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ソーサリー・ゼロ第四部-06

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四四一

「そのお方はただの平民ではございません」
 何も言わぬ君に助け舟を出したのは、ウェールズ皇太子の老侍従パリーだ。
「二月ほど前、ニューカッスルの城で国王陛下が暗殺されたおり、卑劣な≪レコン・キスタ≫の殺し屋の魔手は、皇太子殿下にも伸びました。
しかし、その邪悪な企てを身を呈して喰い止めた者がいました。そう、そのお方です。皇太子殿下のお命を救った、
テューダー王家の大恩人に対するゆえなき非礼は、お控え願いたい」
 パリーが強い調子で言うと、ホーキンスとカステルモールは頭を下げて黙り込むが、ふたりの表情からは、いまだ納得がいかぬ様子がうかがえる。
 次に、オスマンが口を開く。
「それに、彼はここにおる誰よりも、カーカバードとかの国に住まう者どもの事を知っておる」
 老魔法使いがそう言うと、ルイズとパリーを除いた一同は驚きの表情を浮かべる。
「とは言っても、カーカバードを自ら訪れた事があるわけではなく、悪党どもの悪い噂が君の故郷まではるばる伝わっておるだけ
……確かそういう話じゃったな、のう?」
 とっさにオスマンに話を合わせ、その通りだと言う。
 彼は君のためを思って嘘をついたのだろう。
 君がカーカバードと深い関わりを持つことを知られては、人々の無用な疑いを招くかもしれぬと考えたのだ。
 君が魔法使いである事を明らかにしようとせぬのも、同じような配慮があってのことに違いない。三五〇へ。

三五〇

「アルビオンへ向かうのは、≪虚無≫の担い手たるラ・ヴァリエール嬢とその従者、そして二・三名の護衛となる」
 マザリーニは重々しく語る。
「護衛の者たちは、適当と思われる者を選んでおこう。一行は、遅くとも明日の日没までには出発せねばならん。
それ以上の遅延は許されない。七日の期限の間に≪門≫の脅威を取り除かねば、トリステインは破滅の瀬戸際に立たされることとなるだろう」
 そう言って嘆息し、
「会議はこれにて終了とする」と告げる。

 十人近くいた出席者たちの多くは退出し――そのほとんどの者が、ルイズに疑いと不安の入り混じった一瞥を与えてから出て行った――
いまだに部屋に残っているのは、君とルイズ、オスマン学院長、パリー、そしてアンリエッタ王女だけだ。
 ルイズは気まずそうな表情を浮かべつつ、椅子に座ったままうつむいているアンリエッタに近づく。
「姫さま……」
 王女はルイズの呼びかけに応えず、その顔を上げようともしない。
「どうかお許しください。わたしは……わたしは、ああせずにはいられなかったのです。たとえ誓いを破った不忠者となじられようとも、
自分が信じるもの、愛するもののために≪虚無≫を使わなければ、この先ずっと後悔することになると思ったのです」
「不忠者だなんて、そんな!」
 そう言ってアンリエッタは顔を上げるが、泉のように澄んだ青い瞳には、涙を湛えている。
「ルイズ、あなたは今までもこれからも、わたくしの最愛のお友達……だからこそ、あなたを危険にはさらしたくなかったのです。
≪虚無≫の秘密をずっと守り続け、野蛮な戦場になど近づいてほしくはなかったのに……ああ、それなのにあなたは!」
 そう言うと立ち上がり、ルイズを抱きしめる。
「……本当によいのですか? 祖国とわたくしたちのために、我が身を犠牲にするというのですか、ルイズ?」
 涙まじりの問いかけに、ルイズはきっぱりと答える。
「はい、姫さま。今こそ、力ある者の務めを、貴族としての責務を果たすべき時だと……わたしはそう考えます。それに、
わたしは『犠牲』にはなりません。必ず任務を果たし、変わらぬ姿を姫さまのお目におかけします」と。
 君はルイズの堂々とした態度を目にして、『ご主人様』はこの数ヶ月でずいぶん変わったものだ、と感慨を抱く――後先を考えぬ無謀なところは、
出会ったときそのままだが。五三九へ。

五三九

 ルイズとアンリエッタの会話に耳をそば立てていた君に、近づく者がある。
「ウェールズ殿下より伝言がございます」
 そう言って進み出てきたのは、パリーだ。
「殿下はこう申されました。『私は君の勧めに従って落ち延び、なりふり構わずあがいてきたが力及ばず、クロムウェルを止められなかった。
奴はアルビオンだけでなく、この世界のすべてを死と恐怖で支配しようとしている。友よ、どうかもう一度だけ、
君の持つ異国の叡智と未知なる魔法で、私を助けてほしい』と」
 君は老貴族にねぎらいの言葉をかけ、先刻マザリーニが言ったとおり、明日にはアルビオンへ向かうと告げる。
 伝言の悲壮な調子からすると、ウェールズはリュティスが襲撃を受ける前から≪門≫の脅威を知っていたらしい。
 そのことをパリーに尋ねると、
「クロムウェルはカーカバードの軍が増えるにつれて、内乱で活躍した側近や将軍たちを冷遇していったと聞いております。
どうやら彼は、王党派であると貴族派であるとを問わず、どの貴族も最初から信用していなかったようなのです。
そのため、王党派にくみする内通者は数を増し、我々は多くの情報を得ることができました。≪門≫に関する情報も、
そうやって手に入れたのです」という答えが返ってくる。

 君は次に、何より気がかりだったことを訊く――ウェールズは無事か、また、王党派はなぜ連合軍に合流しようとしなかったのか、と。
「殿下はご無事です」
 パリーは微笑む。
「少々お疲れのご様子ではありましたが、心身ともに壮健であらせられます。あなたがたがニューカッスルを発った直後から
≪レコン・キスタ≫の攻撃は本格的なものになり、我々王党派は城を捨てました。その日以来、少人数に分かれて森に潜み、
抵抗を続けております。蛮族や亜人など、カーカバードからの兵は日を追うごとに増えており、敵はその有り余る兵力をもって、
我らを狩り出そうとしていますが、愚鈍なけだものどもを相手に後れをとるような殿下ではございません。それと、
二つめのご質問についてですが……」
 そこで少し、困ったような表情を浮かべる。
「我々はガリア軍の前に姿を現し、彼らにアルビオン王位の正統たる継承者、ウェールズ殿下の保護を求めるつもりでした。しかし、
ほかならぬ殿下ご自身が、それに反対なさったのです――ガリアは信用できない、合流するのならトリステイン軍のほうが良い、と。
殿下がなぜそのようなお考えにいたられたのか、このわたくしめには分かりかねます。殿下も理由を明かそうとはいたしませんでした。
ともかく、そういった事情があったために我々は≪レコン・キスタ≫、カーカバード、ガリアの三者の目を避けながら、這うようにゆっくりと、
トリステイン軍の占領する地域へと移動していったのです。その途中で、≪門≫を使った恐るべき計画の情報を得ました。
わたくしは、警告のための特使としてトリステインへと遣わされたのですが……間に合いませんでした」
 ウェールズはなぜ、ガリア軍から逃げ隠れていたのだろう?

「ガリアを中心とした連合軍がアルビオンに上陸し、各地で快進撃を重ねているとの報せを受けたときは、救われたと思ったものです。
それがまさか、このようなことになろうとは」
 パリーは悲痛な表情を浮かべる。
 君は、自分たちにまかせておけばよいと言って、彼を安心させようとする。
 ルイズの≪虚無≫の力をもってすれば、≪門≫などすぐに片付けられると。五九へ。

五九

 君とルイズ、オスマンの三人を乗せた馬車は、学院へと向かう。
 馬の足並みは行きとはうってかわって緩やかなものであり、揺れも気にはならない。

 馬車の内側は、奇妙な静けさに充ちている。
 ルイズはうつむいて何かを考え込んでいる。
 オスマンは沈思黙考しているのか、それとも眠っているだけか、目を閉じて黙り込み、動きを見せない。
 最初に沈黙を破ったのは君だ。
 隣に座るルイズに尋ねる――姫君は何と言っていたのか、と。
「姫さまは任務の成功を祈ってくださったわ」
 ルイズは顔を上げて答える。
「明日は、ラ・ロシェールの港までわたしたちを見送りに来てくださるそうよ。もちろんお忍びでだけど、なんにしても身に余る光栄だわ」
 ルイズの口調は明るいが、わざとそう振舞っているように見える。

 君たちは明日の深夜、空飛ぶ船に乗ってアルビオンへ向かうこととなった。
 竜やグリフォンといった翼をもつ怪物のほうが船より速いのだが、天高く漂うアルビオンまで飛び続けるのは、怪物だけではなく
乗り手の体力をも奪うため、今回は見送られた。
 任務を成功させるためには、すべてが万全の状態で『白の国』に降り立たねばならぬのだ。

「あと、姫さまはこうもおっしゃっていたわ。『あなたの代わりに、わたくしが≪虚無≫の担い手だったらよかったのに。
もしそうなら、わたくし自身でウェールズさまをお助けさしあげることができたのに』って。……姫さま、おかわいそう。
この厄介ごとが全部片付いて平和が戻ったら、姫さまとウェールズ殿下は、またお会いできるようになるわよね?」
 君は曖昧にうなずく。
 今のルイズの言葉は不用意なものだ――アンリエッタとウェールズの関係は、君たちを含めごく一部の者たちしか知らぬ秘密なのだから。
 君たちの向かいの席に座ったオスマンは、相変わらず動かず、何の反応も見せない。
 二つの王国の王子と王女が互いに愛しあっていることを知っているのか、そのような事ではいちいち騒がぬのか、
それともただ眠っているだけか。

 今度はルイズが話しかけてくる。
「姫さまはわたしを許してくださったけど、ねえさまは……エレオノールねえさまは、わたしに何も言わずに部屋を出ていっちゃった」
 そう語るルイズの表情は、寂しげなものだ。
「いつものねえさまなら、かんかんになるはずなのに。≪虚無≫に目覚めたのを隠していたこと、危険な任務に勝手に志願したことで、
さんざん叱られると思ったのに。わたし、愛想を尽かされちゃったのかしら?」
「そのようなことはあるまい」
 だしぬけに響いた一言に驚き、君とルイズはぱっと声の主のほうを振り向く。
 見れば、いつのまにか目を開けていたオスマンが、屈託ない笑みを浮かべている。
「姉上は、あの場に居た誰よりも君のことを心配しておったぞ、ミス・ヴァリエール」とオスマンは言う。
「で、でも、オールド・オスマン……」
「部屋を出て行く時の表情を見れば見当がつくわい。可愛い妹のことが心配で心配でたまらぬが、その思いを面と向かって伝えられるほど
素直にはなれん――どこかの誰かさんとそっくりじゃな」
 そう言われると、ルイズは顔を赤くしてうろたえる。
「な、何のことですか! からかわないでください!」
「とにかく、姉上のことは心配いらぬじゃろう。事を成し遂げて帰ってきてから、たっぷり叱られることになるかもしれんがな」
「はい……」
 ルイズは安堵したような笑みを浮かべる。一八三へ。

一八三

 オスマンは話題を変える。
「この歳まで生きておると、世の中に目新しいこと、驚かされるようなことは何ひとつなくなってしまう……そう思っておったが」
 そう言って嘆息を漏らす。
「今日の会議では驚かされてばかりじゃったな。グラン・トロワの炎上、≪門≫の脅威、カーカバードからの侵攻。なかでも一番の驚きは、
ミス・ヴァリエールが≪虚無≫の使い手だったことじゃ」
 オスマンはじっとルイズを見つめる。
 その視線に恐縮したルイズはぺこりと頭を下げ、
「あの、オールド・オスマン……今まで黙っていて、申し訳ありませんでした」と詫びる。
「顔を上げなさい、ミス・ヴァリエール」
 オスマンはやさしい声で言う。
「≪虚無≫は伝説の系統じゃ。事があまりに重大すぎるがゆえに、家族にさえ隠しておったのじゃろう? そのことを責めようとは思わんよ。
むしろ、責められるべきは我ら教師たちじゃ。君が魔法を使えぬ理由を深く考えようともせず、放ったらかしにし、生徒の才能を見過ごしておった。
まったく、教育者にあるまじき怠慢じゃ。どうか許してほしい、ミス・ヴァリエール」
 今度はオスマンが頭を下げる。
「お、オールド・オスマン、そんな! 謝ることはありません!」
 ルイズは慌てる。
「わたしの系統が≪虚無≫だなんて、気づけというほうが無理です! 誰にもそんなことはできなかったでしょう。
だって、≪虚無≫に関しては何の伝承も残されていなかったのですから」
 君も口を差し挟み、ルイズの言葉に付け加える。
 悪いのは、≪虚無≫の担い手を見分けるすべを後世に残さなかった、間抜けな始祖ブリミルだ、と。
「あ、あんたねえ! 何てこと言うの! 不信心にもほどがあるわよ!」
「これこれ。間違っても王宮の重臣たちの前では、そのような事は言わんでくれよ」
 ふたりはそれぞれの言い方で君をたしなめる。

 話をしているうちに馬車は学院に着き、君たちはオスマンと別れ、寄宿舎へと戻る。
 とうに消灯の時間は過ぎており、ルイズは、明日に備えてすみやかに床に就くべきだと主張する。
 たしかに彼女の言うとおりだ。
 壮麗だが居心地の悪い王宮で、長い会議につきあわされたため、今の君はへとへとに疲れている。
 だが、眠る前に何かルイズに話しかけてみようかという考えも浮かぶ。
 うかつに≪虚無≫について明らかにしたことを非難し、注意をうながすか(一五三へ)?
 危険な任務へと向かうにあたっての覚悟を問いただすか(二八三へ)?
 それとも、余計な話はせず眠ることにするか(二〇四へ)?


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