あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロと電流-18


 ルイズ、アニエス、アンリエッタは一つのテーブルを囲んでいた。
 食事ではない。
 三人の真ん中には、小さな銃弾が置かれていた。

「これが、弾?」

 アニエスは自分の使用している銃の弾をそこに並べていた。

「似ても似つかないな」
「ハルケギニアの銃と、ザボーガーの速射破壊銃を一緒にされても困るわ」
「確かにそうだが」

 アニエスは速射破壊銃の銃弾を手にとって、頭上にかざしては見つめる。

「土くれのフーケのゴーレムをあっさりと破壊したと聞いたが、それほどの力が込められているとはな」
「その銃弾そのものにはそこまでの力はないわ。確かに、ハルケギニアの銃弾よりは強いけれど」

 ルイズの言葉を聞きながら、アンリエッタは速射破壊銃の弾をアニエスから受け取る。

「それにしても、ずいぶんと精密に作られているようですね。これと全く同じ形のものが、ザボーガーの中に百以上とあるのでしょう?」
「ですが、数に限りあることに違いはありません」
「出来る限り協力しましょう。ですが、数をこなすことが出来るかどうか」

 土メイジによる錬金で銃弾を作る。それがルイズの出したアイデアだった。
 量産はきかないが、時間さえかければある程度の数は揃えることが出来る。
 ザボーガーの記憶の中でのΣ団や恐竜軍団との戦いの様に、毎回毎回速射破壊銃を使うことはルイズも諦めていた。もっとも、普通のメイジや騎士相手であれば、ブーメランカッターとチェーンパンチでだいたいは相手できる。速射破壊銃が必要になる戦いというのは滅多にないはずだった。
 そもそも、速射破壊銃の破壊力は銃弾の力ではない。
 元の世界で言うならば、ダイモニウムエネルギー(怒りの電流)を付与することによって破壊力を爆発的に上昇させていたのだ。
 ハルキゲニアで言うならば、ルイズの虚無魔力である。
 つまり、きちんと放つことの出来る銃弾さえ作れば、攻撃力は魔力で嵩上げできるのだ。
 これは、ブーメランカッターやチェーンパンチにも同じ事が言える。
 それぞれの切れ味、破壊力、速度、全てが虚無……あるいはダイモニウムエネルギー、怒りの電流によって増幅されるのだ。

「あとは整備の問題ですけれど、致命的な破壊さえなければ、私のガンダールヴのルーンと虚無魔法〈記録〉で得た知識で何とかなると思います」

 言いながらも、ルイズの表情はやや暗い。
 アンリエッタが指摘すると、ルイスはすぐにそれを認めた。

「本当に壊れてしまった場合、私の知識では修理は出来ません。いえ、多分、ハルキゲニアの全ての知識を結集しても無理でしょう」
「その可能性はどれほどなのだ?」

 アニエスが尋ねた。

「修理が難しいとはいえ、それほどに破壊されるには、どれだけの攻撃を受ければいいのだ?」
「それはわかりませんが、少なくとも、私の虚無魔法ならばザボーガーを破壊する可能性があります」

 くわえて、自分の母ならばそれほどの打撃を与えることも可能かも知れない、とルイズは考えていた。
 そのときだった。
 アニエス配下であり女王直属の部隊である銃士隊の一人が姿を見せる。
 その急いで駆けつけた様子に、何があったのかと尋ねるアニエス。
 銃士隊員は一瞬、ルイズとアニエスの姿に目を止めるが、アンリエッタは構わず話せと命じた。

「姫様に至急お目通りを願いたいと、二人連れが」
「こんな時間に?」

 アニエスは苛立ったように尋ねる。

「何者だ」
「それが、一人は騎士の姿を。もう一人は平民の姿ですが、妙なものにまたがり……」
「妙な?」
「ミス・ヴァリエールの使い魔に似ていましたが」
「なんだとっ?」
「烈風よりの危急の用件といえば通されるはずだ、と申しておりますが」

 アンリエッタとルイズは顔を見合わせる。
 烈風の名に二人は心当たりがあった。いや、ありすぎた。
 ルイズの母カリーヌのかつての異名、烈風カリンである。
 烈風カリンの名を知らぬトリステイン貴族はいないと言っていいだろう。その正体は不明とされているが、まさに一騎当千、かつてトリステイン最強の騎士と呼ばれたメイジである。
 そして、烈風カリンがカリーヌであることを知るものは少ない。

「二人を通しなさい。それから、マザリーニをすぐここに」
「はっ」

 アンリエッタの応えにルイズは一瞬言葉を失い、蒼白となって辺りを見回す。

「お、お母さまが……」
「ルイズ、諦めなさい」
「で、でも、姫様」
「一緒にお叱りを受けましょう。幼い頃の様に」
「一緒に?」
「貴方をアルビオンへ送った私の責、無視するわけにはいきませんから」
「それは私が」
「ルイズ、私に恥をかかせるつもりですか?」

 あくまで優雅に、アンリエッタは立ち上がる。

「幼馴染みを死地へと送り込んだうえ、そのことに気付かずにいた、と私に言わせるつもりですか?」
「それは」
「親友を死地へ送る非情と死地と知らずに送る無知。選ぶとすれば私は、前者の罪を選びます」

 国を治める者として許されざる罪は後者。アンリエッタはそう言っていた。
 選ばれるべきは前者であって後者ではない。

「非情を糾弾されるなら、私は甘んじて受け止めましょう」
「では、その策を進言したのは私と言うことで」

 マザリーニが、寝起きとは思えぬきちんとした姿で現れた。

「もっとも、烈風カリンともあろう者がそれだけのためにこの場に姿を見せるとも思えませんが」
「睡眠時間の確保は大切ですよ」
「同じ言葉をお返ししましょう。ですが、お気遣いには感謝します」

 マザリーニは寝ていないのだろう。おそらくは何らかの事態を予測して待機していたか、あるいは自室に籠もって書類を弄っていたか。
 銃士隊に先導されたカリーヌが姿を見せたとき、思わずルイズは声を上げる。

「シエスタ?」

 カリーヌの後ろで怯える様に辺りを見回しながら従っているのは、他でもないシエスタであった。

「ルイズ様?」
「どうして、シエスタが?」

 そのやりとりが目に入らない様に、カリーヌはアンリエッタに挨拶を述べた。
 それは、ラ・ヴァリエール公爵夫人としての挨拶ではなかった。あくまでも元マンティコア隊隊長、烈風カリンとしての挨拶である。

「くだくだしい挨拶は止めましょう。烈風カリンの名を出すと言うことは、真の緊急事態と言うことですね?」
「はい」
「それで、彼女は?」

 シエスタに目をやるアンリエッタ。
 シエスタはルイズの姿に驚き、ついで安堵していたが、トリステイン王女を目の前にしていると気づき、慌てて平伏している。

「名はシエスタ」

 そしてルイズは次のカリーヌの言葉に、心の底から驚くことになる。

「彼女は、アルビオンの虚無の使い魔ヴィンダールヴ。そして異世界のゴーレム、マシンホークの主でもあります」





 アルビオンの革命は終わった。王国は滅び、新たに神聖アルビオン共和国が誕生した。
 そして、初代皇帝クロムウェルは告げる。
 我に他国への侵略の意志なし。我は腐りきった王家へと誅を下したのみである、と。
 だが、その言葉がクロムウェルのものでないと知る者は少ない。いや、クロムウェル自身が既に死人だということすら、知るものは殆どいないのだ。

「糸を引いていたガリアですら、知っている者はそういないだろう」

 確実に知っているのはシェフィールドのみ。とワルドは指を一本立てる。
 シェフィールドがジョゼフに伝えているかどうか、それすら定かではないのだ。

「ガリアの王家は、親子仲が良いという状態にはほど遠いと聞いているからね」

 シェフィールドの正体がジョゼフの娘、ガリアの姫であるイザベラ自身であることを、ワルドは知っている。
 そして、クロムウェルがワルドの傀儡であり、アンドバリの指輪が今やワルドの手にあることをイザベラは知っているのだ。
 勿論、互いに口にしたわけではないし、確たる証拠を与えたわけでも得たわけでもない。それでも、それらの事実は互いにとっての密約の証、あるいは質草となっていた。

「私には、首根っこを掴まれているようにしか見えないのだけれど?」

 事情は、マチルダにもわかっている。
 イザベラがワルドの味方になったのではない。今現在の仮想敵が同じ相手、ガリア王ジョゼフであるというだけだ。
 ジョゼフが倒れれば、イザベラはあっさりとアルビオンの内情を暴露するだろう。おそらくは、アンドバリの指輪の現状も含めて。勿論そこには、ガリアの立場を悪くしないための虚偽も含まれるはずだ。
 しかし、ジョゼフ失脚がそう簡単にできることだとはワルドもマチルダも、そしてイザベラも考えてはいない。
 当面は、同じ敵を持つ者として足を引っ張る真似だけはしない。そういうことだ。

「それで、どうするんだい?」
「マチルダ、君にはフーケの経験を生かして探って欲しいことがある。いや、潜入と言ってもいいかな」
「ガリアかい」
「さすがに、察しが良い」
「何を探るのさ。言っておくが、向こうの使い魔は私の顔を知っているんだよ?」
「それともロマリアがいいかな?」

 探る内容にもよるが、選ぶのならガリアだ。
 ガリアであれば、トリステインやゲルマニアに入り込む手口が殆どそのまま通用する。
 しかしロマリアは駄目だ。あの国は、特別すぎる。普通に入国するのは一番楽だが、間諜として入り込むには通常の手段では難しい。

「今更、何を調べる気だい。時間を稼げば勝てる。そう言ったのは誰だっけ?」
「勝ち負けだけを競うのなら、充分に勝てるとも」

 あの日、監獄から連れ出された夜にフーケはワルドの計画を知らされた。
 そしてその証拠も目にした。少なくとも、ワルドの計画に理屈は通っていたのだ。
 だからこそ、フーケはワルドに従っている。
 逃げ出すだけなら簡単だろう。ティファニアや子供達の新しい居場所ももしかしたら見つかるかも知れない。
 しかしワルドの計画通りならば、この世界に安全な場所はアルビオンしかないのだ。
 アルビオンを浮遊大陸としているのは、地中に存在する多量の風石の力によるものである。
 では、同じ風石がそれぞれの大陸の各所、地下深くに眠っているとすれば。
 ある時期に一斉に風石が活性化し、大陸を持ち上げる力となるとすれば。
 そこに生まれるのは大パニックである。
 突然、地面の各所が持ち上がるのだ。どれだけの町が、人が、建物が被害を受けるのか。
 大陸一つを持ち上げる力に、どうやって対抗できるというのか。
 生き残った者、わずかに残された土地でどうやって生きていくのか。
 だからこそ、ワルドはアルビオンを奪ったのだ。
 その大異変、「大隆起」をやり過ごし、残った世界に覇を唱えるために。
 生き延びた貴族を根絶やしにするために。
 兵力は無尽蔵にある。
 地上で逃げ切れず倒れた者達の死体。アンドバリの指輪でそれらを操れば、労せずして一国の軍が生まれるのだ。
 世界を滅ぼす大異変に続く、不死の軍隊による蹂躙。
 誰が、その二つに同時に立ち向かうことが出来るのか。
 立ち向かうことが出来るとすれば、それこそ伝説の虚無の使い手、そしてその使い魔だろう。
 だからこそ、ワルドはルイズを手中に収めようとした。叶わなければ、その命を奪おうとした。
 ザボーガーの存在が、ワルドにとっての計算外だったのだ。
 それでも、ルイズはただ一人。ザボーガーもただ一台。
 それだけの数で何が出来るというのか。
 トリステインの虚無はルイズ。彼女は、ワルドの敵に回ったと考えて良いだろう。
 ガリアの虚無はジョゼフ。この男は別だ。「大隆起」に気付いた気配はないが、何をするかわからない。下手をすると「気付いていて何もしない」という選択をとりかねない。
 ロマリアとアルビオンの虚無は不明。
 アルビオンに関しては当てがある。それこそが、ワルドがフーケに接近した理由の一つだ。
 ティファニアが虚無に目覚めない限り、ワルドは何をする気もない。ハルケギニアでは一般的な、エルフに対する悪感情はワルドにはない。
 虚無に目覚めていれば利用する。目覚めていなければ目覚めさせずにおく。それだけのことだ。
 風のルビーと始祖のオルゴールはルイズの手元である。ティファニアがそれを見る機会などない。そして、ハーフエルフとして深窓に隠されていた娘だ。アルビオン王家の血をひくとはいえ、二つの秘宝に触れる機会はなかったはずだった。
 少なくとも、フーケはそう断言し、ワルドも納得した。
 ワルドは知らない。既にティファニアが虚無の魔法〈忘却〉を手にしていることを。
 幼い頃に一度だけ、風のルビーと始祖のオルゴールに触れる機会があったことを。
 ただし、フーケは言った。

「あの子も一応魔法が使える。ただし、それはコモンや属性魔法なんかじゃない。先住魔法さ。エルフだけが使えるね」

 それは嘘。ティファニアが使うのは紛れもない虚無魔法だ。
 そしてそれが、フーケがただ一つ残した切り札であった。





 何故か。
 タバサはグラントロワの裏へと歩きながら考えていた。
 何故、賭け事という形を選んだのか。
 ジョゼフは一言言えばいい。

「ザボーガーをルイズから奪い、余の前に持ってこい」

 何故、賭け事という形にしたのか。
 その必要が何処にあるというのだ。例えそれが嘘であったとしても、解毒薬の存在をここで示してどんな意味がある。
 今更、解毒薬の存在に左右される自分ではない。イザベラならともかく、ジョゼフならばわかっているはずだ。
 自分の意志など無視して命令すれば……
 タバサは思わず立ち止まっていた。
 答えが、見えたのだ。
 これは、自分の意志。
 これが賭け事ならば、ザボーガーを提供しないと言う選択が自分には残されている。
 そう、これは賭け事なのだ。負けても構わない。奪われるものはない。
 ただ、解毒薬は手に入らない。
 タバサは小さく呻いた。
 ここにキュルケがいればその耳を疑っていただろう。
 それは限りなく呪詛に近い、歯ぎしりにも似た呻き。
 タバサは悟った。
 自分は今から、ザボーガーをルイズから奪おうとするだろう。
 ガリア王に命令されたから? 否。
 北花壇警護騎士としての役目? 否。
 自分がそう望んだから。
 賭の商品を手に入れるために、自分がルイズを裏切ることを選んだから。
 これは、タバサの意志なのだ。

「お前は、自分の意志で自分の友を裏切るのだ」

 ジョゼフの含み笑いが聞こえた様な気がした。
 タバサの足音が荒くなる。

「おやおや、ご機嫌がお悪い様で」

 タバサは立ち止まり、声の主に目をやった。

「お久しぶりですね、シャルロット様」

 目の前に立つ騎士は、カステルモール。
 だが、その声を発したのは違う。騎士の手には、これ見よがしに握られた一本のナイフ。

「地下水?」
「おおっ、やはりおわかりですか、さすがはシャルロット様」
「どっちの使い?」
「いえ。イザベラ様でもジョゼフ様でもありません」
「誰?」
「かつて、リーヴスラシルと呼ばれた御方」

 タバサは小さく首を傾げた。

「あるいは、別の世界で魔神三ッ首と呼ばれた御方」
「何の用?」
「貴女とお話がしたいと」
「私に話すことはない」
「復讐を為すための力と機会」

 再び歩き始めたタバサの足が止まる。

「三ッ首様が、その二つを貴女に提供したいと」

 タバサの一瞬の逡巡に、地下水は言葉を重ねる。

「条件はただ一つ。貴女が三ッ首様に仕えることです」

 そして地下水は言葉を繋いだ。

「王女シャルロット様」
「何故、私を」
「それは私にもわかりません」

 事実、地下水には知らされていない。
 ただ、三ッ首の呟きだけを、地下水は耳に留めていた。

 ……新たなメザが、必要だな……





 大門は、二枚の手紙を前に首を捻る。
 それは、パリで研修中の新田警部からの手紙だった。
 父の旧友であり、ともにΣ団と戦った頼れる上司でもあり、大門とはまるで父と子の様な信頼関係を築き上げていた相手だ。
 しかし、その新田警部からの手紙の内容は、あまりにも奇妙なものだった。

【君の父、大門博士からの伝言を伝えたい】

 それ自体には何の問題もない。
 父からの伝言を新田警部が預かっていた。そこに不自然さはない。強いて言えば、何故今まで隠していたか、ということだ。
 そして、新田警部からの手紙に同封されていたのは父からの手紙だった。

【豊、この手紙をお前が読んでいるということは、三ッ首との戦いは終わったのだろう】

 大門は思わず声を上げていた。
 何故。
 悪の宮博士に殺されたはずの父が、何故魔神三ッ首を知っているのか。

【そして、ザボーガーもマシンバッハも、お前のそばから消えていることだろう】

 驚きはそれだけではなかった。
 大門は、とにかく残りの手紙を読み切ることにした。

【山手台教会へ行け。そして最初にザボーガーと会った場所の、さらに地下を探すのだ。そこで全てがわかる】

 ザボーガーが隠されていたのが山手台教会の地下だ。そしてそこは、ザボーガーの初代基地でもあった場所だ。
 大門はすぐに教会へと向かった。
 ザボーガーが最初に置かれていた秘密ガレージ。大門は、手紙に書かれているとおりに床をこじ開ける。

「……お?」
「そこに誰かいるのか?」
「ああ、もうそんな時間か」

 こじ開けた穴から繋がる空間にライトが灯る。
 大門は絶句した。
 そこに立つのは紛れもない、ザボーガー。
 そして、その手には見慣れぬ剣。

「よお、初めましてだな、ダイモンユタカ」
「ザボーガーが話している……わけじゃないな」
「ああ。俺っちは、デルフリンガー。あんたに、会いに来た」



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