あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

時の使い魔-05


 今日は虚無の曜日である。タバサは、時の君へ話しかけるタイミングもなかなか掴めな
いまま日々を過ごしていた。
 時の君は、見ている範囲では常にルイズと行動を共にしている。ルイズの居る前では、
ザビエラ村での出来事を迂闊に聴くことも出来なかった。タバサがなぜそんな所に居たの
かと突っ込まれれば、説明できる問題でもないからだ。
 さてどうしたものかと考えていると、鍵を掛けていたはずのドアが開け放たれた。
「タバサ。今から出かけるわよ!早く支度をしてちょうだい!」
「虚無の曜日」
 虚無の曜日位は、ルイズと時の君も別行動をしているかもしれない。だからこれから、
時の君を探してみたかった。キュルケには悪いが、今日出かけるのは断ろうと思った。
「あなたにとって虚無の曜日がどんな日かは痛いほど知っているわ、でも協力して頂戴。
あのにっくいヴァリエールと出掛けたの、馬に乗って!あたしはそれを追って、二人でど
こに行くか突き止めなくちゃいけないのよ!」
 なんと、話の文脈からするに、既に時の君は出掛けてしまったらしい。
「あなたの使い魔じゃないと追いつかないのよ!助けて!」
 時の君が居ないのではキュルケの頼みを断る理由はない。それに見つけ出せば話すチャ
ンスも出てくるかもしれないので、タバサは頷いた。
「ありがとう!追いかけてくれるのね!」
 タバサは頷くと、窓を開け口笛を吹いた。そして、窓枠によじ登り、外に向かって飛び
降りた。次いで、キュルケも窓から身を躍らせる。
 落下する二人をシルフィードが受け止める。
「まったく、失礼しちゃうのよ。あのヴァリエールの使い魔ったら、どんな色仕掛けをし
てみても見向きもしないんだから」
 どうやらそれが追跡する理由のようだ。無視されるのが我慢ならないらしい。
「どっち?」タバサが短くキュルケに尋ねた。
 キュルケが、あ、と声にならない声を上げた。
「わかんない……。慌ててたから」
「馬二頭。食べちゃだめ」
 シルフィードに、言葉短く命ずると、予め用意していた本を開き、尖った風竜の背びれ
を背もたれに、本を読み始めた。
 トリスティンの城下町を、ルイズと時の君は歩いていた。魔法学院からここまで乗って
きた馬は町の門のそばにある駅に預けてある。時の君の歩き方が若干おかしかった。
「まさか、馬にまともに乗れなかったなんてね」
「……必要なかったからな」
 腰を庇うように歩きながら時の君が答える。
「何でも出来るものだと思ってたわ」
 時の君の意外な弱点が、ルイズには可笑しかった。
「まあばれないとは思うけど、妖魔だってばれない様に気を付けてね。騒ぎが起きると、
王宮のお膝元だし色々と面倒だから。さ、せっかく街まで出てきたんだし、色々見て回り
ましょ」
 今日は、時の君にこの辺りの地理を案内するついでに、何か、物でも買い与えて餌付け
でもしておこうと思ったのだ。
「時の君は、何か買いたい物でもある?」
「そうだな……バットはあるか?」
「バット?何それ、どんなやつ?」
「知らないのか?木で出来た棒状の物だ。こうやって使うものなんだが」
 時の君は形状を説明すると、その場で腕を振り出した。
「?知らないわね……棍棒か何かの武器かしら?ええと、確か武器屋ならあっちにあった
わね」
 なんとなく武器っぽい様なので、武器屋に向かうべく路地を曲がった。
「でも、変なものを欲しがるのね。どうせなら木じゃなくて鉄で出来た、もっと丈夫そう
なものの方がいいんじゃない?」
「鉄では重くて飛距離が出ないだろう」
「飛距離?」
 雑談をしている内に、四辻に出た。ルイズは、立ち止まると、きょろきょろと辺りを見
回した。
「ピエモンの秘薬屋の近くだったから、この辺りなんだけど……あ、あそこね」
 ルイズと時の君は、剣の形を模した看板の店の中へと入っていった。

 店の中は、昼だというのに薄暗く、ランプの明かりが灯っていた。店の奥で、パイプを
くわえていた五十がらみの親父が、入ってきたルイズを胡散臭げに見つめた。紐タイ留め
に描かれた五芒星に気付く。それからパイプをはなし、ドスの利いた声を出した。
「貴族の旦那。うちはまっとうな商売をしてまさあ。お上に目をつけられるようなことな
んか、これっぽっちもありませんや」
「客よ」
 ルイズは腕を組んで言った。
「こりゃおったまげた!貴族が剣を!」
「剣じゃないわ、バットよ、バットはあるの?」
「バット?なんですか、それは?」
「知らないの?バットって言うのはね……」
 身振り手振りで説明を始めたルイズの横で、手持ち無沙汰の時の君は、店内を物色して
いた。やはり、王宮のお膝元だというこの街を見たときも思ったが、他との交流が無いリ
ージョンだけあって、文明のレベルはだいぶ低いようだ。
 店の端には乱雑に剣が積み上げられていた。何となく錆の浮いた剣を一本持ち上げてみ
た。
「ん?これは……グランドリーか?」
 剣の柄を握った瞬間、微かに身体能力が向上したようだ。面倒な事になった、グランド
リーは持っただけでも呪われたかのように手放せなくなる。しかし、あっさりとその手か
ら剣は離れた。
「……はぁ、そんな棍棒はうちには置いてませんや」
「そう、無いんじゃ仕様が無いわね」
 餌付けが失敗した事にがっくりとうな垂れ、状況を伝えるため、いつの間にか横から消
えた時の君を探す。
「……何してるの?」
 時の君は、積み上げられた剣を、不思議そうに首を傾げながら次々に持ち替えている。
「グランドリーかと思ったんだが、よく判らんな」
「おわ!びっくりした!『使い手』か」
 時の君が握った剣から声が発せられた。
「それって、インテリジェンスソード?」
「デル公!何も余計なことを言うんじゃねえぞ!……ゲフン。そうでさ、若奥様。意思を
持つ魔剣、インテリジェンスソードでさ。こいつときたら、やたら口が悪いは、客に喧嘩
を売るわでして……失礼なことを言っても剣の戯言なんで御容赦の願います」
 主人は苦い顔で、頭を下げる。
「喋る剣とは珍しいな、それに『使い手』?」
「何だ、自分の事もよく判ってねえのか。まあいい。俺を買ってくれよ」
「いいが、私は金を持っていない。交渉なら、あそこの御主人様に言ってくれ」
「えー?別に剣を買いに来た訳じゃないし、こんな錆び錆びの剣なんか要らないわよ」
 ルイズは率直に不要だということを伝えた。
「いいじゃねえか、買ってくれよ。きっと役に立つぜ」
「嫌よ。買うならピカピカのこっちの剣を買うわ」
 そういいルイズは壁に掛けられた剣を指差す。
「そんな剣、実戦じゃ何の役にもたたねえよ!……買ってくれないってんならこっちにも
考えがあるぜ。この旦那の秘密をばらしちまうぜ」
「何よ秘密って、ばらせばいいじゃない」
 こんな、会って数分の剣に判る秘密などあるわけがない。
「いいんだな、旦那、人間じゃないだろ妖m「ちょ、ちょっと待って!」」
 こんな街中で妖魔が現れたとなれば大パニックが起きるだろう。使い魔なんだし討伐さ
れたりはするまいが、街で騒動を起こしたとなればオーク鬼より怖い家族に何をされるか
判らない。
「え?人間じゃねえって?」
 店の主人がきょとんとしている。
「な、何でもないわ。この剣はおいくらかしら」
「あの剣なら百で結構でさ」
「以外に高いわね、いいわ。買うわ」
 時の君は懐から財布を取り出し、ルイズに渡した。
「毎度。どうしても煩いと思ったら、こうやって鞘に入れればおとなしくなりまさあ」

「はぁ、無駄な買い物をしてしまったわ。バットも買えなかったし」
「バットは無いのか……」
 へこむ二人を、路地の陰で見送った二つの影があった。キュルケとタバサである。
「何だか二人とも落ち込んでるわね、きっと目的の物が買えなかったんだわ。ヴァリエー
ルったら貧乏だから!」
 二人が見えなくなるほど離れたのを確認したキュルケは高笑いした。タバサはやはり話
しかける隙は無かったと、表情に出さない程度に落ち込んだ。
 一通り笑ったあと、二人は武器屋の戸をくぐった。主人がキュルケを見て目を丸くした。
「おや、今日はどうかしてる!また貴族だ!」
「ねえご主人、今の貴族が何を買っていったかご存知?」
 キュルケが色気たっぷりに店主へと問いかける。
「へ、へえ。剣でさ」
「なるほど、そういえば何か担いでたわね。どんな剣を買っていったの?」
「へえ、ボロボロの大剣を一振り」
「やっぱりお金が無かったのね!」
 キュルケは、手を顎の下に構え、またも大笑いする。
「若奥様も剣をお買い求めで?」
「ええ、見繕って下さる?」
 主人は壁にかけられた一振りの大剣をカウンターへと下ろす。
「あら、綺麗な剣じゃない」
「さすがお目が高い。何せこいつを鍛えたのは、かの高名なゲルマニアの錬金術師シュペ
ー卿で。魔法がかかってるから鉄だって一刀両断でさ。ここにその名が刻まれているでし
ょう?それに、この剣は、先ほどの貴族様も買おうとしていたものでさ」
 嘘は言っていない。デルフリンガーを買うくらいなら、こっちを買うと言っていた。
「いいわね、おいくら?」
 さっきの落ち込みようを見るに、二人ともこれが欲しかったに違いない。これを彼にプ
レゼントすれば、彼は喜ぶしルイズは悔しがるしで、一石二鳥ではないか。
「へえ、エキュー金貨で三千。新金貨で四千五百」
「ちょっと高くない?」
「へえ、名剣は、釣り合う黄金を要求するもんでさ」
 キュルケはちょっと考え込むと、主人の顔に自分の体を近づけ……
 ……めくるめく過ぎる、時間の中で、主人は新金貨で千まで値切られていた。
「買ったわ」
 さらさらと小切手を書き終わると、剣をつかみキュルケは店から出て行った。

 主人は呆然と、小切手を見つめていた。そして急激に冷静さを取り戻す。頭を抱えた。
「あの剣を千で売っちまったよ!今日はもう閉店だ!」
 冷やかしてくれる、デルフリンガーが居れば気は紛れただろうか、さらに苛立ったか、
そんなことを考えながら主人は酒をあおった。



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