あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロと電流-03

「飛竜三段蹴り!」
「ぐふぁっ!」

 凄まじい威力の蹴り。しかもそれを三連撃である。
 並みの体術でできる技ではない。そしてその攻撃力たるや、いかなるものか。想像するだけでも恐ろしい技である。
 さらに、それだけではない。
 その技を放ったのは美しい女性なのだ。その女性が相手に向かって跳び蹴りを放ったというのに、放った女性のスカートの中が受けた側からは一切見えないのだ。
 つまり、特殊な趣味を持っていない限りは蹴られ損なのである。
 まさに恐るべき体術である。

「ミス・ロングビル……何処でこんな技を」
「女一人生きていれば色々あるものですから。身を守る術の一つや二つ、極めておりますわ。オールド・オスマン」

蹴られたのは、魔法学院の院長オスマン。蹴ったのはその秘書ロングビルである。

「どう考えても過剰防衛じゃろ?」
「暇さえあれば人をお尻を触るなど、万死に値します。これに懲りたら、私のお尻を触るのはやめてください」
「それは断る」

 ロングビルはつかつかと歩き、再びオスマンとの距離をとる。

「飛龍……」
「待てっ! わかった、わかったから!」

 戦闘ポーズを止め、椅子に座って書き物を再開するロングビル。

「では、私は仕事を続けますので。そちらもお仕事をお続けください」
「うう……。儂、えらいのに」
「ですから仕事をしてくださいと言っているのです」
「せめてもっと優しく言ってほしいものじゃのう……」
「飛龍……」
「わかったぁああ!」

 半泣き顔になりながら自分の仕事を確認するオスマン。
 と、その表情が途端に変わる。

……おや、何かあったんだね?

 表情の変化に気付いたロングビルが心の中でそう呟いたとき、

「ミス・ロングビル、すまんが大至急ミスタ・コルベールを呼んで来てくれんかね。この時間なら自分の研究室じゃろう」

 何かありましたか、とは聞かず、ロングビルは素直に立ち上がる。
 オスマンの使い魔はネズミである。使い魔であるモードソグニルは、普段は学園の中を走り回っている。ネズミであるが故、学園内のいかなる所にも神出鬼没なのだ。
 そして、異常があると使い魔と主のリンクでオスマンに連絡する。
 それが生徒の間でまことしやかに囁かれている噂だ。

「では、行って参ります」

 ロングビルは学院長室を後にする。

 その頃、ヴェストリの広場では……

「なんでこうなったの?」

 ルイズがギーシュのゴーレム、ワルキューレから逃げまどっていた。

 食堂での騒ぎの後、怒りのあまり縦ロールが回転して唸り始めたモンモランシーによって、ギーシュはボコられた。
 去っていく回転縦ロールの姿にようやく自分の過ちに気付いたルイズは、すぐさまギーシュに謝った。そして、二人で回転ドリルの所へ釈明に行ったのだ。さらにその後ろには事態を面白がっているキュルケと、引きずられるようにしているタバサ。
 さて、ギーシュがケティと浮気した、と思いこんでいる電動ドリ……モンモランシーである。そこへギーシュがルイズを連れてノコノコと現れては冷静に話ができるわけもない。
 彼女にしてみれば「この男、今度は違う女連れて来やがった!」てなものである。
 誤解を解くどころかさらに深まるだけなのだ。
 しかし、二人はモンモランシーに追いついた。

「なに? ケティの次はルイズ? 下級生でダメだったら次は同級生?」
「待ちたまえ、モンモランシー。君は大きく誤解している」
「そう、誤解なの」
「そう、誤解なんだ」
「誤解なのね」
「そうだ、誤解なんだよ」
「よくわかったわ」
「わかってくれたかい、愛しい君よ」
「貴方の言葉が信用ならないって事がよくわかったわ!」
「モンモランシー!?」

 すたすたと去っていくモンモランシー。
 残ったのはうちひしがれるギーシュ、そして困ってしまったルイズ。

「……僕は……どうすればいいんだ」
「ギーシュ。こうなったら手は一つよ」
「ルイズ?」

 ルイズは座り込んだギーシュを強引に立たせると、裏手の庭へと引きずり出す。

「どういうつもりだい、ルイズ」
「ギーシュ、その前に一つ確認よ。貴方は今回のことをどう思っているの?」
「……確かに、二股と言われても仕方ないことをした。それはモンモランシーにもケティにも申し訳ないと思っているよ」
「どっちと、仲良くしたいの?」
「モンモランシーだ」

 即答だった。ルイズは答えの内容よりも、即答であったことに満足して頷く。

「だったら、モンモランシーを振り向かせるのよ!」
「それは嬉しい。嬉しいけどどうやって……ん、まさかルイズ、何か君に考えがあるのかい?」
「もっと格好良くなればいいのよ」
「僕が?」
「それはちょっと難しいわ」
「なにげに失礼じゃないかね?」
「それはおいといて。見た目じゃなくて、ワルキューレを強化して、実力をアップするのよ」
「ワルキューレを?」

 普段の言動がアレなのであまり周囲は気付いていないが、こう見えてギーシュの実力は高い。さすがは軍人頻出のグラモン家と言うべきか、戦闘に関して言えばドットのクラスはとうに越えているのだ。
 ドットメイジでゴーレムを七体……それも平々凡々ではなくギーシュオリジナルのワルキューレ……同時操作するだけでかなりの手管なのだ。
 もっともゴーレム操作はグラモン家のお家芸であるからして、ギーシュの兄たちもそれぞれのメイジレベルに似つかわしくないゴーレムを操ってはいるのだが。

「しかしどうやって」
「まあ、見てなさい」

 ザボーガーを呼び出したルイズは、ギーシュの目の前で変形させた。

「こ、これは」
「全く同じは無理だとしても、貴方のワルキューレにこんなかんじのことができたらどうなると思う?」
「か、格好良すぎる。ああっ、素晴らしいよルイズ!」
「そう?」
「ああ、素晴らしいアイデアだよ、そしてこのザボーガーも素晴らしい!」
「うふふふふ」
「素晴らしい! そしてかっこいい!」
「うふふふ、ギーシュ、もっと褒めなさい、もっと」
「空前絶後だよ! 驚愕だよ! 驚天動地だよ!」
「うふふふふふふふふふふ、そうね、そうよね、凄いわよね、私、凄いわよね、ザボーガーも凄いわよね」

 張り切るギーシュだが、ふと気付く。

「……ルイズ?」
「うふふふ……なに?」
「ザボーガーは動かないのかい?」

 それは言ってはいけない一言だった。
 目に見えて落ち込むルイズ。

「ルイズ?」
「……足りないの」
「ん?」
「何かが足りないのよ」
「何かって、魔力とか?」
「それが、よくわからないの」
「はあ?」

 事情を説明するルイズ。
 電人ザボーガーを起動させるには“怒りの電流”が必要なのだ。
 ギーシュにも、“電流”の正体はわからない。

「とりあえず、“怒り”はわかるのよね」
「ええ……って、キュルケ? いつの間に。タバサまで」
「何よ。さっきからいたじゃない。気付いてなかったの? まあいいわ。一緒に考えてあげるわよ。私もタバサも興味あるしね」
「何でアンタに」
「いいの? ギーシュは土だけど、私は火、タバサは風よ? 得意な系統の種類は多い方が良いと思わない?」

 確かにキュルケの言うとおりなので、ルイズは納得するしかない。
 そして四人が相談した結果、一つの仮説が生まれる。
 使い魔の主であるルイズが怒ると、何か特別なものが発生するのではないか?
 現にルイズの爆発は、怒れば怒るほど威力が高いような気がする。

「じゃあ試してみましょうか」
「何を」
「貴方を怒らせればいいのよね」
「え」
「あと、使い魔だから、やっぱり主の危機には反応するんじゃないかしら」
「キュルケ?」
「でも私やタバサの魔法だと、ちょっと危なすぎるのよね」
「もしもし、キュルケ?」
「ギーシュ。ワルキューレでよろしく。アレなら手加減もしやすいでしょう?」

 と、言うわけでワルキューレからルイズは逃げ回っているのだ。



「ルイズ! 早くザボーガー動かさないと大変なことになるわよ~」
「さっきから命令してるわよ!」
「あ、危ない」
「ぎにゃあああああああ!」
「頑張りなさい、ルイズ」
「あ、あんたたちねぇ! これってイジメじゃないの!?」
「それは誤解よ」
「どうみても、逃げてる私を追いかけて遊んでるでしょ!」

 ふむ、とキュルケは考える。

「ねえタバサ、ナイフ持ってる?」 タバサが無言で、何の変哲もないナイフを投げる。

「貴女、ナイフ投げも上手いのね」

 ナイフは見事に、ルイズの進行方向の地面に突き刺さっていた。

「ルイズ、そのナイフ使って良いわよ」
「焼け石に水ーーーーっ!!!」

 それでも律儀にナイフを拾うルイズ。
 かといって、何が変わるわけでもない。ただ、ポケットにナイフが入っただけ。
 因みにワルキューレの拳は一発たりとも当たっていない。ワルキューレはルイズのいるすぐ近くの地面を適当に殴っているだけだ。
 ルイズにしてみればそれでも充分に怖いが。

「やっている僕が言うのも何だが、危なくないか?」
「そうかしら?」
「これ」

 タバサが、預かったルイズの荷物を示す。

「兜はここにある。ルイズはこの兜でザボーガーに命令していたはず」
「あら」

 キュルケは兜をタバサから受け取ると、ルイズに声をかけて投げつける。
 ルイズは慌てて受けようとして、顔面をしたたかに打った。

「あ、ごめんなさい」
「……ツェルプストー……いつかゲルマニアに攻め入って滅ぼす」

 鼻血も拭かずにとりあえずヘルメットを被るルイズ。
 その瞬間、ルイズの動きが変わった。いきなり足運びが別人のように迅速になる。
 タバサの視線が厳しくなり、キュルケが感嘆の声を上げる。

「あの兜に何かある」
「……みたいね。でも、召喚したときにコルベール先生が調べたけれど、マジックアイテムじゃなかったのよ?」
「調べたときには、あのルーンは無かった」
「ルーンのせいだって言うの?」
「可能性」


 頷き、一歩進むタバサ。次に彼女の取った行動に、キュルケは驚く。
 タバサは、風の魔法をルイズに向けて放ったのだ。しかも、ギーシュのように手加減も狙い外しもしていない、正真正銘の攻撃魔法を。
 そして、さらに驚くキュルケ。
 ルイズは、タバサの魔法を避けたのだ。それも、ワルキューレから逃げながら。
 確かに、魔法が使えない代わりに身体を使っているルイズの運動神経は元々悪くない。手加減したワルキューレから逃げ続けているのもわかる。
 しかし、今のはタバサの本気。そして、ギーシュの攻撃は終わっていないのだ。
 仮に魔法が使えたとしても、ドット程度には厳しい状況である。
 ルイズも自分の動きが変わったことを自覚したらしく、反撃に転じようとする。
 直接触れた対象に練金なりの魔法をかければ爆発するのだ。触れる限りにおいては目標から外れる心配もない。
 そしてさらに、三度キュルケは驚愕する。
 ルイズは一つのワルキューレを爆破する。そして、逆の手がポケットのナイフに触れる。
 その瞬間、ルイズはナイフを握りしめた。

 ……わかる! ナイフの使い方がわかる!

 それは、ザボーガーの操作法を知ったときと全く同じ感覚だった。身体に、脳に、全身の神経に手にした武器の使用法が流れ込んでくるのだ。
 それだけではない。ナイフで戦うのに相応しい、いや、それ以上の力が湧き出るのが感じられる。
 今なら、自分はワルキューレと互角以上に戦える。
 ルイズは確信し、突き進む。





 遠見の鏡のなかで、ルイズがワルキューレ最期の一騎を破壊していた。

「どう思うかね、ミスタ・コルベール」

 一部始終をコルベールと共に見ていたオスマンが尋ねる。

「やはり、ガンタールヴなのでしょうか?」
「しかし、ミス・ヴァリエールは使い魔でないぞ?」
「以前にも申し上げたように、あれがガンタールヴの兜だとしたら?」
「被った者に、ガンダールヴの力を与える……か」
「あのゴーレムは、ガンダールヴにとっての騎乗馬だとしたら……」
「辻褄は合うのか……。このことは、他言無用じゃぞ」
「はい」
「さて、あの四人がどうする事やら」
「四人とも、良い子ですよ」
「ふむ……お前さんが言うのなら、そうなのじゃろうな。じゃが、そうでなければ……」
「覚悟はしていますが、考えたくありませんね」

 答えるコルベールの視線は鏡へと向けられている。しかし、その目は何も映してはいなかった。





 呆然と、どちらかというと震えているギーシュ。
 無理もないだろう。
 逃げていただけのルイズがいきなり兜を被ってナイフを握ったかと思うと、瞬く間に七体全てを退けてしまったのだ。

「な、な、な、なんだね、今のは。ルイズ? ルイズぅ!?」
「……凄いのね、あのルーンの力って」
「欲しい……」
「ん? タバサ、何か言った?」
「なんでもない」

 ルイズは三人のやりとりも耳に入らないように、誇らしげに胸を張っている。
 その手には、ボロボロになったタバサのナイフが。

「ふっふーん、これが私の実力よ」

 因みに最初の目的は既に忘れている。

「よし、それじゃあ次の虚無曜日には剣を買いに行くわよ! この私に相応しい、立派な剣を買わなくちゃ!」

 ルイズは嬉しそうにはしゃいでいた。

「ナイフ弁償」

 タバサの、その一言まで。



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