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悪魔の虹-03a



 ――ハルケギニアから打って変わり、地球。ニューギニア 虹の谷の洞窟にて

「おい、誰が発見しようと公平に山分けだぜ?」
 ウィスキーのボトルを呷りながらサングラスを掛けた男、小野寺は二人の男達を振り向いて言う。
「今さらそんな、水臭い事いうなや。ねぇ」
「ああ」
 関西弁で喋る川尻が答え、三人の中で一番若い平田圭介も同意する。
 はるばる日本からニューギニアまでやってきた彼らは、ある目的を持ってこの洞窟を訪れていた。
 平田圭介の兄は戦時中、この洞窟で卵大の大きさをしたオパールを発見し、捕虜収容所に入れられる寸前にまたここに隠していたのだ。
 20年経った今、何とかして密輸をしようとしたのだが、彼はその時に足を負傷していたせいもあって代わりに弟の圭介、友人の川尻、小野寺を現地へ向かわせてそのオパールを回収しようとしていたのである。
 彼によれば、そのオパールは捨て値でも2億円はすると言う。そして、既に中国の宝石ブローカーとも売買の約束をしているため、何としてでも日本に持ち帰らなければならない。
 万が一、そのオパールが誰かに先を越されて見つからなくても探せば他にも宝石はあるかもしれない。
 とにかく、手ぶらでは帰れないのだ。
「この辺らしいぞ」
 兄から渡されたメモを参照しつつ、洞窟の奥へと進んでいった平田圭介は記された地点まで来た所で立ち止まった。
 〝入口から15メートル。突き当たって右〟そうメモには記されている。
「おい、小野寺。手ぇ貸せや」
 小さな水溜りがある付近の岩を動かしつつ、川尻が言う。
 小野寺はボトルをしまい、同じく岩を動かしている圭介の方を手伝った。
「おっ……なんじゃこれ。骸骨やないか」
「こんなもんで驚いてどうすんだよ?」
「気持ち悪いなぁ……」
 川尻が岩を動かすと、その下には古い白骨があった。小野寺は驚く彼の姿に軽く吹きだした。
 ちなみに今回の密輸計画に当たって、彼らは船員の川尻が乗り込んでいる貨物船〝あわじ丸〟に乗り込んでやってきている。
 本来、船員ではない圭介と小野寺だが、事前に川尻が船員手帳を偽造しているため、問題は無い。
 そして、あわじ丸は現在このニューギニア近辺の島々の港を回っており、三人はニューギニアの港へ来た際に無断で脱船してここへ来ている。半月後にまたニューギニアの港へ戻って日本へ向かうので、それまでに戻らなければならない。
 半月もの間、脱船していた理由に関しては小野寺の提案で、〝戦時中に亡くなった戦友の遺骨を回収する〟という名目にしてある。
 その後も三人は必死に重い岩を動かし、目的のオパールを探し求めていた。
 全身に汗を流しつつも、隅々まで岩を動かしていく三人。
 その時、大きな岩をどかした川尻が土の下に奇妙な布に包まれた物を見つけた。
 もしや……と思い、彼はそれを手にして厳重に包まれた布を剥いでいく。
 ――しかし、全て剥ぎ取ってみても……。
「……なんじゃ、こりゃ」
「あ? どうした? 見つかったか?」
 川尻が声を上げるのを聞いて、小野寺が振り返る。
「からっぽや……」
 残念そうに呟き、川尻は何も入っていない布の包みを投げ捨てた。
 恐らく、この中にオパールが入っていたのだろう。しかし、包みの中は既に空だった。
 つまり、誰かにもう先を越されてしまったという事だ。
 本来、この洞窟は近辺が原住民すら近づけない密林であるため、大丈夫だろうと踏んでいたのだが……。
「……大博打が外れちまったか」
 小野寺は舌を打った。
 しかし、発見から20年も経過しているのだからこの事も予想はできたはずだ。そもそも、この計画自体が一種の大博打なのだから。
「……兄貴も残念がるだろうなぁ」
 圭介もこのような結果を心底、悔しく思っていた。彼がこの計画に参加したのは、元々航空士として大空を飛び回る夢があり、独立して小さな観光飛行機会社を設立するための元手を集めるためだったのだ。
 そのため、ライセンスを得てすぐに勤めていた航空会社も辞めたというのに……。
「――!! ……か、川尻さん……!」
「何や?」
 唐突に顔を青ざめ、圭介はおののく。川尻はその様子を見て、怪訝そうにしていた。
 気付くと、小野寺もサングラスを外して険しい顔で川尻の足元近くに視線をやっている。
「……しっ。……そのまま」
 圭介が腰に携えている登山用の大型ナイフを抜き、屈んだまま静かに川尻に歩み寄る。
 川尻は二人の視線が気になり、足元へ自らの視線をやる。
「……!! ひっ……!」 
「動かないで……!!」
 びくりと驚こうとした川尻を圭介が制止し、ナイフの刃先を川尻の右膝にそっと当て――
 一気に右膝に付いていた異物を剥がし、地面へ投げ捨てる。
 川尻は腰を抜かしたままその異物から慌てて離れていた。
 その異物が、銃声と共に地面の上で撃ち抜かれた。
 小野寺が携えていた小型リボルバーが向けられ、銃口から硝煙を棚引かせていた。 
 地面の上では、今の銃弾によって貫かれた一匹のサソリの死骸があった。
 この洞窟には、兄によると毒サソリがいるという。刺されればカバでさえ五分と耐えられない猛毒を持つそうだ。
「し……心臓に悪いわ……」
 すっかり気力を無くし、へたりこむ川尻。
「命があっただけでも、拾い物だぜ?」
 リボルバーを収めながら、小野寺は言う。
 その後、三人はオパールが発見できなかった代わりを探して洞窟内をくまなく散策していた。
 何度か、毒サソリを見つけては小野寺の銃や圭介のナイフで仕留められていく。
「ひい、ふう、みい……こんな物か。……こいつを代わりに持って帰るか」
「せやな。一応、これだけでも儲け物やで」
 結果、洞窟内の数箇所から小さなダイヤモンドが十数個見つかった。
 目的のオパールを手に入れる事はできなかったが、このダイヤだけでもそれなりに売れるはずだ。
 小野寺と川尻は嬉しそうだったが、圭介は険しい顔だった。
「しかし……一体、どこの誰がオパールを持っていったんだろう?」
 圭介はふと、疑問に思った。あのオパールが隠されていた場所は誰かが手をつけた様子が無い。わざわざ元の状態に、しかも包みだけ戻しておくなんて変だ。
「さあな。だが、既に持ってかれちまったたんだから……今さら悔やんでも仕方がないぜ? それより、当面の目的は果たしたんだ。さっさとずらかろうぜ?」
「せやで。ほら、行こうや」
 小野寺と川尻に促され、圭介はまだ懐疑的に思いながらも荷物をまとめ、二人と一緒に洞窟を後にしていた。
「大阪に帰ったらな。ワシはマンション買うて、国から女房子供呼んで一緒に暮らすんや。船乗りなんかやってられるかい」
 洞窟を出て、川尻は自分が見つけたダイヤモンドをしまいながらえびす顔で揚々と語っていた。
 小野寺もボトルのウイスキーを呷りながら、未だ手にするダイヤモンドを弄ぶ。
「お前の夢も実現するやないか。もっと喜べや」
「え? うん……」
 川尻に肩を叩かれ、耽っていた圭介も自分が見つけたダイヤモンドを手にしながら反応した。
 その後、日本へと帰国する途中、小野寺がマラリアと水虫を患ってしまい、あわじ丸の船室で寝込んでしまったが、三人は何とか無事に日本へと帰国する事に成功した。
 神戸港で宝石ブローカーと共に待っていた圭介の兄は目的のオパールが手に入れられなくて残念がっていたが、代わりに持ち帰ったダイヤモンドが捨て値の数倍もの額で売れた事に満足していたようだった。
「あのオパール……本当に誰が持っていったんだろう」
 仲間達が喜び、兄の家で計画成功の祝杯を挙げる中、圭介は未だにオパールの事が気になって仕方が無かった。
「どうした、圭介? お前の夢も叶うんだ。もっと喜べよ」
「あ……ああ……。ありがとう、兄さん」
 兄がコップに注いでくれたビールを一気に飲み干しつつも、圭介はやはり気になっていた。
 一体、誰があそこから持ち去ったのだろうかと。

 彼らは知る由も無いだろう。
 その目的の物が、もはや地球上のどこにも存在しないという事実に。



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