あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

とある魔術の使い魔と主-33


ルイズが始祖の祈祷書に浮かび上がった内容を読んでいる間、当麻は残りの竜騎兵を倒していた。
二十いるアルビオンの竜騎士隊も、シルフィードと当麻の連携により無惨にも全滅と化した。
天下無双と謳われたアルビオンの竜騎士でも、韻竜と竜王の前には歯が立たない。
残るは本家、絶対に忘れることのない、アルビオンへと上陸するさいに見かけたあの巨大戦艦。その船の下では、港町ラ・ロシェールが攻撃を受けている。
「あれを倒さなきゃ、どうやら終わらないようだな」
しかし、どうすればあれを倒せるのだろうか?
こちらの武器は竜王の顎一つのみ。今までは同じ大きさでの戦いであったが、今回のはスケールが違う。
そんな状況での当麻の策は、敵艦に乗り込んで内部から破壊するという、シンプルな案であった。いや、それ以外にいい方法が浮かばなかった。
当麻達が潜り込もうと、近付いたその時、
敵の艦隊の右舷側がフラッシュのように光った。
瞬間、シルフィードが再び直角に移動方向を変えた。
当麻達がいた場所に無数の鉛の弾が通過する。シルフィードの咄嗟の判断がなければ、今頃死んでいたに違いない。
心臓の鼓動が大きくなる。ここにきて、生死の境にいるのだと実感した。
ちっ、と当麻は舌打ちをする。どうやら敵はこちらの存在をちゃんと認識しているようだ。
一拍置いて、再び鉛の弾が当麻達目がけて発射される。
しかし、シルフィードの持つ速さを利用し、避ける事だけに集中すれば、なんとかやり過ごせる。
やり過ごせるのだが、それだけだ。目標である敵艦に乗り込む行為をする為の手札が圧倒的に不足していた。
(何か……)
歯を食いしばり、シルフィードが懸命に自分達の寿命を伸ばしている間にも、必死に考えを巡らす。
(何か、こっちの手数を増やす、何かがあれば!!)


ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ
以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す。
初歩の初歩の初歩。『エクスプロージョン』

ドクン! とルイズの鼓動が一段と大きくなった。そしてエクスプロージョンの呪文が浮かび上がる。
あまりの急展開にルイズは思わず笑いそうになる。
ここまで読めるなら、読み手として文字が読めるのなら、きっとこの呪文の効力が発揮されるのではないか?
だって、今まで失敗だと思われた魔法は毎回爆発していたのだ。では、なんで毎回爆発していたのか?
失敗して爆発した例が他にあったのだろうか?
それが四系統に属さない『虚無』の力であったら?
当麻が以前いった通り、本当に自分には隠された力があったのならば?
これほど笑ってしまう話、ルイズには体験した事がなかった。
「ねえ、この指輪を使って初めて読めるなんてどこのパズルよ。あんたもヌケてるのね」
自分にもあったのだ。この戦況を変える事のできる切り札が。

熱していた頭の中が、ゆっくりと、ゆっくりと冷めていく。心拍数、血液循環、筋肉、骨、体のありとあらゆる組織が落ち着きを取り戻す。
エクスプロージョンという名の呪文のルーンが、すらすらと頭の中に入ってくる。
まるで、それを望んでいたかのように、それを待ち侘びていたかのように、理解していく。
ここまできたら、やろう。いや、やらなければならない。
今もどこかでこの戦争の行方を心配している姫様の為に。
こんな自分を守ってくれる、大切な大切な使い魔の為に。
そして、今まで秘められた力に気がつかなかった自分の為に。

さぁ、始めよう。

この日、この時、この場所で、新たに生まれた物語を。

―――ゼロのルイズの物語を!!


上下左右と激しく動くシルフィードの体の上で、ルイズは腰をあげた。
「ととっ」
「なっ……おい、ルイズ?」
両手を広げて、バランスを取りながら、当麻の横を通り過ぎる。
そして当麻の開いた足の間にある小さな空間にちょこっと座り込んだ。
驚く当麻に対して、ルイズは半信半疑のような口調で応えた。
「あのね……もしかしたらわたし、選ばれちゃったかもしれない。多分、だけど」
「はい?」
「いいから、あの巨大戦艦に近づけて。このまま何もしないよりは試した方がマシだし、ほかにあの戦艦をやっつける方法はなさそうだし……。
 ま、やるしかないのよね。わかった。とりあえずやってみるわ。やってみましょう」
ルイズの独り言のような口調に、当麻は唖然とした。しかし、わかった事はある。
ルイズにはこの戦いを終わらせる方法を持っているのだと。
「なんつーかよくわからんけど、とりあえず近づければいいんだな!?」
「そうよ! 早くやる!」
当麻は竜王の顎を封印した。こいつの能力が幻想殺しも受け継いでいる為、いざ呪文を発動した時打ち消してしまったら元も子もない。
といっても……
砲撃。砲撃の嵐であった。
ある一定の距離以上に近づいたら、鉛の弾が襲いかかってくる。

左舷ではラ・ロシェールへと砲撃が行われている。よって左から攻めても無理。
そして当麻の視界には、艦の真下にすら大砲が装備されていた。つまり下からも無理である。
「そう言われても……穴がないぞ!?」
「それをなんとかするのがあんたの仕事!」
んな無茶な!? と泣きたくなるが、なんとかしなきゃ始まらないのだ。
(左、下、右がダメなら……ッ!)
残すは上しかない。当麻はシルフィードに命じて、高度をさらに上げた。
『レキシントン』号の甲板が見える。そしてそこには先程散々苦しめられた大砲が一つもなかった。
おそらく、ここならば安全に事を運べる場所であろう。
ルイズは立ち上がる。主役の登場と言わんばかりのように。
「わたしが合図するまで、ここを回ってて」
ルイズは目を閉じ、最後の祈りを込めた。大きく息を吸い込んでゆっくりと吐き出す。
再び目を開き、始祖の祈祷書にかかれた文字を詠み始める。
ゆっくりだが、確実に間違いのないように紡がれる。
これでなんとかなるか? と当麻が安心したその時、
ゾクリ、と背中を悪寒が駆け抜ける。
バッ、と振り返る。そこには、烈風のように迫り来るワルドの姿があった。


完璧に虚を突かれた。
「くっそ……!?」
回避すべきか? 否、ルイズが呪文に集中しているのだ。邪魔するわけにもいかない。
そもそも向こうは最高速度、逃げ切れるわけがないので却下。
ならば、迎撃するしかない。幸いな事にブレスを吐いてくる様子はなく、ワルドが風の槍を片手に持っているだけである。
あれで、自分達を串刺しにするのであろう。
敵の攻撃を防ぎ、尚且つ相手を一撃で倒す。どこかミスったら全てが水の泡となる。一度っきりのチャンスである。
残り数百メートル。人間の脚力でさえ数十秒足らずでたどり着く距離。
「これで終わりだ!!」
「う……ォぉぉぉおおおおお!!」
これしかなかった。限りなく成功率の低い奥の手。
当麻は立ち上がり、恐怖に怯える事なく、平常心を保ちながら、
文字通り飛んだ。
右手を前に突き出し、ワルドの風の槍を大気へと還元する。そして、そのままワルドの乗る風竜へとダイビングした。
誰もがやろうとは思わない。上空三千メイルで、迫り来る竜に飛び乗るなど不可能に等しい。
それでも、少年はやり遂げた。奇跡でも偶然でもなんであろうと、少年の命は、まだ続いている。
常識はずれともいえる当麻の行動にワルドは驚愕を覚えた。
その驚愕が、当麻に時間を与える。
「とりあえずあんたは『フライ』があるよな?」
ワルドははっとなり、杖を振ろうとしたが、
「空の旅を満喫してくれ」
当麻の拳の方が先に振り抜かれた。


呪文を詠唱する度、言葉を紡ぐ度、リズムがルイズの中を循環する。どこか懐かしく感じてしまうリズムだ。
それが長ければ長くなる程、強くうねっていく。自分の世界に閉じこもり、辺りの雑音は耳に入らない。
体の中で、何かが精製され、それが場所を求めて回転していく感じ。
誰かがそんな事を言っていた。
そうだ。自分の系統を唱える時に感じるであろうこれ。
だとしたら、この感覚がそうなのだろうか?
裏側の自分が表に出たような気分をルイズは覚えた。
体の中のに、波がどんどん大きくなってきて、外求めて暴れだす。
当麻がルーンの力によって従えた風竜から再びシルフィードへと乗り移る。
ルイズが足でトン、とシルフィードを叩いた。それが合図となり、『レキシントン』号目がけて急降下を始める。
目をさらに大きく開いて、タイミングを間違えぬよう細心の注意を払う。
『虚無』と呼ばれる伝説の系統。
あの破壊の本から放たれたような威力をもっているのだろうか?
それは誰も知らないし、自分も知らない。
伝説の彼方にある魔法を現代へと持ち込んだのだから。

長い長い詠唱を終え、呪文が完成した。
その瞬間、全てを理解した。
このまま放てば、全ての人を巻き込む。間違いなくほとんどの人間が死ぬに違いない。
一瞬だけ悩んだ。殺すべきか否か。
しかし、答えは決まっていた。自分の視界一面に広がっている戦艦『レキシントン』号。
この戦いを終わらせる為、杖を振り下ろした。

同時、光の球があらわれた。太陽のような眩しさをもつ球は、膨れ上がる。
そして……、包んだ。
上空にある、全ての艦隊を包み込む。
それだけでは終わらない。さらに膨れ上がって、見るもの全ての視界を覆い尽くした。
誰もが目を焼いてしまうと思い、つむってしまう程光り輝くそれ。
そして……、光が晴れた後、上空の艦隊全てが炎によって包まれていた。

ルイズは力尽きたのか、体を当麻に預けた。当麻も全てが終わったのだと思い、力が抜けた。
下では、トリステイン軍がアルビオン軍に突撃をかましていた。上空からの支援を失ったアルビオン軍は、勢いにのったトリステイン軍には立ち向かえない様子であった。
もう、ルイズ達のやるべき仕事は終わったんだ。
「今日は……疲れたわ」
なにかをやり遂げたような、満足感が伴った感じだった。
「ああ……そうだな」
当麻もまた同じである。
「早く降りましょ」
ルイズの提案に、当麻は無言で返す。シルフィードがゆっくりと高度を下げていった。

シエスタは、弟たちを連れておそるおそる森からでた。トリステイン軍が、アルビオン軍を撃退したという噂が森に避難していた村人の間に伝わったのだ。
確かに草原にはアルビオン兵の姿はない。あったとしても、それは投降してきた兵である。
先程まで続いていた轟音が嘘であるかのように静かだ。
上からばっさばっさと羽を羽ばたかせる音が聞こえてきた。
思わず見上げる。
願っていた少年がそこにはいた。
ヒーローのような少年がそこにはいた。
約束を守ってくれた少年がそこにはいた。
シエスタは嬉しさのあまり涙を零し、駆け寄った。


ようやく太陽が、オレンジ色へと変わっていった。


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