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ゼロの黒魔道士-73


今度こそ、捕えた。
アルビオンでは、左腕だけだった。
タルブ上空では、逃がしてしまった。
でも、今度こそ……

「うしっ!俺様大復活ぅっ!!」

今度こそ、デルフはワルドの胸元に突き刺さっている。
今度こそ、ワルドをやっつけた。
今度こそ、そのはずなのに……

「デルフッ!油断しないで!まだ終わって無いっ!!」

『終わっていない』。
まるで、ドロドロの沼地に足を取られたような、
飲み込まれていくって感触が、剣の先からボクの体に伝わってくる。
なんだろう、これ。
なんなんだ。嫌だ、怖い。
真っ暗闇を独りで歩くような怖さ。
飲まれる、飲み込まれていく。

「ビビっ!?」

ルイズおねえちゃんの声。
大丈夫、ボクは独りなんかじゃない。
でも、それなのに……いや、『だからこそ』?
真っ暗なドロドロの気配が、デルフの先、
ワルドの胸元からあふれ出すのを感じたんだ。

「はははは……ハハハハハハハハハハ!!!痛い、痛いよ、痛いじゃないかぁ!?」

黒が、ワルドの中から噴き出した。
瞬時に暗闇が、周囲を覆う。
ワルドの記憶の世界が、暗幕がかけられたように塗りつぶされる。
怖いぐらいの黒。
一色じゃなくて、いくつもの黒が蠢いて、
それが蟲のようにも、煙のようにも見える。

「くっ……?」

≪ねぇ、母さん、痛いよ?痛いよ、泣きそうだよ、僕、泣いちゃうよ?≫

「な、相棒っ!?気ぃつけろ!!」
「ワルドっ!?」

デルフの先から、体が消えた。
ボクは今、何も無いところを刺している。
逃げた?あの傷で?
この暗闇はワルドの物?

≪母さん?≫
  ≪カアサン≫
    ≪かあさん≫
≪カアサン!≫ ≪――かあさん≫

≪母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん
 母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん
 母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん
 母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん
 母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん
 母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん
 母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん≫

壊れたバグパイプのような音の洪水だった。
同じワルドの声なのに、音の高さがどれも違っていて、
それが重なり合って、気持ちが悪くなるほどお腹に響いてくる。
音の高さの違い……うん、なんて言うんだろう……
まるで、『男の子』と『男の人』の声の違いみたいな……

≪カアサンダ!≫
  ≪かあさんだ!≫
「母さん?母さんだ……母さんだ母さんだ母さんだ!」

ワルドの声が、段々嬉しそうなものに変わっていく。
黒だけの世界に、別の色が加わったからかなぁ?

「光……?」

それは、ほんの僅かな一筋の光。
それが……ワルドの全てだったんだ。


ゼロの黒魔道士
~第七十三幕~ Game has Overed

それは、最初、文字の形だったんだ。
暗闇に浮かぶ、震えた字。

【ジャン・ジャック、聖地を目指すのよ】


ハルケギニアの文字は、ボクがいた世界のものとすごくは違わない。
なんとか、読める……っていうより、読もうとした途端、それが声になって聞こえてきたんだ。

≪ジャン・ジャック、聖地を目指すのよ!≫

震えるような、甲高い声。女の人?
文字が、だんだんと大きく、形を変えていく。
光が、何もかもを壊しかねない光が、自分を振り回しながら、暗闇を引き裂いていく。


≪ジャン・ジャック、ジャン・ジャック
 ジャックジャックジャンジャックジャクジャクジャンジャクジャンジャック
 聖地を聖地を聖地をセイチヲせいちを聖地を目指すめざめざメざ目指すのよよよよよヨよよ≫

「うぁっ!?」

弦の切れたピアノみたいに、調子はずれのまんま同じメロディーを繰り返す。
ボクは耳を塞いだ。でも、聞こえてくる。聞かされてしまう。
キラキラの光なのに、ドロドロの影が後ろからついてくるような、そんな不協和音。
やめて、お願いだから、やめて欲しい。

止まらない音の洪水が、だんだんと大きくなり、唐突に止まった。
光は、いつのまにかしっかりとした形になっていた。女の人の形に。
ルイズおねえちゃんに、似ている……?
ううん、もっとやつれて……なんか、病気でもしたみたいに……
その女の人が、横たわっている。
糸の切れた操り人形が、床に捨てられたように、横たわっている。
本当に、人?ボクは、ちょっと信じられそうになかった。
だって……この人の首、変な方向に曲がって……

≪母さん、母さん、母さん?ねぇ、なんで?なんでなんだい?≫

ワルドの声が、暗闇の上の方から聞こえてくる。
ワルドのお母さんって……この人?

「母さん、母さん、母さん母さん母さん……」

暗闇の一部が剥げ落ちて、記憶の世界が少しだけはっきり見える。
ここは家の中。大きな階段がある家。
階段の下には、女の人。今はもう立つこともない、横たわった女の人。
階段の上には、男の子。……ワルド?少しだけ、面影がある。ルイズおねえちゃんより、ずっと若い。

男の子は、震えてそこに立っていた。
立ち尽くしていた。
……何故だか、見ているだけのボクにも、その感覚やが伝わってくる。
その手に残る感触は、ほんの僅かなぬくもりと、
それが階段下まで転げていった虚しさが残っていた。

……ワルドは、自分のお母さんを、殺してしまった……?


≪ジャン・ジャック、聖地を目指すのよ≫

薪が燃えていくように、ワルドのお母さんの体が煙となって消えていく。
消えて……いったのかなぁ?
消えていくに従って、その煙がどんどんと大きくなって、また世界を覆っていく。
消えたからこそ、より一層、その黒さが残っていく。

「――力をつければ戻ってくるの?聖地に行けるだけの力を」

暗闇の中に取り残された、少年のワルドが呟いた。
真っ黒な煙に燻されながら、男の子は少しずつ、大きくなっていく。
まるで豆の成長を短時間で見ているみたいだ。
どんどん眼が鋭く、どんどんと煙に蝕まれていく。

「なんでなんで、ナンデ僕ハ生キテイルノ?
 母さんを殺しておいて、ナンデ僕ハ生キテイルノ?」

やがて男の子の声がより低いものに変わっていく。
今のワルド、ルイズおねえちゃんを裏切ったワルドの姿に、
そして……まるで道化師みたいな今の姿に変わっていって……

「滅ぶと分かっていて何故作る?
 死ぬと分かっていてなぜ生きようとする?」

本物のワルドが、そこに跪いていた。
丁度お祈りをするような格好で、石畳の上にいた。
もう周囲は暗闇に覆われていない。
元の『記憶の場所』だ。ルイズおねえちゃんの姿も見える。
ワルドの記憶の外、周りはみんな幻じゃなくて本物の世界。

「――命? 夢? 希望?
 どこから来て どこへ行く?」

ワルドの声は……もう消えそうなほど小さくなっていた。
弱々しい風の唸り声って感じだ。
ワルドの体から、煙が立ち上っていた。
真っ黒な、煙。
ワルドの記憶を覆っていた、あの煙が。

「そんなもので心満たされる事はない!」

ワルドが、胸をかきむしる。
その仕草があまりにも弱々しくて……
さっきまで敵だったはずなのに……
ほんのちょっとだけボクも悲しくなってしまったんだ。

「――母さん、母さん、母さん!全部壊せば、母さんは戻ってくるの?」

ワルドが、空を見上げる。
記憶の場所の、灰色の空。
苦しそうに喘ぐワルドが見る、最後の景色……

「破壊だ、破壊だ、破壊の力だ!ははっ!全部破壊だぁああああ――」

ワルドの体が、全部消えていく。
煙となって、風に流されていく。
後には、何も残っていなかった。体も、何も。

……これが、ワルドの望んだ結末、だったのかなぁ?
そう考えると……なんか、苦しくなりそうだった。
力を求めて、全部壊して、最後には消えてしまうのに……
それがワルドの望んだことなら……なんて悲しいんだろう……


「……とんだマザコンもあったもんだぁな」

「母親がいなくなった心の隙間を、埋めようとしていたのね……」

「……でも、そんなの、間違ってるよね?」

間違っている。ボクはそう思ったんだ。
破壊なんかで、心が埋まるわけなんてない。
そうだよ……ね?


「あぁ……相棒よ?どーも、ワルドの野郎から嫌な感じがしたの、分かったかい?」
「……うん、なんか、狂ったような、ドロドロしたような……」

それは、思った。
ワルドの記憶を覆っていた黒い煙。
あれは、ワルドの悲しさや、怒り、そんなものが詰まっただけのものじゃない。
なんかもっとこう……狂ったようなドロドロの沼、飲み込まれそうな気配がしていたんだ。

「あれ、ちぃっと覚えあるんだわ。つか、思い出したってぇのかなぁ……」
「まさか……」

嫌な、予感がした。

「そ。お察しのとおりさ。フォルサテの糞野郎の気配だわ」

やっぱり、フォルサテ。
ハルケギニアを支配したいためだけに、自分の欲のためだけにみんなを苦しめる人。
つまり……

「じゃぁ、ワルドは……」
「大方、『望み通り』、力を与えてやったんだろーぜ?壊れること承知でよぉ……」
「……」

まるで、道具みたいに、人の悲しみや辛い心を利用したってこと?
……壊れるまで?
……そんなのって……



「ビビくぅ~ん!ルイズくぅ~ん!無事かーい!?」
「おや、追いついてしまったか。苦戦していたのかな?」

聞こえてきたのは、タタタって駆け寄る足音と、
救われそうな明るい声だったんだ。

「ギーシュ!?あんたまで来たの!?」
「お、『現』ミョズの兄ちゃんも一緒か」
「おや、デルフ君……その様子だと、思い出しましたか?」
「ヘッ、お気づかいいらねぇよ。記憶は記憶、今は今だ!
 全部背負いこむってだけの腹ぁ括ったさ!背も腹も無ぇけどよ!」

……デルフは、自分の記憶、哀しいほどの記憶を受け止めて、闘うことを選んだ。
……ワルドは、自分の記憶、悲しいまでの記憶を利用されて、戦わさせられた。

全部、フォルサテの……

「ふむ、するとビビ君は?」
「……クジャ」
「ん?」

迷っている、場合じゃない。
全ての元を倒さなきゃ、終わりっこない。

「……ルイズおねえちゃん、ギーシュ、デルフも……」

ボクは帽子をぎゅっとかぶりなおした。
まだ、『終わっていない』んだ。

「行こう」



ピコン
ATE ~タバサと???~

「っ!!」
「お姉さま、大丈夫なのねっ!?」

相手を屠る風魔法と引き換えの銀竜の爪。
空を自在に操る者同士の戦、タバサとシルフィードは質でこそ上回っていたものの、
量ではるかに彼女達を上回る相手に少しばかり苦戦していた。

「平気」
「くぅ~!いつまで戦えばいいのねっ!?」

終わりが見えないことは、極度の精神的苦痛となる。
その苛立ちが、青い風韻竜を苦しめていた。

だが、それとて無限ではない。
終わりはいつかくるものだ。

「『タバサ嬢っ!!こちらブラック・ジャック号!たった今、巨人の沈黙化を完遂しましたっ!!』」

朗報が、艦外放送となって伝わる。
ブラック・ジャック号が、巨人バブ・イルの能力を、その艦底に備え付けられた装置でもって封じたのだ。
砂漠の中の塔のような巨体は、もう動かない。
とりあえず、一安心といったところか。
ハルケギニアを襲う直近の脅威は去ったこととなる。

「きゅい、やったぁ~!!これでもう闘わなくて済むのねぇ~!!」
「了解。安全区域まで護衛する」

次なる行動を、竜上から手信号で伝える。
任務さえ果たせば、長居は無用。
銀竜の源を断つのは、彼女の友人たちに任せるべき、と判断する。

「『ご協力、感謝いたします!青い戦士よ!』」

ゆるやかに旋回するブラック・ジャック号。
その艦橋の窓から、何人もの敬礼する男達の姿が見える。
それに返礼しながら、タバサは満足した気持ちになっていた。

友のために、為すべきことを為す。
今までの命令されるだけの任務と違い、なんと清々しいことか。
あとは、ブラック・ジャック号を安全区域まで護衛して……

「きゅいっ!?お姉さま、あれっ!?」

また、銀竜か?
自分の使い魔の竜にうながされ、視線を前方上へ。

「『あ、あれは……』」

それは、船。
ブラック・ジャック号よりもはるかに大きな船であった。
戦艦。いや、それにしては形が妙に長い。

「……!」

タバサは、その旗印を見て、身構えた。
先ほどまでの満足感が消し飛びそうなほど、
冷たい血が彼女の体の中を流れていった。

~~~~
にんぎょうげきは、ここからだ!
にんぎょうげきは、ここからだ!
ぼっちゃん、じょうちゃん おまちなさい!
にんぎょうげきは、ここからだ!

とつじょあらわる だいせんかん!
いったいタバサはなにをみた?

さあさにんぎょうげきはおおづめだ!
にんぎょうげきは、おわらない!
なんて うれしいことだろう!
にんぎょうげきは、おわらない……


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