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ゼロの双騎士 第四話

オスマンは、考え込んでいた。
原因は、言うまでもなくあの男。パルパレオスである。
昨夜の時点で既に使い魔の契約は済ませたらしい。
定期的に魔法でパルパレオスの様子を遠隔監視しているのだが、彼の左手にルーンが刻まれていることは確認済みだ。
スケッチは取っておいた。現在、コルベールに命じて調査させている所である。

(まさか…な)

実のところ思い当たるフシはあるのだが、思い違いだろうとは思っていた。
調査させたのはあくまで念のためである。
さて、今日はどうやって仕事をサボろうか…などと考えている所へ飛び込んでくる女性。

「学院長!」

「何じゃ、朝っぱらから血相変えて…美人が台無しじゃぞミス・ロングビル」

緑色の長髪に眼鏡をかけた理知的な印象の美女である。
彼女はオールド・オスマンの秘書であった。

「実は、生徒が決闘騒ぎを起こしていまして…庭に集まっているのです。
 教師の皆さんが、事態の沈静化のために眠りの鐘の使用許可を求めています」

「阿呆、高々子供の喧嘩に秘宝を持ちだせるかっ!
 そもそも貴族同士の決闘はご法度じゃろうが。決闘しようなどと抜かしよるのは誰じゃ?」

「二回生ギーシュ・ド・グラモン、相手はミス・ヴァリエールの使い魔、ミスタ・パルパレオスです」

「ほぅ…」

あの男が決闘…面白い。
かなり場慣れしており、ある程度の分別も持ち合わせた男だとオスマンは評価している。
よもやグラモン家のボンボンを殺したりはするまい。
近頃の若い貴族は誇りばかり高く実力が伴っていない。
たまに実技の授業などを見たりするが、一部を除いてさっぱりなのだ。
素質のある者もたまにいるが、光るものすら感じない者も多いのだ。
ギーシュは多少の素質を感じるが、慢心からか向上心がどうも薄い。

パルパレオスに対する学院関係者の評価は「ちょっと変わった平民」である。
それ以下であることはあっても、それ以上ではなかった。
生徒とはいえ貴族を平民が打ち倒したとあれば、少しはいい薬になるかも知れない。
オスマンはパルパレオスの勝利を疑っていなかった。

「いかがいたしますか?」

秘書の声に意識を呼び戻される。

「放っておけぃ。あの男なら殺しも殺されもせん」

それに…あの男が持つ異質な魔力の正体が分かるかも知れん。
あわよくば、あのルーンの正体も…。
一筋の紫煙を吐きつつ、そんなことを考える。

(さて…じっくり観察させてもらおうかの)


+++++

「我が名はギーシュ・ド・グラモン!二つ名は"青銅"だ!」

「…クロスナイト、サスァ・パルパレオスだ」

面倒臭い口上やら挑発やらを聞き流し、ようやく決闘前の名乗りにまで漕ぎ付けた。
はっきり言って児戯のようなもの。決闘など、戦闘ごっこに過ぎない。
本当に相手を倒そうと思うなら、口上を述べたり名乗ったりなど無駄な行為だ。
隙を突いて不意打ちするのが常道。戦闘とはそういうものだ。

これまで数々の修羅場をくぐってきたパルパレオスである。
「戦いの場で"卑怯"は褒め言葉である」ということは重々理解している。
誇りを持って戦うなら、それは戦い方ではなく動機と戦果によって表現すべきなのだ。
どう戦ったかでなく何のために戦ったか、勝ってどうしたのかが大切なのだ。
戦いの方法とは、戦果を得るための手段に過ぎない。
そこに拘れば隙ができ、敵に足元を掬われてしまうのだ。

とはいえ、ここは魔法学院であって戦場ではない。
殺す気はないし、向こうもそこまでする気はないようだ。
最も、その気があっても殺されることはあり得ないが。
であれば、面倒だが決闘の形式に付き合ってやるくらいはしてもいい。
相手の土俵にあえて踏み込み、そして勝つ。
これが相手の命を刈り取る戦いなら愚策だが、相手の心を折り取る戦いならば有効だ。

「僕はメイジだ。よって魔法を使って戦うが…よもや駄目とは言わないだろうね?」

「無論だ。君に杖と魔法があるように、私にも剣と鎧があるのだからな」

「いい覚悟だ。では…参る!出でよ、ワルキューレ!!」

ギーシュが杖を一振りすると、地面が盛り上がって一体の人の形を成した。
見ればその人形は土ではなく金属のような鈍い煌きを放っていた。
鎧兜を身につけ剣を持った女戦士の姿をしている。
戦乙女か…大層な名だが、さて実力はどんなものか。

「これが僕の魔法…青銅製のゴーレムの精製だ。
 さぁ行けワルキューレ!あの男を倒すのだ!」

命の存在を感じない無機的な動きで、戦乙女が突っ込んでくる。
軽く地を蹴り、振りぬかれた剣を避ける。
その動作を元に、彼は敵の間合いを測った。
次々と浴びせられる連撃を軽々かわしながら、パルパレオスは思考する。

(腕の長さ、武器の長さ、そして先ほどの動きから敵の踏み込みの鋭さ…)

これらを全て足した距離に、姿勢制御などによる誤差をプラスする。
大体、これが直接攻撃の間合いとなる。
おおよその間合いは数度の攻撃で把握できた。
さて、いい加減反撃に移るか。

右手を左腰にやり、愛剣の柄を握る。
何故かは分からないが、妙に左手が熱い。
それに何やら力が湧き上がってくるような感覚がある。
何だこれは。何が何だかよく分からない。
だが、力が湧いてくるなら利用するまでのこと。
そう断じて、戦乙女が突っ込んでくるのに合わせ此方も地を蹴った。

「ハッ!!」

すれ違い様に敵の剣を交わしつつ、その胴を薙いだ。
金属を断ち切る甲高い音が響く。
ガランガランと耳障りな音を立て、戦乙女は地に倒れ伏した。

「…何だ、これで終わりか?」

ただの斬撃、特別なことは何もしていない。
敵の剣をかわし、こちらの剣を当てる。当たり前のことを当たり前にやっただけだ。
レギオンやウォーバスターなどグランベロス帝国軍下級兵士でも、もう少し手応えがあるのだが。
これが鉄壁の防御を誇るヘビーアーマーなどであれば、下手をすれば剣の方が刃こぼれしていたかもしれない。
だが、何の力も通っていないただの青銅である。
愛剣シャルンホルストはかなりの業物だが、それでなくてもあれは脆すぎた。

(もっと歯ごたえがあるかと思ったが…)

クロスナイトである彼が、まだ剣を一本しか抜いていないのだ。
軽い失望を覚えてギーシュを見やる。

「ほう…中々やるじゃないか。では僕も本気を出そう。
 出でよ、ワルキューレ!」

再度杖を振るギーシュ。
また同じことをする気かと思ったが、今度は違った。
戦乙女が今度は六体出現した。
一体一体なら倒すのは造作もないが、数の力は決して侮れない。

(六体も同時に操れるとは…私が相手でなければ、いい勝負ができていただろう。
 しかし、さっきの力は一体…?)

疑問は決して顔には出さない。
ただ不敵な笑みを浮かべ、彼はもう一本の剣に手をかけた。


++++++

「あんの馬鹿…!何やってんのよ!」

時間は少し遡る。
食事中、妙に騒がしかったのだ。
また誰か喧嘩でもしたのだろうか。
その程度にしか考えていなかったのだ。
あの一言を聞くまでは。

「おい、昨日召喚された平民とギーシュが決闘してるらしいぞ!見に行こうぜ」

パルパレオスだ。間違いない。
その生徒をとっ捕まえて話を聞き出し、自分も急いで広場へ向かった。

(貴族相手に決闘ですって?勝てるわけないじゃないバカっ!!)

決闘に至る経緯も聞いた。確かにあれはギーシュが悪い。
自分がその場に居れば、パルパレオスと同じくそのメイドをかばっただろう。
だが、そんなことで決闘吹っかけられて受けるか、普通。
ましてパルパレオスは平民である。貴族に勝てるわけがないのだ。いくら剣を持っていようと。

(止めないと…!!)

そんなことを考えつつ広場へと駆け込んだルイズは、思わず息を飲んだ。
決闘の経過は分からない。
ただ一つ分かるのは、剣を構えてパルパレオスへ突進する戦乙女が一体、ということだけ。
剣の刃に鈍く反射する光が、妙に目についた。

「よ…!」

避けて、と叫ぼうとした。
したのだが、耳をつんざく甲高い音に息を飲む。
後に残るは剣をぶら下げたパルパレオス。そして真っ二つになった戦乙女。

(何よ、今の…?)

パルパレオスが何をしたのか、全く見えなかった。
何が起こったのか、さっぱり分からなかった。
分からなかったが、ただ一つ分かるのは…

(パルパレオスって、こんなに強かったの…?)

声を出すことも忘れ、六体の戦乙女と対峙している使い魔をただ見つめた。


+++++

「大したものだ。まさか六体も同時に操るとはな…」

不敵な笑みを浮かべてそう言うパルパレオス。
しかし、その顔には負けるかもしれないという懸念は欠片も浮かんでいなかった。
その様子が、ギーシュを更にいらつかせる。

「だが、雑魚が増えた所で雑魚は雑魚だ」

その言葉に、とうとうギーシュもブチ切れた。

「その減らず口を二度と叩けなくしてやる!!!行け、ワルキューレェェェッ!!!」

吼えるその声に応えるように、六体のワルキューレは一斉にパルパレオスへ飛び掛っていく。

「…二倍いればこれを挟み、三倍いれば退路を断ち、四倍いればこれを囲む。
 もっと効率的に兵を運用することを考えるべきだな」

包囲からの多面攻撃を仕掛けられない限り、クロスナイトに対しては多勢の意味がないのだ。

「見せてやろう…クロスナイトの必殺剣を」

その名の如く、剣を体の前に交差させる。
高揚感に応えるように、サラマンダーの魔力が流れ込んでくる。
魔力は刃を通して大気へと拡散し、パルパレオスの意思に呼応する。
空気中の分子を揺さぶり、熱を起こす。

「フレイムヒット!!」

横へと振りぬいた剣に煽られるように、虚空に炎が生まれた。
六体の戦乙女の中心に火山の噴火の如く吹き上げる灼熱の業火。
弾けて轟音と破壊を撒き散らすそれは、六つの火球へと収束し、戦乙女たちを直撃した。

「…何だ、これは…?」

燃えるわけがない青銅製の戦乙女が、音を立てて燃えていく。
炎を吹き出しながら消えていく戦乙女を呆然と眺めつつ、ギーシュは言葉を失った。
燃えた後には、灰すら残っていない。

「さて、いい加減終わらせるとするか」

冷たい目でそう言い放つパルパレオス。

ギーシュは、この時初めて知った。
「殺気」という言葉の意味を。
震えが止まらない。

(この男は本当に僕を殺す気でいる…!)

恐怖がプライドを軽々と凌駕し、彼は本能に従った。
彼の杖である薔薇を捨てたのだ。

「ま、参った…!僕の負けだ!」

「…そうか。ではこれで終わりだな」

力を見せ付けた上で恫喝。
戦争でも戦闘でも、有効な手段である。
実戦経験の無い者に殺気を感じ取ることは難しいのだが、力を見せ付けておけば同じことだ。
殺気を消して剣を収めつつ、そんなことを考えた。

無形の圧力が消えてへたり込むギーシュを一瞥する。

「あの二人の少女とシエスタに、しっかり謝っておくように」

震えながら何度も頷くギーシュに満足そうに頷き返し、彼はその場を後にした。


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