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ゼロの戦闘妖精-11

Misson 11「伝説のフェニックス」(その4)

その日の明け方 城へと戻ったアンリエッタは、すぐさまマザリーニの寝室を強襲し、問答無用で叩き起こした。
あまりの事に 事態に対応できない枢機卿。その寝惚けマナコの前に積み上げられたのは、ワルド隊長から託された 資料の山。
「まずは これに目を通しなさい。話は、それからです。」
姫君の気迫に押されて、一番上の冊子を手にするマザリーニ。
「こっ これは!」
流石は この国を実質一人で支える男。即座にこの資料の意味に気付き 二冊三冊と続け様に眼を通していく。
「信じられん。私が把握している事柄と 余りに違いすぎる。
 だが 裏が取れているのは、むしろ此方の方。これが事実だとしたら、私の進めてきた策など無意味だ。
 トリステインは、戦わずして既に負けた…」
膝を落とし 手を床についた orzのポーズ。アンリエッタをして はじめて見るマザリーニの姿だった。
「いいえ、まだです。
 レコンキスタは、私達が『気付いた』事を まだ知りません。
 そして奴等は 未だ終ってはおらぬニューカッスル城攻めに 既に勝ったつもりでいる。そこに『油断』があります。
 ただ座していれば 滅ぶだけ。今こそ 討って出る時です。
 マザリーニ、王宮会議を開きます!触れを出すのです。
 早馬 竜篭をありったけ出して、全ての参議と大臣を集めなさい。
 遅参は許しません。欠議など以ての外、爵位剥奪もありうると伝えなさい。
 一刻を争います。今日 この会議がトリステインの行く末を決めるのですから!」
一気に言い放ったアンリエッタに マザリーニは自分の目を疑った。
そこに居たのは、いつまでも子供っぽく 手のかかる姫君ではなかった。かつての盟友 共に理想の国家を目指しながら 若くして無念の死を遂げた、先王の姿が重なって見えていた。 

石畳に描かれたサークルと十字、トリステイン城の竜着場には早朝から多数の竜篭が降り立ち、乗客を降ろすと即座に移動 上空で待機中だった次の竜が着地。これを繰り返していた。
「まったく、小娘の我儘にも 困ったモンです。」比較的早めに着いていた 財務系の官僚がボヤく。
「そうですな。まだ 戦が始まったワケでもないのに、緊急招集などと。」空海軍提督付きの参謀が続く。
「その戦争すら『三文芝居』に過ぎぬ事、気付かぬ愚か者共め!」書記局長が毒づくが、
「まあまあ、皆様。それもこれも あの『お飾り』をゲルマニアに追放するまでの あとほんの僅かの間の事。
 アルビオンの同志と共に築く 新しき『我等が国家』を思えば、腹を立てる必要すらないでしょう。」
到着したばかりの竜篭より現れたのは 彼等の要となる人物。
「おお そうでしたな。」
「では 参りましょうか。」
「願わくば 今日の様な無駄な会議ではなく、あの大会議場で『我等の』トリステインについて 堂々と語り合いたいですな。」
「「「ハッ八ッハッ…」」」
これが、『貴族』と言う名の『俗物』達。国家を語りながら 頭にあるのは私欲と自己保身。
獅子身中の蟲 群れを成して議事堂に入る。
彼等は知らない、想像だにしない。この先に起きる事、自分達の 未来を。

議事堂内は、ざわめいていた。
議長が座るべき椅子に居たのが アンリエッタ姫だったからだ。
その左に控える マザリーニ枢機卿。右側の席は空いたまま。
そして 響き渡る木槌の音。
前置きも 挨拶も無く会議は始まった。

「それでは、緊急宮廷会議を始めます。
 本日の議題は 『アルビオン救援派遣軍』編成について!」
アンリエッタの宣言に 議事堂が沈黙する。
己が耳を疑う者 姫の正気を疑う者 余りの驚きに引き付けを起す者 思考停止いや思考放棄する者。
一瞬の後 静寂の反動とばかりに、一斉に批難が上がる。
「妃殿下、貴方は一人勝手に戦争を始める御積りか!?」
「ふん、惚れた男の為に 幾千幾万の同胞を犠牲になさるか。」
「横暴だ。議会の決定を蔑ろにするにも程があるぞ!」
「要請なき一方的な派兵など アルビオンに対する重大な内政干渉ですな。周辺諸国が黙ってはおりませぬぞ。」
罵声 怒号、議長席へ駆け寄らんとする者も。だが 近衛がそれを押し留めようとするよりも早く
「お黙りなさい!」アンリエッタが一喝する。
「アルビオン王家との話であれば、既についています。
 不甲斐無い外交部局に代わり、私 自らがニューカッスル城に赴きました。
 これが その証。」
机から取り出したのは、幾通もの封書。
「姫様、そっ それは!」
    ・・・・・・・・・
「そう。皆も知っている通り、私がウェールズ様に送りました『恋文』です。
 戦に備えて 一時御返し願いました。」
それは正しく『紙爆弾』だった!

『姫君自らアルビオンに行った』この発言の真偽は判らない(信じる者の方が少なかった)。
だが、ウェールズ皇太子と情報をやり取りし あまつさえ物品の移送も可能なルートを、アンリエッタが確保している。この意味は大きい。
トリステイン アルビオン双方の視点から情報を付き合わせれば、自分達の計画が浮かび上がってしまうのではないか?
いや 既に何処かに齟齬が生じているのでは?そういった疑心暗鬼が 不安を一層掻き立てる。
だが この時点ではまだ彼等には余裕があった。
「そうですか。
 ですが、ならばこそ そういった件は、予め議会への承認を取り付けていただきたいものですな。
 姫様の、友好国を思う御心は判りますが、何せ 事は『軍事』。
 失礼ながら素人の姫様に置かれましては、我等専門家にお任せ願いたい。」
現在の戦略方針は、議会で正式な手順に則り承認されたもの。王女が強行に『対レコンキスタ開戦』を主張しても、独断専行・専横の謗りを免れない。その点を突いて アンリエッタを封じようとした。
「専門家?どなたがですか。
 このような 愚にも尽かない作戦計画しか立案できない方々が? それを何ら恥じることなく平然としている貴方方が?」
再び机から書類の束を取り出して 先ほど発言した参謀長に投げつける姫君。
書類は 幕僚会議が策定した『作戦計画書』だった。
アンリエッタも ここで弱気を見せられない訳がある。
『アルビオンと話は付いている』とは言え、それはあくまで『ルイズとウェールズ家臣団』の間での事。『妃殿下と皇太子閣下』ではない。
そのあたり、ボロが出る前に押し切らなければ!

「これは聞き捨てなりませんな。
 姫様、よろしければ この愚かな参謀に、この計画の何処がいけませんのか ご教授願いたい!」
怒りを顕わにする軍人と「そうだ!そうだ!」と尻馬に乗って騒ぐ官僚達。
「確かに 私は『素人』です。
 作戦のアラを見つける事は出来ても、(アタマの悪い)皆様には 理解出来る様に説明出来ません。
 そこで 『専門家』に代弁していただく事に致しました。」
アンリエッタが目配せをすると、マザリーニは席を立って、議長席横の扉の影に控えていた者を招き入れる。
「入りたまえ、ワルド君。」

入室した人物を見て 場内がザワめく。
脛に傷を持つ大臣、平民に人気の高い下級貴族を嫉妬する者、レコンキスタ内通者でも ワルドが自分達の側だと知っている者も知らない者も居る。
「ワルド子爵、此処は衛士隊の隊長如きが参加できる場ではない!下がりたまえ。」
権威派の上級貴族の発言を アンリエッタが制する。
「私が呼んだ『専門家』に、何かご不満でも?」
「いっいいえ、そんな事は…」
「まぁまぁ 良いではありませんか。
 ワルド殿の『グリフォン隊』は、巷では『我が国最強の部隊』等と持て囃されているようですが、所詮は『捕り物部隊』。
 コソ泥相手の戦争ごっこと 我々の『本物の戦争』の違いを教えてやりましょう。」
自信満々に語る 陸軍の幹部将校。
だが 言われた当人は、
「え~、今日 ここでチャンバラをおっ始める気は無いんで、さっさと進めたいんですがね。」
と 挑発に乗るぞぶりを見せなかった。

「お集まりの御歴々に伺います。
 この中で、戦場で実際に『包囲・封じ込め戦』に参戦した経験のある方は?」
ワルドの話は いきなりの質問から始まった。そして その問いかけに手を挙げる者はいなかった。
「…やっぱりねぇ。
 だから こんな作戦計画でも 誰も疑問を持たない訳か。」
軍人グループは 杖を抜く寸前までヒートアップした。それを全く意に返さず ワルドは続ける。
「そもそも『包囲戦』は 物量において格段に優勢な側が取るべき戦法。
 重要なのは、それが『完全なる包囲』である事。例え 蟻の一穴たりとも有ってはならないのです。
 古の『猿帝ヒュデヨシ』の様に 城一つを水没させるなんて事が出来れば確実だが アレはあくまで伝説の範疇。
 陸戦ならば 隣の兵士と手を繋げるほどの間隔で『兵士の輪』を作り 二重三重に包囲する。
 島を囲むのであれば 単艦での索敵能力を考えて、3~5リーグごとに最低1隻のフネは配置したいところ。
 さて、」
ワルドは ここで、ある人物を指名する。
「先ほど妃殿下に、自らが『愚か』であると告白された参謀殿。
 ちょっとお伺いしますが、アルビオン大陸の外周部 総延長は何リーグでしたかね?」
質問を受けた参謀は、突然の事に言葉が出ない。
まぁ 冷静な状態であっても そんな事は知らないのだから、答えられない事に変わりは無かっただろうが。
「作戦計画立案に携わっていた以上、『知らない』とは言いますまいな。三秒以内にお答えください。
 …3…2…1 はい、時間切れ!」
屈辱に震えながらも 結局答えられない参謀閣下。それを見下すワルド。
「アルビオンの外周が約2万8千リーグ、先に言いましたように 3リーグごとに1隻のフネを配置するとして、これに必要な船の数は?
 我が国の、いやゲルマニアのフネまで含めて全てを動員したとしても不可能だってことぁ、年端のゆかない子供にだって判りそうなモノですなぁ。」
具体的な数字には 説得力がある。
現行計画書があいまいにしていた部分に光を当てるだけで 中立的立場の参議の多くは『封じ込め案』に疑問を持った。

「そんな非常識な数のフネは必要ない。港だけを集中的に固めれば良いだけだろうが!」
推進派からの反論。焦りの色は隠せない。
「だから貴方達は現場を知らないと言うんです。
 港湾設備なんてぇのは、あくまで荷物の積み下ろしを効率的に行うためのモノ。
 極論すれば、荷降ろしなんて ちょっとした広場に上空から固定化・硬化をかけた木箱を落っことせば済むこった。
 地上に風のメイジを数名配置して、荷物なんざ魔法で受け止めりゃイイ。積み込みだって 同じ様なモンだ。
 そう考えれりゃ アルビオンは何処であろうと港代わりになるんだ。だから全周警戒しなきゃ、封鎖にならねぇんだよ!」
ワルドも徐々に『地』が見えて、べらんめぇ調が混じり始める。
「しかし 3~5リーグおきに1隻とは、いくらなんでも多過ぎないか?」
「正直言えば これでもまだ足りねぇ。
 1隻のフネが ある空域に進入したとする。当然 そこに居たフネはこれを追尾 配置場所から居なくなる。
 だが コイツは囮だ。空賊連中なら すかさず他のフネで強行突破だな。スキマは3リーグもありゃ 十分過ぎる。
 更に言わせてもらうなら、一隻ごとの分散配備自体、ヤバイんだよ。
 こっちのフネは、数合わせの仮装巡洋艦か武装商船がほとんどだろうよ。
 そこへ、レコンキスタの戦列艦が2~3隻で襲ってきたら どうなる?各個撃破されんのは確実、連中は痛手を負わず こちらの戦力はどんどん削られてくんだろうな。」

レコンキスタ内通者によって立案された計画は 杜撰というのさえ憚られるものだった。
そもそも 彼等は負けるつもりだったのだから。
とりあえず それらしく出来ていればよい、運用に関する問題点など いくらあっても構わない。政に比べ、比較的 戦に疎い『鳥の骨』さえ騙せれば十分だった。
それが、同志であった筈のワルドによって 次々と欠陥が暴かれていく。
(おのれワルドめ!)
(この裏切り者がぁ!)
(『鳥の骨』から 幾ら貰った!)
と、自分達の事を棚に上げての恨み節も 声に出す訳にいかず、切歯扼腕するばかり。

流れは派兵へと傾きつつあったが、
「君の話は 良く判った、ワルド子爵。 
 だが、どんな困難があろうとも 『封じ込め』こそが『最善の一手』なのだ!」
一人の男が立ち上がり 芝居がかった大袈裟な仕草で議場の隅々にまで語りかけた。
彼こそ、マザリーニ枢機卿と並び 現在のトリステインを実質的に動かしている人物、リッシュモン高等法院長官だった。
法の裁きを司る者の頂点であると同時に 三権分立の概念すら確立されていないトリステインにあっては 法律の作成にまで強い影響力を持つ 強大な権力者である。
マザリーニが政策において時折 宗教家らしい『融通の利かなさ』を見せるのに対し、『清濁併せ呑む』と評されるリッシュモンは、官僚や商人達から「対処法が判り易い」として人気が高い。
即ち、「話を通したければ 賄賂を贈れ!」 典型的な 欲に溺れた悪徳政治家であった。
当然の様にレコンキスタ工作員とも接触し、現在ではトリステイン国内における工作員組織のトップでもある。
(ちなみに リッシュモンはワルドが自分達の側であることは知っているが、同志として直接 顔を合わせた事は無い。)

「封じ込め作戦にしろ アルビオンに派兵し直接レコンキスタと戦争するにしろ、どちらを選ぼうと勝利は容易では無い。それは理解した。
 だが この二つの道には、決定的な違いがある。戦死者の数だ!」
それを聞いて 議論において劣勢だった工作員組が、「わが意を得たり」とばかりに息を吹き返す。
「我がトリステインの宝とは何か?
 歴史? 伝統?、もちろんそれもあろう。
 だが、ガリア程に広い国土も無く アルビオンの様に他国を見下ろす特殊な立地も無く ゲルマニアの様に地下資源に恵まれている訳でもない。
 そんなトリステインが六千年の永きに渡って存続してこられたのは、ひとえに『人材』の力である!
 今 此処に集う皆 そして国内全てのメイジ、その一人一人がトリステインの宝なのだ。
 アルビオンに対する作戦計画を立案した方々も、おそらく思考の根底にその思いがあったのであろう。
 敵地を包囲し そこから出さなければ、敵を全滅させたに等しい。これを成し遂げたなら、戦死者の数は 正面決戦の場合の十分の一以下  いやもっと少なくすることも可能だ。
 諸君 私は君達に無駄死にをして欲しくないのだ。一兵卒に至るまで、誰も死んで欲しくない。
 それを理解したうえで 議事を進行してもらいたい。
 以上だ。」

貴族にとって 守らねばならないものの筆頭は国家であり 次は王家である。自分の命は三番目といったところか?
だが そんなのは建前、本当に一番大事なのは自分の命だ。レコンキスタ内通組のボスは、人命を盾に主導権を取り戻そうと画策した。
官僚達は一斉にリッシュモン支持に回った。
誤算だったのは
(高等法院長官殿は、我々が『命を惜しむ 臆病者』だと仰りたいのか!?)
と 軍人達の反発を招いてしまった事だ。
現在の議会勢力は、リッシュモンらレコンキスタ派が約三割 王家に従う正統派が二割、残り五割は態度を決めかねている。
トリステインという天秤は 一体どちらに傾くのか?

そこで、ワルドが挙手をする。
「あ~、リッシュモン長官。
 聡明な貴方まで そんなことを仰るとは…
 まぁ しがらみやら何やら、已むに已まれぬ御事情があるものとは お察ししますが。
 今 計画通りの封じ込め作戦なんぞやったところで、戦果は上がらず被害が増えるばかり。
 それどころか ジリ貧になるのは、こっちの方ですよ?」
そして ガサガサといくつのも資料を取り出して 解説を始めた。多少は落ち着いたのか、べらんめぇ口調は収まったようだ。  
「今回の『封じ込め』は なんと言っても規模がデカ過ぎる。そのせいで『兵糧攻め』の効果が出ないんです。
 アルビオンの気候は 他国に比べ寒冷で農作物の生産に適さない土地も多いのですが、長年に亘る品種改良等により 穀物の国内自給率は概算で約八割となっています。
 レコンキスタの反乱以降、食料の輸入量は急激に上昇、兵糧として消費された分以外が備蓄に回されたとして、たった今から全ての輸入を絶ったとしても 数年は飢えることなく戦える量を確保しているはずです。
 武器弾薬も同様でしょう。むしろ こちらの方は『正規輸入』ではなく『密輸』される量が多いので、正確な把握は難しいんです。
 我々が捕らえたある密輸業者など、
 『自分が送り届けた物資だけでも レコンキスタはあと十年は戦える!』ってほざいてましたから。
 むしろ、我々トリステインの方が、封鎖作戦を十年も続けられるかどうか…」
ざわめきが広がる 中立派参議達の席。リッシュモンも 返す言葉が無い。
「最もマズいのは、『封じ込め』が現アルビオン王家の消滅を前提としている事です。
 これは レコンキスタが新生アルビオン国家として成立するのと同義ですから。
 考えてみて下さい。我々の基本戦略は、『ゲルマニアとの同盟』を根幹としています。
 レコンキスタが反乱軍で在るうちはまだしも、正式な国家となった場合、我が国同様に他国と同盟を結ぶ可能性を!」

議場内に稲妻が走った。
今まで誰も その件に言及した者は居なかった。実際には、レコンキスタ内通者等によって 巧妙に排除されていた。
だが、充分有り得る話だった。
そもそも レコンキスタが此処まで急速に勢力を拡大できたのは、異常なまでの人員獲得能力 はっきり言えば『敵将を寝返らせる』能力によってである。
誰もが 寝返るなどと思いもよらぬ武将、忠義に厚く 王家を裏切る事など有り得ない猛将、中堅や下級兵士に至るまで 或る日突然に熱烈なレコンキスタ信者へと変貌し、昨日までの友に槍を向ける。
そうやって奴等は勝利してきた。
晴れて国家となった暁には、この『力』を『外交』に使わぬ筈がない!
では、何処と?
ゲルマニアと並ぶ いやそれ以上の大国ガリアは、ここまで一切の公式コメントを出していない。
現王は あの天下の奇人『無能王』ジョゼフだ。何をやらかすか判らない以上、同盟の可能性は捨てきれない。
軍事のガリアに対し、ブリミル教の頂点たる宗教国家ロマリアはどうか?
今のところ レコンキスタの旗印『聖地奪還』については 何の評価も下してはいないが、聖地奪還自体は教団の悲願でもある。
レコンキスタに勢いあり と判断すれば、同盟も有り得る。
大国ならずとも この機会にトリステイン侵攻を企む小国もあるだろう。
流れが此方に不利になった時、同盟国ゲルマニアは? 条約を破棄し レコンキスタ側に付かないと言い切れるだろうか?
まるで 名人と初心者のチェスだ。相手の指し筋には チェックメイトに至る道が何本も見えているのに、こちらは逃げ道すら定まっていない・・・  

「さぁ これで、我がトリステインが危機的状況にあることは理解できましたか?」
ただ混乱するばかりの参議達を、現実に引き戻したのはアンリエッタだった。
「ならば、こんな所で 堂々巡りや足の引っ張り合いをしている暇は 一刻たりとも無いと言う事もお分かりいただけたはず。
 まず 現行の『アルビオン封じ込め作戦』については、これを廃棄する。
 同意の方は沈黙をもって 意義あるものは挙手を願います!」
民○党もビックリの 有無を言わせぬ強行採決。
「賛成者多数、よって廃棄と決定いたします。」
売国メンバーすら呆気に取られている間に 畳み掛けるようにして
「続いて 『アルビオン救援派遣軍』について。
 これも 意義あるものは挙手を。ただし、先ほど廃棄した作戦計画の代案を提示することを条件とします。
 …反対者ナシ、よろしいですね!」
「横暴だ!王家は我々をないがしろにしている。こんな採決は 断じて認められない!!
 参議諸君、決議の撤回を求める動議を!!!」
リッシュモンが叫ぶ。だが、
「お待ちください、最高法院長官。
 アンリエッタ様のなさり様は、確かに強引ではありますが、その主張は十分納得のいくもの。
 我等軍人としては、勝てる見込みの全く無い作戦よりも、どんなに困難でも勝ち目のある作戦に従事したいと思います。
 なお 付け加えれば、此処には貴方の仰る様な『命を惜しむ』臆病者はおりません。以後 お間違いなきよう。」
中立派だった若手の将校達が、それを遮る。リッシュモンは 自らの失敗を悟った。

「アルビオンを救うには、何よりも迅速さが必要です。
 諸侯に伺います。
 作戦の詳細はともかく、今日明日中にでも送り出せる戦力はどれほどか?
 先陣の栄誉を得んとする勇者は居られるか!」
アンリエッタの発言は続く。
しかし、議会を支配していた内通派により『戦の準備 急ぐ必要なし』との空気に浸かっていたトリステインで、一日二日で出兵準備など 無理…
だが、
「よろしい。とりあえず二日の後、二千の兵を揃えましょう。」
名乗りを上げたのは、ヴァリエール公爵。周囲からは 驚きと賞賛のどよめきが上がる。
「我が領地は 隣国ゲルマニアとの国境沿い。
 大戦こそ暫くありませんでしたが、『常在戦場』は先祖より受け継ぎし『家訓』。事在りし時の備えは、常に。
 されど 同盟成立となれば、ゲルマニアと敵対するは無用と為るところ。よって その兵力、アルビオンの為にお使いください。」
この対応、当然ながら昨夜のうちにルイズからの連絡を受けてのこと。とはいえ、事前の準備もあってこその素早さである。
「おお、ヴァリエール公。良くぞ言ってくださった。」
それを受けてのマザリーニ卿の台詞も 事前に話が付いていてのもの。が、
「ならば 兵を運ぶフネは、こちらで用意しましょう。」
後に続いたのは 空海軍の重鎮、ド・グラモン提督。
その家系は 古くから多くの船乗りを輩出し、現在も一族のほとんどが艦長クラスの役職にある。
(が、何故か魔法の系統は 揃いも揃って『風』ではなく『土』だったりする。)
彼は、アンリエッタ姫から事情を知らされている『メンバー』ではない。中立派だったはず。
それが 自ら動いた。
グラモン一族が動くなら、どれだけの兵が集まっても輸送可能だ。派兵計画は大きく前進した。

なお、会議終了後 この申し出についてヴァリエール公爵がグラモン提督に
「何故に御協力頂けたのですか?」と問うと、
「いや 実は、我家の甘ったれた末息子が 最近いささかオトコらしくなりましたのは、貴家のルイズ嬢のお陰と聞き及んでおりましてな。
 その御礼だとでも御思い下さい。」とのこと。

その後 次々と兵の派遣を申し出る者が続くが、いずれもヴァリエール家程の規模はなく、多くとも数百名単位 総数で五千を超えられるかどうかの線である。
また、武器弾薬 食料等についても、十分な量を揃えるには二週間弱はかかる見通しだ。無理をすれば 派兵数量は更に減る。
それを聞くワルドの表情は 暗い。
レコンキスタに総攻撃を思いとどまらせるには、最低でも一万の兵力が必要と考えているからだった。
それも 五月雨式に増強していくのでは意味が無い。逆に総攻撃の呼び水ともなりかねない為、派兵は一気に行わねばならない。
情報収集にアルビオンに先行させた配下の者の報告では、総攻撃の開始は一週間以内の可能性が高い。
この戦いは、レコンキスタ殲滅までの長期戦が予想される。
緒戦の投入戦力が不足していた為に その大半を失う等という事は避けたいが、派遣が遅れて現アルビオン王家が滅んでは 元も子もない。
ギリギリのラインを見極める為、会議は延々と続いた。しかし 結論は出せず、明日に持ち越しとなった。

今回の会議は 早朝からの緊急招集であったため、明日の会議再会までの間 一度自らの屋敷に戻りたいという者も多かった。
その為 アンリエッタは朝と同様に 早馬・竜篭を手配して これを帰宅させた。ただし 翌日の会議にも必ず出席するよう言い含めて。
屋敷への帰還を強硬に主張した者の多くは レコンキスタ内通者だった。もちろん 今日の会議の件を『本国』に伝える為に。

「行ったか。
 さぁ~て、皆 上手くやってくれよ。」
夕闇迫る竜着場で リッシュモンの乗った竜篭を見送ったワルドは呟いた。
そこに 駆け寄るルイズ。
「隊長 かっ会議は、どうなりましたか!?」
「うん。派兵は決まった。だけどねぇ…
 まず 兵力が圧倒的に足らない。そして 時間も無い。
 まったく 我が国をここまで弱体化させるとは、『敵ながら アッパレ!』ってところだね。
 そいつ等の事は 今晩でカタをつけるとして。
 まぁ 向こうがじっくり時間をかけてやった事を 短時間で強引に突破するんだ。キツいのは覚悟の上だろう?
 あとは コッチの準備が整うまで、ウェールズ殿下が生き残っていられる事を 始祖に祈るしかないな。」

おおむね 予想通りの答えだった。それがルイズに、ある決意を促す。
(今 アルビオン王家を守ること、それが先決。出し惜しみなんかしてる場合じゃない。
 此処が 使い処… そう、そうよね!)
「隊長、これからアルビオンまで飛びます。…御一緒願えますか。」
ルイズは 毎日アルビオンに偵察飛行に出ている。それはワルドも知っている。が、ルイズの様子に只ならぬものを感じた。
「これから? 今 スグにかい?」(『遍在』をもう一体追加かぁ。ギリギリで なんとかなるか!)
「はい。」
そしてルイズは、ワルドの瞳を真っ直ぐに見つめながら言った。

「私 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、生涯初めて ヒトを殺めに参ります。」
                        続く

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