あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの双騎士 第二話

「何で平民が私の使い魔なのよっ!!」

むっつり黙って怒りのオーラをぶちまけつつ廊下を歩いていたルイズは、いきなりそんな事を言い出した。

「平民ではないと言ったろう?私は元グランべロス帝国将軍、兼皇帝親衛隊隊長。その後はオレルス解放軍で将軍職を拝命していた。
 支配階級と平民という分け方をするなら、私が前者であることは理解できるはずだが」

「何言ってんのよ。魔法使えないなら平民じゃないの。っていうか何で魔法使えない人間が貴族になれるのよ、ワケ分かんない」

…どうやら、魔法を使えることがこの国における人民支配の前提条件らしい。

確かにオレルスでも、ウィザードやプリースト、ワーロックなどといった魔法使い達は国に所属している場合が多い。
しかし、基本的に魔法の技能は剣の腕や政治の知識などと同じく、個々の能力の一種に過ぎない。
魔法使いが国家に所属しているケースが多いのは、軍における遠距離攻撃用魔法戦力として、あるいは治癒・補助魔法による後方支援部隊として有用だからだ。
そうでなければ、国家の魔法研究機関の研究員である。
基本的に魔法使いはどこでも重宝される。国家お預かりなら俸給も割と高い。
国家に所属していない魔法使いなら魔法医療を活かして医者に、あるいは攻撃魔法を活かして傭兵になるかだ。
いずれにせよ魔法が使えれば食うに困ることはそうそうない。

国政に携わる魔法使いも、特別少ないわけではない。
事実、ゴドランドは魔法技術が非常に発達した国だ。ゴドランド政府の要職にある人物はほとんどが魔法使いだった。
だが、魔法使いだから国政に携わる、などという考えはオレルスには存在しない。
国家の要職に就き、国土の統治に当たる者に必要とされる資質は政治能力であって、魔法ではないはずだ。

…というような事をルイズに話してみたのだが…


気のせいか?ルイズの体から立ち上る怒りのオーラが一層濃くなっている気がする。
不意に顔を上げたルイズが杖を此方に向けて…

轟音。

そう表現するのが馬鹿らしいほどの音が鼓膜を揺さぶった。
思い切り吹っ飛ばされたことを知覚した私の意識は、そこで途絶えた。



+++++

まだ意識が朦朧としている。
やたらと重いまぶたを開いて、ぼやける目でその光景を見た。
こちらを覗き込んでいる少女の顔。

不意に、その少女が顔を近づけてきて…

いきなり左手に走った痛みが、無理矢理意識を覚醒させた。
全く、最悪な寝起きだ。
…などと暢気なことを考えている辺り、結構私も大丈夫そうだ。
痛みは気合と覚悟で耐えられる。戦場で生きてきたのだから、気が狂う程の激痛すら幾度も経験しているのだ。
まぁ、それでも痛いものは痛いのだが、死にさえしなければどんな傷も瞬時に治す、明らかに狂った性能の治癒魔法や回復薬があったのだ。

気づけば、見知らぬ部屋にいる。
私が寝ているのと同じようなベッドが複数。
各ベッドを隠せるような形になっているカーテン。
壁の棚にはいくつもの薬瓶。
恐らく医務室なのだろうが…何故ここに?

顔を顰めてルイズを見やる。
何をした?と言わんばかりに。

「大丈夫よ。使い魔のルーンが刻まれてるだけ。すぐ収まるわ」

本当にすぐ収まった。
左手を見ると、良く分からないマーク。
使い魔のルーン、とか言っていたか。ならば恐らく使い魔の証か何かだろう。害はないはず。
使い魔というものが何をするかはオスマンから聞いていたが、一生を共にする使い魔を害するようなメイジはそうそう居ないはず。
一度ルイズに吹っ飛ばされたような気がしたが、まぁ気のせいなのだろう。
…気のせいなはずだ。
気のせいだと思いたい…。

こうして私は、名実共にルイズの使い魔となった。
一抹どころではない不安と共に。


+++++

「だから、使い魔の仕事は簡単に言えば『感覚の共有』『秘薬の採取』『主の守護』の三つになるわね」

あの後ルイズの私室へ来た私は、ルイズから使い魔の役目について詳しく聞いていた。

「ふむ…戦闘は私の本分だから守護は問題ないな」

皇帝親衛隊隊長だ。護衛任務に関してはプロである。
…何やら疑うような視線を向けられている。不本意だ。

「次に感覚の共有だけど…できてる気配が無いわね」

「感覚の共有とは具体的にどのようなことなのだ?」

「例えば視覚の共有ね。使い魔が見ているものを主も見られる…はずなんだけど」

視覚の共有はできていないらしい。であれば、聴覚や触覚なども同じだろう。
秘薬の採取も難しい。
秘薬とは鉱石・硫黄や植物など、魔法の媒介、あるいは魔法薬の材料にするための特定の自然物のことらしい。
私の知らない植物や鉱石もあるだろうし、どこにあるかも分からない。
険しい地形に分け入って戦うことはあっても、そこで物探しをしたことなどないのだ。
山や森に潜む敵兵の探し方は分かるが、石や草の探し方など知らない。

「はぁ…役に立たないわねぇ」

一方的に呼び出しておいて、酷い言い草だ。
怒る気にもなれず、溜息をついた。

気づいたらもう夜である。
ルイズもいい加減休むと言い出した。
私もどっと疲れが出てきたが…忘れていた。

「私はサラマンダーに餌を与えてくる。先に休むといい」

「あの竜のこと?…私も行くわ」

どうやら竜に興味があるらしい。
『パルパレオス!サラマンダーに会いに行きましょ!』
よくそういって私を連れまわした恋人の顔が脳裏に浮かぶ。

「そうか、では行こうか」

先ほどよりかは幾分明るくなった顔で、サラマンダーの元へ向かった。


+++++

「ねぇ、パルパレオス。この子、なんていうドラゴンなの?」

サラマンダーはルイズにもすぐに慣れた。
ルイズに頭を撫でられて、気持ち良さそうに目を細めて甘えるように鳴いている。

「個体名はサラマンダー。フェニックス種のドラゴン…だったはずなのだが…」

今のサラマンダーは明らかにフェニックス種の形をしていない。
フェニックス種は、白銀の羽毛のような柔らかい鱗を持った羽と尾のある鳥に似た竜である。
だが、このサラマンダーは赤い炎のような鱗。考えるまでもなく別種だ。
しかし、これがサラマンダーであることは間違いない。
幾度も戦場を共にしたサラマンダーの声を聞き間違えることなど無い。
そもそも、ドラゴンの鳴き声は個体差がとても大きいのだ。
いかにもドラゴンという雄雄しい鳴き声の個体もいれば、下手な犬の物真似としか聞こえない珍妙な鳴き声の個体もいた(容姿すらも珍妙だった)。
初めて聞いた時は思わず吹き出してしまった。本当に「ワン!」と鳴くのだ。吹き出さない方がどうかしている。
直後に、気分を害したそのドラゴン(確かムニムニという名前だった)の翼でひっぱたかれたから、アレは今もよく覚えている。

(進化したのだろうか?そのような話は聞いていなかったが…)

神竜の故郷、アルタイルの独占支配を目論んだ神竜アレキサンダーの打倒。
その戦いを終えてグランべロスに帰った彼は、しばらくかつての戦友と連絡を取り合っていた。
帝国の支配が終わった後、各国政府の再編と独立、国交回復のためにパルパレオスは奔走していたのだ。
慣れない交渉事をいくつもこなしたり、各国の国益にも配慮した貿易体制を確立させたり。
国力と軍事力を鑑みて、各国のパワーバランスを調節しながら保有できる軍事力に制限を設ける条約を成立させたりもした。
幾度も国家間会議に出向いていたから、かつての戦友達と顔を合わせる機会は多かった。
カーナ、キャンベル、マハール、ダフィラ、ゴドランド、そしてグランべロス。
オレルス解放軍に所属する戦士たちの出自は様々だった。
戦いが終わった後、彼らは皆祖国へ帰り、ある者は国王に、ある者は祖国の軍や政府で要職に、薬屋を開いた者もいる。とにかく、皆様々な道へ進んだ。
誰と誰が結婚しただの、誰がどの国でどんなことをしただのと、会議の合間にそんな歓談を交わすこともよくあったのだ。
オレルス中の人間から憎まれていた彼だが、それでも解放軍の中核メンバーには親しく接してくれる者もいたのだ。
恋人にしてカーナ女王に即位したヨヨともよく話していた。戦竜隊のドラゴンの話も聞いていたのだが、サラマンダーが進化したとは聞いていない。

(進化したと言っても、一体何に…?)

フェニックスの時点で既に伝説級のドラゴンなのだ。
基本的にドラゴンは進化して弱くなるということは無い。
であれば、今のサラマンダーはフェニックス以上の力を持っているということだ。
実際、パルパレオスはサラマンダーから流れ込む魔力の質・量ともに大きく上がっていることを感じていた。
ドラゴンの魔力を借りて様々な技や能力を行使するのがオレルスの戦士・魔法使いの戦い方であるから、その力の変化は敏感に感じ取れるのだ。

(まさか、マスタードラゴンか…?)

ドラゴンの食は本当に幅広い。草や酒、キノコなどの食用物はもちろん、剣や鎧などという無機物まで平気で食らう。
しかもそれを効率よく己の力へと変換するのだ。
ただ、中には取り込めないエネルギーを帯びた物もある。
それが溜まりすぎると、うにうにと呼ばれる変なドラゴンになる。
更に溜め込むと、終いにはグレてしまうのだ。ブラックドラゴンという凶暴なドラゴンになる。
あるいは、ドラゴンに冷たくしすぎると、ストレスから逃れるために、孤高を好む性質のドラゴンへと変貌したりもする。
育成ミスでこのような姿になったドラゴンを、パルパレオスは見たことがある。
幸い、そのドラゴンは育成方針の転換で元の姿を取り戻したのだが、それはさておき。

このサラマンダーはうにうにでもブラックドラゴンでも孤高のドラゴンでもなかった。
である以上、マスタードラゴン以外には考えられないのだ。
完璧な育成、長きに渡る訓練、膨大な労力。
それらを費やしてなお届かぬほどの高みに位置する、伝説中の伝説。
ドラゴン育成の専門家であるビュウに、死ぬまでに一度は育ててみたいと言わしめた竜である。

「ちょっと、何を考え込んでるのよ?」

苛立つような声に、意識を引き戻された。

「あ、あぁ…すまない。このサラマンダーはマスタードラゴンと呼ばれる種の竜だ」

「マスタードラゴン?さっきフェニックス種って言わなかった?」

疑問を挟むルイズに、オレルスのドラゴンについて少し説明してやった。
最も、ほとんどはビュウの受け売りなのだが。

「へぇ…何度も変身するんだ…アハッ」

感心とも感嘆ともつかぬ声を上げるルイズに、サラマンダーが頭を擦り付けてくる。
どうやら、すっかり懐いたらしい。
生まれた時から人に育てられてきたサラマンダーは、本当に人懐っこいのだ。

「さて、餌なのだが…何かあったかな」

持ってきた荷物袋を漁る。
基本的にドラゴンは何でも食べるので、要らないものがあればどんどん食わせる。
究極の雑食な上に大食漢、しかも常に腹を減らしているのがドラゴンなのだ。
そのくせ、何も食わせなくても痩せ細ったりしないのだから本当におかしい。
魔力を操るドラゴンだから、自然の力でも取り込んでいるのだろうか?
いずれにせよ、エネルギー効率が尋常じゃないのだ。
ドラゴンの身体を調べて技術転用すれば産業革命の二度や三度、軽く起こせるのではないか。
などと、どうでもいいことまで考えてしまった。
ともあれ、何も食わせないのも可哀想である。
使う予定のないロングソードとレザーアーマーがいくつかあったので、一つずつサラマンダーの顔の前へ置いてやった。

「ちょ、ちょっと…!何食わせてんのよ!」

驚くルイズをよそに、平然と武具に食らいつき、噛み砕いて飲み干すサラマンダー。
満足だとばかりに一つげっぷをくれて、地面に丸まった。
喰うだけ喰って、寝るらしい。
自由気ままなサラマンダーの様子に思わず苦笑してしまった。

「さて、戻ろうかルイズ」

悠然と寮へ歩き出したパルパレオスを、ルイズはただ唖然と見守るだけだった。


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