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ゼロのアトリエ-22


ひとつの世界があり、ひとつの大陸があり、ひとつの半島がある。
半島に位置する小国「カナーラント王国」。
その中にある小さな村「カロッテ村」に、ひとりの少女が住んでいた。

これは、大きな世界に比べれば、とてもささやかでちっぽけな
ごくありふれた、一人の少女の物語―――

「拡張計画の相談ですか?」
「そうじゃ。二つの計画があってな…」
ある日。ヴィオラートの店を訪ねたオイゲン村長が、村の拡張計画を持ち出した。

オイゲンは威勢のいいポーズをとり、指を高く天に上げて、まず叫んだ。
「難攻不落カロッテ要塞!」
「カロッテようさい?」
「そうじゃ。なにしろ国が全面的に支援してくれるからのう。安定した生活が見込める」
一人で勝手にうむうむと納得しながら、オイゲンは懐を探り、
アジのひらきの置物を取り出してまた、叫んだ。
「驚天動地カロッテランド!」
「きょうてんどうちカロッテランド?」
「うむ。実に魅力的な提案じゃし、可能性はあると思う。が…不安定なのは否めんのう」
村長は微妙に顔を赤らめながらアジのひらきの置物をしまいこみ、改めてヴィオラートに向き合う。
「村の意見も分かれていてな。功労者たるヴィオラートの意見を聞きにきたのじゃ」

「それは…でも、あたしが決めちゃうことになるんですか?」
ヴィオラートが言葉を濁すと、オイゲンは真面目な顔になって答えた。
「いや、わしらがこうして村にいるのは、お前の頑張りのおかげじゃからのう」
しみじみと語るオイゲンに後押しされたヴィオラートは、
村の拡張計画について真剣に考えを巡らせる。

要塞化されれば廃村の危機は免れ、確実に村は活性化するだろう。
しかし、武器や爆弾の使用目的、そしてそれを求める客層。
本格的に要塞になれば、そのような人や物事を呼び込む事になる。

「村長、あたしは―――」
その日、ヴィオラートは一つの決断を下した。
その時点ではただ、何となくこう思った程度の決断であった。
しかし、たしかにヴィオラートは意思と信念を持って決めたのだろう。
無限の可能性に彩られた未来、ヴィオラートの錬金術が向かう道を。


ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師22~


あまりのことに、ルイズ達は口が聞けなかった。ぼけっと、呆けたように立ち尽くす。
「いや、大使殿には失礼いたした。しかしながら、君達が王党派というのがなかなか信じられなくてね」
ウェールズは、イタズラっぽく笑って言った。
「堂々と王軍の軍艦旗を掲げれば、あっという間に反乱軍に囲まれる。空賊を装うしかない、というわけさ」
そこまでウェールズが言っても、ルイズは立ち尽くすばかり。
いきなり目的の王子が眼前に現れたので、心の準備ができていないのだ。
それを見たワルドが、優雅に頭を下げて言った。
「アンリエッタ姫殿下より、密書を言付かって参りました」
「ふむ、君は?」
「トリステイン魔法衛士隊グリフォン隊隊長、ワルド子爵」
それからワルドは、ルイズたちをウェールズに紹介した。
「そしてこちらが姫殿下より大使の大任を仰せつかったラ・ヴァリエール嬢」
「こちらはその使い魔たるヴィオラート・プラターネ嬢にございます、殿下」
「なるほど!君のような貴族が後十人いれば、我らがこのような姿を晒す事もなかったろうに!」
ウェールズは大仰にそう嘆息した後、本題に入る。
「して、その密書とは?」
ルイズが慌てて、胸のポケットからアンリエッタの手紙を取り出した。恭しくウェールズに近づく。
それから、ちょっと躊躇うように口を開いた。
「あ、あの」
「なんだね?」
「その、失礼ですが、本当に皇太子様?」
ウェールズは笑った。
「まあ、無理もない。さっきまでの顔を見せられてはね。…証拠をお見せしよう」
ウェールズは自分の指に光る指輪を外すと、ルイズの嵌めた『水のルビー』に近づける。
二つの宝石は共鳴し、その間に虹の輝きを創り出す。
「水と風は虹を作る。王家の間にかかる橋さ」

ルイズは頷いた。
「大変、失礼をばいたしました」
ルイズは一礼して、手紙をウェールズに渡す。
ウェールズは愛しそうにその手紙を見つめ、花押に接吻した。
それから慎重に封を開き、中の便箋を取り出して読み始めた。
「姫は結婚するのか?あのアンリエッタが。私のかわいい…従妹は」
ワルドは無言で頭を下げて肯定した。
ウェールズは再び手紙に視線を落とす。最後の一行まで読んで、微笑んだ。
「了解した。何より大切な手紙だが、姫の望みは私の望みだ。返すことにしよう」
ルイズの顔が輝く。
「しかし、今手元にはない。空賊船に姫の手紙を連れてくるわけにはいかぬのでね」
ウェールズは笑って言った。
「多少面倒だが、ニューカッスルの城までご足労願いたい」


ルイズたちを乗せた軍艦『イーグル』号は、浮遊大陸アルビオンの海岸線を、
雲に隠れるようにして航海した。三時間ばかり進むと、大陸から突き出た岬が見えてくる。
岬の先端には、高い城がそびえているようだ。
ウェールズはルイズたちに、あれがニューカッスルの城だと説明した。
しかし『イーグル』号は真っ直ぐ城へ向かわず、大陸の下に潜り込むような進路を取る。
「なぜ、下に潜るのですか?」
「叛徒どもの、艦だ」
ウェールズは城のはるか上空を指差す。
遠く離れた岬の上から、巨大な船が降下してくる途中であった。
長さは『イーグル』号のゆうに二倍はある。帆を何枚もはためかせて降下したかと思うと、
ニューカッスルの城めがけて並んだ砲門を一斉に開いた。
砲弾は城に着弾し、城壁を砕き、火災を発生させる。
「かつての本国艦隊旗艦『ロイヤル・ソヴリン』号だ。叛徒どもは『レキシントン』と呼んでいるがね」
ウェールズは微笑を浮かべて言った。
「あの艦は、空からニューカッスルを封鎖しているのだ。たまに嫌がらせのように砲撃を加えてくる」
ルイズは、雲の切れ目に遠く覗く巨大戦艦を見つめる。
「備砲は両舷あわせ百八門。おまけに竜騎兵まで積んでいる」
なるほど、無数の大砲が舷側から突き出て、艦上にはドラゴンが舞っていた。
「さて、我々の船はあれを避けて、大陸の下から城に近づく。そこに我々しか知らない秘密の港があるのだ」


雲中を通り、大陸の下に出る。大陸の陰と雲に遮られ、視界はゼロに等しい。
そのため、反乱軍の軍艦は決してこのあたりには近づいてこないのだ。
「我々にとっては、庭のようなものだが」
貴族派、あいつらは所詮空を知らぬ無粋者さ、とウェールズは笑った。
しばらく航行すると、頭上に黒々と穴が開いている部分に出た。
『イーグル』号はゆるゆると上昇し、航海士の乗り込んだ『マリー・ガラント』号が後に続く。
ワルドが感嘆して呟く。
「まるで空賊ですな、閣下」
「まさに空賊なのだよ、子爵」

穴から港にたどりついたルイズ達は、城内のウェールズの居室へと向かう。
王子の部屋とは思えない、質素な部屋であった。
王子は机の引き出しを開き、宝石のちりばめられた小箱を取り出す。
鍵を使い蓋を開けると、そこにはアンリエッタの肖像が描かれていた。
「…宝箱、でね」
王子は中から手紙を取り出し、ゆっくりと読み返し始める。
何度もそうやって読まれたらしい手紙は、既にボロボロであった。
読み終わると、ウェールズは手紙をたたみ、封筒に入れてルイズに手渡した。
「ありがとうございます」
ルイズは深々と頭を下げ、その手紙を受け取る。
「明日の朝、非戦闘員を乗せて出航する『イーグル』号に乗って帰りなさい」
ウェールズの言葉に、ルイズはじっと俯いていたが、そのうち決心したように口を開いた。
「あの…殿下。王軍に勝ち目はないのですか?」
「ないよ。我が軍は三百、敵軍は五万。我々にできる事は、せいぜい華々しく散ってやる事だけだ」
ルイズは再度、俯いた。


「殿下の討ち死になさるさまも、その中に含まれるのですか?」
「当然だ。私は真っ先に死ぬつもりだよ」
傍でやりとりを見ていたヴィオラートはため息を漏らす。
明日にも死ぬというのに落ち着き払った皇太子の態度は、何だかお芝居の中の演技のようにも見えた。
ルイズは一礼し、さらに発言を重ねる。
「殿下、失礼をお許しください。恐れながら、申し上げたいことがございます」
「何なりと申してみよ」
「この、ただいまお預かりいたしました手紙の内容、これは…」
「ルイズちゃん」
ヴィオラートがたしなめる。さすがにそれはまずいだろうと思ったのだ。
しかし、王子はほんの少し悩んだ後、はっきりと言い放つ。
「まあ…お察しの通り、恋文だよ。ゲルマニアの皇帝と婚約するとなれば、邪魔になる類のものさ」
「姫様は、殿下と恋仲であらせられたのですね?」
「昔の話だ」
ルイズは熱っぽい口調で、ウェールズに言った。
「殿下、亡命なされませ!トリステインに亡命なされませ!」
「それはできんよ」
ウェールズはその誘いを言下に否定した。
「そろそろパーティーの時間だ。我が王国最後の客として、君達には是非出席して欲しい」
それだけ言うと、ウェールズはルイズたちを促す。
ルイズ達は部屋の外に出た。ワルドだけが、居残ってウェールズに一礼する。
「まだ、何か御用がおありかな?子爵どの」
「恐れながら、殿下にお願いしたい議がございます」
「なんなりとうかがおう」
ワルドはウェールズに、自分の願いを言って聞かせた。
「なんともめでたい話ではないか。喜んでそのお役目を引き受けよう」


パーティーは、城のホールで行われた。簡易の玉座が置かれ、
玉座にはアルビオンの王、年老いたジェームズ一世が腰掛け、集まった臣下たちを目を細めて見守っている。
明日で自分達は滅びるというのに、ずいぶんと華やかなパーティーであった。
王党派の貴族たちはまるで園遊会のように着飾り、テーブルの上には様々なご馳走が並んでいる。

ヴィオラートは憂鬱になった。死を前にして明るく振舞う人たちは、この上もなく悲しく見える。
思わず人気のない方に目をそらすと、ルイズが真剣な面持ちでヴィオラートを見つめていた。
「ヴィオラート」
ルイズは戸惑うように切り出す。
「ワルドが、皇太子に立ち会ってもらって…結婚しようって」
それだけ言うと、ヴィオラートの返事を待つかのように黙り込んだ。
「ルイズちゃん、あの人は…」
「うん、分かってる。でも、結婚してもいいかなって…そう思えるようになったから」
「…そう」
不自然である。ルイズがどれほどのものかは良く知らないが、貴族なのだ。
それが、駆け落ちでもないのに親兄弟すら招かないで結婚式を?しかもこんな状況で?
「ルイズちゃんがそう思うなら、いいんじゃ…ないかな」
ヴィオラートはそれだけ答えて、ルイズにやわらかい微笑を向ける。
ワルドとの対決は避けられないな、と思いながらも。
ルイズは少しほっとした表情を見せると、もう一つの、おそらくは本題を切り出した。
「ねえヴィオラート、皇太子を何とか…助けられない?」
ヴィオラートは躊躇せず、しかしゆっくりと首を振った。
「さすがに…五万はちょっと多すぎるかな」
「そう」

「それに…」
ヴィオラートはルイズの肩をしっかり掴んで、かんで含めるように言い聞かせる。
「ウェールズさんに加担すれば、アルビオンの犠牲者が増える事になるんだよ?」
「で、でも、それで皇太子が助かるなら…」
「ルイズちゃん。あの人はもう死ぬつもりなんだよ」
「かもしれない。けど、ヴィオラートが助けてくれれば、もしかして!」
ルイズは、熱と期待に満ちた視線をヴィオラートに叩きつけた。
「ルイズちゃん。あたしがアルビオン軍と戦う理由は…何?」
「え?」
不意を突かれて、ルイズは一瞬言葉を探す。
「だって、アルビオン貴族は敵だから…」
「敵。どうしてそう思うのかな?」
「だって、反乱を起こして、アルビオンの後はトリステインに攻め込もうとしてる…」
「うん。アルビオンの人や、トリステインの人がそう思うのは分かるよ。でもね」
そこでヴィオラートはしばらく躊躇い…意を決して、あえてルイズに問いかけた。
「でもあたしはアルビオンの人でも、トリステインの人でもないんだよ?」


ヴィオラートがそう問いかけると。
ルイズはまるで自分とヴィオラートの間に決定的な断絶を発見したかのように、立ち尽くした。
いつでも味方になってくれると思っていた。自分が望めば、力を貸してくれると思っていた。
「自分の身や、自分の故郷や…ルイズちゃんを守る為でもないのに人を殺すのは、違うと思う」
ヴィオラートは違うんだ。根本的に違うんだ。この世界とは…関係ないんだ。
「ルイズちゃんの仕事は戦う事じゃない。手紙を持ち帰ること。だよね?」
また。またそんな正しい事を言って、私を導こうとする。
「ヴィオラート」
ルイズは声を震わせてヴィオラートを見据えた。
「あなたは…帰るんだものね。この世界で手を汚したりは…したくないのよね」
永遠とも思えるような沈黙の後、ルイズは最後に言い残して、駆け去る。
「ワルドと結婚するわ。ワルドは…私が必要だって言ってくれたもの!」

ルイズが去った後、長い間彫像のように動かなかったヴィオラートは、
ウェールズが全ての義務を果たし終える頃になってやおら近寄ると、明日の予定を確認する。
決戦は明日。少なくとも、負ける気はさらさらなかった。


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