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ゼロの双騎士 第一話

「覚悟しろ…!!!」

殺気に満ちた目を向けられ、男は自嘲の笑みを浮かべた。

数え切れぬほどの敵を殺し、親友の覇道成就に力を尽くした。
親友の頼みに応えてかつての味方を敵とした。
愛する女性のために、親友の遺志を継ぐために、数え切れぬほど殺した。

敵から裏切り者と蔑まれ、味方からもかつての仇と憎まれ、それでも親友と愛する女性のために。
斬り、突き、薙ぎ払い、焼き。
手に馴染んだ愛剣は、人魔問わず大量の血を吸っている。

「グッバイ、ヨヨ…」

役目は果たした。
ヨヨを残していくのは心苦しいが、憎悪を一身に背負った私を殺そうと言うなら甘んじて受けよう。
私が全ての憎しみを背負おう。
私が死ぬことで将兵や民の憎しみが少しでも晴れれば、新生カーナ王国の統治は大分容易になるはずだ。

「死ね、パルパレオス!!!」

突き出された短剣。
避けるのは容易いが、抵抗はしない。
腹部に冷たい異物がめり込んでいく。
不思議と痛みは少なく、ただ意識だけが薄らいでいく。

(私もじきにそちらへ行く。待っていてくれ、サウザー…)

そこで、彼の意識は途絶えた。


+++

同時刻、新生カーナ王国の戦竜隊竜舎にて、歴戦の勇士がその命を燃やし尽くそうとしていた。

「…サラマンダー…どうした!?」

カーナ戦竜隊隊長ビュウが幼生の頃から手塩にかけて育てあげたオレルス最強の戦竜、サラマンダー。
白銀の鱗を持つその竜は雄雄しく力強い姿をしている。容姿だけでなく実力も間違いなくオレルス一、ビュウの自慢の愛竜だった。
それもそのはず、サラマンダーはオレルスにおいて伝説にのみ語られる鳥竜、フェニックスなのだ。
各属性の魔法を自在に操る強大な魔力と、鋼をも軽々砕く爪と牙を併せ持つ。
それでいて風よりも速く飛翔し、人によく慣れ、人語を理解し、いざ戦闘となれば敵の弱点を的確に突く程の知性すら持ち合わせている。
伝説になるのも頷けるほどの力、だがそんなものは飾りに過ぎない。
不死鳥の名を冠したその竜は、まさしく不死であった。
剣で斬られようが魔法で焼かれようが、みるみるうちに回復していく再生能力。
それでなくても竜というものは生命力に溢れ、しかも長寿なのだ。
ほとんど反則級の力を持ったサラマンダーだが、しかし彼の体は今まさに燃え尽きようとしていた。

その体からは黒い炎が噴き出している。
しかも、どんな傷すらも回復するはずの再生力が機能していない。
まるで炎に喰われているかのように、サラマンダーの体はえぐれていき、消失しつつあった。
それでいてサラマンダーに苦しげな様子は一切見られないのだ。普段通り、平然としている。

尋常な事態ではない。

多くのドラゴンを育て上げてきた経験を持つビュウだが、このような現象は初めて見た。
黒い炎。消えていく体。異常事態に際して何の反応も見せない竜。
どう対処していいかもわからず、彼は消え行く竜を呆然と見るしかできなかった。


++++++

---



轟音の後に、煙が舞った。

(また失敗なの…!?)

何回繰り返しただろう。
もう数えるのも馬鹿らしいくらい失敗し、その度に迷惑そうな視線と嘲笑を浴びせられ、
それでも諦められなかった。

自分は貴族。誇り高い貴族である。
どんな困難からも逃げることなく、やり遂げてみせる。
その一心で呪文を唱えた。

煙の奥に、何か大きな影のようなものが見えた気がした。
しかし、よく見えない。

(成功?それともまた失敗なの…!?)

祈るような気持ちで煙の奥を見つめていると、願いに応えるかのようにそよ風が吹き、煙が晴れていく。

(やった…!成功した!)



そこにいたのは二人。

いや、正確には一人と一匹、というべきだ。

一人は人間の男。
明るい金髪に引き締まった体躯、整った顔立ち。
立派な鎧を纏い、不思議なことに剣を二本も帯びている。

一匹は竜。
燃えるような赤い鱗。
というか炎にしか見えない鱗。
見たこともない種だが、本当に立派なドラゴンだ。


しかし…何故二人(?)も…。



+++++

舞い上がった土煙を吸って咳き込んだ所で、うっすらと意識が戻ってきた。

(私は確かに死んだはず…一体これは?)

全く訳が分からない。
煙のせいで周りの状況が分からないが、晴れてもやっぱり分からなかった。

側に佇んで此方を見ている赤竜。反乱軍に参加してからは数頭のドラゴンを見てきたが、そのどれとも違っていた。
襲われるかと、とっさに身が強張ったが、その竜からは敵意が一切感じられない。
目を覚ますのを待っていたかのように、竜が擦り寄ってきて一声鳴いた。

(…この声、まさかサラマンダーか!?)

反乱軍ではビュウと同じ小隊に所属し、ビュウが操るサラマンダーとは何度も共に戦ってきた。
ドラゴン好きなヨヨにせがまれ、ビュウが戦竜の世話をするのを見に行ったり、時には手伝ったりしたこともある。
その合間にビュウのドラゴン育成学講座を聞いたりしていたから、ドラゴンが何度も姿を変えることは知っていた。
同時に、姿が変わっても鳴き声だけは変わらぬことも。

(何故サラマンダーがここに…)

理解不能な事象がまた一つ増えたが、今更である。
サラマンダーなら自分にも慣れているし、危害を加えられることもない。
何が起こっているか分からないが、サラマンダーに乗ればこの場所をすぐに離れることもできる。

周りにはマントを羽織った少年少女が数十人。ほとんどが杖のようなものを持ち、何かの生き物を連れている。見たことも無いものもいた。
割と近い位置に桃色の長い髪をしたマントの少女と、その隣には禿頭にメガネをかけたローブ姿の中年男性。

(何だ、この状況は・・・?)

とりあえず何が起こっても対応できるよう警戒態勢を整え、周りの様子を伺う。
皆が皆自分の方を見ているが、その視線は敵意というより困惑、驚愕、好奇を映し出している。

サラマンダーの方をちらりと見るが、警戒心を表している様子はない。
竜は人よりはるかに危険に聡い。戦場を生きてきた戦竜ならばなおさらである。
隠れて此方を伺っている敵兵がいれば敏感に察知し、警戒心を示す。
戦竜隊の強さは竜の存在に支えられているが、その知覚を利用した索敵能力の高さもその強さの一因なのだ。

(サラマンダーが平然としている…彼らに此方を害する意思はなさそうだな)

パルパレオスはそう判断した。


桃色の髪の少女がこちらへ歩み寄ってくる。

(・・・!?)

敵意はなさそうだが、とっさに身構えた。
強い意志を宿す理知的な目。
容姿こそ違えど、その目がヨヨのそれによく似ている気がするのは気のせいだろうか。

「…何なのよアンタ!!」

気のせいだった。


+++++

「ふむ、つまり君は一度死んだはずで、しかもこことは全く別の世界から来たというのだね?」

前代未聞の珍事の後、三者はとりあえず自己紹介を済ませて事情説明のために学院長室に来ていた。
ちなみに竜(サラマンダーという名らしい)は庭で寝そべっている。
とある学生が召喚した青い風竜と意気投合したらしく、ギャオギャオお喋りしている。
彼、サスァ・パルパレオスの戦友の愛竜だそうで、庭でおとなしく待っているようにとの彼の命令に従っている。
育ての親以外の命令であってもよく聞くところを見るに、賢く危険もなさそうだ。

「あぁ。私は賊の凶刃に倒れてそのまま死んだはず。そして気づいたらあの庭にいた。
 さらに言えば、私はハルケギニアなどという名もトリステイン王国などという名も初めて聞いた。
 君たちもオレルス、グランべロス帝国、カーナ王国という名を知らないだろう?」

「むぅ・・・妙なことになったのぉ」

学院長オールド・オスマンはもう結構な歳になる老人だが、実は伝説級の力を持ったメイジである。
当然、年齢に比例した経験・知識を持っているのだが、そんな彼でも聞いたことすらない地名がこの男の口から飛び出した。
しかも嘘を言っているようには見えず、事実見たこともない武具を身につけ、見たこともない道具を持ち、見たこともない竜を連れている。

さらに話を聞けば、彼はすでに死んだ身だという。
死者を蘇らせるマジックアイテムの話を聞いたことはあるが、この世界の物である。
異世界で死んだ者がこの世界の道具で生き返ったなら、まず死体の状態で呼び出されるはずだ。
分からないことだらけだが、問題はそんな事ではない。

彼は、異世界の国で将軍を務めていた騎士であるという。
グランべロス帝国将軍兼皇帝親衛隊隊長、後にオレルス解放軍将軍。それが彼の肩書きらしい。
どんなことをしている人物かは分からないが、それなりの規模の国家、あるいは組織において高位を占めている人物であることは確か。
そんな人物を無理矢理呼び出して使い魔などにしたら、下手をすれば外交問題である。
まぁ、向こうの世界で死んでいたようだから問題にはならないかも知れないが、それにしてもそんな肩書きを持つ人物が使い魔という身分に甘んじるだろうか。
有難くないことに、疑問にも懸念にも事欠かない話を聞かされてため息をつきたくなる。
かといって可愛い教え子の使い魔を奪うような真似もできない。とりあえず話してみるしかないだろう。

「ともあれ、君にやってもらわねばならぬことがあって、君はここへ召喚されたのだ」

「使い魔というやつか?」

見たこともない生き物、竜にも乗らぬまま当たり前のように空を飛ぶ魔法使い、そしてこの老人から聞かされた話。
信じがたいが、別の世界へ来てしまったようだ。そう納得するしかなかった。
ならば仕方あるまい。すぐ戻ることもできないようだし。

「まぁいいだろう。衣食住は保証してくれるようだしな」

正直、理不尽には慣れている。
宮仕えをしていればそのくらいはいくらでもあった。
政治屋上がりの同僚であったグドルフやらレスタットやらの下衆共(もちろん口に出して罵倒したことはない)と望んでもいないのに組まされた時など、思い出したくもない。
ともあれ、私は一度死んだ身。まして、世界中の憎悪を一身に浴びていたのだ。
オレルスや、そこに生きるヨヨに未練が無いなどとは口が裂けても言えない。
しかし、敵意・嘲笑・怨嗟などを飽きるほど向けられてきた私としては、新天地での生活で久しく感じていなかった解放感を味わえるかもしれないという期待もあったのだ。

どうやら私の主人になるらしい桃色の髪の少女は、私が使い魔になることに不満らしく、今もソファでぶんむくれている。
女性の扱いも子供の扱いも慣れていないのだが…困ったな。
どうしたものかとオールドオスマンを見やった。
何とかしてくれ、と視線で要求してみる。
私の目力が通じたのか、あるいは単に空気を読んだだけか(恐らくは後者だろうが)。

「そういうことじゃ、ミス・ヴァリエール。彼を使い魔にしなさい。良いな?」

溜息混じりの言葉は、怒気混じりの了承によって返された。


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「あのパルパレオスという男…一体何者じゃ…?」

両者が退出した学院長室で、オスマンはパイプ片手に一人呟いた。
あの男は軍人だと名乗っていたが、それは事実だと感じられた。
彼は使い魔召喚の儀式に立ち会ってはいなかったが、魔法でその様子を見てはいたのだ。
毎年、可愛い教え子たちがどんな使い魔を呼び出すか、それを見るのは楽しかったから。
今年は、「筆記はトップ、実技は最下位、平均すれば中の上」というエラく極端な成績のミス・ヴァリエールがいた。
ゼロと(悪い意味で)名高いルイズがどんな使い魔を呼び出すか、あるいは何も呼び出せないのか。
彼女の成功を祈りながら召喚を見ていたのだが…。

まさか「人間と竜」などというあり得ないモノが呼び出されるとは。
まさかあれほど異質なモノだとは。

呼び出された瞬間と、その後の数瞬。
あの男は予想外の事態に遭遇しながら動揺することもなく、すぐさま警戒態勢へ入った。
その所作には敵意こそ無かったが、隙らしい隙もまた見当たらなかった。
学院長室へ来てからもその挙動を直接観察したが、やはり同じ。
同時に、こちらに心を許していないことも感じられた。
まず、一朝一夕に身につく動作ではない。
メイジではないようだが、念のためディテクト・マジックで調べてもみたのだ。
もちろん、それを相手に気取られるような無様な真似はしないが。

…分からないから調べたのに、調べたおかげでもっと分からなくなった。

剣を使う騎士が、魔力を持っていたのだ。彼が持つ武具にではなく、紛れも無く彼自身に。
しかもその魔力の量・質共に、人間レベルではなかった。
サモン・サーヴァントの後にフライで飛び去る生徒達を見て驚いていた様子。
そして学院長室で交わした会話の内容からしても、彼は魔法は使えないらしい。
彼のいた世界にも魔法は存在したが、空を飛ぶ魔法など無かったのだそうだ。
その割には、テレポトレースとかいう瞬間移動魔法は存在するという。
原理は彼も知らないらしいが、恐ろしく高度な魔法であることはオスマンにもすぐ分かった。
少なくとも今のハルケギニアの魔法技術水準では実現できない。
サモン・サーヴァントも現象だけ見れば瞬間移動ではあるが、対象を任意で特定することはできず、移動先は術者のいる場所のみ。
少なくとも移動手段としての魔法にはなり得ない。
これを元に改良しようにもコンセプトが違いすぎる。一から開発した方がむしろ早いだろう。
ともあれ、魔法に限らず、あらゆる技術は初歩の物から実現され、やがて高度な物へ至る。
彼の言う魔法は、その原理・原則に明らかに反している。
発達の仕方が異常なのだ。

「いきなり暴れだしたりはせんじゃろうが…よく観察しておく必要はあるようじゃの」

未知の物への警戒心と好奇心を同時に覚えつつ、一筋の紫煙を吐き出した。



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