きくなった。
そのうち頭の後ろまで伸びて、
顔が上下で切れてしまうんじゃないかって、心配になるくらいに。

「全部の絶望は消せないが、
 ――しでかした失敗は取り返せないが――
 せめて、きつい『絶望』は『忘れさせて』やろうかとな」
≪ヤ……め……ヤメ……ロ……!!≫

テファの唱える呪文が、終わりに近づいていた。
クオンが、完全に『消える』。
そうはっきり確信できたんだ。
今度こそ、終わる。
完全に……

「『忘却』!!!」

頭の中に響く、
調子っぱずれの声はもう聞こえない。
何もかも、悲しみの全てを忘れてしまったかのように、さっぱりと……

「テファ、君、『虚無』の……いや、それよりも何でここに?」
「えっと、そこのお髭のジョゼフさんって人に突然連れてこられて……」

ジョゼフ王に……?うーん、どういう狙いなんだろう……
テファと話していると、今度はルイズおねえちゃんじゃなくて、
ギーシュがボクに飛び付いたんだ。

「ビビ君~~!!!君、何?君、何なのさ!?
 君、何時の間に知りあってるの!?こういうむね……じゃない、こういう子とさ!?
 いや、そっちの面でもライバルになるとは思わなかったぞ、僕は!?
 大体なんだねこのけしからん――」
「え、いやあのちょっと待って!?」

なんていうか……しゃべる隙間が無い。
ギーシュがどうしてこうなっちゃったのかさっぱりだ……
これも、テファの『虚無』の力なのかなぁ……?

「――さてと……」

そうしている間に、ジョゼフ王が来たときと同じように、
ルイズおねえちゃんにゆっくり、カツカツと足音を立てて向かっていったんだ。

「君が、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール君、というわけか」

……正直、すごいなって思ってしまった。
ルイズおねえちゃんの名前、噛まずに全部言えるなんて……
ボクは未だにときどき噛んでしまいそうになるのに……

「え、えぇ、そうですが……」
「いやしかし僕としては今日この日を感謝しなくてはいけないではないか!!
 このような素晴らしきおっぱ……じゃない、レディと出会える今日という――」

ギーシュがまだぐちゃぐちゃしゃべっている後ろで、
ルイズおねえちゃんは眉を片方だけ上げて、
怪しい、って感じで頷いた。

「始祖、ブリミルと会ったね?」
「……!え、えぇ……」

ルイズおねえちゃんの返事に、
ジョゼフ王はその拳をぎゅっと握りしめた。
嬉しそうに、ぎゅっと、ぐっと。

「よし、予想通り……ならば……おい、出て来いブリミル!!」

ブリミルって……6000年前に殺されちゃった人、だよね……?
出てくるって……いや、それよりも、ルイズおねえちゃん、何時の間に……

≪……私の名を呼ぶ方がいるとは……≫

また、頭の中に声が広がった。
でも、クオンみたいに暗くて調子っぱずれなものじゃなくて、
今度はしっかりとした、男の人の声だった。

「なっ、旦那かっ!?ブリミルの旦那かよ、おいっ!?」

デルフが騒いでいるから、多分、本物のブリミルさんなんだと思う。
……あぁ、そうか。
ここは、『全ての始まりの場所』……
だから、全ての、それこそ死んだ人の『記憶』があってもおかしくないんだっけ。

「始祖よ……いや、ブリミルよ……」
≪なるほど……貴方も『虚無』の……≫

ジョゼフ王も、『虚無』?
……なんか、こうして一度に何人もいると、
『虚無』って珍しいものじゃないんじゃないかなぁって、そう思えてきてしまうんだ。

「あぁ、お陰で大分と人生を狂わされた……
 俺の人生だけじゃない、俺の家族も、俺の全てを狂わされた。
 分かるか?俺の気持ちが?分かるか?俺の記憶が?」

ジョゼフ王の顔は、まだニンマリと笑っていたけど、
その言葉はクオンが欲しがりそうなほど、
黒く、絶望色に染まっていた。

≪……それで、僕にどうしろと?≫

ただただ、悲しいといった声が、頭の中で響いた。
同情が半分、あとの半分は後悔……かな……?

「俺の呪詛を……聞くが良いっ!!」

ジョゼフ王が、大きく叫んだ。

「っ!!」
「ちょっ!?」

それに反応して、ルイズおねえちゃんとギーシュが、杖を構えた。
ブリミルさんに何かする……そう思ったんだ。
だって、『呪詛』って言ったんだし……
確かに、それは『呪詛』だったんだけど……

「アーホ!
 バーカ!!
 マーヌーケー!!!
 おー前なーんかブタのケツー!!!!」

これって、何て言うか……

「……え?」
「は?」
≪……はい?≫

ブリミルさんを含めて、ボクも、周りのみんなも呆れてしまった。
なんて、なんて子供っぽい『呪詛』なんだろうって……

「よし、気が済んだ!!」

だけど、ジョゼフ王は、満足したように頷いていた。
ガハハと笑ってさえいる。
うーん……この人、見た目はちょっと怖そうだけど……
中身は案外子供、なのかなぁ……?

≪プ……ククク……それで、よろしいのですか?≫

ブリミルさんも、笑っていいやら呆れていいやら困っているみたいだ。
そんな声が頭の中に響いた。

「あぁ、本当はもっと言ってやろうかと思ったが……
 ここに来る道中、少々毒っ気を抜かれてなぁ……
 あぁ、想い出したく無い記憶もあるもんだ」

ここに来て、ジョゼフ王ははじめて違った顔を見せたんだ。
ほんのちょっとだけど、ニンマリ、じゃなくて、
寂しそうな、悲しそうなそんな顔を。

≪では、呼ばれて早々ですが……
 皆さまに感謝を。私の過ちにケリがつき、
 これで留まる理由が無くなりました。
 僕も……輪廻の流れに戻ります≫

「旦那……」

デルフが、ボクの手の中でかちゃりと揺れた。
デルフとブリミルさんは、6000年前に分かれたっきりだ。
だから……色々思うこともあるのかもしれない。

≪デルフ……すまないが、僕はもう行くとするよ。
 勝手な願いだが、ときどきで良いから、思い出して欲しい。
 いなくなってしまった僕みたいな愚か者をね……それじゃぁ!≫

すぅっと、ブリミルさんがいなくなるのが、はっきりと分かった。
帰って行ったんだなって、はっきり分かったんだ。
いつか帰る、その場所へ。

「けっ……最期までスッとぼけた野郎だぜ……」

デルフは、やれやれって感じで、揺れていた。
楽しそうにも、寂しそうにも、どっちにも取れるような、そんな揺れ方だった。

「さて、これでゲームしゅうりょ……あぁいかん、肝心なことを忘れていた」

カツカツという音が、今度はタバサおねえちゃんの方へと向かっていく。
ジョゼフ王は、タバサおねえちゃんの前に辿りつくと、
自分が身に着けていた豪華な刺繍入りのマントを脱いで、
ゆっくりとひざまずいた。

「よくぞ8の目に入られた、歩兵(ポーン)殿」

『おごそかな』って言葉は、こういうときのための言葉だと思うんだ。
ピンと張った声が、そのまま空気を同じようにきゅっと引き締めた。
タバサおねえちゃんは、ただ見ていたんだ。
そんなジョゼフ王の行動を、ただただ、じっと。

「従って、貴君におかれては女王になり替わる権利と……」

ジョゼフ王は、自分の身に着けていたマントをうやうやしく差し出した。
今にもこぼれ落ちそうなそれを、
タバサおねえちゃんは無表情のままそっと支えていた。

「このゲームを終わらせる権利が与えられた。
 さて、王の首を撥ね、貴君の本懐を遂げられよ」

「っ――!!」
「きゅ……」

……ジョゼフ王は、タバサおねえちゃんに酷いことをし続けてきた。
だから、タバサおねえちゃんは怒っていいはず。
それは多分そうなんだろうけど……
でも……

「あぁ、クジャ、止めてくれるなよ?
 それなりに人生満足できたんだ。最期の最期でな」

もし、ボクがタバサおねえちゃんだったら、
攻撃ができるのかなって、ちょっと思ってしまったんだ。
自分から頭を下げてきた人を……

「……私の、本懐……」
「そうだ。貴君が父君と、母君の仇が、ここにいる」

タバサおねっちゃんは、迷っていた。
無表情でも、それとなく分かるくらい、迷っているのが分かった。

「……」
「躊躇することはない。この遊戯を終わらせなさい」

タバサおねえちゃんの唇が、
ほんのちょっぴり、横に結ばれた。

「……なら、遠慮なく」

いつものタバサおねえちゃんよりも大きな杖が、構えられる。
ボクはてっきり、タバサおねえちゃんが、
ジョゼフ王の首を落とすって、
本当にそうするだろうって思ってしまったんだ。
話を聞く限り、ジョゼフ王はそれぐらい酷いことをやってきたみたいだし……

「アーホ
 バーカ
 マーヌーケー
 おー前なーんかブタのケツー」

だから、無表情のまま、こんなことをタバサおねえちゃんが言うとは思わなかったんだ。
おそらく、ここにいる全員が思わなかったと思う。

「……む?」

何故?といった感じで上げられたジョゼフ王の頭に、
軽くコツンと、タバサおねえちゃんの杖が当てられる。
それで、おしまいだった。

「貴方の記憶を、私も見た。
 父は、貴方を殺すことを望んでいない」

タバサおねえちゃんは、マントをジョゼフ王に突き返しながら、そう言った。
……『記憶の場所』で、タバサおねえちゃんはきっと見たんだ。
お父さんの記憶を、ジョゼフ王と一緒に……

「……相変わらず、勝手な男だな、シャルルは……」
「それに」

タバサおねえちゃんは、ゆっくりと、
顔をむずむずっと動かしたんだ。

「む?」

タバサおねえちゃんが、小さく、笑っていた。
小さく、小さく、雪の隙間から顔を覗かせた花のように、笑ったんだ。

「貴方を殺せば、イザベラが悲しむ。
 悲しみの連鎖は、終わらせなければならない」

それは、覚悟を決めたって、そんな声だったんだ。
タバサおねえちゃんなりに、必死に考えて、悩んで、迷った挙句に見つけた、
そんな答えだったんだと、ボクはそう思う。

「く――クハハハハハハハハハ!!
 ――あーあ、貴君の完全なる勝ちだ!!
 おい、クジャ!俺が負けたぞ?信じられるかおい?
 だがこんな気持ちの良い負け方は初めてだな、うむ!!」

ジョセフ王の笑い声が響く。
何かふっきれたという感じで、笑っていた。

「きゅ、きゅい……お姉さま……」
「大丈夫。もう、私は……大丈夫」

大丈夫、うん、本当にそう思う。
もう、タバサおねえちゃんは……きっと、大丈夫だ。

……さてと、とボクも帽子をかぶりなおした。

「――どうだろうか、タルブ産のワインを片手に語り合うというのは。
 あぁ、失敬、君の名前をそもそもきちんと伺って――」
「え、あの、困りますっ!?」

テファが困っているのはちょっと心配だけど、ギーシュだから酷いことはきっとしないと思う。
だから、この隙にボクはボクのするべきことをしなきゃと思うんだ。

「――ん~!さて……ビビー、帰るわよー?
 ビビー?ビビぃー?」
「あ、ルイズおねえちゃん、ちょ、ちょっとだけ待って!!」
「……?ちょっと、だけよー?」

ちょっとだけ、ルイズおねえちゃんには待っててもらうんだ。
そしたら帰るんだ。ボク達のいつか帰る場所に。

「クジャ!!」

クジャは、ジョゼフ王の大笑いを呆れた様子で眺めていた。
そこに、ボクは走り寄っていった。

「ん?何かな?
 あぁ、そういえばさっき何か言おうとしてたっけ……」

ボクは、帽子をかぶりなおした。
タバサおねえちゃんみたいに、しっかりとした理屈と言葉があるわけじゃないけど、
ボクはボクなりに、クジャに言うべきことを考えたんだ。
だから、しっかり伝えたい。

「あの、さ……」

明日へ続く道へと、進むために。
ボクは、クジャに言いたかったこと……それは……


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