『何にも無い』があるはずのその場所で、
ボクは、確かに見たんだ。
ボクは、確かに見たんだ。
「……女の子?」
膝を抱えて、暗闇の中、ぽつんと1人ぼっちの女の子。
雪よりも真っ白な髪の毛の女の子。
ボクは、その子を見ていた。
『目を離しちゃいけない、離したらもう二度と会えなくなる!』
……何故だか、そんな気がしたんだ……
雪よりも真っ白な髪の毛の女の子。
ボクは、その子を見ていた。
『目を離しちゃいけない、離したらもう二度と会えなくなる!』
……何故だか、そんな気がしたんだ……
【どうして君は泣いているの?】
誰かがその子に話しかけたんだ。
変なんだけど、ボク自身がしゃべってるような、そんな感じの声。
頭の中を反射して、ボワンって広がるそういう声だった。
誰かがその子に話しかけたんだ。
変なんだけど、ボク自身がしゃべってるような、そんな感じの声。
頭の中を反射して、ボワンって広がるそういう声だった。
≪みんなが、みんなが……いじめるの……≫
女の子が、少しだけ顔を上げる。
その涙が頬をこぼれ落ちる度に、
暗闇が少しだけ震える。
震える度に、さざ波のように声がするんだ。
その涙が頬をこぼれ落ちる度に、
暗闇が少しだけ震える。
震える度に、さざ波のように声がするんだ。
『やーい!親無し~』
『真っ白髪のお化け娘~』
『あいつなんてほっといて遊ぼうぜ!』
『真っ白髪のお化け娘~』
『あいつなんてほっといて遊ぼうぜ!』
ムッとする、悪口。
悲しいほどに一人ぼっちっていう気持ち。
そういうのが、波のように心に直接ぶつかってくる。
悲しいほどに一人ぼっちっていう気持ち。
そういうのが、波のように心に直接ぶつかってくる。
【そっか……】
≪どうしてわたしは白い髪の毛なの?
どうしてわたしは生まれてきたの?
わたしは、この世界でいらない子なの?≫
【そんなことはない!
司祭様がおっしゃってるよ!『君達は貴重な迷える羊なのだ』って!】
≪どうしてわたしは白い髪の毛なの?
どうしてわたしは生まれてきたの?
わたしは、この世界でいらない子なの?≫
【そんなことはない!
司祭様がおっしゃってるよ!『君達は貴重な迷える羊なのだ』って!】
なんでかな。
ボクがしゃべってるわけじゃないのに、ボクがしゃべっているような気分になる。
頭の中に直接響いてくる声だからかな。
暗闇の中では、女の子と、ボクしかいない。
まるで、誰かの目を通して記憶を見ている感じだ。
ボクがしゃべってるわけじゃないのに、ボクがしゃべっているような気分になる。
頭の中に直接響いてくる声だからかな。
暗闇の中では、女の子と、ボクしかいない。
まるで、誰かの目を通して記憶を見ている感じだ。
≪あなたはいつも司祭様のお気に入りだから……わたしなんて……≫
【そんなことないよ!……もし、そうなら、君だって僕にとって……】
【そんなことないよ!……もし、そうなら、君だって僕にとって……】
その声が、言い淀んだ。
言え無かったのは、恥ずかしいから?
なんかこう、すごく、もやもやってする。
もどかしいって言うのかな。そんな感じがしたんだ。
言え無かったのは、恥ずかしいから?
なんかこう、すごく、もやもやってする。
もどかしいって言うのかな。そんな感じがしたんだ。
≪え?≫
【ううん、なんでもない……そうだ!一緒に探検に行かない?】
≪たんけん?≫
【うん!すっごいおっきな夕日が見れる場所、見つけたんだ!
つれてってあげるよ!一緒に行こう、ね?
綺麗な世界を、一緒に見に行こうよ!】
≪いっしょに……本当に?≫
【うん!約束だ!】
≪約束……うん!≫
【ううん、なんでもない……そうだ!一緒に探検に行かない?】
≪たんけん?≫
【うん!すっごいおっきな夕日が見れる場所、見つけたんだ!
つれてってあげるよ!一緒に行こう、ね?
綺麗な世界を、一緒に見に行こうよ!】
≪いっしょに……本当に?≫
【うん!約束だ!】
≪約束……うん!≫
女の子が、手を伸ばす。
この記憶の持ち主が、手を伸ばしたんだろうか。
ボクの手に、ほんのりとした暖かさが伝わってきた。
手を離してしまったら、もう戻ってきそうにない、そんな儚い暖かさが。
この記憶の持ち主が、手を伸ばしたんだろうか。
ボクの手に、ほんのりとした暖かさが伝わってきた。
手を離してしまったら、もう戻ってきそうにない、そんな儚い暖かさが。
ゼロの黒魔道士
~第七十五幕~ The Other Promise ―ある夏の終わりに―
~第七十五幕~ The Other Promise ―ある夏の終わりに―
多分、これは幻。
それでも、ふんわりと、夏の香り。
鼻の頭を、夕立と青草の匂いがツンとなでていった気がしたんだ。
それでも、ふんわりと、夏の香り。
鼻の頭を、夕立と青草の匂いがツンとなでていった気がしたんだ。
【ついてこれてるかい?】
≪うん、へーき!≫
≪うん、へーき!≫
傾きかけのお日様が、じりじりと照りつける。
ボクは、『誰かの』記憶を通してこの景色を見ている。
後ろを何度も何度もふりかえりながら、ずんずんと丘を昇っていく。
ときどき、よろけたり、木の枝にぶつかりしながら、景色が進んでいく。
ボクは、『誰かの』記憶を通してこの景色を見ている。
後ろを何度も何度もふりかえりながら、ずんずんと丘を昇っていく。
ときどき、よろけたり、木の枝にぶつかりしながら、景色が進んでいく。
そうすると、海が近いのかなぁ。
ちょっとずつ、風が気だるくて、しょっぱい感じになってきたんだ。
ちょっとずつ、風が気だるくて、しょっぱい感じになってきたんだ。
なんだか、妙に全てがハッキリとしている。
匂いも、温度も、手触りも、何もかもが現実よりも現実っぽい。
なんか、気持ち悪い。
ボクの体の中に、別の人が入ってきたみたいだ。
匂いも、温度も、手触りも、何もかもが現実よりも現実っぽい。
なんか、気持ち悪い。
ボクの体の中に、別の人が入ってきたみたいだ。
【ほら、あともうちょっと!手を伸ばして……】
≪うん!≫
≪うん!≫
夏草が、胸よりも高くなった。
もうすぐ丘の向こうで日が落ちる。
ボクは、ボクの体を使った誰かの記憶が、女の子に手を伸ばす。
もうすぐ丘の向こうで日が落ちる。
ボクは、ボクの体を使った誰かの記憶が、女の子に手を伸ばす。
伸ばす、その手が、空を切る。
カランと、石が落ちる音。
女の子の背が、急に低くなる。
カランと、石が落ちる音。
女の子の背が、急に低くなる。
≪――きゃぁあああああ!?≫
【え!?】
【え!?】
世界が、『スロウ』を使ったようにゆっくりになる。
ハッキリとした幻が、全部を細かく思い出すかのように、何度も何度も繰り返す。
尖った夏草が足に当たる感触、
しょっぱさを含んだ生温い風、
ゆっくり傾いていくオレンジ色の光、
草むらに隠れた、岩の裂け目、
小さくなっていく、女の子……
まるで、暗闇から手が伸びてきたみたいに、
吸い込まれて、吸い込まれて、吸い込まれて……
ハッキリとした幻が、全部を細かく思い出すかのように、何度も何度も繰り返す。
尖った夏草が足に当たる感触、
しょっぱさを含んだ生温い風、
ゆっくり傾いていくオレンジ色の光、
草むらに隠れた、岩の裂け目、
小さくなっていく、女の子……
まるで、暗闇から手が伸びてきたみたいに、
吸い込まれて、吸い込まれて、吸い込まれて……
≪ああああああああああああぁぁぁぁぁぁ――≫
その光景を、何度も何度も繰り返す。
女の子の白い服が、花びらのようにめくれあがる。
白い髪が、風にあおられて吹雪みたいだ。
悲鳴が連なって耳にこびりつく。
何度も何度も、手を伸ばす。
何度も何度も、彼女は落ちていく。
何度も何度も、何度も何度も……
女の子の白い服が、花びらのようにめくれあがる。
白い髪が、風にあおられて吹雪みたいだ。
悲鳴が連なって耳にこびりつく。
何度も何度も、手を伸ばす。
何度も何度も、彼女は落ちていく。
何度も何度も、何度も何度も……
【なん……で……?どうして……】
何度も何度も、その手が夏の風をつかむだけ。
その度に、小さな声の『どうして?』が、
『誰か』の記憶の『どうして?』が、ボクの頭の中で割れそうに響くんだ。
こんな風に……
その度に、小さな声の『どうして?』が、
『誰か』の記憶の『どうして?』が、ボクの頭の中で割れそうに響くんだ。
こんな風に……
【どうして僕は】
【どうして僕は手を離した?】
【どうして僕はあの子を誘った?】
【どうして僕はあの子を好きになった?】
【どうして僕はあの子と出会ってしまった?】
【どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして】
【どうして僕は手を離した?】
【どうして僕はあの子を誘った?】
【どうして僕はあの子を好きになった?】
【どうして僕はあの子と出会ってしまった?】
【どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして】
何十回、何百回と手を伸ばした果てに、景色が暗闇に戻る。
暗闇に立っていたのは……
立っていたのは……
暗闇に立っていたのは……
立っていたのは……
≪悲しむフリは止めたらどうだ≫
【フリなんかじゃない!悲しいんだ!悲しいんだ……】
フォルサテ……!!
今よりも若い姿のフォルサテだ!
その声と、ボクの中に入ってきた『誰か』の声が重なる。
丁度、鐘の音が反響するみたいに、グワングワンって。
今よりも若い姿のフォルサテだ!
その声と、ボクの中に入ってきた『誰か』の声が重なる。
丁度、鐘の音が反響するみたいに、グワングワンって。
≪お前はあの子の手を離した≫
【僕はあの子の……手を離した】
≪約束をしたのに、守れなかった≫
【約束をしたのに守れなかった……】
≪お前は嘘つき お前は罪人(つみびと)≫
【僕は嘘つき 僕は忌人(いみびと)】
≪それがお前の正体 どうしてお前の咎を救えよう≫
【それが僕の正体 どうして僕の性が救えよう】
声が交互につながっていく。
まるで、輪唱だ。
重なれば重なるほど、音が揃っていく。
まるで……操り人形が、その持ち主に動きを合わせていくみたいに……
まるで、輪唱だ。
重なれば重なるほど、音が揃っていく。
まるで……操り人形が、その持ち主に動きを合わせていくみたいに……
≪そうだ、私の力となれば良い≫
【あなたの力?】
【あなたの力?】
フォルサテの唇が、ニヤリと上がった。
記憶の中の『誰か』かは、黙って見上げるだけ……
記憶の中の『誰か』かは、黙って見上げるだけ……
≪望むか癒しを。贖うか罪を≫
【望みます赦しを。償います君のため】
【望みます赦しを。償います君のため】
記憶の中の『誰か』が、手を伸ばす。
今度は……助けるためじゃなく、助けを求めて……
今度は……助けるためじゃなく、助けを求めて……
≪ならば来なさい私の右腕、ヴィンダールヴよ≫
【参りましょうあなたの右腕、ヴィンダールヴが】
【参りましょうあなたの右腕、ヴィンダールヴが】
フォルサテの手が、『誰か』の手をとった。
それはまるで、あの女の子が落ちて行った暗闇みたいに、底が知れない黒さを感じた。
それはまるで、あの女の子が落ちて行った暗闇みたいに、底が知れない黒さを感じた。
そこから、また暗闇じゃない世界に変わっていく。
夏が過ぎて、秋から冬へ。
春を越えて、何度も何度も、また夏が来て。
モザイクタイルのように色とりどりに散らばった景色が、
『誰か』の記憶の中を動いて行く。
夏が過ぎて、秋から冬へ。
春を越えて、何度も何度も、また夏が来て。
モザイクタイルのように色とりどりに散らばった景色が、
『誰か』の記憶の中を動いて行く。
【僕は嘘つき】
【僕は業を負う者】
【僕は約束を守れなかった】
【僕は罪を重ねた】
【何度も何度も嘘をついた】
【赦されるために赦されないことをした】
【僕は罪人、僕は忌人】
【世界は嘘で汚れている 世界は腐っていく】
【僕は、僕はこの世界でいらない子なの?】
【僕は業を負う者】
【僕は約束を守れなかった】
【僕は罪を重ねた】
【何度も何度も嘘をついた】
【赦されるために赦されないことをした】
【僕は罪人、僕は忌人】
【世界は嘘で汚れている 世界は腐っていく】
【僕は、僕はこの世界でいらない子なの?】
頭の中で声がする。
見える景色は暗闇じゃない。
多くの人が行き交う、光が溢れる世界。
でも、光が強くなるたびに……
影が、女の子が落ちて行った暗闇のように真っ暗な影が、
どんどん強くなっていく感じがした。
見える景色は暗闇じゃない。
多くの人が行き交う、光が溢れる世界。
でも、光が強くなるたびに……
影が、女の子が落ちて行った暗闇のように真っ暗な影が、
どんどん強くなっていく感じがした。
光に向かっているのに、どんどん暗闇が強くなっていく。
すごく、心細い。
先が見えない光の中、ボクは、ボクの中の『誰か』が歩いていく。
うなだれながら、ただたださまよっていたんだ。
すごく、心細い。
先が見えない光の中、ボクは、ボクの中の『誰か』が歩いていく。
うなだれながら、ただたださまよっていたんだ。
すると、突然、ピタリと足が止まる。
顔を、上げる。
ゆっくりと、ゆっくりと。
そこにいたのは……ニッコリと笑う、白い髪の、女の子だった。
顔を、上げる。
ゆっくりと、ゆっくりと。
そこにいたのは……ニッコリと笑う、白い髪の、女の子だった。
【どうして?】
【どうして君はここにいるの?】
【どうして君は僕を忘れているの?】
【どうして君とここで出会ってしまった?】
【どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして】
【どうして君はここにいるの?】
【どうして君は僕を忘れているの?】
【どうして君とここで出会ってしまった?】
【どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして】
いくつもの『どうして?』って声が、ボクの中で響く。
ボクは、じっとその女の子を見る。
落ちて行った子にそっくりだ。
違うのは……服装ぐらい?
教会の人みたいな服装で、首からネックレスを下げている。
多分同じ子じゃないと思うけど……驚くぐらいに、そっくりだった。
ボクは、じっとその女の子を見る。
落ちて行った子にそっくりだ。
違うのは……服装ぐらい?
教会の人みたいな服装で、首からネックレスを下げている。
多分同じ子じゃないと思うけど……驚くぐらいに、そっくりだった。
≪どうかしましたか?≫
【いや、なんでも無いよ……】
【いや、なんでも無いよ……】
明るい声で、その子が聞く。
ボクの中の『誰か』が、何でも無い風に答える。
胸が、苦しい。
ボクの中の『誰か』の心臓が、だんだんだんだん速くなる。
ボクの中の『誰か』が、何でも無い風に答える。
胸が、苦しい。
ボクの中の『誰か』の心臓が、だんだんだんだん速くなる。
≪でも、いいなぁ。私ももっと色んな所に行ってみたい……≫
【……色んな所、かい?】
≪そう。こんな狭いところに閉じ込められたりじゃなくて……
もっと、広くて綺麗な景色、見てみたいなぁ……≫
【……色んな所、かい?】
≪そう。こんな狭いところに閉じ込められたりじゃなくて……
もっと、広くて綺麗な景色、見てみたいなぁ……≫
まるで、夢を見るように、白い髪の女の子が言う。
『誰か』がその子の手をそっととった。
壊れ物でも触るように、そっと。
心臓の音が、手を伝わってその子にまで届きそうだった。
『誰か』がその子の手をそっととった。
壊れ物でも触るように、そっと。
心臓の音が、手を伝わってその子にまで届きそうだった。
【……叶えてあげようか?】
≪本当ですか!?≫
【あぁ……約束、だ!】
≪嬉しい!絶対ですよ!約束ですよ!≫
≪本当ですか!?≫
【あぁ……約束、だ!】
≪嬉しい!絶対ですよ!約束ですよ!≫
約束、約束。
その言葉が、何度も何度も頭に響く。
ボクの中の『誰か』はその声を受けて、考えたみたいだ。
じっくり、何度も、何度も。
その言葉が、何度も何度も頭に響く。
ボクの中の『誰か』はその声を受けて、考えたみたいだ。
じっくり、何度も、何度も。
【彼女は知らない。世界がどれだけ汚れているか】
【彼女は知らない。僕がどれだけ嘘つきか】
【でも、今度こそ、今度こそ僕は。約束を守らなくちゃ】
【綺麗な世界を見せるんだ。嘘つきのいない、綺麗な世界を】
【彼女は知らない。僕がどれだけ嘘つきか】
【でも、今度こそ、今度こそ僕は。約束を守らなくちゃ】
【綺麗な世界を見せるんだ。嘘つきのいない、綺麗な世界を】
景色が、緩やかに変わる。
『誰か』は、今、その背中を見ていた。
フォルサテの、背中を。
周りの景色がほとんど見えない。
その背中しか、見ていない。
『誰か』は、今、その背中を見ていた。
フォルサテの、背中を。
周りの景色がほとんど見えない。
その背中しか、見ていない。
≪――はは、素晴らしいじゃないか!これが『始原のクリスタル』!
これさえあれば、ハルケギニアどころかあらゆる世界を支配――
お前、何をっ!?≫
これさえあれば、ハルケギニアどころかあらゆる世界を支配――
お前、何をっ!?≫
その背中を、突き飛ばす。
不意を突かれたのか、その背中が思ったより転がる。
ボクの中の『誰か』が、ニヤリと笑った気がした。
不意を突かれたのか、その背中が思ったより転がる。
ボクの中の『誰か』が、ニヤリと笑った気がした。
【僕は罪人 僕は忌人 赦しを求める迷える羊】
ボクの中の『誰か』が呪文のように唱える。
讃美歌のように、ゆっくりと。
讃美歌のように、ゆっくりと。
≪貴様、裏切るつもりかっ!?≫
【僕の性を 僕の咎を あなたは知っているでしょう。
嘘をつくことが……僕は得意なんですよ】
【僕の性を 僕の咎を あなたは知っているでしょう。
嘘をつくことが……僕は得意なんですよ】
足下に転がったフォルサテの体を、
『誰か』が蹴り上げる。
真っ黒い感情が、『誰か』を通じてボクも感じる。
気持ち悪い……
なんだか、すっごく気持ち悪くなる。
こんなに『誰か』の感情がボクに入り込むなんて……
『誰か』が蹴り上げる。
真っ黒い感情が、『誰か』を通じてボクも感じる。
気持ち悪い……
なんだか、すっごく気持ち悪くなる。
こんなに『誰か』の感情がボクに入り込むなんて……
≪ぐっ!やはり貴様も忌まわしき虚無の使い魔かっ!!≫
フォルサテが、杖を抜こうと胸元に手を入れる。
でも、その手は抜かれることがなかった。
でも、その手は抜かれることがなかった。
【アズーロ】
≪ぐぁ!?≫
≪ぐぁ!?≫
青い体の竜が、フォルサテの体を持ち上げる。
赤い血が、ポタリと落ちた。
牙が食いこんでいるみたいだ。
赤い血が、ポタリと落ちた。
牙が食いこんでいるみたいだ。
【ありがとう、アズーロ】
≪きさ……ま……≫
≪きさ……ま……≫
バサリと竜の羽が鳴る。
フォルサテの体が、高いところまで持ち上げられる。
黒い感情が溢れて止まらない。
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。
吐きそうだ……
フォルサテの体が、高いところまで持ち上げられる。
黒い感情が溢れて止まらない。
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。
吐きそうだ……
【さようなら、司祭様……】
≪ぐぁああああああ!!≫
≪ぐぁああああああ!!≫
フォルサテの体が、小さくなって落ちていく。
良い気味だ、なんて思う前に、吐き気がおさまりそうになかった。
なんなんだ、この『記憶』は。
なんでこんなに……なんていうんだろう、『濃い』んだろう……
良い気味だ、なんて思う前に、吐き気がおさまりそうになかった。
なんなんだ、この『記憶』は。
なんでこんなに……なんていうんだろう、『濃い』んだろう……
【――全ての罪を償おう】
【――全ての罰を負おう】
【彼女との約束だ 今度こそ約束だ――】
【――全ての罰を負おう】
【彼女との約束だ 今度こそ約束だ――】
締めくくりみたいに、ボクの中の『誰か』がそう言ったところで、目が覚めた。
急に体が重くなったみたいに感じる。
急に体が重くなったみたいに感じる。
「グ……ケホッ……」
胸がムカムカする。
見えているのは、間違いなくボクの手、ボクの足、ボクの体……
それなのに、まだ『誰か』が入り込んでいる気がして、すっごく気持ち悪い。
見えているのは、間違いなくボクの手、ボクの足、ボクの体……
それなのに、まだ『誰か』が入り込んでいる気がして、すっごく気持ち悪い。
「……ぼう、相棒っ!?大丈夫か!?」
「デルフ……」
「なんだよ、あの『記憶』!?妙に現実っぽくて吐き気すんぜよぉ!?」
「デルフ……」
「なんだよ、あの『記憶』!?妙に現実っぽくて吐き気すんぜよぉ!?」
デルフも、見たんだ……あの記憶を……
なんだろう、この嫌な感じ……
夏の匂いと一緒に、嫌な予感が、まだ鼻の奥にこびりついている気がした……
夏の匂いと一緒に、嫌な予感が、まだ鼻の奥にこびりついている気がした……