あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ご立派な使い魔-17


ウェールズに連れられて、秘密港からニューカッスルへと侵入する。
砲撃に晒され、見るも痛々しい城は、その中も重い空気が流れていた。
それでも、一同を出迎えた老メイジは、ウェールズの戦果を聞いてたちまち感激で顔をほころばせた。

「硫黄とは! これで我々の名誉も守られるというものですな!」
「それだけではないぞ、パリー。見ろ、あの御姿を」
「なんと」

老メイジは、ほころんだ顔をたちまち引き締めた。
そして曲がりかけていた腰をしゃんと伸ばすと、一直線に立ち上がり、叫ぶ。

「男子の本懐、これに優るところなし!
 お見事でございます、殿下!」

気づけば他の者達も、そうやって敬礼している。
マーラが入城してきただけで、城が蘇ったかのようであった。

「窮地において、これ以上の激励はない。よく来てくれたものだ……
 で、何の用事だったかな? ミス・ヴァリエール」
「……ですから、大使として……」

どうもおざなりになっているが、本来アンリエッタの依頼が目的なのだ。
というか、ルイズ以外の誰もがなんだかその辺をテキトーに流しているように見える。
ワルドもどうもあちらに集中してしまっているし。それは、頼もしくもあるからいいのだけど。

「そうだった。船の上でも聞いていたね」
「そうです」
「ではこちらへ来るといい。自室までご足労願おう」

流石に、アンリエッタからの手紙を読む時はウェールズも粛々とした顔になった。
遠い地よりの手紙に、思うところは大きいだろう。

「なるほど……アンリエッタは、私の可愛いあの人は……結婚するのか」
「殿下……」

しばし、ウェールズは天井を見上げ、目を閉じる。
ルイズも声がかけられず、思案していたが、ウェールズはすぐに戻った。
そしてある一点を見て、静かに語り始める。

「アンリエッタは、さぞや美しくなったのだろうね」
「はい、こちらに来る前にお会いしましたが……それは、もう」
「そうか。……出るところは出て、くびれるところはくびれているのだろうね」
「はい、それはもう……はい?」

どーもウェールズの目線がおかしいと思ったら。
ルイズの隣に向いている。つまりマーラを見て、でもって、色々、連想するのがアレという訳か。
……まあ、まあ、この程度は、人間というのは生理的に、自然にそうなってしまうのだから仕方ない。
ルイズもぐっと我慢の子である。成長しているようだ。。

「いや失言だった。……了解した。あの手紙は私のナニよりも大切な宝だが、姫からの願いとあれば返さない訳にもいくまい」

すぐに元に戻った。これには安心である。
やはり、ウェールズくらいとなるとそう簡単には欲望には流されないのだ。
ギーシュみたいなのとは違う、とルイズは感心する。

「宝箱でね。……ほら、これだ」

何度も読み返されたらしく、すっかりボロボロになったその手紙を、ルイズは丁重に受け取った。
よほど大事にしていたのだろう、ボロボロでも、大事なところは綺麗なままだ。
この手紙の様子から、ルイズは薄々と感づく。
きっと、姫さまとウェールズ皇太子は……

「……私はこの城を枕とするつもりだよ」
「え……?」

穏やかにルイズを見つめていたらしいウェールズは、先回りしてそんなことを言う。

「アンリエッタには、幸せになってほしいからね」
「殿下、それは……!」
「……しかし、ね」

ウェールズの表情がわずかに翳る。
どうしたのだろうと、ルイズが思う間もなく。

「……やっぱり綺麗なのだろうな、アンリエッタは。
 一目見たかったというのは正直なところだ。そして……」
「で……殿下。でしたら……!」
「あ……ああ、いや……」

わりと見もふたもないことを言いかけたウェールズは、慌てて口をつぐむ。
そして苦笑いを浮かべると、困ったように続けた。

「どうもな。ラ・ヴァリエール嬢。君の使い魔どのは罪作りだな」
「は? マーラが?」
「この御姿を見ていると、ついつい……はは。いや。
 ……男の誇りだとか、名誉だとか。そういうもののない、裸の言葉が出てしまうんだ」
「で、でしたら……!」
「……あくまで、これは裸の言葉だよ。裸で町を出歩く変人はいないように、この言葉も……出来れば、君の胸の沈めてほしい」
「そんな、殿下……!」

これ以上話を続けられては敵わないと、ウェールズは手を振って静止した。
そして時計を確認すると、咳払いして誤魔化してから告げる。

「さて、そろそろパーティの時間だ。
 是非とも楽しんでいってほしい。それと……使い魔どのには是非とも中心となって頂きたい」
「任せておくがよいわな」

マーラは反り返って承諾する。
ルイズは、実に複雑な気分だった。
きっと今のウェールズの言葉は、決して表には出さないものだったはずなのに……
マーラのお陰で引き出した本音といっても、この後を思うとどうにも……切ない。

で、そんな感傷もパーティ会場で散々に打ち砕かれた。

「ご立派様、我らにご加護を!」
「何者をも貫く硬度を!」
「下から一気に喉まで貫くご立派を!」

パーティ会場にいた王党派の人間、尽くマーラに寄ってさすりまくっているのだ。
宗教儀式とも呼べるような勢いがあるが、どういうパーティだこれは。

「い、今までの雰囲気はどうなっちゃったのよ?」
「分からないのかい、ミス・ヴァリエール」

なのだが、ギーシュはどこか悲しい目で言ってきた。

「生の象徴に向かって、死の祝福を願っているのだ。
 これほどに悲しい、しかし雄雄しい景色もないよ……」
「そ……そうなの。……そう、ね」

まあ彼らも必死なのだ。
強がって笑ったところで、迫り来る死を恐れぬものはいない。
だからこそ、マーラの如きあまりにも立派なモノに祈りを託し、せめて自分が最後まで立派でいられるようにと願う……
切ない祈りであることは、ルイズにもどうにか理解はできた。
ただ絵面がいかにも悪い。

「もうちょっとシリアスにならないものかしら」
「先生の御姿あればこその光景さ。これ以上のシリアスはないね」
「……そうなのかもしれないけど……」

悲しい話なのに。
ルイズは今、生と死に潜む喜劇と悲劇、その全てを目の当たりにしている。
生命も死も、いつだって喜劇と悲劇は隣り合わせ。涙と笑いは背中合わせに存在する……
それが真理なのだというのだろうか。そんな真理が、あるのか。それが世の中だというのか。

「……わたし、今、少し大人になった気がする」
「ふっ……かもしれないね」

ギーシュは、何故か儚い微笑みでルイズを称えた。

一人、ワルドは空を見ていた。
使うべき手札は揃っている。後は勝負に出るだけだ。
既にウェールズにも、明日の話を打ち明けた。
彼らの生き様に感動したので、是非ルイズとの結婚式をあげさせてほしい、という。その願いだ。
本来ならばそれにはもっと色々な意味を用意するつもりだったのだが、今はそうではない。

「全てはあれに勝ってから、だな」

己の左手を確かめる。
昨日から摂り続けたたっぷりの栄養のお陰で、今にも爆発しそうなほど身体が熱い。
この熱さはきっと明日にピークを迎える。その時こそ、だ。

「ふん……随分と張り切ってるじゃない」
「……ああ。張り切るさ」

気づけば、隣にフードを被った女がいた。

「私にまで素顔をさらして……随分とまあ、気合を入れたものね? 白仮面さん?」
「はは……君に隠す余裕すらないんだよ、今の僕には。
 君も一度、あれと戦ったのだろう? ならばこの緊張感は理解できるはずだ」
「私の場合は……あれは、まあ……あの決着はね……いや。
 ……セ、セクハラしないでほしいわ!」
「セクハラ?」

見ると、女……フーケの顔が真っ赤に染まってる。

「これは珍しい。君がそんな顔を見せるとは」
「う、うるさいね……」

フーケは、やりづらそうに顔を背ける。

「しかしその調子で大丈夫かね。明日の決戦で、また同じ結末とならないとも限らない」
「それは……あんたが手を打ってくれるんだろう?」
「まあ、そうだ……」

ワルドの眼下には、旅を共にしてきたグリフォンがいる。

「振動が伝わらなければいいのだろう? なら、手はある」
「……だといいんだけどね。まったく……私にこの城に来させるなんて、正気じゃないよ……」

城自体にも思うところはあるらしく、それでフーケは黙ってしまった。
ワルドは、ただ空を見上げるだけだ。迫り来る決戦に向けて……

そして夜が明けた。



「さて、ではワルド子爵からの頼みだ。
 ラ・ヴァリエール嬢と子爵の結婚式を、この私、ウェールズ・テューダーが勤めさせて頂きたい……と思うのだが……
 なんだね、この状況は」

翌朝。礼拝堂に集ったのは、ウェールズ、ギーシュ、キュルケ、タバサ……
そしてワルドとルイズ。更にマーラであった。
マーラとワルドは、礼拝堂の中心で静かに視線を交錯させている。

「結婚式の前に決闘を行うのですよ。言っておりませんでしたかな、殿下」
「そういうことじゃわな」
「いや、聞いてないんだが……というか、決闘?
 何故ラ・ヴァリエール嬢の使い魔と子爵が……え? 結婚するのはラ・ヴァリエール嬢と子爵なのだよな?」

混乱しているウェールズに、ギーシュがそっと近づき、耳打ちする。

「恐れながら殿下。この私、ギーシュ・ド・グラモンが説明致します」
「あ……ああ。どういうことだね」

ギーシュは、薔薇をかざしながら続けた。

「恐れながら、これはトリステインに伝わるメイジの結婚の儀式にございます。
 夫となるべきモノは、自らこそが妻をもっとも守れるものであると示すべく、妻となるべきモノの使い魔に戦いを挑む。
 そして妻の使い魔を打ち倒してこそ夫となる……このような伝統なのです」
「なんと……初耳だな」
「そうでしょう。私が今作りました」
「っておい!」

「殿方、手加減してあげてねー」
「……子爵が生き残れるかどうか」

キュルケとタバサは、例によって呑気なものだ。
わりと他人事だから、というのもあるのだろう。

「マーラどの。……思えば、こうなることは予想できていた。
 ルイズとはずっと離れていたけれど……気にはしていたんだ。
 そのルイズが、驚くべき使い魔を呼び出したと、そんな噂は聞いていたよ。
 そして今……目の前にいる。なるべくしてなった、と思うべきなのだろうな」
「ふむ。小娘を気にかけておったのか?」
「ええ。僕は僕なりにルイズを愛していましたよ……」

静かに、杖を抜く。

「……そしてこの旅だ。
 ルイズは、予想よりもずっと可愛らしく育ってくれていた。
 しかもまったく理由はわからないのだが、予想よりもずっと……
 僕に、甘えてきてくれたのです。抱きついたりしがみついたりしてくれた……
 この感動が、ご立派な貴方にご理解いただけるかは、わかりませんが」
「グワッハッハ! 理解できようとも! ワシは本来そのような存在なるがゆえに!」
「本来……?」
「他化自在天。我が名の一つなり」
「……恐れ入りました。他者の楽しみすら己の楽しみとするとは」

そして。
ワルドは、みなぎる力を杖に込めて、構える。

「では……我が全力を尽くしましょう。ユビキタス・デル・ヴィンデ……!」

呪文とともに、ワルドの姿が5つに増えた。
風の奥義、遍在の魔法である。

「例え五倍に増えようとも」
「そのご立派には及びませんが」
「しかし、我らは」
「硬度、持続力、発射回数において決してひけはとらない」
「……である以上……」

更に、本体らしきワルドが指を打ち鳴らす。
すると礼拝堂の外からグリフォンが入ってきた。

「な、なんだあれは?」

驚くウェールズ。更に驚くべきことには、グリフォンには誰か乗っているではないか。
フードで顔を隠しているが、どうやら女らしい。
というか。あの顔立ちにはどことなく、キュルケ、タバサ、ルイズには見覚えがあった。

「あれ……ひょっとして、よね?」
「…………」

キュルケとタバサが目を細めてそれを睨んでいる、と。
五人のワルドの前方に、突如として巨大なゴーレムが姿を現す。

「ほほう……」

マーラは感心しているようだが、これにはルイズも驚いた。

「え、ええ!? ちょ、ちょっと、ワルド!?」
「君のためだ! 勝つ為に僕は全力を尽くす! そう……
 全てを投げ打ってでも、だ!」

そのゴーレムのかたちには覚えがある。

「……ってフーケじゃないのよ! あれ!?」

まさしく、フーケのゴーレムだ。それは。
礼拝堂には固定化もかかっていたはずだが、それを打ち破ったというのだろうか。
……というか。なんでフーケがそこにいる?

「うるさいね! こっちも仕事なんだよ! 誰が好き好んでこんな城に……!」
「どういうことよ……フーケは捕まったんじゃ……」
「脱獄?」

もう無茶苦茶な状況になってきたが、ワルドは声を張り上げた。

「僕はどんな手を使っても勝利する!
 正々堂々たる決闘においても、だ! どんな手でも!
 小細工ではなく! 全ての力で! 僕は貴方を倒す!
 ……ご覚悟を、マーラどの!」
「面白いわな! 来るがよいぞ……ワルド!」



最後の戦いが、始まる……



「……私の可愛いアンリエッタ。今頃ナニをしてるかなー」

ウェールズはもう訳が分からないので、アンリエッタを思い出していたらしい。


新着情報

取得中です。