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ゼロの黒魔道士-77


「オォオォォオオォオオオォォオォオオオォォオ――」
「絶望を贈ろう……」

空気が、震える。
パイプオルガンの管の中にいるみたいだ。
全部の鍵盤が出鱈目に押されて、唸りを上げている。
地面の底から低い音、頭の高いてっぺんから高い音が、
ぐっちゃぐちゃに入り乱れてお腹の方まで来て……すごく気持ち悪い。

これだけでも、尻ごみしてしまいそうになる。
音だけじゃなくて、空気そのものを覆い尽くすようなクオンの迫力に、
ボクはほんの少しだけ、気圧されてしまっていたんだ。

「こ、断るぅぅう!!全身全力で受け取り拒否っ!
 先手必勝!『錬金』っ!!」

ギーシュがすごいのは、こういうところだと思うんだ。
例えどんなに力の差があったとしても、
例えどんなに不利な状況だったとしても、
いつもどおりの自分で、立ち向かっていく……
ガシャンって音を立てながら走りだすギーシュの鎧姿が、
すごく頼もしく見えるんだ。

「正しいね。彼……僕も全力と行こうか!」

クジャが取りだしたのは……宝石?
多分、サファイアとムーンストーン、かな……
それを取りだして、顔に近づけた途端、
クジャの額のルーンが光り出した。
それに呼応するように、宝石がざわめくように光り出して、光がクジャを包んで……

「クジャッ!?それ……」

血よりも赤く、炎よりも逆巻いて、クジャの姿が変わっていた。
銀色だった髪の毛までが、真っ赤に染まっている。
そして、溢れだす魔力。
テラを壊すだけの力を産み出した、あの魔力が、
全身からほとばしらせていた。

「月の輝きを受けて、より美しく輝くのさっ!!
 刹那の煌めきを魅せてあげるよっ!!」

トランス……心の高ぶりが生み出す、奇跡の力……
それを、宝石の力で無理矢理引き出したってこと?
無茶するなぁ、って少しだけ呆れてしまう。

「愚か、ですね……」

でも、無茶をしてでも、だよね?
無茶でも良い、倒さなくちゃ、いけないんだ。
今の世界を壊してでも、新しい世界を作る?
そんなこと、させるもんか!

「愚かかどうかは……避けてから言ったらどうだいっ!?」
「ワルキューレ部隊突撃っ!喰らえっ!『月・牙・天……』」

クジャと、ギーシュに続く。
誰かの攻撃避けようとしたなら、そこに隙ができる。
どこに当たっても良い。
そう思って走り出した……そう思っていたんだ。

「……トキヨ……」

小さく、クオンの体が震えたような、そんな気がしたんだ。
そうしたら……世界がぐるりと回っていた。
まるで本のページが抜け落ちたように……急に真っ逆さまになっていたんだ。



            ~ゼロの黒魔道士~


一瞬、って言葉よりも一瞬だった。
黒いエネルギーの塊が、矢のような形で浮かんでいる。
それが、何百本も、何万本も、ボク達を取り囲んで……
避ける?全部を?
それは雨粒を全部避けろって言うのと同じぐらい無茶な話だ。

「……この世界は、暗黒に包まれている……」

合図と共に、一声射撃がはじまる。
エネルギーの大雨。
後ろへ一歩。ルイズおねえちゃんの所へ。
避けれないなら、受ける!
一本一本を確実に!

「ルイズおねえちゃん伏せてっ!!」
「きゃあああ!?」
「うはっ!?きゅ、吸収しきれねぇっ!?」

矢じゃない、槍だ。そう感じさせるような重さだった。
もし、ガンダールヴの力が無かったら……
そう思うと、ゾッとする。
帽子のつばにできた穴で、そう思う。
綺麗にまん丸。
無駄を省いたように、真っ直ぐまん丸の穴。
もしこれがボク達の体に当たったら……ゾッとしてしまう。

「なっ!?」
「っ時間操作かっ!?」

おまけに、クオンの姿がさっきの場所に無かったようだ。
クジャが放ったエネルギー弾が、何も無いところで破裂して、ギーシュの剣が空を切っていた。
時間操作……?
『ストップ』や、『スロウ』を、全体にかけたってこと?
なんて、とんでもない……そう思わずにはいられなかった。
一人にかけるのだって、とんでもなく集中しなくちゃいけないのに、全体にかけるなんて……


「御明察。流石、死神と謳われただけはありますね……」
「……ミッシング・ゼロ……」

また、クオンの体が震える。
ボコボコと体の表面にまとわりついた顔の1つから、それが放たれた。
白と、黒がバチバチと混じり合うように弾ける、エネルギーの弾。
それが、ギーシュを追うように弾けていく。
まるで、意志を持つように、執拗に……

「うわわわわっ!?来るな来るな来るなぁっ!?」
「そうれっ!!――っ!?」

このクオン、完全に魔法主体だ……
クジャが『ミッシング・ゼロ』とかいう技を相殺したのを横目で確認しながら、
ボクは走り出していた。
魔法主体の相手なら、近づけばなんとかなる……そう思ったんだ……

「クダケイ……!」
「くぅぅっ!?」
「ぅゎああっ!?」

手を地面に叩きつけられたら、吹き飛んでいた。
そうとしか、表現ができない。
本当に、それだけの、単純な動きだった。
魔力じゃなくて、単純な腕力、それもたった一振りを地面にぶつけただけ。
それだけで、地面が波打つように揺れて……

「――そう言えば、紹介を忘れていましたか」
「くっ……」

ルイズおねえちゃんは……よし、無事だ。
衝撃が大きい範囲は、ごくごく狭いみたいだ。
とはいえ、これでうかつに踏み込めなくなってしまった……

「『名すら憚られし使い魔』、そのチカラを……」

大きく手を広げて誘うような体勢を取るクオン。
でも……隙がまるで無い。
どの間合いに動いたとしても、攻撃の範囲だ。
思った以上に……きつい。

「『記憶』。それが彼のチカラなのです」
「『記憶』?」

記憶が……力?どういうこと……?

「彼は、他者の『記憶』を読み取り、それを具現化することができるんですよ……このように……」
「……ユビキタス・デル・ウィンデ」

聞き覚えのある呪文が、クオンの体の震えと共に唱えられる。
フォンっという軽く不気味な風の音。
……おどろおどろしい気配が、背後に増える。

「これ――ワルドのっ!?」
「くっ!?」

「風ハ遍在スル……」

死んだ人の技が……使えるっていうことか!!

「――そして、ここは記憶が集う場所」
「ありとあらゆる絶望が、ありとあらゆる憎悪が」
「ありとあらゆる怨念が、ありとあらゆる苦痛が」
「想像できますか?」
「あらゆる世界の悲しみが」
「あらゆる宇宙の憎しみが」
「救いを求め、彼に巣食う様が……」

二重に広がる音の輪が、迫ってくる。
大きく、大きく、音が段々と迫ってくる。


「憎悪の輪廻に囚われし騎士」
「支配を目論む野心の皇帝」
「力に執着する狂気の魔導士」
「全てを否定する時の魔女」
「永遠の夢に眠る召喚士……」
「絶望と共に沈んだ彼らの力は、全て彼が引き継ぎました」

「「全ては、苦しみを解き放ち、新たなる再生のために!!」」

まるで、合唱のようだった。
深い、苦しみの中の、合唱。
耳を通じて、脳を揺さぶるような、いくつもの呻くような声。
体ごとひっくり返されそうな、不協和音。
耳を塞いでも、聞こえてくる……

「ふんっ、能書きは聞きあきたよっ!終わりにしてあげようっ!!」

クジャが踊りあがった。
手を大きく上に振りかざして……
あれは……『アルテマ』!?
テラを滅ぼした、とても強い魔法を、今ここで……

「――『全て』彼が、と言ったはずですよ?」

「オワリニシテアゲヨウ――」

背後のクオンが見せた動きは、クジャと全く同じだった。
空をゆっくり仰ぎ見て、手を広げる。

ほぼ同時。
紫色に妖しく光る球体がぶつかり合って……

「うわぁああ!?」

地面にたたきつけられそうな衝撃波。
それが何発も、何発も。
完全に同じエネルギー同士がぶつかって、弾け飛ぶ。

「もちろん、貴方の絶望も……己が運命に抗う儚き死神様?」
「ちいいっ!!」

クジャの力まで……

「では、幕引きを……」
「では、拍手を……」

「ウチュウノホウソクガミダレル……」
「……グランドクロス……」

感じたのは、力が集まっていくということ。
反応が遅れたのは、少しだけ、諦めてしまっていたから……
情けないけど……
本当に、情けないんだけど……
本当に、本当に……どうすればこんなの……どうやって倒せるってって……
そう思っちゃったから……

「くっ!!」
「相棒ぉおおっ!!」

気がついたときには、何もかもが真っ白に……

――
――――
――――――

目を開けたときに、体が動くのが不思議だった。
ボクは、確か、逃げ遅れて……
だけど、目を開けて、少し見上げると……

「……?……く……クジャっ!?」
「無様だね……くく……動けやしない……
 氷漬け、ときたもんだ……」

状態異常にも色々あるけれど、中でも厄介なのが、『フリーズ』だ。
行動不能になる上に、物理攻撃を少しでも当てられると……

「まだ息がありますか……」

クオンの3つの目がクジャを見る。
直線状に、ボクがいる。
ボクとクオンの間に、クジャがいる。
つまり……まさか……
「クジャ、まさか、ボクを……!」

ボクを、かばって……状態異常に……

「勘違いしないで欲しいな……
 残したかっただけさ、『無限の可能性』ってヤツをね……」

もし、白魔法が使えたら。
もし、回復薬を持っていたら。
もしも、もしも。
世界全部が『スロウ』をかけられたようにゆっくりになっていく中、
ボクはずっと『もしも』を唱えてた気がする。
そう思うことで、何か変えられるわけはないのに、そう分かっているはずなのに……


「そうだ、肝心なことを言い忘れてた……ビビ君、そのね……」

「ク……ジャ?」

もしも、もしも……
もしも、クジャを信じることができていたなら……

「ありがとう。君が作れたことが、僕の――」
「ワンマンショーダ……!」

氷が、砕け散る。
クオンが放り投げた岩に押しつぶされるように……
真っ赤な髪の毛が、薔薇の花弁のように、パリーンって砕け散った……
もしも、もしも……
もしも、ボクが……

「クジャっ!?クジャ!?クジャぁあ!?」

もしも、ボクが、もっと強かったら……
こんな、こんな気持ちでいなかったのに……


ATE
~カウントダウン~

クジャが砕け散る数秒前。
鎧の少年に庇われるように倒れるは、桃色の少女。
動けることは、果たして神の救いか、
はたまた苦しみを永らえさせるという、悪魔の罠か。

「な、なんとか無事か……ルイズ、大丈夫か!?」
「え、えぇ……早くビビのところへ……!?ギーシュ、どうしたのその……頭の数字!?」

ギーシュの頭の上には、『7』という数字。
それがふわふわと、まとわりつくように浮かんでいる。
それはまるで、悪魔が人に取り憑くように。

「ん?あぁ……さっきから減っているところを見ると
 ……死んだりするのかな?これがゼロになったときにでも?」
「っ!?」

ギーシュとて、そこまで鈍感では無い。
最初に『10』という数字が浮かんだ時点でその存在には気付いた。
そして、その原因が敵の光であったことを考えれば……容易に想像がつく。

実際、その想像は当たっている。
クオンが放った魔法の名は『グランドクロス』と呼ばれるもの。
何らかの状態異常を周囲に及ぼす、不吉なる業。
そしてギーシュが侵されたのは、『死の宣告』と呼ばれる枷。
ギーシュの想像のまま、徐々に減る数字が『0』を迎えたとき、
対象の命は速やかに奪われるというゆるやかなる死。
どれだけ怯えても、どれだけ抗っても、死神がその首を狙うという、文字通りの『死の宣告』。

「さて……」
「ギーシュ、何をするつもりっ!?」
「まだ、ゼロじゃないからね……」

少年は、青銅の剣を閃かせ、その背をルイズに見せた。
鎧のあちらこちらが、先刻までの猛攻に耐えかね傷ついた、その背中を。
それでもなお、立ち向かうという意志を見せた、その背中を。
全てを覚悟の上向かうという覚悟を見せた、その背中を。
頭上の数字は、『6』に変わっていた。

「無茶よっ!?それでなくてもボロっかすじゃないっ!?」
「――『男なら、誰かの為に強くなれ』」

少年は、足を小刻みに揺らす。
少々、左足が痛むようだが、なんとか動く。
万全では無くとも問題は無い。少なくとも、彼の覚悟の中では。

「え?」
「『歯を食いしばって、思いっきり守り抜け』――っ!!!」

頭上の数字は、『5』。
まだ『0』ではない。
可能性も、また。

「ギーシュっ!?」
「『錬金』っ!!」

ただそれだけ、できれば――『英雄』さ!
それが、彼の意地。彼の覚悟。
ギーシュは、クジャや、ルイズや、ビビほどに、辛い過去を背負っているわけではない。
だが、辛い過去を背負わねば、人は強くなれないものか?
否!
断じて否であるとギーシュは考える。
悲しみを背負わねばならぬ強さなら、そんなものはいらない!
ただひたすら、『カッコよくなりたい』と願ったギーシュである。
誰かを悲しませることは、断じてカッコいいわけがない!

「――苦しまず死ねる身であるというのに、まだ足掻きますか?」
「ライバルとレディのいる前で、足掻かないのはヒーローらしくないだろっ!?」

数字は『4』。
一気につめた間合いに比して、充分すぎる値だ。
魔導アーマーと、自分の持てる全ての力を注ぎこんで、跳躍。
高く、どこまでも高く。

これで終わるとは思っていない。
クオンは今2体。この一撃でこいつを倒せたと楽観的に見たとて、
もう1体が残る。
それでもなお、彼は全力を尽くす。
せめて一太刀、浴びせずに散って何がヒーローか。何が英雄か。


「――英雄?愚かな。英雄など腐った世界が見せる幻想に過ぎぬのに……」
「うおぉおおおおおお!!!」

『3』。
重力の向く方へ、全てをつなぐため剣を突き出し……

「――では、自称・英雄殿はかつて偽りの英雄となった者の技で――」
「……φ=WUγ+RUp+SUγUp
 W=-SUγφ
 AU=(GMeK^-2)^1/3
 n=πr^2……」

『2』。
訳の分らぬ呪文が耳に聞こえる。
だがもう、止まらない。止まるつもりも無い。

「喰らえっ!!『超・級……』」

『1』。
捕えたのは、ギーシュの頭ほどもある緑色のその目。
これで、こいつだけでも倒す、そう願って……

「……ヒザマヅケ……」
「っ!?」

横薙ぎに、まず感じたのは、熱。
ギーシュがクオンを捕えるよりも速く、ギーシュを捕えたのは燃える岩。
飲み込まれる、焼きつくされる、そう感じることができなかったのは、幸せなのだろうか。
あるいは、一太刀を浴びせられなかったことは、不幸なのだろうか。
数字は、『0』。
岩よりも早く、彼の命は、死神に攫われた。
音も無く、静かに……

「ギーシュぅっ!?」

少女の声が聞こえなかったのは、幸せだろうか、不幸だろうか?
愛する人に断らずにここに来てしまったのは、正しかったのだろうか?
自分は……果たして、英雄らしくあれたのだろうか?
それを考える間も無いまま……少年は静かに、その命を散らした……



もしも、もしも……
なんだろう、この気持ち……
ねぇ、ボク、どう考えているの?
どうしたいの?
どう思っているの?
ボク……ボク……

「うぅ……」
「相棒……」
「デルフ……ボク……」

クジャと、もっと話がしたかったの?
ボクは、ボクは……ボクを作ったクジャに、何にも……
ボクは……頭の中がぐっちゃぐちゃに……
何もかもがぐるんぐるん回ってる。
目がチリチリして喉がカラカラだ。
ボクは……ボクは……

「相棒、おれっちが言えんのぁ、単純な理屈よ。おれっちバカだからさ」
「……」
「吐きだしちまえ!言葉んする必要なんざ無ぇっ!全部、吐き出しちまうんだ!」

デルフの言葉が、心に入ってきた。
言葉じゃ表現できない、ボクのぐちゃぐちゃの心の中に、スッと。
鍵が、鍵穴に入ったみたいに……ボクは……ボクは!

「うぅぅうう……うわあああああああああああああああああああ!!!」
「そうよ!心を震わせんだっ!」

弾ける。色んな物が、溢れだす。涙も、汗も、何もかも、全部。
心の高ぶり、『トランス』。
ボクは、今ボク自身が、どういう気持ちでいるのか、うまく説明できない。
でも、ボクの心は……間違いなく、高ぶっていた。
これまでにないくらい。どうしようもないくらい。

「――デルフ、行くよ」
「おうっ!!」

後ろに足をけり出すように、一気に前へ。
ガンダールヴの左手を、これまで以上に輝かせて。

「――ビビっ!!」
「ルイズおねえちゃんっ!」
「……お願いっ!!」
「うんっ!!」

言葉なんて、いらない。
心が通じれば、それでも大丈夫。
ボクは、思いっきり跳んだ。

「――『エクスプロージョン』っ!!」
「はあああああああっ!!!!」

ルイズおねえちゃんの魔法と、ボクの剣が重なる。
一直線上に、2体のクオン。
仕留める。
クジャの……仇だっ!!!

「……120ぱーせんと……」
「とうりゃぁああっ!!」
「……ハドウホウ……」

……絶望って、どういう時に感じるんだろうね?
……何をやっても、ダメだって分かってしまった時?
それとも、もう何もできないって分かった時?
ボクは……ボクの目の前で……ルイズおねえちゃんが……
そして、ボクが……デルフが……

「全ては、『ゼロ』より生まれ『ゼロ』に還る……
 そして、新たに生み出すのさ。すばらしき世界を……!!」

……絶望って、どういう時に感じるんだろうね?
……ボクは……今……それを感じて……
体がバラバラになりながら、それを感じていたんだ……
ボクは……もう、絶望を感じられないことに……絶望、を……


                   ~第七十七幕~ 闘いの結末

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