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ゼロの戦闘妖精-09

Misson 09「伝説のフェニックス」(中編)

アンリエッタから準備の為の時間をもらい ルイズが向かったのはグリフォン隊舎だった。
騎士見習いとは言え 部隊に所属している以上、少しばかり?無茶をするからには 事前に話しておいた方が良いとの判断からだ。
そして ワルド隊長に報告。幸い 今日はまだ『市中見回り(という名目の 盛り場巡り)』に出向いていなかったので、すぐに会う事が出来た。
ところが、姫様のラブレターの件を説明しても、
「なんだ。結局 君の所へお鉢が回ってきたのか。」
と あまり驚いていない様子で、
「隊長、ご存知だったんですか?!」
ルイズの方が逆に驚いた。
「宮廷中枢の主だった者は 殆どが知っているよ。バレてないと思っていたのは、姫様御本人位だろうね。」
溜息をつくルイズ。(そんな事じゃないかと思ってたけど・・・)

アンリエッタ姫とウェールズ皇太子が恋仲であったのは 周知の事実だ。
そして、ゲルマニアとの同盟の為に 政略結婚を纏め上げたマザリーニ枢機卿は、官僚としては極めて有能である。
計画遂行に当たって 危険な書面の存在を見落とすはずがない。
実のところ 姫の恋文の存在を暴露されても、さほど影響は無いのだ。
戦争中及びその前後においては、真偽不明な怪文書が星の数ほど乱舞する。これもそれらの一つだとして、知らん顔の半兵衛を決め込めばイイ。
もちろん 相手のゲルマニアには、事前に真相を説明しておく必要があるが。とはいえ、なにせ 第四夫人まで娶ろうという皇帝陛下だ。別れた男の事など 気にするとは思えない。
ただ、役人連中は そうはいかない。トリステインは 同盟において様々な譲歩を強いられるだろう。

そこまでは判る。だが、ルイズは 何か附に落ちないモノを感じていた。
「隊長、以前言ってましたよね。『宮廷じゃ 自分なんて下っ端』って。
 それが いつの間に 『主だった者』にまで出世したんです?」
ワルドは、少しイヤそうな顔で
「ふぅ・・・ ルイズ、君はサラッと言うけど、
 そう言うことって 普通 あまり本人に面と向かっては聞きにくいモンじゃないのかい。
 まぁ 『些細な疑問でも そのままにはしない』ってのは、犯罪捜査の基本だし。しょうがないか。 
 うん、僕がこの話を聞いたのは レコンキスタの工作員からさ。
 あいつら 僕を仲間に引き込もうとして接触してきたんだ。今でも付き合いはあるから 他にもイロイロ聞いてるよ。」
仕返しとばかりに、こちらもサラリと爆弾発言。堂々と、『敵の工作員と連絡を取っている』と宣言。
「なっ なんですってぇ~!!!
 隊長、まっまさか トリステイン裏切る気なんですかぁ~!?!」
ワルドの胸の辺りを握って、襲い掛からんばかりに詰め寄るルイズに、ワルドは笑って
「はははっ それこそ『まさか』だよ。僕はあいつらが大っ嫌いだ。
 貴族とは名ばかり、ろくでも無い血筋と地位をひけらかして、威張り散らすような連中の寄り合いになんて 間違ったって参加するもんか!」
「それじゃ どうして?」
「逆工作員、二重間諜ってヤツだよ。
 相手の誘いに乗った振りをして 向こうの情報を探ってたのさ。」

「活動対象の国に潜入した工作員がする事の一つは、政府や商人 軍の中に協力者を作ることだよ。
 エサは金だったりオンナだったり 本国での地位だったり、様々だね。
 そんな工作員の目から見て、僕 ジャン=ジャック・フランシス・ド・ワルドがどう映るか?
 魔法衛士隊の隊長というそれなりの役付きで、盗賊団などの地下組織を相手にしていて、その上 遊び人で万年金欠病。 
 自分で言うのもナンだけど、これほど寝返らせ易そうな奴は居ないと思うよ。
 で、相手の誘いに乗った振りをして 大勢には影響の無い情報を流しながら、トリステイン国内のレコンキスタ側諜報組織の全貌を探っていたんだ。
 獅子身中の蟲を一網打尽にする為にね。」
「あっ、隊長が前に言っていた『犯罪組織』って!」
「そういう事。
 こいつ等は 既に国家中枢にまで入り込んでいるから、グウの音も出ないぐらいに証拠を固めてからでないと手が出せなかったんだ。
 アンリエッタ様の件だけど、
 もし 手紙回収を姫様が誰かに命じられるとして、敵に包囲された城に密かに潜入し 篭城中の総大将に会い もう一度最前線を突破して帰還する。
 そんな事が出来るのは、今のトリステインじゃ 僕も含めて五人いるかどうか。
 となると、候補者の中で一番下っ端の僕が行かされる可能性は かなり高かった。
 雪風の様な 非常識な使い魔が召喚されでもしなければ、アンリエッタ様も君に依頼しようとは思わなかっただろうし。」
そう言いながらもワルドは、
(いや あの姫様ならば、ひょっとしたら…)
と その場合の恐ろしい結末を想像してしまい、全力でそれを頭の中から振り払った。
「で、そこに レコンキスタが目を付けた。
 奴らは 僕にこう命じてきたのさ。
『皇女から手紙回収を指示されたら それを手に入れて、ウェールズ皇太子を暗殺しろ!』ってね。」
「酷い…」
雪風から 戦争についての睡眠学習を受けているルイズだが、暗殺等の不正規戦闘については さほど詳しくない。
非人間的な、それでいて人間以外には為し得ない、ドロドロとした 裏社会の殺し合い。
思わずルイズが洩らした呟きに、
「そうだろうルイズ。
 奴ら 僕の事を『使い捨ての三下』扱いしやがったんだから!」
騙し合いも殺し合いも日常でしかないワルドにとっては、ルイズの感傷など 遥か昔の忘れ去った過去だった。

「念を押すけど
 …本当に大丈夫だろうね?これで、もし君が撃墜されたなんてことになったら、たぶん僕等は死刑じゃ済まないよ。」
「大丈夫です。
 入隊試験の時の事、お忘れですか?レコンキスタなんかに グリフォン隊以上の兵が居るとは思えません。」
「何も判らないうちから そうやって敵を侮ると、痛い目を見るかもしれないぞ。」
「それも大丈夫です。
 ここのところ毎晩、アルビオンまで高高度偵察に飛んでますから。
 配備中の艦艇、武器弾薬の配置、監視体制その他、全て把握済みです。」
別に 今日の事が念頭にあったわけではない。
偵察機としての雪風の根幹プログラムが深層心理に影響を与えるのか、毎晩 前線の状況を確認しなければ、ルイズは熟睡出来なかったのだ。
「あちゃ~、そうだった。初めから君に任せればよかったんだ!
 なら、人手が足りないってのに わざわざ偵察に隊員を送るなんて事もいらなかったな。」
大袈裟に嘆くワルドに ルイズは
「隊長、そんな事は無いですよ。
 いくら雪風でも、兵士の噂話やボヤキまで 聞き取ることは出来ませんから。」

グリフォン隊隊舎から魔法学院に戻り、部屋で留守番のデルフリンガーを専用ラックに装備する。
「デルフ、大体判ってるわよね。
 悪いけど、アルビオンで篭城中の王子様の所へ 先触れとして、また『飛んで』もらうわ。」
あらかじめデルフリンガーには 先程のワルドとの話を 雪風経由で傍受させておいた。
「おう。任せときな。
 こないだ『落っことされた』から もう慣れちまったぜ。」
わざわざ『落とされた』と言いなおすあたり、まだ根に持っているようだ。
「まぁ 相棒の世界の『ばんじぃじゃんぷ』とかいうのと一緒だな。ヒモはついてねぇけど。
 一回やっちまえば中々楽しいモンだぜ。
 それに 今回相棒に乗るのは この国のお姫様なんだろ。
 ありがてぇこっちゃねぇか。しがねぇインテリジェンスソードの俺っちが、なんと姫様の先触れ役をやらせて貰えるってんだからよ!」
おそらく彼の六千年の人生?は、剣士や傭兵達の様な荒くれ者に囲まれて過ごした日々ばかりだったのだろう。
高貴な姫君と接触できるのが よっぽど嬉しいらしい。デルフリンガー、意外とミーハーだったりする。
(デルフったら、姫様と私で 随分扱いが違うじゃない。私だって 一応『公爵令嬢』なのよ!)
ちょっとムッとする ルイズ。
「よかったわね~、デルフ。
 じゃ、姫様にもデルフの事をよく知ってもらう為に、アルビオンまでの道中 入隊試験でのアンタの活躍でも見てもらいましょうか?」
「…嬢ちゃん あんた、やっぱり性格悪ぃよ。」

学院で給油等を済ませて王城に戻る。掛かった時間は、城を飛び立ってから かっきり半刻。
出掛けに 最初に会った若い近衛兵に話を通しておいたので、今回もモメ事等なく入城できたが、出迎えの兵士(若手の兵ばかり)がやたらと増えていた。
機体から降りたルイズが「何かあったんですか?」と問うと グループのリーダー格らしい騎士が答えて
「いや、別に何か問題があったって訳じゃないんだが・・・
 実は ウチの従兄弟が この『雪風』に乗ったのを えらく自慢していて、何度も話を聞かされてたんだが、
 実物は 聞いた話の何倍もカッコイイな!」
それを皮切りに 他の者からも次々に声が掛かる。
「どうだい、今度コッチにも 体験飛行の割り当てを廻してもらえないかな?」
「時間があるなら、この後すぐにでも!」
「カネの事なら 親のスネ齧りな学生連中よりは 融通がきくんだけど・・・」
何の事は無い、『雪風ファンの集い in近衛隊』だった。
(雪風の噂って、どこまで広がってんのよ~)ルイズは心の中で叫んだ。
「先の事は何とも言えないけど、今日はダメね。先約があるの。
 今夜は一晩中 アンリエッタ妃殿下の貸し切りよ!」
騎士達から『オオッ~』と声が上がるが、それは(驚き)よりも(納得)の雰囲気の方が強いようだった。
「まぁ アンリエッタ様じゃ仕方ないか!」
「あの姫様が、こんな面白そうな機械に 乗らないワケがないからなぁ。」
「間違いなく 大喜びされるでしょう。」
(んっ? 姫様と『機械』?)ルイズにとっては 結びつかない言葉だった。
「それって どういう事です?」
近衛騎士達が答えて、
「あぁ アンリエッタ様の趣味でね。数年程前から、高度なマジックアイテムや 複雑な動きをする機械を集めていらっしゃるんだ。
 部屋の中にも いくつか持ち込んでたハズだけど、見なかったかい?」
(そういえば 部屋の隅の方に 何かガラクタみたいなのが転がっていた様な…)
「妙な機械を作っている 魔法学院のナントカって教師の噂を聞いて『一度会って ゆっくり話をしてみたい』とか言ってたしね。」
(コルベール先生、おめでとうございます。意外な所に 貴方のファンが!)
「女性で そういうモノに興味を持つのって 珍しいだろ?」
ルイズが知っている 昔のアンリエッタに、そんな兆候は無かった。
…一体何が 彼女を変えてしまったのだろうか?

さて 姫様の部屋に戻ると、
「遅いではありませんか、ルイズ!」と 待ちかねた御様子のアンリエッタ様。
「ひっ 姫様、その御召物は!」
それは 白色ながら見事な光沢を放つ 東方産の『絹』のドレス。
そのままでウェディングドレスにも使えるような 華やかさと高貴さを兼ね備えた一品。
スカートは幾重にも積み重なり まるで堅城の石垣の如く、それでいて たおやかに揺れ動く。
これに勝るドレスは、国中 いやハルケギニア全土を探しても いくつも無いだろう。
「あぁ これですか?
 これは 母が祖母から、祖母はその母から受け継いだと言われる、トリステイン王家の女性に伝えられた『白亜天空のドレス』です。
 非公式の訪問とはいえ トリステインの姫がアルビオンの皇太子に会うのですから、装いにも失礼があってはなりません。
 このドレスは 元々アルビオン王家から送られた物と聞いております。今夜着て行くには、これほど相応しいドレスはないでしょう。」
(そりゃあ 恋人に会える最後の機会になるかもしれないんですから、精一杯の御洒落がしたいのも判りますけど・・・)
ルイズは冷酷に言い放つ。
「姫様。そのドレスはダメです。他の服に着替えてください。」
不満げなアンリエッタ。
「えぇ~。どうしてなの ルイズ。
 解った、これ スカートの裾を床に引き摺ってしまうからでしょ!後持ちの侍女を連れて行く余裕は無いし。
 大丈夫!レビテーションで裾を持ち上げながら歩けばイイのよ。この『裏技』 お母様に教えていただいたのよ。ほら。」
「そーいう問題じゃありません!
 雪風のコクピットは狭いんです。そんなフリフリドレス、シートに収まりません。
 それに 万一どこか変なレバーやスイッチに引っ掛けて誤作動させたりしたら、雪風がどんな機動をするか 判らないんですよ!!」
(まぁ 後部座席の操縦系統を 初めから遮断しておけばイイだけなんだけど)
ルイズは、機長権限?でアンリエッタを着替えさせた。
だが、ここでも問題が。
二人とも ドレスの着付が苦手だったのだ。
流石に 特別な一着である『白亜天空のドレス』だけは、アンリエッタは 手入れや保存法 着付や補修についてまで しっかりと叩き込まれているが、特別な服過ぎて他の

服に応用が利かなかった。
ルイズは 母親の薫陶の賜物で、自分が着る分にはきちんとした『着付』が出来るが、他人に着せるのは勝手が違うのか 上手くいかない。
これから向かう先のことを考えれば、メイドを呼んで着付けさせるわけにもいかず、二人は悪戦苦闘しながら着替えを完了させた。
貴重な時間を 随分と浪費して。

ルイズには もう一つ出発前にしておかなければならないことがあった。
「レコンキスタの攻撃をかわし 無事にアルビオンのニューカッスル城上空まで辿り着いたとしても、そのまま降下すれば 今度は立て篭もる王党派の兵からの攻撃を受ける

のは必死。
 風の魔法で声を増幅して 堂々と名乗れるのならいいのですが、隠密裏の訪問ゆえ レコンキスタに聞かれる訳には参りません。
 ですから、まずは先触れ役を送りたいと思います。」
「でも どうやって?」
「都合のいい事に、私は お喋りな魔剣・インテリジェンスソードを持っています。
 これを先行投下して、城中の者と話をつけさせるつもりなのですが、その剣に こちらがトリステイン王家のものである事の証を持たせたいのです。
 何か そういった物をお借りできないでしょうか?」 
「それなら これを。」
アンリエッタは自らの手から指輪をはずし、ルイズに手渡した。大粒のルビーが嵌められた その指輪を見て驚くルイズ。
「姫様。こっ これは!」
「えぇ 『水のルビー』です。
 始祖ブリミルより 我が先祖が賜ったとされる、トリステイン王家秘宝の一つ。これなら 証として充分でしょう。」
(てか、充分過ぎますって! 大切なモノなんですから、もっと大事にしましょうよ!!)
そう言おうとしたルイズに
《マスター:報告
 当該指輪より、マスターの魔法発動プロテクト関連の共通パターンを検出。》
(うぇ~、よりによって こんな時に!
 雪風、その件は一時保留。後で又報告して。)
《RDY》
「どうしました、ルイズ?」
「いえ 何でも。」

雪風の駐機位置まで行く間、アンリエッタは想像していた。
品評会の日 頭上を駆け抜けていった影、遠目にしか見えなかった姿、会場を揺るがせた轟音。
要領を得ない噂話、その多くで語られる『今まで 見たことも無いモノ』と言う評価。
膨らんでいく 妄想。
そして、実際に目にしたのは・・・その全てを超えていた!

「これが、『雪風』
 空を飛ぶ為に作られた 異世界の機械…
 なんて奇妙で それでいて美しい造形、美術館に飾っておきたい程だわ!」
機体下部に潜り込んで、
「一体何で出来ているのかしら?
 鉄でも銅でも鉛でもない、私ぐらいのの探知魔法じゃ まったく判らない。」
「この足は、ゴムの車輪!それに この部分が伸縮して、なるほど よく出来た機構ね。
 こんな所に扉があって 中は空っぽ。ひょっとして、この足が収納されるの!」
レヴィテーションで機上に昇り、
「こうして見ると 如何に大きな翼かというのが判るわね。
 それに このガラスのドーム、宮廷出入りの職人が見たら きっと気絶するわ。」興奮気味のアンリエッタに、
(雪風、キャノピ OPEN )《RDY》
ルイズから声が掛かる。
「姫様、そこがコクピット 操縦席です。後の席に座ってください。」
ヘルメットとシートベルトを着用させたところで、それまで消していた後部シートのディスプレイを点灯させる。
闇の中に突然浮かび上がった文字や図形に アンリエッタの興奮は最高潮を向かえる。
「この輝きが、魔法で無いなんて・・・信じられない!!!」
「その光こそが、雪風の意思。
 使い魔との『絆』を持つ私は例外として、姫様が見ていらっしゃる異国の文字や記号が インターフェイス、人間と雪風を繋ぐものなのです。」
 ルイズは 翼下のデルフリンガーに、姫様から預かった指輪を しっかりと括り付ける。
「いいこと デルフ、向こうに着いて『アンリエッタ姫の先触れ』だと言う証を求められたら、この指輪を見せなさい。
 下っ端じゃダメよ。エライ人なら これで判ってくれるわ。」
「ああ、相当の値打ちモンだな こりゃ。・・・って、なんか見覚えがあるような気がすんだけど、これ?」
「そうよ、国宝なんだから! ・・・やっぱり、『虚無』関係のアイテム?」
「う~ん。確か 何かと対になってたんだよな~。悪ぃが その先は判んねぇ。
 ま、ドーンと落っこちりゃ ちっとは思い出すだろ。すまねぇが、ちょいと待っててくれ。」
「いいわ。今はそれどころじゃないし。」
ラダーを登って パイロットシートへ。
《フライトチェック、オールグリーン》
(サンキュー 雪風)
そして、
「姫様、お待たせしました。
 アルビオン行き超特急便『雪風』号 只今 出発いたします。」


「もう 大丈夫ですよ。」
水平飛行に移行した機内で ルイズはインカム越しに声をかけた。
短距離離陸・急上昇での高Gは、ハルケギニアの如何なる幻獣・乗り物にあっても体験できるものではない。(『烈風』殿の乗騎を除く)
「ハァ ハァ・・・
 速すぎて 身体が潰れるみたいだなんて、凄過ぎる!
 なんて素晴らしい機械なんでしょう!
 あぁルイズ、もし 雪風が貴女の使い魔でなかったとしたら、私は無理矢理にでも奪ってしまっていたかもしれない。」
今の言葉や近衛騎士達の話に散見された アンリエッタの『機械への興味』。ルイズはそれが気になった。
「アンリエッタ様。私は今日 こうして姫様と二人きりになれて、最初は『昔と全然変わってない』って思ったんですけど、やっぱり変わった事もありますよね。
 そのメカフェ・・・機械好きなところとか。」
「そうね。自分でも 変わった趣味だとは思うわ。
 雪風は別として、機械は話し掛けてくれない。答えてもくれない。機械が幾ら沢山あっても 一人ぼっちは一人ぼっち。
 『おともだち』には なってくれない。
 それでもね、機械は人を裏切らない。蔑んだりしない。都合よく利用したりする事も無い。
 私の周りは そんな人達ばかり。
 だったらいっそ、機械に囲まれて暮らしたい。いつからか、そう思うようになったの。
 やっぱり これって変よね。」
何でもないような口調。それでも ルイズには、アンリエッタの思いが判った。
王宮の影で囁かれる、
『可愛いだけの 看板』『かざりもの』『政も戦も 何も知らない小娘』『冠置き台』『錦の御旗の 旗立て』
それは、
『魔法が使えない 貴族』『無能』『ゼロ』『名家の恥さらし』『欠陥品』『出来損ない』『平民以下』『無価値』
自分に対する陰口又は 面と向かっての罵倒に通じるものだから。   

「姫様、
 私に召喚されるよりも以前の事ですが、雪風は パイロットを裏切った事があります。
 正確には『見捨てた』事が。」
「えっ!」
視線を遠い夜空に向けていたアンリエッタが、驚いてルイズを見る。
「元の世界、雪風本来の戦場で 敵の罠に嵌り、パイロットは重症 雪風も破損。
 雪風を信じていたパイロットは、『雪風と共に死ねるなら』と 死を受け入れました。
 しかし 雪風は自らの機体を放棄し、魂を解き放って新たな機体を得 パイロットを置き去りに飛び去ったのです。」
「そんな、どうして?」
「雪風は、戦う機械 兵器として造られました。人造の魂『プログラム』も又 戦う為のもの。
 雪風が従うのは 戦う意思のある者のみ。たとえ 絶体絶命の危機であったとしても、そこで戦いを放棄した者は 容赦なく見捨てられるでしょう。
 そういう意味で、雪風はトリステインという国家を 主と認めるでしょうか?
 遠戚ともいえる王家を救おうともせず、自国の防衛は隣国の兵頼み。敵に擦り寄らんとする者までいる始末。
 ・・・まぁ 仮定の話に過ぎませんが。」
ルイズは アンリエッタに一本目の矢を放った。
それは 意図的な思考の誘導。皇女を利用しようとする宮廷の重臣達と同様の行為。
トリステインを守る為と言ったところで、免罪符には なりはしない。胸が痛む。心が痛い。
(ごめんなさい、姫様!)
黙り込む姫君。
宮中の評価と異なり、アンリエッタは賢い。ルイズの言わんとする事は 容易く理解できるだろう。
だが、ルイズの意図するところにまでは まだ考えは及ばない。
沈黙。コクピット内に響くのは エンジンの振動音。聞こえるのは、自分の呼吸音だけ。
言葉の無いまま 雪風は飛ぶ。多くの学生カップルを魅了した絶景『雲上の星空』も、アンリエッタの目を素通りするばかりだった。

「ねぇ ルイズ、」
アンリエッタが何かを話そうとした時 コクピットに流れる警告音。
《マスター:報告
 レーダーにレコンキスタ艦隊を補足。艦数11。全艦 ニューカッスル城周辺上空に停泊中。
 180秒後に有効射程入り 更に120秒で交差。》
(来たわね。予定通り 同高度で艦隊をすり抜けるわよ。
 エンジン サイレントモード。Set GUN、Set AAM
 基本は攻撃せずに回避行動。発砲は非常の場合のみ。
 OK?)
《RDY》

「姫様、間も無く到着ですが、その前に 目の前のモニタ画面を見ていて下さい。」
後部シートのモニタ上で レーダー画像が拡大表示される。
「中央が雪風、赤く光る点は 他の飛行物体、この場合はレコンキスタ艦隊です。
 戦列艦が九隻 補給艦二隻で、完全に城を包囲しています。そして」
表示が対地レーダー画像に切り替わる。
「こちらが 地上の兵です。およそ五万人。対する王党派は、五百人~三百人の間。
 これが 現状です。」
抑揚の無い声で、感情を込めずに伝える。ルイズの放つ 二本目の矢。
「あぁ… ウェールズ様!」
顔面蒼白のアンリエッタ。
王党派の敗色が濃厚だということは聞いていたし 理解もしていた。だから無茶をしてまでウェールズに会いに来た。
それでも 具体的な数字を知っていたわけではない。心の何処かで『ウェールズが死ぬ筈が無い』 そう思っていた。
考えが 甘すぎた。
素人目に見ても 勝ち目は無い。城からの脱出すら 困難だ。
そしてこの動乱は、アルビオン貴族派と過激宗教団体レコンキスタによるクーデターである。
現王家を皆殺しにしなければ、目的は達成できない。王と王子の死体を確認するまで 戦は終わらないだろう。
アンリエッタの心に、絶望が広がっていった。

ルイズは 更に追い討ちをかける。
「間も無く、レコンキスタの戦列艦と擦れ違います。
 闇の中 ほんの一瞬ですから、何も見えないかもしれません。
 それでも 見てください。頭の中に焼き付けてください。
 これが、『敵』です。」

月明りを受けながらも 闇よりも暗い巨大な塊。元アルビオン空軍・現レコンキスタの戦艦、その10メイルと離れていない至近距離を雪風は通過する。
アンリエッタも王族であり 式典等で自国の戦艦は見知っている。主砲の発射訓練に立ち会った時など 頼もしく思えた程だった。
だが 今感じているのは 『恐怖』。
見張りの兵は雪風に気付いただろうか? 何時 大砲は此方に向けて火を噴くのか? 竜騎士隊の出撃は?
全ての思いは 『死』を指し示していた。
自分は なんと言う無茶をしたのだろうか。ただ一目 ウェールズ様に御会いしたかった、それだけだったのに。
それすら出来ずに この空で散るのだろうか。

「姫様 大丈夫、御心配は要りませんよ。
 こんなボロ船に落とされる程 雪風はヤワじゃありません!
 さぁ もうニューカッスル城の上空です。そんな御顔をウェールズ様に御見せするつもりですか?」
ルイズは 泣き顔のアンリエッタにハンカチーフを差し出した。
現在 雪風は『サイレントモード』(エンジン等の音を 逆位相の振動で相殺するモード)で飛行中であり 発見された可能性は低い。
とはいえ あまり時間もかけられない。
(デルフ 頼んだわよ。しっかり話 通してきてね!)
〔おう 任せときな。それじゃ、行ってくるぜ!〕
《マスター/デルフリンガー:投下》

固定装置がリリースされ、一振りのインテリジェンスソードが暗い大地へ消えていった。
『うぉおおおお~!
 待ってな姫さん、すぐ王子様に逢わせてやっからよ~』
との雄叫びを残して…

        続く

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