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ラスボスだった使い魔-48b


 ロマリア大聖堂。
 祖王である聖フォルサテの名をとって『フォルサテ大聖堂』とも呼ばれ、トリステイン魔法学院を建築する際のモデルともなった建築物である。
 その外観は壮麗かつ雄大で、まさにハルケギニアで広く信仰されているブリミル教の象徴にふさわしいと言えよう。
「……………」
 そんな神聖な建築物の地下深く。
 ある世界においては『ミルトカイル』と呼称される赤や青の結晶が深く根を張る、暗く湿った空間。
 ロマリア教皇、聖エイジス三十二世ことヴィットーリオ・セレヴァレはそこにいた。
 対面には彼が『召喚』した『使い魔』である異形の怪物……ヴァールシャイン・リヒカイトが直立している。
「それでは、あなたの負った傷はほぼ完治したということですか?」
「……そうだ……。……これで我は……十全に力を発揮することが……出来る……」
「何よりの知らせです」
 ヴィットーリオはにっこりと笑い、自身の使い魔が完調に至ったことを祝福する。
 しかし彼のその笑顔も数秒で霧散し、今度は無表情のままで懸案事項について思索を始めた。
「アインストを自由に生み出せるようになったのは喜ぶべきことですが……」
 ……これまで幾度となくアルビオンにアインストの群れを出現させたことにより、どれだけの数を出せばヴァールシャインがどの程度消耗するのかは把握が出来ている。
 ヴィットーリオの分析では、おそらく限界で三千ほど。
 それを超えればヴァールシャインの身体はまた崩壊を始めてしまうだろう。
 まあ、これは構わない。
 無限に生み出すことが出来たら、万が一暴走してしまった際に歯止めが効かなくなってしまう恐れもある。
 自壊させるように命じれば何とかならないでもないが、念のための安全装置は必要だろう。
 むしろ数的な制限を早めに見極めることが出来て僥倖、と捉えるべきか。
 自軍の戦力については『多過ぎる』ということはないし、アインストが三千体もいれば余程のことがない限りは負けることなどあるまい。
 ハルケギニアの国の一つや二つくらいなら簡単に滅ぼせそうである。
 もっとも、滅ぼしたいのはあくまでエルフなのだが。
 さて、問題は。
「そのアインストの制御……ですね。今のままでは生み出しても無差別に破壊や殺戮を行うだけですから」
 そう遠くない将来に自分が始める『聖戦』には、ハルケギニア中の軍事力を総動員させる予定だ。
 無論、その中にはアインストも組み込みたいと考えてはいるのだが、組み込んだ戦力が敵味方の区別なく暴れられては困る。
 常に暴走しっぱなしの力など、いっそのこと無い方がマシだ。
 整然と隊列を組んで……とまでは言わないが、せめてエルフだけを攻撃対象にしてもらわなくては。
「……我らは……人間の識別や選別を行うようには……造られていない。それでも選別を行いたいのならば……我か……あるいは我を通して貴様が……操らねばならない……」
「成程」
 使い魔から懸案事項についての解答を貰い、頷くヴィットーリオ。
「ならば、訓練を積んでいく必要がありますね……」
 ヴァールシャインと感覚を繋ぎ、念でアインストを操作する。
 一朝一夕に出来ることではないだろうが、地道にやっていくしかないだろう。
 ……確かに自分の目的は『聖戦』の発動とその勝利であり、可能な限り速やかにそれを果たす必要があるが、だからと言って焦り過ぎてはいけない。
 磐石の態勢、万全の備えで臨む必要がある。
 何故なら自分の双肩には、このハルケギニアの運命がかかっているのだから。
「……………」
 決意を新たにしたところで、ヴィットーリオはまた別の懸案事項に取り掛かる。
「……しかし、トリステインの『虚無』の担い手がこの戦に参戦しなかった、というのは予想外でしたね」
 ヴィットーリオが思い描いていた展開では、トリステインの『虚無』の担い手はこの戦に参加するはずだった。
 それによって、呪文の一つくらいは覚えてもらう予定だったのだ。
 自分の『記録』のように必ずしも戦闘に利用の出来る『虚無』の呪文を修得してくれるとは限らないが、何もないよりは覚えてくれた方が良いに決まっている。
「ふむ」
 トリステインの『虚無』に目覚めた人間は、九割がた特定している。
 公爵家の三女。
 実際に会ったことこそないものの、得られた情報から分析するに間違いなく戦に参加すると思っていたのだが。
「これは若干、軌道を修正する必要がありますか……」
 この戦にトリステインの『虚無』が参加しないこと自体は、大した問題ではない。
 要は最終的にトリステイン側が勝てば良いのだから、イザとなれば自分が手を出してアインストを出現させればそれで済む。
 トリステイン・ゲルマニア連合軍は戦に勝利し、自分はアインスト操作の訓練にもなり、まさに一石二鳥。
 今アルビオンで行われている戦については、これでいい。
 問題は、トリステインの『虚無』の今後の動向だ。
 確か彼女はアンリエッタ女王と幼少の頃からの付き合いがあり、その願いならば一も二もなく引き受けるという調査結果が出ていたはずだったが、彼女はそれを突っぱねた。
 これではやがて行われる『聖戦』への参加も拒否されてしまうかも知れない。
 アルビオンとの戦を拒否した人間が、『聖戦』に参加する可能性は……『真実』を告げればどうなるかは分からないし、直接話をしたわけでもないので何とも言えないが、決して高くはあるまい。
「トリステインの『虚無』が欠けたまま『聖戦』に臨む、ですか」
 あまり考えたくない事態である。
 だがどうするか。
 素直に説得に応じてくれるくらいなら、最初からアルビオンに向かっているだろう。
 洗脳などしたら『虚無』の力の源である『心の動き』が鈍化してしまうかも知れない。
 殺してしまって別の人間が『虚無』に目覚めてくれるのを期待する、というのも効率的ではない。
 と言うか、これはどうしようもない場合以外は避けたい。
 せっかく『エクスプロージョン』という攻撃用の魔法を覚えてくれているし、次のトリステインの『虚無』がそれを修得してくれるとも限らないのだ。
「……………」
 ならば彼女の説得が出来る誰かを、こちら側に引き込むか。
 しかし女王の命令すら拒否してしまうような人間に対し、誰を味方につければ良いのだろうか?
「……あの少女が逆らえない、あるいはあの少女にとって多大な影響を与える者……」
 ヴィットーリオは地下室に備え付けられている本棚をあさり、少女についてのあらゆる情報が記載された紙の束を引っ張り出す。
 『虚無』と思しき人間、および『虚無』となり得る可能性のある人間については、生まれや経歴、対人関係、性格などの情報を把握出来るだけ把握していた。
 ハルケギニアに6000年以上の長きに渡って根付いているブリミル教、その力の一端と言えよう。
 だが、その力を持ってしてもアルビオンの『虚無』についての情報はほとんど掴めていなかった。
 その理由はいくつか存在する。
 第一に、アルビオンの『虚無』の担い手たる人物が人里を離れて生活し始めた初期の頃には、本人のあずかり知らぬところで担い手の『保護者』が世話を焼き、自分たちに近付く怪しい人間をとにかく片っ端から排除していること。
 第二に、担い手はその『虚無』を(当人は『虚無』という自覚はないが)駆使して自分の素性がバレそうになるたびにその相手の記憶を消去していること。
 第三に、最近になって担い手に使い魔として召喚された人間が『(本人の尺度では)軽く』情報操作を行っていること。
 と、このような理由でアルビオンの『虚無』の担い手についての情報は漏れにくくなっていたのだ。
 閑話休題。
「…………む、う」
 ヴィットーリオは、少女の情報が記載された紙の束をペラペラとめくって情報を検分しつつ、何か付け入る隙はないかと考えを巡らせる。
 だが、どうにも決定的な人物がいない。
 ……そもそもアンリエッタの要求を拒否している時点で、彼女の性格や対人スタンスは以前のそれとは変容しているはずなのだから、過去の情報にこだわるのは意味がないのかも知れない。
 それでも、何かヒントくらいはないものか……とヴィットーリオは彼女の実家周辺の地図を見つめる。
 近所付き合いというわけでもないにしろ、既知の人間の言葉ならば少しは心を動かされる可能性もあるからだ。
 そして。
「む? これは……」
 公爵家の広大な領地。
 その土地に寄りそうようにして存在する小さな領地に、ブリミル教の若き教皇は目を付けた。


「……何の用だ、シュウ・シラカワ」
「いえ、特には。強いて言えば、あなたの様子を見に来た……というところでしょうか」
 ユーゼスはいきなりやって来た来訪者へと怪訝な顔で問いかけたが、その来訪者はあくまで涼しい顔のまま答える。
 相変わらず読めない男だ……などと思いつつ、ユーゼスは更に問いを重ねた。
「私の様子を? 何のために?」
「あなた自身はともかく、少なくとも私のいた世界では『ユーゼス・ゴッツォ』と言えば極悪人の代名詞のようなものでしたからね。その同存在であるあなたに注意を払うのは当然でしょう?」
「……確かに」
 仮にこの世界に宇宙刑事や光の巨人が存在していれば、ユーゼスとて干渉はしないまでも動向を見張るくらいはしているはず。
 ましてやそれが自分の手の届く範囲にいるのなら、尚更だ。
 つまりシュウの行動は当然と言えるのだが……。
「いい気分はしないな」
「それはその通りだと思いますが、しかしあなたにだけは言われたくありませんね、ユーゼス・ゴッツォ」
「……………」
 自分の過去の所業を振り返るに、返す言葉が見つからない。
 しかし『表舞台には出ず、裏から色々と手を回してきた』と言うのなら、確かこの男もそうではなかったか。
「ともあれ私はあなたに対して警戒はしていても、特別に危険視しているというわけではありません。……極端な話、あなたが何をたくらんで何をしようとも、私に干渉してこない限りは構いませんし」
 シュウはそこで一端言葉を区切り、目を細めてユーゼスを見る。
 そして『ある事柄』を自覚させるため、あらためて宣言を行った。
「―――もっとも、私に対してわずかでも危害を加えようと言うのならば、その時は容赦しませんが……」
「……分かっているつもりだ」
 ユーゼスとしても、シュウと事を構えるつもりはない。
 この男の存在は、少なくとも自分の手には余るのだ。
 これは別に『絶対に勝てない』という意味ではないし、上手くすれば出し抜くくらいは出来るかも知れない。
 だが、出し抜いたとしても手痛い報復を受けるのは間違いあるまい。
 『周囲から天才と認定されただけの人間』と『本物の天才』との差、とでも言おうか。
 とにかく勝てる確率は、限りなく低い。
 もっとも、シュウ・シラカワとて自分から敵を作るタイプではないようだし、変に利用しようとしたり危害を加えたりしようとしない限り大丈夫だとは思うが。
 さわらぬシュウ・シラカワにタタリなし、というやつである。
「……それで、お前は私の様子を見に来ただけなのか?」
「いえ、本来の用事はこちらの学院に勤めているミス・ロングビルを迎えに来ることでしたからね。あなたに会うのはついでのようなものです」
「ミス・ロングビル? ……ああ、そう言えば以前の一件で親しげに話していたな」
 シュウもこのハルケギニアで活動するための足がかりくらいは持っている、ということだろう。
 それが自分のいる魔法学院の職員だったという点が少々引っ掛かりはするものの、ここは気にしないことにしておく。
「そういうわけですので、ご婦人を待たせないためにも私はこのあたりで失礼させていただきます」
「……………」
 無言でシュウを見送るユーゼス。
 別にこの男に対して執着や因縁があるわけでもないし、それこそ手を出すつもりもないのでアッサリしたものである。
「ああそうだ、『ご婦人』という言葉で思い出しましたが……」
 と、ドアを開けて部屋から出る直前になって、シュウはユーゼスの方を振り向いた。
 その顔には、何かのたくらみ……と言うかイタズラを思いついたような微笑が浮かんでいる。
「……何だ?」
「日頃お世話になっているご婦人には、何かをしてさしあげた方がいいと思いますよ」
「?」
「余計なお世話かも知れませんがね。それでは」
 バタンとドアを閉め、退室するシュウ。
 後に残される形となったユーゼスは、今のシュウの言葉を反芻し……。
「…………何が『余計なお世話』で、そしてそれがなぜ私の周囲にいる女の話に繋がるのだ」
 『それ以前の問題』について思案を巡らせる。
 ―――さしものシュウ・シラカワと言えども、この男の鉄骨入りの鈍感ぶりまでは予測しきれないようであった。


 翌日。
「ユーゼス、荷物は詰め終わった?」
「完了している。あとは機体に火を入れるだけだな」
「よろしい。それじゃ準備なさい」
「了解した」
 ルイズとユーゼスはラ・ヴァリエールに一時帰郷するべく、発進準備の済んだビートルに荷物を詰め込んでいた。
 なお帰郷の理由は周知の通り、魔法学院が閉鎖されてしまうためである。
「はあ……。まったく、いくら戦の真っ最中とは言え、慌ただしいったらないわね」
 そんな主人と使い魔の様子を、エレオノールは不満そうな顔で眺めていた。
 その不満の理由は、
「……アカデミーに戻ることになってユーゼスとの時間が減るのがそんなに嫌なんですか、姉さま?」
「なっ……! どっ、どうしてそういう話になるのよ!?」
 妹によって限りなく図星に近い指摘をされ、多いにうろたえる11歳年上の姉。
「どうしても何も、わたしはただ見たままを思いついたままに喋ってみただけですけれど?」
「ぬ……、き、貴婦人たるもの、そのような思慮の浅いことは……。……?」
 その時、エレオノールは妹の変化に気付いた。
 ―――おかしい。
 ルイズの雰囲気が違う。
 劇的では決してない。
 だが、『僅か』とか『少し』とか言うほど小さくもない。
「?」
 はて。
 見た目は全く変わっていないはずなのに、何だか、こう、自分の知り得ない未知の要素がプラスされているような。
 そんな気がする。
 それに、こんな風に自分をからかうようなことを言うなんて、これまでのルイズからしてみれば信じられないことだった。
 年が明ける前は何かにつけて自分に張り合ってきたが、今はそれも随分と大人しくなっているようだし。
 いくらユーゼスの影響があるとは言え……いや、むしろユーゼスの影響があるのならこんな風になったりはしない。
「???」
「……どうしました、エレオノール姉さま? わたしの顔に何かついてます?」
「い、いいえ、何も」
 これまでに片思い程度は幾つかあれどマトモな恋愛経験ゼロ(現在進行形が一つあるが)、つまりマトモな失恋経験もゼロな28歳のアカデミー主席研究員はそんな妹にひるみつつ、しかし圧倒はされまいと気を引き締めた。
 ちなみに年が明けたので、ハルケギニアの住人は自動的に年齢が一つプラスされている。
「ん……ゴホン」
 気を取り直し、エレオノールはルイズに向き直ってからいたわるように話しかけた。
「……ルイズ、もういいの?」
「は? ……もういいって、何がです?」
「えぇと……何だかよく分からないけど、ここのところ塞ぎ込んでいたでしょう? 部屋からもほとんど出て来てなかったし、何か余程のことがあったのかと思ってたんだけど」
 遠回しに『あなたのことが心配だったのよ』と伝えてくる長姉に対して、ルイズは苦笑しつつ『結果だけ』を話す。
「ん……、そうですね。自分でも呆れるくらい泣きまくって、言いたいこと言ったら意外にスッキリしちゃいました」
「え? あ、ああ、そう……」
 事の発端も途中経過も全然知らないのでよくは分からないが、とにかく自己解決したらしい。
 もしかしたら雰囲気が変わったのは、その件に関係があるのかも知れないが……。
(う~ん……)
 何なのだろう。
 あまり深く首を突っ込むことではないとは思うものの、何となく気になってくる。
 女が一晩で劇的に変化する、何か。
(……まさか)
 ―――いや、いくら何でもそれはない。
 魔法学院には女しかいなかったのだし、第一、男がいたとしてもあのルイズがそう簡単に許すとは思えない。
 ………………許しそうな人物に一人だけ心当たりがないでもないが、ルイズは自分の使い魔さえもシャットアウトしていたのだからそれもないだろう。
 でも、万が一そんなことになっていたら。
 自分は比喩とか冗談とかを抜きにして、その『心当たり』である銀髪の男を殺してしまうかも……。
(って、それはないか)
 個人的な感情を極力殺して見てみても、二人の間にはそういう雰囲気はない。
 そうなっていたら『相手』の方はともかく、ルイズの方の変化がおかしいからだ。
 ルイズの、少なくとも元の性格は分かっている。
 要するに自分の縮小版みたいなものである。
 だったら、もし自分が彼と『そういうこと』に、なっ……たと、……して………………。
「――――――――――っっ!!!!」
 エレオノールの顔が、物凄い勢いで真っ赤になった。
 シミュレーションした自分のリアクションと、ルイズの今の様子を照らし合わせようとしたのだが、その前段階でとんでもないことを考えてしまったためである。
「……っっっ、っ、~~~!!」
 うつむいて顔を押さえるエレオノール。
 と、そこに、様子がおかしいことを察したユーゼスがやって来た。
「どうしたのだ?」
「さあ?」
 ユーゼスの問いに、やれやれと言った感じで答えるルイズ。
「どうせ姉さまのことだから、何か変なことでも考えたんじゃないの?」
「なっ、ナニって!?」
「……何を言っている、エレオノール」
「うぐぐ……!!」
 ナニかを喋れば喋ればほど、考えれば考えるほど墓穴を掘っていきそうな気がする。
(お、落ち着きなさい、エレオノール……)
 すぅ……。
 ……はぁ。
 エレオノールは深呼吸して気を落ち着かせようとし、ついでに自己暗示を試みる。
 まあ待ちなさい、私。
 冷静になるのよ。
 ただ想像しただけでこんなになるんじゃ、いざ実際に……いやいやいや。
 とにかく、私、冷静に。
 私、うろたえないで。
 私、落ち着いて。
 私、自信持って。
 私、余裕たっぷり。
 私、貴族。
 私、名門ラ・ヴァリエール家の長女。
 私、アカデミーの主席研究員。
 ついでに私、綺麗。
 凄く綺麗。
 ハルケギニアで一番綺麗。
 ルイズもカトレアも何のその。
「……よしっ」
 一体何が『よし』なのか自分でもいまいちよく分からないが、とにかく頷いて気を取り直すエレオノール。
 と、その時。
「あれ?」
 エレオノールはふと何かに気付いて、周囲を見回した。
 だが何もない。
 ……いや、そもそも自分は一体何に気付いたのだろうか。
 首をかしげて今の感覚を思い出そうとするが、そこに妹から声をかけられる。
「姉さま、少しは落ち着いてください」
「…………言うようになったわね、ルイズ」
「おかげさまで」
「エレオノールの様子が安定しないのはいつものことだと思うが」
「うるさいわね」
 まあいい。
 どうせ何か小さい物音が自分にだけ聞こえたとか、あるいは空耳とかだろう。
 気にする必要もあるまい。
「それじゃ二人とも、あとでヴァリエールの屋敷で会いましょう」
「はい。エレオノール姉さまもお気をつけて」
「ええ」
 そしてエレオノールはルイズからユーゼスの方に視線を移し、一瞬、彼と視線を絡ませて。
「待っている」
「ええ、待っていなさい」
「フッ……」
「ふふ……」
 一言ずつの言葉と、少々の笑い声を交わすと、ユーゼスは踵を返してビートルに乗り込んでいく。
 ルイズもそれに付いていく形で乗り込んでいったが、そのときに聞こえた、
「……あ~……ったく、やってらんないわ……」
 という呟きは何だったのだろう。
 ルイズが乗り終わると乗降口の扉が閉められ、それから10秒もしない内にプラーナコンバーターを動力源としたビートルは飛び立ち、物凄いスピードでラ・ヴァリエールの方角へと消えていった。
 それを見送り終わると、エレオノールは学院の正門前に待たせてある馬車へと足を進める。
「さてと」
 まずはアカデミーに戻って、溜まっているであろう仕事を片付けなくてはならない。
 何せ三ヶ月も空けていたのである。
 仕事の量にもよるが、しばらくは実家に戻れそうになかった。
















<……………………>





<……あれだけ接近している状態でもユーゼス・ゴッツォに気付かれないのであれば、問題はないな……。
 あとはタイミングを見計らって、あの女の意識に接触すればいい……>


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