あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのロリカード-56

 ――――――アルビオン、シティオブサウスゴータ。
戦禍は癒えたとは言い難いが、それでも人々は元の生活に戻りつつあった。
昼日中、やや人目を忍ぶように歩く三人の姿がある。
一人は帽子を目深に被った少女。一人は妙齢の女性。一人はやや年食った大男。
ティファニア、マチルダ、アンデルセン。

 元々引越しを考えていたこともあってか、ウエストウッド村が襲われてからすぐに居を移した。
先の戦争によって帰らぬ者が多く、安く家が手に入ったことも起因した。
ジム、ジャック、サム、エマ、サマンサ。子供達は、何もかもが新鮮な新生活に喜んだ。
古巣に帰ってきたマチルダは、知り合いのツテで新たに真っ当な職に就き、皆を養っている。
ティファニアはハーフエルフである以上、大っぴらに学校に通ったりは出来なかった。
が、それでも皆で暮らせることが何よりも幸せだと感じていた。

 そしてアンデルセンは、不定期ながら戦後の荒くれ者などを討伐し報酬を得ていた。
トラブルバスター紛いの仕事をしながら、子供達の世話をする。
これ以上望むべくものはない幸せな生活。
それでも頭の中に、澱のように溜まったしこりがある。
アーカードとの決着。その為に人知れず鍛錬は欠かさなかった。
何より実戦の勘を鈍らせない為に、盗賊退治などを請け負ったりしていたのだった。


 休日の昼、皆でどこか外で食事をしようということで、子供達の遊び場に三人は揃って向かう。
「あっテファ姉ちゃん!!」
一人の男の子が気付いて声を上げた。
それに合わせて子供達が、めいめいにテファのところへ駆け出してくる。
「みんな、お昼ごはんよ」
子供達はそれぞれ元気良く返事をした。快活で真っ直ぐな子供達。
「今日は外で食べるよ」
マチルダの言葉に、子供達から歓声が上がる。
「でも一度家に帰って、ちゃんと手を洗ってからですよ」
「は~い」
アンデルセンが温和な笑みを浮かべて言い、子供達は素直にそれに従う。

「じゃあ兄ちゃん、また後でね!!」
「ああ、また後で」
テファ、マチルダ、アンデルセンの三者は、"兄ちゃん"と呼ばれた"少年"を見つめる。
子供達より一回り大きく、金の短髪で悪戯坊主風の少年。
年の頃は10歳程度だろうか、やや大人びた雰囲気を持っていた。

「一緒に遊んであげてくれたの?ありがとう」
「いえ、そんな・・・・・・みんなで一緒に遊んだんです。遊んであげていたわけじゃありません」
テファのお礼に少年は礼儀正しく対応する。

「なかなかしっかりした子だね。ついでだし一緒に来なよ、ご馳走してあげるからさ」
「いえ、そんな悪いですよ。僕にはお構いなく・・・・・・」
「子供が遠慮なんてするもんじゃないよ」
マチルダは強引に少年を誘う。子供達も「そうだよ~」と賛成し、後押しをした。
少年は少しだけ悩む素振りを見せ、そして純真な笑顔で答えた。
「そうですか、ではお言葉に甘えます」


 ふと・・・・・・アンデルセンだけが感じた違和感。拭いきれない何か。
少年の微笑みの裏に隠された素顔を、幾許か垣間見たような気がした。
襲撃のこともまだ記憶に新しく、神経過敏かと思いつつも・・・・・・。
(・・・・・・警戒はしておいて、し過ぎるということもない)

 極々自然に、自分以外の全てを庇うような立ち位置へとアンデルセンは移動する。
「ちょっと、よろしいですか?」
「はい?なんでしょう」

 疑問符を浮かべる少年。まさかこんな少年が刺客とも思えないが。
それでも疑念が浮かんだ以上は、その曇りの一点でさえ看過は出来ない。
故にアンデルセンは極小の殺気を叩き付けた。一般常人であれば到底感じ取れない。
しかしてそれなりの強者であれば、確実に感付いて何かしらの微細な反応が出るほど絶妙な殺気。  
 しかし少年の反応は・・・・・・――――――驚くべきものであった。
僅かな機微を見せるどころか、一瞬で数メイル後方まで飛び退いて、構えをとっていた。
アンデルセンの放った殺気をこれ以上ないほどに感じ取り、頭で考えるより先に識域下で反応した。
非常に洗練され熟達した強者の動き。その突然の様相にアンデルセン以外は呆気に取られていた。


「チッ・・・・・・」
少年は僅かに顔を歪ませ舌打ちをする。
それは今までの少年の様子とは明らかに異なった表情と所作。
「スマートに終わらせようと思いましたが・・・・・・」
一転して悪意を浮かべる少年は「演劇はここまで」と言わんばかりに笑った。
聞きしに勝る人物だ。まさかこんなすぐに感付かれるとは思ってもみなかった。
油断を誘い、突けば、楽に任務を遂行出来ると思っていた。
が、そんなに甘くは無かった。いや、ここは素直に賞賛を送るべきかも知れない。

「何者だ」
アンデルセンは問うと同時に、手でマチルダに合図を送る。
不穏な気配をようやく察したマチルダは、すぐにテファと子供達を下がらせた。
「ダミアンと言います。あなたの名前は存じていますよ、『聖堂騎士』アレクサンド・アンデルセン神父」
アンデルセンの顔が険しくなる。
何故なら『パラディン』の呼び名を知っているのは限られていた。

 ダミアンは飄々とした様子でアンデルセンに告げる。

「あぁ、他の皆さんは一度帰ってもらって結構ですよ。今は手出しするつもりはありません。
 こうなった以上はあなたをどうにかしないと、こちらとしても任務を遂行出来ないでしょうしね。
 逆にあなたという存在さえ排除してしまえば、後は何のことはない・・・・・・楽な仕事です」

「任務・・・・・・」
一難去ってまた一難。アーハンブラ城から帰って、ようやく落ち着けたと思っていた。
しかしそう甘くないようだった。十中八九ウォルターと同じ、ガリアの手の者。  
「場所は・・・・・・そうですね、お好きなところで。街中でのドンパチも構いませんが――――」
ダミアンは「あなたがそれで良いのなら」と視線で送る。


 アンデルセンは踵を返して、皆に向き直る。
「先に帰っていて下さい」
優しい神父のそれを浮かべる。
マチルダやテファはもちろん、子供達も薄々何かおかしいと気付いていた。

「ちゃんと、アンタも帰ってくるんだよ神父」
他の刺客もいるかも知れない。よってマチルダは加勢することは出来ない。
すぐにでも身を隠す必要性もある。

「・・・・・・ご飯、作って待ってます」
テファは健やかに笑った。
外食は中止。だからかわりに「帰って支度をしないと」と、そう思っていた。
「えぇ、"すぐ"に戻ります」
テファのその笑顔に応える。時間を悠長に掛けるつもりはない。


 皆の姿がその場からなくなってから、改めてアンデルセンはダミアンへと向き直る。
その間、ダミアンは隙あらばと考えていたものの・・・・・・当然そんな油断を見せる筈もなし。
アンデルセンの悪鬼の如き眼光にも、ダミアンは風に吹かるる柳の如く流して余裕を崩さない。

「それじゃ・・・・・・行きましょうか、アンデルセン神父」
ダミアンは翼でもついているのかと見紛うほど、軽やかに近くに屋根の上まで跳ぶ。
アンデルセンもその鍛えた肉体で、無骨ながらも難なく屋根へと上がった。

 屋根を飛び移っていくダミアンについていきながら、アンデルセンは兇暴な笑みを浮かべる。
任務・・・・・・?刺客・・・・・・?何度でも来るがいい。
どれほどの罠が張り巡らされていようとも、どれほどの戦力が待ち受けていようとも。
襲い掛かる全てを迎え討ち、降り掛かる全てを粉砕し、迫り来る全てを絶滅させてやる。

「Amen」




 ――――――ロマリア、大聖堂。
ロマリア艦隊とガリア両用艦隊が衝突してから三日ほど経過する。
大聖堂内でたった一人ヴィットーリオは頭を巡らせていた。

 思っていたよりも両用艦隊は強力であった。戦力ではなく、その統率がである。
同じブリミル教徒として、侵略の名目でロマリアを攻めることが、どれだけの愚かな行為か。
予想していたよりもあまりにも反乱が少ない。それでなくとも、兵達の士気を保つのは難しい筈。
だが両用艦隊は揺るがなかった。数で勝る上に、士気も保たれているとなると、こちらの敗北は必至である。

 ガリア両用艦隊の強さは、当然兵の練度にも起因していた。
が、しかし・・・・・・それよりも何よりも、報酬の大きさが兵達の士気を高めていた。
始祖信仰はガリアの兵士達にも確かに根付いているし、当然躊躇もあった。

 だがガリア王ジョゼフは、勝利の暁にはロマリア全てをくれてやると確約していたのだった。
そして両用艦隊旗艦『シャルル・オルレアン』号に乗った、艦隊司令クラヴィル卿。
彼は彼自身の裁量でもって、兵達に爵位や貴族籍などの報酬を約束した。

 軍人である以上、上の命令は絶対である。
さらには心の拠り所でしかない信仰よりも、即物的な報酬の方が魅力的であったのだった。
ガリア両用艦隊の戦力を以てすれば、ロマリア艦隊であっても負けることはまずない。
戦力比から考えても重大な損害も被る可能性は低く・・・・・・結果として、打算的見地から反乱は抑えられた。


 よってヴィットーリオは腑に落ちぬまま、計画を早めることにした。
虚無の魔法の一つ、『記録』によってガリア王ジョゼフに救いを与える。
当初の予定では、トリステインの虚無とその使い魔が、ガリアの戦力を削ってからにしたかった。
そうでなくては、いくら大尉の操る風竜でもジョゼフまで近付くのは困難を極める。
それに場合によっては自分が出張らずとも、そのままジョゼフを討ってくれるかもという打算もあった。
しかし未だトリステイン軍とガリア軍の衝突は回避されている。
恐らくは機を待っているのだろう。

 このまま時間が経つほど、ロマリアは国土を蹂躙される。
一刻も早く、この無益な戦争を終結させねばならない。
相当なリスクを伴ってしまうが、今すぐに行かねばならなかった。

 ヴィットーリオは覚悟を決め、いよいよ以て大聖堂を出る。
「どうも」
呼び掛けられて気付く。
声の方向に目を向けると、ローブを纏った筋肉隆々の巨漢が地べたに座っていた。
男は「待ちかねた」とばかりに、立ち上がる。


「おれの名はジャック、ガリア北花壇騎士所属の元素の兄弟が次兄」
ジャックと名乗るその男は、小瓶を出すとそれを飲み干した。
ヴィットーリオは後退る、ガリアの刺客が送り込まれるなど・・・・・・。
ロマリアの中枢まで乗り込んでくるなど、到底考えもしなかった。
厳重な警備はもとより、何の騒ぎもなくここまで入り込んでくるなど有り得ない。

「驚いたかい?・・・・・・まあ『手引き』があったとはいえ、苦労したもんさ。
 他の北花壇騎士さんも一応サポートに入ってくれてたらしいが、顔はおろか名前すら知らんしね。
 その点ダミアン兄さんは楽なもんさ。ドゥドゥーとジャネットにしても、おれよりは幾分か楽だろうよ」

 ジャックという名の男は、まるで世間話でもするかのように語り続ける。
その時、空中から一人の男が舞い降りた。
ヴィットーリオの目の前に――――護衛するように――――地面を砕きながら、降り立った人狼。

「まあしょうがない。"アンタ"と闘り合うにあたって、おれが一番適任だからな」
ジャックは特に慌てた様子もなく、現れた"大尉"を見つめる。

「大尉さんだっけ、アンタをわざわざ待ってたんだ。話を聞いていて興味が湧いたもんでな。
 他の世界の化物と闘える機会なんて、普通はあるもんじゃない。素晴らしい戦いになることを願うぜ」

 ジャックは手をポキポキと鳴らす。
準備運動のように爪先をコンコンと地面に叩きながら、杖を取り出した。

「っといけねえ、その前に・・・・・・おれは仕事をする前に値段を教えてやるんだがね。
 ほらっ、なんだ・・・・・・自分にそんくらいの価値があったと思えば、少しは気が晴れると思ってね。
 まあそこは流石の教皇さん、値段はつかなかった。報酬は好きにして良いって言われた。
 豪気だよなあ。だからおれは好きだぜ、あの王様。まっそんくらいじゃないと割に合わん気もするがね」

 ひたすら喋り続けるジャックと、ひたすら寡黙に睨む大尉。
対照的な二人を結ぶ空間が、闘気で歪んだような感覚を覚える。

「いいねえ、待ちきれないって感じか。話はここまでにして、さっさと始めようか」

 二人は同時に――――――地を蹴った。



   ――――――トリステイン王宮、中庭。
アンリエッタは空を仰ぎ、ルイズ達の無事を祈っていた。
既に本格的な衝突が起きていても不思議ではない。
そしてその一戦が、トリステインの命運を分ける一戦とも言える。

「今頃、戦っているのでしょうか」
アンリエッタは最も信頼する従者に、心情を吐露する声音で言った。
「心配は無用かと存じますが」
アニエスは率直に答えた。朝日が体に染みるので、ローブを被っている。
心配するだけ無駄だと、心底思っていた。そも祈ったところで無為だと思っている。
「それでも・・・・・・せずにはいられません」
アニエスはそれ以上何も答えず、ただ黙って付き従う。


 そのままゆっくりと時間は過ぎる。
そしてアニエスは、近付いてくる異変に気付いた。
どこにでもいそうな、男女の一組。恋人同士か、兄弟か、友人か。
それ自体は珍しくもないが、王宮まで入ってくるという事態が異常だった。

(兵士達は何をやっていた・・・・・・?)
戦に駆り出されているとはいえ、城の警備を疎かにするほどではない。
そこでようやくアンリエッタも気付いて、首を傾げていた。

「全くドゥドゥー兄さまったら本当にグズだわ!資料をなくすなんて信じられない!!」
「だから何度も謝ってるじゃないか、ジャネット。いつまでも言うなんて女々しいぞ」
「いや、女ですし。それにそういう問題じゃないでしょ」

 ドゥドゥーとジャネット、二人の名のようだった。
こちらが眼中に入っていないのか、仲良く罵り合っている。

 アニエスはアンリエッタを避難させるべく口を開く。
「不穏です、すぐに――――――」  
「あっ!あの人達に尋ねてみよう。うん、それがいい」
男の方がアニエス達に気付いて叫んだ。暢気に「お~い、そこの人」と手を振っている。
アニエスはアンリエッタの前に立ち、左手を後ろ腰に回した。
ドゥドゥーとジャネットは、揃って無警戒に・・・・・・極々普通に近付いてくる。


「ねぇちょっと、あの後ろのほう・・・・・・あれターゲットでしょ。頭に王冠乗っけてるし」
ジャネットに言われドゥドゥーも「あっ」と気付く。

「ほら見ろ、やっぱり僕が困ってると神さまは味方してくれるんだなあ」
「運が良かっただけでしょ。それにわたしが言わなければ、兄さまは気付かずに無視しかねなかったわ」
「ジャネット、最近ぼくへの言葉が辛辣過ぎないかな?」
「ドゥドゥー兄さまがおバカなんですから、しょうがないわ」
「なっ・・・・・・バカはないだろ、バカは」

 二人の様子に見かねて、アニエスはそっとアンリエッタを逃がそうとする。
女王陛下をターゲットと言った、この者達は間違いなく敵だ。

「あっと、そっちの人!!逃がそうとしないで!女王さまも逃げちゃ駄目よ!!」
しっかりと注意を払っていたジャネットが、それを制する。
アニエスは目を細め、左手は後ろ腰のままに右手で剣を抜いた。
ドゥドゥーはそれを見て、嬉しそうに口を開く。

「なあジャネット、楽しんでもいいかな?きっとあれが例の彼女だよ」
ドゥドゥーは不敵に唇の端を上げる。
ターゲットの情報は既に聞き及んでいる。当然それを護衛する戦力も。
フードで顔はよく見えないが、背格好からして女。
さらには女王付きともなれば、十中八九吸血鬼の騎士。
人間時代からも『メイジ殺し』としてそこそこの実力だったらしく、ドゥドゥーの食指が動く。


「駄目だって言っても楽しむくせに、本当にしょうもない兄さまですわ」

(男の方は戦闘狂か・・・・・・)
アニエスは冷静に見据えながら、戦力分析をする。
既に吸血鬼となった身。そこらのメイジ如きなど相手になりはしない。
とはいえ戦力分析は、長年で染み付いた習性に近いものだった。
元はメイジでもない、ただ鍛えただけの人間。
敵の戦力を見誤れば、それは死に繋がったからである。

「あっ当然女王さまの方は手出ししちゃ駄目よ。したら私も加勢するわ」

 心配そうに見つめるアンリエッタに、アニエスは顔を確認することもなく答える。
「大丈夫です、すぐに終わらせます」

 そうだすぐに終わる。ここまでやって来れた以上、かなりの実力なのだろう。
だが吸血鬼のスペックに加えて、対メイジの経験に慣れたアニエスにとって、何ら障害にはならない。

 ドゥドゥーは鞭のようにしなる杖を取り出すと、そのまま上段に構えた。
相手は決闘のつもりなのだろうが、そんなことは関係なかった。
アニエスは相手が詠唱するよりも早く、――――――腰の"それ"を引き抜いた。




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