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ウルトラ5番目の使い魔-99a

 第99話
 第一部最終回
 ありがとう才人、異世界の思い人

 ウルトラマンメビウス
 ウルトラマンヒカリ
 彗星怪獣 ドラコ 登場!


「金色の、ウルトラマン……」
 さんさんとした太陽に照らされる真夏の草原に、もう一つの太陽が出現したかの
ような光芒がきらめき、漆黒の魔獣を塗りつぶすかと思えるほどに圧する。
その中心にいるのは、カラータイマーを満ち満ちたパワーを示す青に染め、
幻ではないことを誇示するように力強く大地を踏みしめる、雄雄しく気高い光の戦士。

「テェーイ!」

 右腕を高く天に掲げ、あふれんばかりの力をまとって立ち上がった彼の名を、
知らぬものはなし、呼ばぬものはなし。

「ウルトラマンA!」

 GUYSが。

「エース兄さん!」
「ウルトラマンA……」

 メビウスが、ヒカリが。

「ウルトラマンA……生き返ったんだ!」
「奇跡……!?」

 キュルケが、タバサが、希望の到来に表情を輝かせる。


『ウルトラマンA・グリッターバージョン』


 その姿は、かつて一つの異世界を滅ぼそうと企んだ謎の暗黒卿・黒い影法師との
戦いの終幕に、ウルトラマン、セブン、ジャック、メビウスと、ティガ、ダイナ、ガイアを
合わせた超ウルトラ八兄弟が人々の未来を信じる思いを受け取って、超パワーアップを
とげた奇跡の形態と同じ。
 そして、その圧倒的なまでに強大な光の力の誕生に、闇の化身であるヤプールは
驚きとまどい、ありえない現象に抗議するように叫ぶ。

「ウルトラマンA、なぜだ、なぜ蘇った! 貴様のエネルギーは完全に尽きていたはず!」
「ヤプールよ、お前が我々への怨念を糧に強大になっていくとしたら、我らもまた
その闇に負けないように強くなる。貴様にはわかるまい、真に人と人とが互いを
思いあい、愛し合ったときに生まれる力はな!」

 うろたえるヤプールに毅然と言い放ったエースに、もはや先程までの弱弱しさは
微塵も残ってはいなかった。まっすぐに前を見据え、立ちはだかる闇におびえずに、
猛き姿はまさしく勇者。いや、勇者たちと呼ぶべきだろう。エースのオーラの
その中にいる、まぎれもない彼らの勇姿を彼らの友は見た。

「あれは……ルイズ!」
「それに……サイト」

 幻影か、実際そうなのであろうがキュルケとタバサには確かに、金色の
輝きの中でエースに重なり合うようにして、二人の姿が見えていた。
「生きて、生きていたのね……」
 涙が、そのつぶやきとともにキュルケのほおをつたった。タバサも、口元に
明らかな喜色を浮かべて、意味不明に大騒ぎしているシルフィードをなだめながら
ぎゅっと杖を握っている。
 二人とも、いつもはルイズや才人とは一定の距離をとっているようにも見えるが、
見方を変えればそれは決して馴れ合いの関係ではなく、それぞれの踏み込んでいい
領域をわきまえているからこその、本当の信頼関係といえるかもしれない。
「本当に、あなたたちといっしょにいると心臓がいくつあっても足りないわ……
ねえタバサ!」
「心配する……こっちの身にもなってほしい」
 今度ばかりはタバサも魂を抜かれてしまったように、腰を抜かしてキュルケに
寄りかかった。シルフィードはといえば、興奮しすぎで飛び方が不安定で、
この二人でなければ振り落とされているところだ。
 ともかく、何が起こったについてはこれっぽっちもわからないが、ただ一つ
わかることは、あの二人が過去最高のとんでもない奇跡を引き起こした
ことだけは確かだ。
 いや、もう一つだけ、キュルケには直感できていることがあった。それは、
この奇跡を呼び起こしたであろう原動力がなんだったのか、彼女からしてみれば、
長い間やきもきさせられていた、最初からわかりきっていたあの答えを……


 あのとき、ドラコの足下にその命を踏みにじられたはずのルイズと才人は、
その命が尽き、闇に消えていく意識の中から暖かな光に掬い上げられて、
肉体のくびきを離れ、時間すら超越した不思議な空間で再会を果たし、
裸になった心で向かい合っていた。
「ルイズ」
「サイト」
 互いに相手の名だけを呼び合い、二人はどちらからともなく歩み寄って抱き合った。
 ここにやってくるのは、ベロクロンによって命を奪われて、はじめてエースと
出会ったとき以来。ただし、あのときは恐らく仮死状態でガンダールヴのルーンも
残っていたのに、今度は二人とも完全に命を失ってしまった。
「わりい、おれのせいで」
「もう、そんなこと言わないで……もう一度、あなたと会えただけで充分よ」
 それぞれの犯した過ちも、葛藤も、魂で触れ合った二人はすべて許容して、
誇りも名誉も命さえ失ったことすら気にも止めずに再会を喜び合い、そして相手の
すべてを受け入れることのできた二人には、もう余計な前置きの言葉は必要ではなかった。
「好きだ」
「好きよ」
 同時に、なんの迷いも戸惑いもなくつむがれた思いが、直接相手の心に染み渡っていく。
”おれはルイズが好きだ”
”わたしは、サイトが好き”
 ずっと言いたかった言葉と、聞きたかった言葉が今ここにあった。
 思えば、あの召喚の日の一言から始まって、今日までの日々は二人にとって
とても長かった。
「あんた誰?」
「誰って……俺は平賀才人」
 本来、絶対ありえるはずもない時空を超えた出会い、しかしそれから始まった
戦いと冒険の日々の中で、時にぶつかり、憎みあい、笑いあい、助け合い、
喜び合い……そうして常にいっしょにいるうちに、かけがえのないものが
二人の心の中に作り上げられていった。
「おれ、バカだったよ。ずっと前から、お前への気持ちには気づいてたはずなのに、
お前がおれなんかを好きなはずがないって、思い込んでた……いいや、振られる
のが怖くて、そう思い込もうとしてたんだ」
「サイト、それはわたしもよ。本当は、あなたのことが誰よりも一番好き。だから、
誰にもあなたを渡したくない。それなのに、くだらないものに囚われて、本当の
気持ちを言い出せなかった。とことんバカよね、あなたを失ってみて、ようやく
素直になれたわ」
 二人とも、言いたいことは山ほどあった。この半年で築き上げてきたものは、
大小美醜問わずに、いっぱい過ぎるほどある。けれど、二人とも心の壁を
取り払って裸で向かい合った今なら、もうこれ以上はいらない。 
「サイト、一つだけ約束して」
「なんだ?」
「ずっといっしょにいて、ほかの女の子に目移りしても、どんなやっかいごとを
持ち込んできてもいい。元の世界に帰らなきゃいけないなら、いつかわたしも
連れて行って……もう二度とわたしを一人ぼっちにしないで」
「約束する」
 間髪も入れずに返ってきた返事に、ルイズは心から満たされた気がした。
いつもなら本気を疑うところだが、ここでなら才人の本当の気持ちが偽りなく
感じることができる。
 二人はなんだかとても切ない気持ちになって、もう一度強く抱き合った。
「ルイズ……」
「サイト、わたし……今、幸せよ」
「おれもだ……」
 体温ではなく、互いを思いあう温かい心が触れ合って、才人とルイズは生まれて
はじめて感じる、この上ない幸福感に包まれた。

 だが、そんな彼らを突然夜闇の吹雪のような猛烈な冷気と悪寒が襲った。
「……っ!」
「この、気配は!」
 白い紙を黒いインクにつけたような、一点の光さえ射さないどす黒い暗黒の意思、
欲望、嫉妬、恐怖、破壊、怨念、憎悪、ありとあらゆる負の感情を混ぜ合わせた
とてつもないマイナスエネルギーの波動、それが自分たちを狙ってありえないほどの
悪意と殺気を撒き散らしながらやってくる。
 こんな、邪悪な気配をもつものはほかに考えられない。
「ヤプール!」
「そうか……そうね、まだ……終わってなかったのよね」
 二人は、まだこの世にやらねばならないことが残っていることを思い出した。
 あの日に誓った、この世界に破滅をもたらし、ありとあらゆるものから未来と幸せを
奪おうとする邪悪なものたちから、この世界を守るという使命。
 それはなにも、我が身を捨てて人々のために尽くすという崇高な自己犠牲の
精神からではない。単純に、好きだからだ、空が、海が、山が、街並みが、そこに
暮らす人々や、共に歩む友たちが、愛する人がいるこの世界が好きだから。
 本当に守りたいものを見つけた今なら、何もかもが愛しく思える。人は一人だけでは
生きられないように、二人だけでも幸せをつかむことはできない。人は人の間に
いるからこそ人間となる。人は人から救われるだけでなく、人を救うことでも救われる。
それが生きるためだけに生きる動物と、人間の違うところだ。
 守りたい、戦いたいと二人は思った。
 家族……ルイズの心に、母カリーヌや姉たちの顔が浮かぶ。
 友……ギーシュやシエスタたち学院の仲間たち、ルイズが信じるアンリエッタ王女、
才人を認めてくれたアニエスや心を通わせられたミシェル。
 オスマンやコルベールら恩師、スカロンとジェシカの親子、ロングビルとティファニア、
子供たちに、いつでもなんだかんだで力を貸してくれたキュルケにタバサ。
 彼らを守りたい、彼らのいる世界でこそ生きていたい。

 そのとき、二人を包んでいた光の空間が収縮し、やがて光の中から一人の
初老に見える、茶色いジャケットを着た男性が二人の前に現れた。
「出したようだね、君たちなりの答えを」
「あなたは……?」
「僕の名は北斗星司、かつて君たちのようにウルトラマンAの力をさずかって、
今はエースと一心となって戦っている者だ」
「と、いうことは……あなたは、ウルトラマンAそのものってこと?」
「そういうことだな」
 二人は肉体はないはずなのに、その瞬間飛び上がるようにして驚いた。
これまでウルトラマンAとは何度も会話をしたり、精神世界で会っていたりしたが、
エースの人間体と、仮の姿とはいえ会うのはこれが初めてだったからだ。
 今、エース、北斗星司はかつてのテンペラー星人との戦いのときに、兄弟たちと
いっしょに地球に再訪したときと同じ、背中にウルトラ文字でエースと書かれた
茶色いジャケットに身を包んで、そんな二人を温かく見守っていたが、やがて
二人の決断を賞賛するように、ゆっくりと語り始めた。
「僕も、かつて君たちのように大切な仲間との別れを経験した。一度目は
共に戦ってきたパートナーと、もう一度は地球人北斗星司としての自分に」
 才人とルイズの心に、直接イメージとして、月星人であった南夕子と、
ウルトラマンAとしての正体を明かしてTACの仲間たちと別れ、地球人としての
自分を捨てたときの北斗の記憶が流れ込んできた。
「北斗さん……」
「君たちは、昔の僕らによく似ていた。だからあえて、君たちの判断を鈍らせ
ないようにと、助言は控えていたのだが、やはり君たちは僕が見込んだ
とおりの人間だったよ」
「でも、あなたは使命のために自分を捨ててまで戦ったのに、わたしたちは
結局自分たちを優先して……」
「ルイズくん、それは違うよ。確かに、僕と君たちの境遇は似ていたかもしれないし、
僕もかつての決断を後悔したことはない。でもね、正しい答えというのは
一つじゃないんだ。僕らウルトラマンは大きな力を持つが、決して神じゃない。
どんなに望んでも、救えない命もあるし、届かない願いもある。そのなかで
一生懸命あがいて、生きていくことこそが大切で、その結果が選ばなかった
選択肢と比べて、正しかったか間違っていたかなんて、誰にもわかりはしないんだ」
 あのとき、ああしていれば、こうしていれば今はもっとよかったはずに違いないと
考えるのは、逃れがたい人間の性だろう。けれども、絶対の正解が用意された
数式などと違って、無数に絡まりあう人間の選択に絶対の正解などはない。
たとえば、車にひかれそうな子供を身を張って助けるか否かで、助けたら
自分がひかれて自分の家族が悲しむ、かといって助けなかったら自分の
家族は悲しまないが、子供の家族が悲しむ。この世は、そんなどうしようもない
矛盾でできているのだ。
「だから君たちは、自分の選択に負い目を感じることなんかはない。僕が
君たちの前にやってきたのは、ウルトラマンとしてではなくて、人間として
一言だけ君たちに言っておきたいことがあったからさ」
「人間として……?」
 微笑してうなずいた北斗は、二人に歩み寄ると、才人とルイズ、二人の肩を
がっしりと父親のようにつかんで言った。
「今の気持ちを忘れるな、これからも、がんばれよ」
 その一言で、二人は心から救われた気がした。自分たちの出した答えを、
誰かに認めてもらえたということが、二人だけの孤独から人間になれたように
思えた。
「はい……忘れません、絶対に!」
「わたしも、忘れるものですか」
 二人の答えに、北斗は今度は満面の笑みを浮かべて笑ってくれた。
 だが、同時に二人は北斗が「がんばれよ」と言った意味も噛み締めていた。
 がんばれよということは、これから二人でなすべきことを指している。
 そうだ、幸福な未来とは、天国に用意されているのではない、二人で
がんばって、この世でこそ作り出して、そうして味わうべきものなのだ。
 だからこそ、二人は願うのだ。
”力がほしい、未来を守って、いつかそれを見つけるために、戦う力が!”
 だからこそ、二人は叫んで呼ぶのだ。

「もう一度、力を貸して! みんなを守る力を……エース!」

 迷いのないその言葉に、北斗は満足したようにうなずくと、また光となって消えた。
 そして、現実世界へ開かれた先の光景を二人は見た。
 勝ち誇り、さらにその魔手をメビウスとヒカリに向けようとしているドラコの姿、
そのドラコを陰から操り、二人が愛するすべてのものを踏みにじろうとしている
ヤプールの邪悪な意思を。
 ふつふつと、二人の心に闘志が湧いてくる。
 負けない、こんな奴に負けて終わるわけにはいかない!
 そう思ったとき、二人の右手に輝きが灯り、中指に銀色のウルトラリングが現れた。
「ルイズ」
「サイト」
 いつものように、これまでのように、二人は互いの名前を呼び合うと、一度
右手を大きく後ろにそらして構えて、目と目を合わせるのと同時に、鏡に
映したように完璧な呼吸で手をつないだ!

「ウルトラ・ターッチ!」

 正義の光が二人を中心に輝き、この瞬間才人とルイズは再びウルトラマンAと
一心同体となって生命を復活させ、二人の心から生まれた限りないパワーを
受けたエースは、邪悪を弾き飛ばし、現実世界に新たな勇姿を現す。

「サイト」
「ん?」
「生き延びましょう。そして、勝ちましょう。あんたには、まだまだ言いたいことは
百や千じゃ足りないほどあるんですから!」
「合点! 万でも億でも聞いてやる。なんたって、おれとお前は?」
 二人は手をつなぎ、心をつなぎ、未来をつなぐために、笑いあっていっしょに夢見た
その言葉をつむぐ。

「恋人だから!」

 すべてのくびきを解き放ち、自由の空の下で二人は立つ。
 もうどんな鎖も二人を縛ることはできない。
 何者も、笑わば笑え! 怒らば怒れ! 邪魔するならばぶっ潰す!
 ルイズが好き、サイトが好き、そして愛する人のいるこの世界が好き。
 何よりも尊い心の光を満たし、二人の絆が輝き光る。
 その強き意志を背に受けて、ウルトラマンAはここに蘇った!

〔いくぞ! 二人とも〕
〔おおっ!〕
〔ええっ!〕

 いざ、光と闇の決戦のとき。グリッターエースはヤプールの怨念の結晶と化した
ドラコへと挑みかかっていく。
「おのれぇ! どこまでも我らの前に立ちはだかるというかウルトラマンAめ! 
ならば何度でも地獄に落としてくれる。ゆけぇー! 闇の力の強大さを思い知らせるのだぁーっ!」
 ヤプールも、エースへの怨念を最大限にたぎらせて勝負を受けてたった。
純粋悪であるヤプールにとって、人間の光の力は決して認められないものなのだ。
なればこそ、こちらも全力で迎え撃つのみ。高速でドラコの懐に飛び込んだエースの
中段からのチョップが、ドラコの腹に突き刺さる。
「デヤァッ!」
 巨木に突き刺さる鉄の斧のごとく、恐るべき破壊力を秘めた一撃が叩き込まれ、
ドラコの体がくの字の曲がって大きく後退し、間髪いれずに追撃で打ち込まれた
ストレートキックが、これまで一切の攻撃を寄せ付けなかった奴の外骨格をも
ゴムのようにへこませて炸裂し、苦悶の叫びが奴の口から漏れる。
「ヘヤッ!」
 むろん、それで終わりではなく、頭一つ自分より巨大なドラコの首根っこを
掴むと、背負い投げの要領で投げ飛ばし、巨体が紙のように宙を舞う。
その驚愕無比の光景には、誰一人として目を離すことができない。
「すっげぇ!」
「なんて、強さなの!」
 ジョージとマリナが、計算上メテオールの攻撃にも耐えると算定されていた
ドラコに、やすやすとダメージを与えだしたエースにコクピットの中でガッツポーズをとり、
カメラを通して戦いを見守っていた地球のフェニックスネストでも、今トリヤマ補佐官を
はじめとして、新人隊員たちによる大歓声があがっている。
「イャァッ!」
 起き上がってきたドラコが体勢を立て直す前に、エースは奴の巨大な腕を
掴んで、バランスを崩させて下手投げを喰らわせた。激震轟き、学院の壁から
レンガがこぼれ、教室の机にほこりが舞い散る。
 エースは兄弟の中ではウルトラマンと並んで戦闘では投げ技を多用する。
相手が重量級であればあるほど、投げられたときにその衝撃は増すからだ。
「すごい、すごいです。エース兄さん!」
「俺たちがあれほど苦戦した相手を、これが……ウルトラマンAだけが持つ力か」
 メビウスが無邪気に、ヒカリが感嘆したようにつぶやく。ウルトラ戦士に数いれど、
二人以上で変身をしたものは、特別な数件を除いては後にも先にもエースしかいない。
かつて、北斗星司と南夕子に分離していたときは、サボテンダーのとげにエースが
刺されたとき北斗の腕に傷が付き、ドラゴリーとメトロン星人Jrとの戦いでエース
バリアーを使ってエネルギーを浪費しすぎてしまったときには、南が重体に陥って
しまった例から、肉体は北斗、エネルギーは南と分割されていたが、もしもリスクを
分割するのではなく、二人からその力を存分に引き出すことができたら……
それは、遠い世界で邪神を滅ぼした希望の光のように、誰にも想像もつかない
新たなウルトラ戦士の姿なのかもしれない。
 そんな、とてつもない奇跡を生み出して、今もなお戦い続ける才人とルイズに、
キュルケは胸をこの上なく熱くしていた。
「いったい、今度はどんな奇跡を起こしたんだか……というか、あの二人ようやく……」
 そのときキュルケは、なんとなく出来の悪い娘がやっと嫁に行った母親か姉の
ような気持ちにとらわれた。よくもまあ、紆余曲折というにもまどろっこしすぎる
過程を経たが、どうやら無事に元の鞘に納まったらしい。
 ただ、タバサはキュルケの言う意味がわからないらしく「ようやく……なに?」と、
怪訝な表情をしている。
「そうね、この件に関してはあの二人があなたの先輩になっちゃったわね。でも、
あなたにも必ずいつかわかる日が来るわ。そのときは、この『微熱』のキュルケ様が、
手取り足取りレクチャーしてあげるからね」
 さらに目を白黒させるタバサに、キュルケはまだ当分自分のやることはなくならないなと、
期待を浮かばせた笑みを浮かべると、大きく息を吸い込んで、明るい未来を呼び寄せる
かのように、シルフィードといっしょに声の限りに叫んだ。
「よーし、ぶっ飛ばせぇーっ!」

 高く響くその声に応え、グリッターエースの猛攻は才人とルイズの闘志をそのまま
現出させているかのように続く。
「ダアッ!」
 助走をつけての跳び蹴りが正面から決まり、ドラコは翼を広げてこらえようとするものの、
それに耐えられないくらい巨体が激しく後退する。まさしくもって、段違いの攻撃力。
さらにグリッターパンチ、グリッターチョップが次々と決まって、外骨格をへこませて
ドラコの体内にダメージを蓄積させていく。
「いける、勝てますよ、これは!」
 テッペイの叫んだとおり、グリッター化したエースの威力はドラコの防御力を
完全に凌駕していた。だが、エースが光の鎧をまとうなら、ドラコにも闇の剣がある。
これまで一方的にやられるだけだったドラコは、グドンを一撃で抹殺した両腕の鎌を
振り上げると、二刀流でエースに反撃をかけてきた。
「ヘアッ!?」
 間一髪、後ろに跳んでかわしたエースは構えを取り直して、両腕を広げて
威嚇してくるドラコを睨み返した。直接食らったからわかるが、やはりあの鎌だけは
危険だ。ヤプールのマイナスエネルギーを物質にまで凝縮させたといっても
過言ではない密度を持っており、グリッター化した今でもあれだけは防げないだろう。
 ドラコは、接近戦における絶対的なアドバンテージを確保し、攻撃を食らっても
致命的なまでのダメージは受けないと余裕を持ったのか、にじりよるように向かってくる。
しかし、才人は完全無欠に見えたドラコの外骨格に一点だけ、蟻の一穴が存在
することを知っていた。
〔エース! 肩だ、奴の右肩におれの刺したナイフがまだ残ってる!〕
 黒色のドラコの皮膚にただ一点、銀色の輝きがとどまってその存在を誇示している。
あのとき、ルイズを助けるために才人が決死の覚悟で突き刺した一本のナイフが、
無敵の装甲に唯一の汚点を刻み込んでいたのだ。あそこならば、攻撃が効く!
「デュワッ!」
 狙うは一点、しかし本当に蟻の一穴に等しい一本のナイフを狙うには、いくら
ピンポイントで光線技を集中させても無理だ。けれど、金属製のナイフに、一つだけ
確実に攻撃を命中させる方法がある。エースは全身に流れるエネルギーを
高圧電流に変換すると、カラータイマーから天空へと向かって一気に放出した。

『タイマーボルト!』

 上空に立ち上った超電撃は、一瞬にして高度数万メートルにまで達すると、
電離圏のプラズマエネルギーをも吸収して、再び邪悪を砕く雷神の槌となって
舞い降り、ドラコの肩に刺さったナイフめがけて落雷した!
「やった!」
 雷鳴轟音天地を揺るがし、天の怒りの直撃を受けたドラコは体内へと直接
送り込まれた大都市数個分にも匹敵する莫大すぎる電撃を受けて揺らぎ、
口から、鎌のすきまから、さらに全身に卵の殻がひび割れるように生じた
無数の亀裂から白煙を上げて動きが止まった。
「効いた! 効いてるわよ!」
 ライトニングクラウドに換算したら、数千人分に匹敵するのではと思われた
今の雷撃に、キュルケは興奮して叫び、また、タバサはこの戦法にデジャヴを
感じていた。
「今の攻撃……もしかして」
 疑う余地もない。強固な敵の外皮を避けて体内を直接攻撃するこの戦法は、
ついさっきキュルケとのコンビで自分がエレドータスを倒したあの戦法に
相違なかった。
 ドラコは大ダメージを受けて、目の赤い輝きを鈍らせ、翼は力なく垂れ下がっている。
そう、キュルケとタバサの奮闘も、ルイズを救うためにたった一本のナイフで
立ち向かっていった才人の勇気も、何一つとして無駄なものはなかった。
どれも、誰が欠けていても今のこの状況はない。たとえ相手が凶悪強大な
大怪獣とても、大鬼を退治した一寸法師のように知恵と勇気をもってして
立ち向かえば、必ず光明は射す。

 さあ、これが最後の一撃だ。

 その身に込められた光の力を一つに集めて、ウルトラマンAの体が最大の
輝きを放つ。
〔いくぞ二人とも、この一撃に、君たちのこれまでにつちかってきた全ての
思いを込めるんだ〕
〔はい! さあて、じゃあやろうかルイズ〕
〔そうね、わたしたちの力、見せてやりましょう〕
 とびっきりの笑顔をあわせ、才人とルイズはお互いへの信頼と、未来への
希望、この世界の愛すべき人々への思いを全て光のエネルギーに変えて
エースに渡していった。
「ヌウゥッン!」
 ストリウム光線を発射する際のタロウのようにエースの体がさらに輝きを
増していき、凝縮されたパワーが腕に集まっていく。
 だが、パワーを集めるこの一瞬が無防備になることを悟ったドラコは
両腕の鎌をひらめかせると、投てき可能なそれを二本同時にエースに
向かって投げつけてきた。
「危ないっ!」
 今、あれをまともに食らえばグリッター化した体を持つエースといえども
やられてしまい、エースが倒されれば、もうこちら側にドラコを倒す術は
なくなってしまう。だが、ドラコの執念を込めて宙を飛んだ二本の鎌は、
エースに届く前に放たれた二筋の光束によって妨げられた。
『メビュームシュート!』
『ナイトシュート!』
 空中で爆発が二つ起こり、闇の鎌は粉々に砕け散って風に舞い散る。
兄が限界を超えて戦っているのに傍観しているわけにはいかないと、
自らもカラータイマーの示す限界を振り切って放ったメビウスとヒカリの
必殺光線が、その危機を救ったのだ。
 ドラコは、いやヤプールは横合いからの思わぬ邪魔に焦り、さらなる
一撃を加えようと、ドラコに新しい鎌を用意させる。大丈夫だ、ウルトラマンAが
エネルギーを収束しきるには、あと数秒必要だろう。メビウスとヒカリは
今の攻撃でエネルギーを使いきり、もう邪魔はない。この勝負は我らの
勝ちだとヤプールは確信した。
 しかし、ヤプールにはなくてウルトラマンにはあるもの、それはピンチの
ときに助けに来てくれる仲間の存在である。
「メテオール解禁!」
 ガンフェニックストライカー形態に合体し、カナードウィングを展開して
金色の光に包まれたGUYSの翼が、今度はおれたちの番だと天を駆ける。
「いくぞみんな、俺たちGUYSの誇りを、やつらに見せてやれ!」
「G・I・G!」
 リュウ隊長の叫びに呼応するかのように、ジョージ、マリナ、テッペイが
ガンフェニックストライカーと同じように心を一つにして吼える。自分たちより
ずっと若い子供たちが勇気を振り絞って起こしたこの奇跡、大人がぼさっと
見ていてどうするか!
 フェニックスネストでもサコミズ総監が、ミサキ女史が、トリヤマ補佐官と
マル秘書や新人隊員たちも、誰一人目を離す者はおらず、誰もがGUYSと
ウルトラマンの勝利を信じ、応援の言葉が尽きることはない。
「いっちゃえー! リュウさん」
「がんばって、リュウ隊長!」
 リムを肩に乗せたコノミが、手に汗握らせたカナタが叫ぶ。
 彼らの期待に応えない理由はリュウにはない。ガンフェニックストライカーは
燃え上がり、GUYSの誇りを込めた一撃を、最強の不死鳥に変えて解き放った。
「エースの道を切り開け! インビンシブルフェニックス・パワーマキシマム!」
 インペライザーをすら一撃で蒸発させた、GUYS最強の一撃がドラコを撃ち、
赤き不死鳥の炎の翼が邪悪の魔獣を包み込んでいく。
「いまだ、いけえぇぇーっ!」
 炎に包まれて動きの止まったドラコの姿にリュウが叫ぶ。
 その瞬間、才人とルイズのすべての思いをエネルギーに変えたエースは、
ゆっくりと上半身を左にひねると、腰のばねを使って瞬間的に引き戻し、
赤熱化した両腕をL字に組むと、彼の代名詞とも呼べる必殺光線を極大化した
最大・最強の一撃を撃ち放った!


『グリッター・メタリウム光線!』


 金色をまとった虹色の光芒が天界の浄火の中でもだえ苦しむ悪魔に
突き刺さり、怒涛の奔流となって吸い込まれていく。
「デャァァーッ!」
 すべてを込めた正義の光に貫かれ、ドラコの全身にはいったひび割れが
拡大し、そこから光が漏れ出していく。それなのに、なんと奴は崩れ始めた
体でなおも鎌を繰り出そうともがいている。
 恐るべき奴だ、これだけの攻撃を受けてなお動けるというのか!? 執念、
その一言が持つ底知れぬ力が、人間たちを戦慄させた。
 だが、ウルトラマンAは負けずにグリッター・メタリウム光線を撃ち続ける。
 タバサの知恵、キュルケとシルフィードの勇気。
 メビウスとヒカリの闘志、GUYSの誇り。
 才人とルイズの愛。
 そして、ここまで自分たちを連れてきてくれた大勢の人たちに支えられ、
決壊したダムからほとばしる大洪水のように、ドラコに巣食う闇の力を
すべて焼き尽くそうと、光は輝き、轟き穿つ!

「消えろヤプール! 人間は、決してお前などに負けはしない!」
「おぉのれぇ覚えていろぉーウルトラマンAめ! 我らの復讐はまだ始まったばかり
だということを! いずれ必ずこの世界の人間どもごと滅ぼしてくれるからなぁーっ!」

 その瞬間、ヤプールの怨念に満ちた叫びとドラコの断末魔がこだまし、
闇の力が生み出した最強の魔獣は、光の中へと溶け込んでいくように
崩壊して、ついで混在した光と闇の力の融合によって生まれた強大な
エネルギーの解放によって、天地を揺るがす大爆発を起こして、塵一つも
残さずに消し飛び、超衝撃波が全方位に向けて解き放たれた!

「うぁぁっ!?」

 猛烈な粉塵が周囲に広がり、半壊していた学院の城壁は崩れ落ち、
窓ガラスは叩き割れ、突風にあおられて何も見えなくなったことで、
シルフィードは木の葉のようにもまれて、はるか上空まで飛ばされた。
「やっ……た?」
「の……ね?」
 白煙がたなびき、ようやく体勢を立て直したシルフィードは学院を
見下ろせる高度で、ホバリングしているガンフェニックスと並んで、
煙に覆いつくされた地上を見つめていた。

”勝った……のか?”

 キュルケたちも、リュウたちも息を呑んで、濃霧のような白煙に包まれて
何も見えない地上の、戦いの結末がどうなったのかを見守った。あの瞬間、
ドラコが吹き飛んだのは瞬間的に見えたが……あの爆発に巻き込まれて、
まさか……
 そのとき一陣の風が吹き、煙を吹き払った。
「あれは!」
「あっ!」
「おっしゃあ!」
 瞬間、今度こそ誰にもはばかることのない、完全全員参加の大歓声が
青空に響き渡った。

「シュワッ!」

 大地にしっかりと足を踏みしめて、ウルトラマンAが元通りの銀色の
巨体を悠然と煙の中から現したとき、長きにわたるハルケギニアでの
ヤプールとの戦いは、その第一幕においてウルトラ戦士たちの完全勝利に
終わったのだった。
「エース兄さん」
「やったな、さすがは栄光のウルトラ兄弟だ」
 メビウスも、ヒカリももちろん無事だ。学院も、校門側の外壁が大破してるが
校舎や寮など主要施設は問題ない。
 これで、溜め込んだマイナスエネルギーを使い切ったヤプールは当分の間
大規模な行動を起こすことはできないだろう。むろん、配下の宇宙人を使った
破壊工作の可能性はあるが、今回のドラコのような強力な怪獣や超獣は、
一ヶ月か二ヶ月か、作り出すことは不可能に違いない。
〔終わったんだな、これで〕
〔ああ、見事だった。君たちの絆が、ヤプールの邪悪な意思を打ち砕いたんだ〕
〔わたしたちが、そう……わたしたちが勝ったんだ!〕
 かりそめのものとはいえ、平和を自分たちの手で守り抜いたという実感が、
爽快な達成感となって才人とルイズの胸を吹き抜けていった。

 だが、勝利は同時に別れのときでもあった。

「リュウさん! ゲート封鎖まであと六分です。急がないと間に合わなくなります!」
「よし、進路反転一八〇度! いくぞ!」
 タイムリミットの迫る中で、勝利を見届けたGUYSはガンフェニックスを全速で
飛ばして、ハルケギニアの空に別れを告げていった。
「エース兄さん……」
「急げメビウス、間に合わなくなるぞ」
 エースは、よろめきながら立ち上がったメビウスにエネルギーを与えて回復させると、
早くガンフェニックスの後を追うようにうながした。
「兄さん」
「心配するな、この世界のことは私にまかせろ。お前には、お前にしかできない
使命があるだろう」
 エースには、なぜガンフェニックスが振り返りもせずに飛び去っていったのか、
リュウたちの心のうちを知っていた。
「ふっ、本当に心配はいらないぞ。今の私は、これまでよりも強いし、何よりも
一人ではない」
 そうだ、迷いを断ち切った才人とルイズがいる限り、エースが力を失うことは
もう二度とないに違いない。それがわかっているから、リュウも声をかけることを
一考だにしなかったのだ。
「兄さん……はい、わかりました!」
「うむ、頼んだぞ。三ヵ月後、必ずまた迎えに来い」
「必ず……必ずまたやってきます! ヒカリも、お元気で」
「ああ、任せておけ。さあ、急げ!」
「G・I・G! ショワッチ!」
 この世界の命運をエースとヒカリにゆだね、メビウスは地球へ、光の国へと
帰還するために、ガンフェニックスのあとを追って飛び立っていった。


 後半部へ続く



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