あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

るいずととら-15


「ご苦労じゃったの……フーケは城の兵士に引き渡した。君たちの功績についても宮廷に報告しておいたから、追って『シュヴァリエ』の爵位が与えられるじゃろう……」

ミス・タバサは既に『シュヴァリエ』の爵位を持っておるので、精霊勲章となろうがの、とオスマンは付け加える。
コクリと頷くタバサに、キュルケも満足そうに微笑む。自分は特に何をしたわけでもなかったが、この小さな友人の功績が評価されるのが、キュルケには嬉しかった。

「あの……とらには……」

複雑な面持ちでルイズが尋ねた。返ってきた答えは予想通りのものであった。

「とら殿は幻獣じゃからの……勲章を与えることにはならんよ」

オスマンがそう言うと、ルイズはなんだか抗議したいように思う。誰よりも働いたのはとらではないか、自分を助けたのも、フーケのゴーレムを打ち破ったのも。

(それに……きっととらはただの幻獣じゃない……夢に出てきたあの男の人……あれがとらのような気がする)

俯くルイズの頭の上で、とらはくっくっと笑う。

「ばっかやろうが、わしがニンゲンの勲章なんぞ欲しがるかよ、るいず?」
「とら……」
「それよりもハラァ減ったな。『テロヤキバッカ』をしえすたから100ほど貰ってきな。さもなきゃ、オメエを喰っちまうぜ?」
「ごっ、ごごご主人さまにむかってぇええ~!!」

真っ赤になったルイズは、「ふん」とそっぽを向くと、どすどすと部屋を出て行ってしまった。

「ちょっと、ルイズ! どこ行くのよ?」

慌ててキュルケも追いかける。ついていこうとしたタバサは、ふと立ち止まって、とらをじっと見つめる。そして、小さく呟いた。



「……ありがとう」
「……ふん、いいからさっさといっちまいな、おら、しるふぃーどがハラ空かしてるぜ。ったく……大妖のこのわしにニンゲンが感謝なんて、調子くるうんだよ……」
「似たもの同士」

「あ?」ととらが聞きなおすと、タバサはさっさと背を向け、扉を出て行く。そして、閉まる間際に

「……あなたとルイズ」

あとには、バタンと扉の閉まる音と、苦い顔をしたとらが残された。

「どこがにてるってんだ、ああ? たばさのヤツ……」

ぶつぶつとこぼすとらに、オールド・オスマンが咳払いをする。

「あー、とら殿。あの『破壊の剣』のことじゃが……」
「あ? ああ。『流走』がどうしたよ」
「ふむ、『流走』というのか……古来より伝わる秘宝でな、伝説的な破壊力は伝わるものの、何人ものメイジが使おうとしてもさっぱり役に立たんかった代物じゃよ……」

それもそうだろう。『流走』は妖怪の力を吸い取ることで刀身を形づくる剣であった。かつて、日本の妖怪を束ねた西の長、神野が使っていた剛剣である。

「『破壊の剣』……いや、『流走』はとら殿にお譲りしよう……これからもヴァリエール嬢を守ってくだされ」
「……まあ、いいやな。どうせわしは――」

「相棒、相棒ー! 頼む、捨てないでくれーっ!! とかさねーでくれーっ!!」

とらが言いかけたのをさえぎり、デルフリンガーが騒ぎ出した。デルフリンガーは自らの存在理由の喪失におびえているのだった。とらがうんざりした顔で、デルフリンガーと『流走』をつかむ。

「うるせーな……黙ってたらオメエも使ってやらァ……じゃあな、ニンゲン」
「……黙れとはおでれーた、相棒はインテリジェンス・ソードをなんだと思ってるのかねぇ……」

デルフが小さく呟く。まったくもって活躍の場がなかったが、次こそは……ひそかに野心を燃やすデルフリンガーであった。


とらはふわりと浮かび、轟と風で窓を押し開いて飛んでいった。

「……しまった、ルーンの話をしておくのを忘れたの……」

オスマンはとらが出て行った部屋で頭をかく。そして、まあよい、とひとりごちた。
あの使い魔と主人が真に伝説なれば、また話をする機会もあるだろう。

「これからは苦しい戦いも起きるじゃろうからの……」

老人はそう呟くと、静かに手元の古書を見る。そこに描かれた、炎を吐く巨大な闇の魔物と、立ち向かう二匹の獣――いや、獣の一匹は人間か。
『獣ノ槍』と書かれたその絵に、オスマンはじっと目を注いだ。獣の片方は、あの金色の使い魔である……。

「伝説の幻獣、か……やれやれ、この老骨には、ちと荷が重い……」


ダンスホールでは華やかに舞踏会が行われていた。とらはと言えば、バルコニーの手すりにもたれながら、『テロヤキバッカ』を平らげつつワインを飲んでいた。

(日本酒のほうがうめえが、まあ、わるくねぇな)

ホールで男をとっかえひっかえ、ダンスを楽しむキュルケ。タバサも大量の料理と格闘し、とにもかくにもパーティを楽しんでいるようだった。
とらは『テロヤキバッカ』をかじりつつ、大きな二つの月を見上げる。
『流走』……その使い手の神野は、沈む日本を救うために、他の妖怪たちと岩になったはずだ。
なぜ、その神野の『流走』が、ここにあるのだろう。やはり自分と同じように召喚された何かが持っていたのか。

とらはそんなことをぼんやり考えながら、『テロヤキバッカ』を食べ、ワインをあおる。シエスタが持ってきた100個の『テロヤキバッカ』が瞬く間になくなった。

(ち、しゃーねえ。しえすたのトコでも行くか)

とらが腰を上げかけたとき――

「何してるの?」


現れたのは、ドレスに身を包んだルイズだった。さっきまで、まとわりついてくる男たちに蹴りを入れるのに手一杯で、とらのところに来るのが遅れたのだ。
ホワイトのパーティドレスに、とらはほう、と息を吐く。まるで、いつかの花嫁衣裳に身を包んだ真由子のようであった。

「こーりゃいい。るいず、似合うじゃねえか」
「そそそ、そう? に、似合うかしら? 綺麗? 変じゃない?」
「ああ、ずいぶんと美味そうに――」

ごん! とルイズがどこから出したのか、錫杖でとらの頭を叩く。

「もう! まったく…………ねえ、踊らない、とら?」
「やだね」
「そう……」

確かに変な申し出であった。人間の姿をしているわけでもないのにダンスに誘ってどうなるだろう?
しかし、一瞬、ルイズの脳裏に、あの右肩のない男の顔――その寂しそうな顔が浮かび、ついルイズは「踊らない?」と訊いてしまったのだった。

「ねえ、とら」
「あん?」
「ありがとう、助けてくれて。フーケのゴーレムから……」

ルイズは、怪訝そうな顔をするとらに向き直る。


「わ、わたし、まだ全然魔法も使えないわ。ドットクラス以下の弱いメイジよ。自分でも分かってるの、『ゼロのルイズ』だって。でも――!」

(たしかに、わたしが召喚した使い魔は……とらは最強の幻獣だった。でも、わたしは、わたしは――)

「わたし、強くなるから! とら、あんたみたいに!! いいえ、きっと、あんたよりも強くなるから!」

そういい終わると、ルイズは俯いてぼっと赤くなった。とらは一体なんと言うだろう? ニンゲンごときにはムリだ、とでも言うだろうか?

――だが、とらはぽんとルイズの頭に手を載せた。そして、くっくっく……と笑う。

「るいず、オメエを見てると……わしから槍を抜いた小僧を思い出す。似てねえようで、やっぱりニンゲンだな……」

(陽の力、か……まぶしいな)

「な、なによ。ニンゲンだからどうしたって言うの!?」

鼻息荒く詰め寄るルイズに、どう答えようかととらが思案しているとき、不意にバルコニーの外にシルフィードが現れた。

「とらさま!! シルフィたくさんおにく食べたの。おなかいっぱい。だからお散歩! よるのお散歩行くのね!
 こらー、そこの桃色、とらさまに近づかない! きゅいきゅいきゅい!!」
「しるふぃーどか。あァ、ちょっくらハラごなしでもするかよ……」

そう言うと、とらはふわりとバルコニーの手すりを越える。シルフードが、嬉しさのあまり、るーるる、るーるると歌い始めた。



「ちょ、ちょっと! とら!!」
「るいず、オメェは踊ってこいよ」
「バカ! わたしが、わたしがどうしてここに来たと――!」

そこでぐっと言葉を詰まらせ、真っ赤に頬を染めるルイズに、何気なくとらが訊ねた。

「一緒に来るか?」
「え――――」
「乗せてってやるよ、おら、背中に乗れ」
「え、ちょ、まって――きゃあ!!」

叫ぶルイズを背中に放り込むと、とらは夜の闇に飛び出した。二人っきりのはずのデートを邪魔されたシルフィードが、きゅいきゅいきゅい! と抗議の鳴き声をあげる。
とらも、ふと不思議に思った。長飛丸と呼ばれ、日本中の妖怪に恐れられていた大妖の自分が、こんな小さなニンゲンを乗せて飛ぶとは――
それに、わめくるいずを乗せて飛ぶのは、どこか楽しいのだ――。

(け、しかたねーだろうがよ……だってわしは――)

そう心のなかで呟き、とらはくっくっくと笑い出す。

「ど、ど、どうし、たのよ、と、ら!! 何、が、おかしいの――――!?」

既に涙で顔がぐしゃぐしゃになったルイズが、背中で叫ぶ。折角の美人が台無しであった。

「くっくっく……はっはははははぁ!! わしは『ゼロの使い魔』だと言ったのよ! おら、もっととばすぞ、つかまってろ、るいず――――!」
「やめ、やめ、やめ、て――きゃあああああああああ!!!!」


ごぉおおおおぉおぉぉぅう――――!!

……金色の風が、二つの月に見下ろされながら、異界の夜の闇を切り裂いて飛んでいく。
たいそう月の美しい、そんな晩のことであった。




第一部完



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