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使い魔はじめました-18


使い魔はじめました―第18話―

「おはよう、サララ。よく眠れた? 今日は気持ちのいい天気だよ!」
チョコに声をかけられて、サララは瞼をこすりながら起き上がった。
あまりに質のいい布団なので起き上がりたくなかったが、
ルイズを起こさないわけにはいかない。
そう思って隣のベッドに寝ているルイズに声をかけた。
「ん……今日は、もうちょっと寝てたいの。今日一日自由でいいわよ」
ぼーっとした様子で、布団を被ったままルイズは答えた。
昨日の夜何かあったのだろうか、とサララは考えたが、
あまり追求して欲しくなさそうなので、はい、と答えておいた。
着替えて階下に下りる。酒場と食堂を兼ねたそこでワルド子爵を探すが見つからない。
「あれ? 子爵様いないね。出かけたのかな。どうするサララ?」
チョコが問うた瞬間。くぅ、と小さくサララの腹の虫が鳴いた。
「……まずはゴハンだね」
顔を少し赤く染めて、照れ隠しにチョコのわき腹を軽くつま先で突っつく。
大理石から掘り出された椅子に座ると、店員を呼び、メニューを見せてもらう。
港町というから魚料理があるのかと思ったが、肉料理が大半だ。
まあ、山の中だから肉が多いんだろうなあと思う。
鶏肉のソテーを頼むと宿の中を見ながら料理を待つ。
テーブルも椅子も、大抵のものは一枚岩から掘り出された大理石で出来ているようだ。
なるほど。これなら頑丈で、壊れることも少ない。
コストは少しかかっているのかもしれないが、貴族相手の宿だというなら
高級感をかもし出すことができてむしろ好都合だろう。
数名の貴族がカウンターで飲んでいる。ワインは高級そうなものばかりだ。
どうもトリステインでは酒の類はワインが好まれているらしい。
となると、自らの売り物である小人族秘伝の酒はちょっと好まれないかもしれない。
片や魔力を回復する代わりに凄まじい二日酔いを引き起こし、
げっそりしてしまうような強い酒。片や甘くて楽に飲める果実酒である。
そんなことを考えている間に、厨房から美味しそうな鳥の焼ける匂いがしてきた。
「ねー、ボクにもちょうだいね、鶏肉」
テーブルの下でチョコが足に擦り寄ってくる。
「お待たせしましたー」
若い女店員が運んできたよく焼けた鶏肉を前に舌なめずりしたいのをこらえた。
いただきます、と言おうとした所で店員がじっと見ているのに気づいた。
首を傾げると、彼女も笑顔のまま首を傾げる。
ああ、と考えついて、財布を取り出すと金貨を一枚差し出した。
「ありがとうございまーす」
スキップしそうな勢いで彼女は厨房の奥へ消えた。

腹を満たした所で、サララはチョコを連れてラ・ロシェールの町へ出た。
その背には身の丈程もある大きな袋をかついでいる。
「うわぁ……見て、サララ。凄く大きな樹があるよ!」
チョコと一緒になって、丘の上にある巨大な樹を見て目を丸くした。
「はは、お嬢さん『世界樹』を見るのは初めてかい?」
露店にいた壮年の商人が声をかけてきた。
セカイジュ? と鸚鵡返しに問いかける。
「そうさ。別名をイグドラシル。枝を見てごらん。それぞれの先に
 船がぶら下がっているだろう?」
指で示された先を見て、サララとチョコはあっと声を上げる。
「アルビオン行きの船さ。あれは巨大な桟橋なんだよ」
人のよさそうな笑顔で商人は説明してくれた。
「へぇ……空飛ぶ船かぁ、凄いねぇ……」
チョコが驚いた様子でじっと見つめていた。
「で、どうだい? うちの店の銘菓世界樹クッキー。今なら安くしておくけど?」
後ろから聞こえてきた言葉に、サララは思わずこけそうになった。
流通の中心地だけあって、商人はしたたかだ。
先程食事をしたばかりとはいえ、甘い香りは食欲を誘う。
一袋ください、と言ったサララは、ついでにこの辺りで人の集いそうな場所を尋ねた。
「人の集まりそうな場所? そうだなあ……まあ、基本は桟橋だが、
 今はアルビオンで内戦をやってるだろ? そのせいか物好きくらいしかいやしねえ。
 後はそうだなあ……『金の酒樽亭』って居酒屋がある。
 この間まで王党派についてた傭兵どもが、今はごろごろしてるぜ。
 まあ、お嬢さんみたいな人が行く場所じゃねえよ」
型に種を流し込み、手際よく焼き菓子を作りながら店主は答える。
「まあ、腕っぷしに自信があるっていうんなら別だがな……」
苦笑する店主に、満面の笑みを返す。
「ほほう、随分と自信ありげな顔だな。ほら、じゃあ一個おまけで入れておくよ。
 お嬢さん方に幸運が訪れますように」
紙袋にそれをつめると、ほい、と店主はそれを差し出した。
情報量も含めて少し多目の代金を払うと、一人と一匹は金の酒樽亭へ向け歩き出した。
おまけの一個が少し生焼けだったことは、この際気にしない。

下をくぐれそうな扉を、背伸びして必死に開くとサララは金の酒樽亭に入った。
中で酒を飲んでいるのは、一目で分かる傭兵やならず者達ばかりだ。
「おいおい、ここはあんたの来るとこじゃないぜ?」
「ガキは母ちゃんの胸でおねんねしてな!」
下品な笑いが飛び交うのも気にせず、サララはカウンターに座る。
とりあえずワインを頼むと、金貨を店主に渡した。
「……なんかわけありかい?」
店主は金貨を受け取りつつ、訝しげな表情を見せる。
サララは、自分は遠くから来た商売人で、この辺りの事情にはあまり詳しくない。
そんな折、アルビオンやゲルマニアのきな臭い噂を聞いた。
それが本当かどうか、ちょっと確かめたいのだ、と言った。
「あんた、ゲルマニアには行かない方がいいぜ!
 何しろ、あの国は今カエルの呪いにかかってるらしいからな!」
げらげらと笑いながらすっかり出来上がった傭兵が一人叫んだ。
「アルビオンだってひでえ! レコン・キスタには悪魔が参謀してついてるらしいぜ!」
酔っ払いというのは得てして話すのが好きなものである。
『カエルの呪い』と悪魔について詳しく聞こうと思った。
しかし、その声を遮るように扉の開く音がした。
「おー? いつからここは託児所になったんだい」
げらげらと笑い声を上げて、一人の男が入ってきた。
「そこをどきなガキんちょ。てめえの来るような店じゃねえよ」
「うわー、なんかたちのわるそうなのがきたよ」
チョコがうんざりしたような顔をする。
「おらどけよ!」
男は脅しをかけるように、サララの荷物を手に取り床に放る。
サララは慌てて床に降り、袋の中身を確認した。
「喧嘩なら表でやるか椅子を使ってくれよ?」
いざこざに慣れた様子で、店主はため息をついた。
「おわっ、何だ何だ。喧嘩かい相棒?」
荷物が床に落とされた拍子に、デルフリンガーが転がり出る。
「ほお、インテリジェンスソードとは珍しいもの持ってるじゃねえか」
デルフリンガーに伸ばした男の手を、サララが弾く。
キツく結ばれた口元と怒りをこめた眼差しで男を見上げる。
「あ? 何か文句でもあんのかよ?」
サララはデルフリンガーを片手に担ぎ、もう片手で袋を持ちながら告げる。
商売道具をないがしろにされて、怒らない商人がいると思うのか、と。
「ぎゃははは、てめえ、この『熱風』のアーカイブ様に勝てるつもりでいんのか!」
その問いにこくりと首を縦に振る。顔には怒りを露にしたままだ。
「何だと! ふざけやがって! 表出ろ!」

汚い路地裏の一角。杖を構えた男とデルフリンガーを構えたサララが対峙する。
「決闘ってわけじゃあねえが、一応名乗って置こうか。
 俺の名はアーカイブ。二つ名は熱風だ。この界隈じゃあ、
 多少は名の知られた傭兵部隊の隊長だよ」
脅しをかけるように笑いながら、男は杖を構える。
名乗るのが礼儀かな、と思いながらサララが名乗りを考えていた時。
「痛めつけさせてもらうぜ! ファイヤー・ボール!」
相手は既に詠唱を始めており、火の弾がサララ目掛けて飛んでくる。
一瞬慌てたサララだが、ふと思い出してデルフリンガーを盾にするように構える。
火の弾は刀身に触れた途端、すっと跡形も無く消え去った。
「はぁっ? てめえ、何しやがった!」
自分が見たものが信じられず、男は声を荒げる。
「あー……魔法吸収できるの思い出しててよかった」
デルフリンガーが思わず安堵した声を出す。
「魔法を吸収するだあ? ふざけやがって!」
激昂した男は再び呪文の詠唱を始める。それを見逃すサララではなかった。
足元には異国の神の名を冠したブーツ。鍛えた戦士以上の素早さを与えるそれの力で、
サララは一気に相手との間合いを詰める。
男が詠唱を終わらせる前に、その懐に入り込んだ。
斬撃音と打撃音がほぼ同時に路地裏に響く。
「相棒、今のは一体……?」
奇妙な感覚にデルフリンガーが疑問の声を上げるが、それには答えず鞘にしまう。
男は、上半身の服を切り裂かれ、頭に大きなコブを作って倒れていた。
「……サララを怒らせるなんて、馬鹿だねえ」
チョコが呆れたように男の顔に砂を掛ける。
「で、商品は無事だったの?」
うちの商品はこれくらいで壊れたりしない、と口元に笑みを浮かべる。
騒ぎを起こしたせいで、ここでの情報収集は無理そうだなあ、と
独りごちながら、サララは路地裏から表通りへ向けて歩いていった。
「……魔法を吸収するのか」
彼女の姿が見えなくなった後。物陰から、白い仮面を被った男が姿を現した。
マントを着けていることから、おそらく貴族、少なくともメイジであろう。
「さてと、お姫様はずいぶんと厄介な手駒を手に入れてらっしゃるようだ。
 だがまあ……手の内が分かっただけ、こちらが有利、だな。
くくく、と不気味な笑い声を上げながら、男の姿は風に溶けていった。



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