あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

メガネの使い魔

『彼』の手が、笑顔を忘れた少女の顔に触れる。
「あ……」
タバサは思わず、声を漏らした。
心臓が激しく脈打ち、顔が熱くなる。
この人のおかげで、私は今ここにいる。
『彼』は私の恩人。『彼』は私の勇者様。
『彼』との出会いが、思い出される。



トリステイン魔法学院で、ゼロのルイズとあだ名される少女が召喚したのは、メガネをかけた長身の少年だった。
「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするの?」
そんな声の後、皆が一斉に笑った。
嘲笑の対象となった桃髪の少女は、クラスメイトたちに怒鳴り返していたが、私はそんな声を聞き流す。
平民の使い魔。
特殊な事例のため、ほんの少し気になったが、その時はまだ、私は『彼』に何の感情も抱いてはいなかった。

私が『彼』に興味を持ち始めたのは、使い魔召喚の儀式の翌日。
『彼』とギーシュ・ド・グラモンが起こした決闘騒ぎの時からだった。
香水の壜を拾ったとか、二股がばれたとか、そんなくだらない理由で始まった決闘。
私は親友のキュルケに付き合う形で、本を捲りながらその見物に混ざっていた。
とは言っても、平民と貴族の決闘など、結果はわかりきっている。
私自身、決闘に興味はなかったが、平民の『彼』が勝つことは無いだろうと思っていた。
だが『彼』は、そんな常識を、異能を持って覆した。
迫り来る青銅のゴーレム達に、『彼』はすっと手を伸ばし、短い言葉を発する。
すると一瞬の光の後、彼の腕に巨大な大砲が現れ、砲口から吐き出された鉄塊がゴーレムを一撃で蹴散らした。
杖を手放し、降参するギーシュに、彼は指でメガネの位置を直しながら、何かの数字と、自らの名を名乗った。

それから何日もしないうちに、私は『彼』のさらなる力を目の当たりにする。
決闘騒ぎから数日、巷を騒がす盗賊、土くれのフーケが学院を襲い、宝物庫から秘宝を盗み去る事件が起きた。
『彼』の主であるルイズと、私の親友のキュルケ。
この二人がフーケの討伐に立候補した。
私は友人が心配だったことと、『彼』の能力への興味から杖を掲げた。
だが、フーケ討伐は、私の想像以上に危険なものだった。
フーケの隠れ家らしい廃屋で、早々に目当ての秘宝を発見したはいいが、その直後にフーケの巨大なゴーレムに襲われ、私の魔法も、キュルケの魔法も通用しない。
だが『彼』は、スケート靴の様なもので高速移動し、ゴーレムを翻弄。
ギーシュとの戦いで見せた大砲をはじめ、人の顔を模した立方体や、いくつものブロックが連結したような武器を召喚して、巨大なゴーレムを圧倒した。
その時も、『彼』はメガネを上げながら、何かの数字と名前を名乗っていた。

『彼』の活躍は、それだけに留まらなかった。
アルビオンへの秘密任務では盗賊を蹴散らし、トリステインを裏切った、スクウェア・メイジのワルド子爵さえ倒してのけた。
タルブ戦役においては、未知の機械を操ってアルビオンの竜騎士隊を壊滅させ、アンドバリの指輪で蘇ったウェールズによるアンリエッタ誘拐事件も、『彼』の力で事なきを得た。

アルビオンからの撤退戦。
『彼』はたった一人で七万の軍勢を足止めした。
その後、しばらくの行方不明から生還。
そして、シュバリエの受勲。

まるで物語に登場する英雄のような、『彼』の活躍の数々。
私は次第に、『彼』に興味以外の感情を抱くようになっていった。

そんな折、祖国の王にして、憎き敵である叔父からの無慈悲な命令が届く。
それによる彼と敵対。
そして、任務の失敗。

私は囚われの身となった。

だが、私は『彼』に救われた。
『彼』はあの恐ろしいエルフをも退け、私と私の母を救い出してくれたのだ。
その時もまた、彼はメガネを直して、何かの数字と、自分の名前を名乗った。

そして今、私は『彼』と一緒に、キュルケの実家の一室にいる。
『彼』は私の頬に触れ、私の目を真っ直ぐに見つめながら、今まで私に好意を寄せていたことを、告白した。
メガネの奥の『彼』の知的な瞳に、私は頭がくらくらしそうだった。
嬉しさと恥かしさで顔が熱くなり、頭がとろける様な幸福を感じる。
不意に『彼』の顔が近づく。
私は『彼』に身を預け、ぎゅっと目を瞑った。
私のメガネが、外される。
私は目を瞑ったまま、『彼』の唇の感触を待った。
だが、一向にそれは訪れない。
我慢ができず、私が目を開けると『彼』は――私のメガネにキスをしていた。
それはもう、愛おしそうに。

数秒の混乱の後、私は悟った。

『彼』が見つめていたのは、私のメガネ。
『彼』が好意を寄せていたのは、私のメガネ。
『彼』が救ったのは、私のメガネ。
『彼』が告白したのも、私のメガネ。

恍惚とした表情で、私のメガネに口付ける『彼』。
耐えられなくなった私は、脱兎のごとく逃げ出しながら、人生で一番の大声で叫んだ。

「変態だーーーーーーーーー!!!!」

後ろから、『彼』の声が聞こえた。

「変態じゃない!!! キルノートンだ!! IQ179 キルノートンだ!!!」


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