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ルイズと無重力巫女さん-30-b



若干男っぽい口調のその声を聞き、男達とシエスタは振り返った。
そして一瞬だけ、目の前にいる金髪の少女は、絵本の中から出てきたメイジかと錯覚してしまった。
今だと四十代くらいになる世代のメイジが被っているような黒い帽子に、白と黒を基調としたドレスの上に純白のエプロン。
左手には少女の身長と比べればかなり長い箒を持っている。
そして右手の平にビー玉が数個ほど乗っているのに気づいた男(ビー玉をぶつけられた奴)は、キッと少女を睨んだ。
「おい、この俺にビー玉ぶつけたのは嬢ちゃんの仕業か!」
シエスタとは違い、少し汚い言葉遣いで少女に向かってそう叫んだ。
実はこの男、自分に危害を加える者なら老若男女関係なく平気で殴りかかる性格の持ち主であった。
つまりは、女子供もその気になれば平気で殴ることが出来るひどい人間である。
「あぁそうだぜ。自分に惚れていると思って女を口説く奴は好きじゃないんでね」


ドスのきいた男の言葉に意に介した風もなく少女はそう言った。
その言葉に男が憤り、勢いよく立ち上がり殴りかかろうとした。

「このガk―「ちょっとマリサァ!アンタこんな所にいたのね!」
そんな時、シエスタの背後から誰かの怒鳴り声が聞こえてきた。
今度は何だと思いつつ男達は振り返り、貴族の少女がこっちにもの凄い勢いでやってくる事に気づき驚いた。
一方のシエスタはその貴族とはある程度顔見知りであり、咄嗟に彼女の名前を呼んだ。
「ミス・ヴァリエール!」
「ゲ、やべぇよ…貴族だ!」
シエスタの近くにいた一人がそう言うと他の二人も焦り始めた。
「クソ…と、とりあえず逃げようぜ!」
ビー玉をぶつけられた男がそう言うと、彼の近くにいた仲間がそれに頷いた。
「あぁ。何せ最近の貴族連中はおっかないからな…」
その言葉を締めに、まず最初の一人が真っ先に広場から出て行った。
次いで残りの二人も唖然としているシエスタとの別れを惜しみつつ、先に逃げた仲間の後を追った。
後に残ったのはシエスタと突然やってきたルイズ、そしてマリサと呼ばれた金髪の少女だけであった。
途中からやってきたルイズはゼェゼェと息を切らせつつ、目の前にいる少女に怒鳴った。
「はぁはぁ…ちょっとマリサ!アンタ何かやらかしてたわね!?」
「何言ってるんだよルイズ。あいつらが先に何かやらかしてたのさ」
少女は先程と変わらぬ涼しい表情でそう言い、シエスタの方へと顔を向けた。
「えっ…?な、私の顔に何か付いてるんですか?」
シエスタは突然自分の顔を見知らぬ少女に見つめられ、キョトンとしてしまう。
そんなシエスタの表情を見てか、少女は微笑んだ。
「いや何、あんなチンピラ連中に絡まれて大丈夫だったかなーって思っただけさ」
少女はそう言ってカラカラと笑った。頭上で輝く太陽の様に眩しい笑顔を浮かべて。
「あ…、そうですか。あの、危ないところを、助けていただいてどうもありがとうございます…えっと―名前は?」
シエスタは頭を下げてお礼を述べると同時に名前を尋ねると、少女はグッと突き立てた指を自分の顔に向けて、言った。

「私は霧雨魔理沙。見ての通り、普通の魔法使いさ!」
少女―魔理沙がシエスタにそう名乗った時、今度は頭上から広場にいる三人が既に聞いた事のある声が聞こえてきた。

「あら、騒がしいと思って来てみれば魔理沙とルイズ、それにシエスタもいるじゃないの」
その声を聞いた三人が頭上を見上げると、霊夢が空の上から見つめていた。


午前十時のチクトンネ街は、トリスタニアの繁華街と言って良いほどの賑わいを見せていた。
今日が虚無の曜日と言うこともあり、他国からの観光客の姿も垣間見える
中央広場から少し離れたところにはいかがわしい酒場や賭博場などが密集しており、治安の悪さも伺える。
そんな地域の一角に、「魅惑の妖精亭」という可愛いらしい名前の店があった。
営業時間や客に出す酒や料理等は周りにある酒場とは同じだが、この店には長所が一つだけあった。

「ほっらほら~!見てよこのキャミソール。一ヶ月前に注文した特注品よぉ~!」
その体格に似合わない女言葉を使う店長のスカロンが、大きな手で白いキャミソールを手に取り、シエスタ達に見せた。
「わぁ、とっても綺麗ですね!…あ、このマークって店のロゴですよね」
確かに特注品とだけあってか、中々良いデザインのキャミソールだとシエスタは思った。
純白のそれは着る者の魅力を存分に引き出してくれるに違いない。
更によく見てみるとキャミソールの胸元部分には店の刺繍が小さくはいっている。
「良くわかったわねシエスタちゃん。そう、今夜から妖精ちゃん達に着せてみようと思うのよぉ」
スカロンの言うとおり、これ一着だけではなく彼の足下には色違いのキャミソールが何着も入っている箱があった。
ちなみに彼の言う妖精ちゃんとはここで働くウェイトレス――つまりは女の子達の事である。

そう、ここ魅惑の妖精亭の長所は「女の子達がいかがわしい格好で働いている」という事だ。
男なら誰もが目を奪われてしまう服装で可憐な少女がお酒や料理を運んで着てくれたら、まずチップを渡してしまうだろう。
一日たっぷりと働いてきた男達にとって、ここは目を休めるのに絶好の場所であった。

大きな手で白いキャミソールを振り回しているスカロン。
そんな彼の姿をルイズ、霊夢、魔理沙の三人は席に座って眺めていた。


数時間前…魔法学院にあるルイズの部屋。
幻想郷からこの世界へ帰ってきてからほんの一時間しか経ってない頃だった。
異世界の住人である魔理沙を連れて再びこの世界へ戻ってきたルイズと霊夢は早速魔理沙の事を学院長に紹介しようとした。
しかし教師の一人から聞いてみると、偶然にも学院長は急用で外出しており明日の朝まで帰ってこないのだという。
仕方なく魔理沙には今日一日おとなしく部屋にいてもらう事をルイズが言おうとした時、ふと一人の給士が伝言を携えてやってきた。
とりあえずルイズはドアから顔だけを出してその伝言を聞いた瞬間、彼女の脳内スケジュールに急な予定が組み込まれた。


「レイム、今から王宮に参内するから準備をして頂戴」

伝言を聞き終え、ドアを閉めたルイズは部屋にいた霊夢にそう言った。
突然のことに霊夢は何が何だかわからない顔になったが、それを気にせずルイズは乗馬用の鞭を手に取った。
その時、部屋の片隅で風呂敷に包んで幻想郷から持ってきた本のタイトルを確認していた魔理沙がルイズの方へと振り向いた。
「王宮だって?やっぱり魔法の世界は凄いぜ。本の中でしか見たことのない王宮があるとはな」
幻想郷ではあまり耳に入れない「王宮」という言葉とその存在に早速興味津々になった魔理沙を見た霊夢は彼女の方へ顔を向けた。
「魔理沙、代わりに行ってきてくれないかしら?私は留守番してるから」
霊夢の言葉に魔理沙はそちらの方へ顔を向けると、まず真っ先に霊夢の嫌そうな表情を見ることになった。
「ん…何だ霊夢?お前随分と嫌そうな顔をしてるな。まぁいつもの事だが…」
「私としちゃあ用事が無いしね。一緒に行くのならアンタの方が速く着くし」
「正にその通りだな。少なくともお前よりは速い」
「レイム!マリサはともかくアンタは絶対私についてきなさい」
魔理沙がそう言った直後、のんびりとイスに座ってお茶を飲んでいる霊夢に少し怒ったルイズが詰め寄ってきた。
「はぁ…?なんでよ」
目の前にいる桃色ブロンド少女の言葉を理解できていない霊夢は首を傾げた。
一方のルイズは、そんな紅白の巫女に溜め息をつき、仕方なく説明し始めた。
その瞳は自信満々に輝いている。もしかしたらルイズは他者に何かを説明する事を楽しんでいるのかも知れない。

「いい?今更だろうけど今の貴女はガンダールヴ。つまりは私の使い魔なのよ。
何であろうと使い魔は主人の命令を聞き、そして主人の顔を立てる役者的存在でもある。
それにユカリも言ってたでしょう?アンタと私は出来るだけ…
                                                     …って――何処行くのよ!?」

自信満々な表情を浮かべて説明しているルイズは、席を立って部屋を出ようとした霊夢に向かって叫んだ。
一方の霊夢はそんなルイズとは対照的に嫌悪感丸出しの表情でルイズにこう言った。
「くだらないわねぇ。そんなんだからアンタ、友達が一人もいないんじゃないの」
霊夢の心ないその一言に、ルイズは目を見開いて怒鳴った。
「な、何ですって…!」
「それに紫がなんと言おうと決めるのは私よ。…まぁ、アンタの身に何か起こったら助けに行くかもね」
「おいおい霊夢…」
霊夢はそう言うと魔理沙の制止を振り切り、ドアノブを捻って部屋を出ようとしたが…それは出来なかった。
突如ドアに一本の隙間が現れ、そこから白い手がニュッと出てきた。
それに気づくのが遅かった霊夢は、ドアノブを握っていた手を掴まれ捻り上げられた。
「くっ…!」
「いけないわねぇ霊夢。私は言ったはずよ―――」
捻り上げられた手から伝わってくる痛みに霊夢は軽く呻き、今度は女の声が聞こえてきた隙間を睨み付けた。
両端を赤いリボンで綺麗に装飾した隙間や、先程の声に覚えのあったルイズは、アッと声を上げて後ずさる。
隙間から出ていた手は、すぐに霊夢の手を離し隙間の中へと戻っていった。
しかし一息つく間も無く、今度は隙間から見る物に溜め息をつかせるほどの美貌を持った金髪の美女が出てきた。
知ってのとおり、その女性の名は八雲 紫。幻想郷を創り出した妖怪達の賢者である。

上半身だけ出していた紫は下半身も隙間の中から出し、床に降り立つ。
紫が出てきた隙間は主人の意思に従い消滅する。
「これからしばらくは使い魔として厄介になるんだからお互い仲良くしなさいって」
隙間から出てきた紫は子供を叱る親のような顔でそう言うも、霊夢は納得のいかない表情を浮かべている。
紫は溜め息をつくと次にルイズの方へ近寄り、落ち着き払った声で彼女にこう言った。
「貴女も貴女よ。ちょっとばかし覗いてみたら…全く、掛ける言葉を選びなさいな」
「で…でも」
「でももヘチマも桃もないわ。要はもっと他人に優しい言葉を掛けなさいと言ってるのよ」
反論する暇さえ見せずそう言った紫の表情は真剣であった。
「あ…あぅ…」
紫の真剣そうな表情にルイズは無意識のうちに反論する勇気を失ってしまい、あぅあぅと呻いた。
その姿はまるで、真夜中の路地裏で親とはぐれて寂しそうにうずくまる子猫のようであった。
(ふ~ん…紫の奴もあんな表情を浮かべられるんだな)
一人置いてけぼりにされていた魔理沙は本の整理に戻りつつ紫の真剣そうな表情を珍しそうに見ていた。
霊夢はというと肩をすくめつつ溜め息をつくとドアから離れ、先程自分が座っていたイスにもう一度座り直した。
ルイズのあぅあぅという声しか聞こえないこの部屋の空気は、段々と冷めていくかのように見えた…そんな時。
「ぷっ、くく…」
ふと頭上から押し殺すかのような笑い声が聞こえルイズは首を傾げた。
何だと思い頭を上げると、そこには笑いを必死に堪えている紫がいて―――――

「ふふ…うふふ…――――アッハハハハハ!!」

――――――案の定、彼女は笑い始めた。

「 !? 」
突然の事に一番近くにいたルイズは目を見開いて驚いた。
「うぷっ…!ゴホッ…!」
飲みかけであった自分のお茶を口に含んでいた霊夢は思わず吹き出しそうになりながらもなんとか堪えた。
「えっ…?……デッ!?」
魔理沙は手に持っていた本を思わず取り落としてしまい、不幸にもその本の角が右足の小指に直撃した。
他の二人はともかく一番酷い目にあった魔理沙は右足を押さえながらその場に蹲ってしまった。
「ゴホ…ちょっと紫、いきなり何なのよ?ビックリしたじゃない…ゴホ…」
霊夢は咽せながらも未だに笑い続けている紫を睨み付けた。
一方の紫は笑いを堪えながらも、霊夢の質問にそう答えた。
「あははは…イヤ何、ちょっとこの娘の反応があまりにも可愛かったからね…うふふ」
「な…何ですってぇ!」
その答えにルイズは憤ったが、ようやく笑いが収まってきた紫はルイズに言った。
「だって…アハ…私は別に怒ってないのに…フフフ…あんなにしょぼくれてるのを見てつい…ハァ」
「というかさぁっ…イテテ!お前の真剣な表情が…っ!般若に見えたんじゃないのかよ…って、イタタ!」
紫の言葉を聞いた魔理沙は、ジンジンと痛む小指を押さえつつ紫に突っ込んだ。

その後全員が落ち着いてから、紫はルイズに言った。
「まぁ…霊夢が貴女の使い魔になったとしても霊夢は霊夢のままよ。さっきみたいな上から目線の言葉は控えた方が良いわ」
面と向かってそう言われ、ルイズはハッとした顔になった。
今の霊夢は自分の使い魔ではあるがそれでも相手が相手だ、その様な事で自分に懐くわけでもない。
(もしかしたら私、自分がとんでもない存在だと知って自信を持ってたのかも?)
ルイズはそう心の中で呟くと幻想郷に来た際、吸血鬼のレミリアに言われた事を思い出した。

―――今霊夢の左手にはお前達が『伝説』と呼んで崇める使い魔のルーンが刻まれている。
      という事は、貴女にはそれ程の力があるという事じゃないかしら?貴女が気づいていないだけで

運命を操り、そして見る事の出来る彼女の言葉に、ルイズは知らず知らずのうちに自信がでてきたのである。
しかしその事実は結果として、霊夢を単なる使い魔として見てしまいそうになった原因にもなってしまったのだ。
(うぅ…自信過剰という言葉は、正にこういう時の事ね…)
「わ、わかったわ…」
ルイズは渋い顔をしつつも紫の言葉に納得して頷いた。
頷いたルイズを見て紫もまたコクリと頷き、今度は霊夢の方へと顔を向けた。
「貴女も些細な事で機嫌を損ねない事ね。もうちょっと寛容になってみなさい?」
紫の諭すような口調に、とりあえず霊夢は「考えとくわ」と言っておいた。
次に紫は魔理沙の方へ顔を向け、少々厳しい口調で言った。
「全く、人間の中で良く霊夢を知ってる貴女ならもっと早くに仲裁ぐらいは出来たんじゃないの?」
「私を信用しすぎてないか?それにお前が直接来たんだからもういいだろう」
笑顔で開き直った魔理沙に紫は溜め息をつくとフッと笑い、パンパンと手を叩いた。
「まぁいいわ。これで話は終わりよ…じゃ、次は貴方達の行きたいところへ行きなさい。何か用事があるんでしょう?」
紫がそう言うとルイズはハッとした顔になり、霊夢の方へと顔を向けた。
霊夢は面倒くさそうな表情を浮かべつつも頷くと、ルイズに言った。
「ま、部屋に閉じこもっててもなんだしね。…だけど命令とかは絶対に御免被るよ?」
彼女の口から出たその言葉に、紫は笑顔を浮かべた。
「ふふ…流石霊夢ね。物分かりが良くて私も助かるわ」
そしてその言葉を了承と受け取ったルイズもまた頷き、今度は魔理沙の方へ顔を向けた。
「ん?何だ、私も連れて行ってくれるのか」
ルイズの鳶色の瞳に見つめられている魔理沙はまだ痛みが残る足を押さえながらも彼女の言葉を持った。
そして、ルイズの口から出た言葉は魔理沙を知っている者なら「言うだけ無駄な気がする」と言わすものであった。
「ん~と……まぁアンタは残っててもいいわよ。別にアンタは使い魔とかじゃなくて居候みたいなもんだしね」
「おいおい、私には冷たいんだな」
てっきり、「一緒に付いてきて」と言われるかと半信半疑で思っていた魔理沙は驚いた振りをしつつ笑顔でこう言った。

「まぁいいや、なら私は一人で行くとするか。ちょっと観光にも行きたいしな」

自信満々にそう言った魔理沙に、ルイズは何を言うかという顔つきになった。
「面白い事言うわね、仮に一人で言っても門前払いが………ん?どうしたのユカリ」
一方の紫はというと、何処に行ってもいつもの白黒ねぇ、と呆れつつ溜め息をついていた。
そんな彼女に気づいたルイズは首を傾げたところ、紫はルイズに言った。
「ルイズ…魔理沙も連れて行ったらどうかしら?魔理沙ならそこら辺をぶらつかせるだけでもいいし」
大妖怪の口から出た言葉を耳に入れたルイズは、怪訝な顔つきになった。
「え?何でよユカリ。余計に一人付いていったって騒がしいだけだわ。それに行くのは王宮よ、粗相があっては困るわ」
ルイズの言葉に紫ではなく霊夢が溜め息をつくと、ルイズに話し掛けた。

「私は別に良いけど。魔理沙が一人で行くとなると粗相どころじゃないわよ」
「レイムまでそんな事言うの?どうせ一人で行ったって門前払いだっていってるに…」
ルイズがそこまで言ったとき、紫が楽しそうにこう呟いた。

「厳重に閉じられた扉を吹き飛ばし、借りていくと言って無断で本を盗むあの魔理沙が、門前払いで済むのかしらねぇ?」
突然そんな事を言ってきた紫にルイズはハァ?と言いたげな顔になった。
そんなルイズ達を見てか、魔理沙は得意気にこんな事を言ってきた。

「人聞き悪いぜ。私は盗んでるんじゃなくてちょっと借りてるだけさ」
魔理沙の口から出たその言葉に、ルイズの身体が一瞬だけ硬直した。
そしてすぐに硬直が解いた後、ゆっくりと首を霊夢の方に動かし「本当なの…?」と質問してみた。

「まぁ大体合ってるわね。あと吹き飛ばすのは門番の方かしら?」
霊夢はあっさりと答えてくれた。


結局、仕方なしにルイズは霊夢と魔理沙の二人を連れて王宮へ行くことにした。
紫もその後用事があるといってスキマを使って幻想郷へと帰って行った。
霊夢は自力で空を飛び、魔理沙は箒に乗って飛んで行く。
ハルケギニアでは『箒で空を飛ぶ』という事が無いので、ルイズは箒に乗って空を飛ぶ魔理沙の姿を見て驚いた。
まぁ最も、霊夢はそんなルイズに向けて「幻想郷でも箒で飛ぶのはコイツだけよ」と言っていたが。

幻想郷から来た二人の後ろ姿を、ルイズは馬に乗って追い掛けたらすぐに街へたどり着くことが出来た。
ルイズは霊夢と魔理沙の二人―――特に魔理沙には絶対自分たちの側から離れないよう言っていた。
「良い?街の中で目立つような事しないでね。特に変な技とか能力を使うなんて事は、絶対にやめて頂戴」
「変な、とは失礼だな。私は極々普通の魔法をいつも使ってるんだがな」
魔理沙とそんな会話を交えつつ、三人は王宮へ行くため街の大通りへと出た。

しかし結局はそれが失敗となり、魔理沙の姿を大通りで見失ってしまった。
ルイズとしてはそのまま王宮へ行きたかったのだが、下手に放っておいて騒ぎになるのは御免である。
仕方なく霊夢は空から、ルイズは市内を走り回って捜す羽目になってしまった。

結果、ルイズが魔理沙の姿を見つけた時には案の定、街のチンピラ三人に絡んでいた。
その場は貴族であるルイズが乱入したことにより事なきを得て、魔理沙が自己紹介をしていた直後…。
魔理沙の傍にいた黒髪の少女が一足遅く飛んできた霊夢の姿を見て嬉しそうにこう言ったのだ。
「あ、レイムさんじゃないですか!」
「やっぱりシエスタだったわね。もしかして魔理沙、アンタが助けたの?」
「あぁ、なんか今にも空を飛びそうな程の軽い連中が絡んでたからな」
霊夢にそう言われ、魔理沙は自信満々にそう答えた。
二人の傍にいたシエスタは、彼女らのやり取りを見てふと頭に浮かんできた疑問を口に出した。
「あの、つかぬ事をお聞きしますが…お二人はお知り合いなんですか?」
恐る恐る尋ねてきたシエスタに、霊夢はぶっきらぼうな表情を浮かべて答えた。
「別に友達ってほど仲良くはないけど…まぁ知り合いといえば知り合いね」
「相変わらず冷たい奴だなぁ。そう言っても何だかんだで一緒にいる癖に」
「何言ってるのよ?アンタの方から寄って来るくせに」
魔理沙の口から出た言葉で思わず喧嘩腰になりかけたものの、その場はルイズが慌てて抑えたことでどうにかなった。

その後、ルイズは二人を連れてその場から去ろうとしたが、ふとシエスタが三人に声を掛けた。
「あ、待ってくださいミス・ヴァリエール」
「ん?何かしら」
シエスタに呼び止められ、ルイズはシエスタの方へと顔を向けた。
「あの…今から私、チクトンネ街にある叔父の店に行くんです…」
突然何を言うのかと思い、ルイズは首を傾げた。
シエスタは指先をモジモジと弄くりながらも、一呼吸置いてこう言った。

「えっと…だから、そのお店で何かお礼が出来ると思いますので、だから…」

本当のところ、ルイズはすぐにでも王宮へ参内したかった。
しかし、心優しい少女の親切を踏みにじることも出来ず、なし崩し的にそのお店へ行くことになった。


だが…想像して欲しい。
今までこんな街で暮らした事のなさそうな清楚な田舎少女の叔父が経営する店というのを…
大抵の者は、八百屋、雑貨屋、地方の料理を出すリストランテ――
その他諸々と、殆どの者が想像するだろう。

だから、シエスタを少しだけ知っていた霊夢は目を丸くし、ルイズはえーっと少しだけ驚いた。

「紹介します。叔父のスカロンさんです」
自信満々な表情でそう言うシエスタの後ろで、スカロンと呼ばれた男はクネクネと腰を動かした。
「あっらぁ~、シエスタちゃんを助けてくれたのがこんな素敵な女の子達だなんてぇ~。…うぅん、トレビアーン♪」
清楚な田舎少女の叔父が女口調で喋っていて、如何わしい店の店長をしているなんて、誰が想像しようか。


「私は霧雨魔理沙。見ての通り普通の魔法使いをやってるぜ」
「魔法使い…メイジじゃなくて?」
「前半は正解だが、後半はハズレだぜ」
「あっらぁ~♪随分ユニークなお嬢ちゃんだこと!」
ただ、魔理沙だけは特に気にしてもいないようだ。


そして時間は今に戻り…

スカロンの様な男性に会った事が無い霊夢は嫌そうな目でずっと彼を見つめている。
一方の魔理沙は、霊夢とは逆にスカロンを「面白い人」と認識して面白そうに見つめていた。
二人に挟まれるようにして座っているルイズはそんな二人をじっと見ていた。
「本当、ハルケギニアって変なのが勢揃いね。あんな恥ずかしい服を着せられたら堪らないわ」
スカロンの持っているキャミソールを見つつそう言った紅白巫女に、魔理沙が反応した。
「でも年がら年中そんな恰好してるお前よりかは大分マシだと思うがな」
狙いが正確すぎて的を貫いた魔理沙の突っ込みに、流石のルイズも頷いた。
「そうねぇ。大体私から見てみたらアンタの方が随分おかし……ってイタッ!」
「おっと!」
ルイズは最後まで言いきることができずに霊夢に頭を叩かれた。
同時に魔理沙も攻撃したのだが、こちらに咄嗟に避けられてしまっていた。
「っさいわねぇ…。大体、腕は見せてないでしょうに」
そこまで霊夢が言ったとき、後ろから誰かの声が聞こえてきた。
「ハイ、当店自慢のサンドイッチを持ってきたよ」
元気そうな少女の声と共に、軽食を載せたお盆がテーブルの上に置かれた。
チーズ、ハム、そして新鮮なレタスを軽く焼いた食パンで挟んだそれを見て、霊夢は振り返った。
そこにいたのは、少しおとなしめの服を着た太眉の少女が顔に笑顔を浮かべて立っていた。
ストレートの黒髪が窓から差し込んでくる陽の光に当てられ眩しく輝いている。
「あぁ、お金はいらないよ。これはシエスタを助けてくれたお礼さ」
じゃ、ゆっくりしていってね。と最後にそう言って厨房へと戻っていった少女の名はジェシカ。
スカロンの娘であり、シエスタの従妹であった。
シエスタとは正反対の快活な性格で、店で働く他の女の子達のリーダー的存在でもある。
彼女が去った後、テーブルに置かれたサンドイッチを最初に手にしたのは魔理沙であった。
早速一口目を口に入れて咀嚼し飲み込んだ後、「中々美味いな」と言った。
その言葉に釣られてか霊夢もサンドイッチを一つ手に取り、モグモグと食べ始めた。
「うん、簡単だけど良い味してるわね」
霊夢も素直な感想を述べたところで、ようやくルイズもサンドイッチを手に取り一口食べた。
ゆっくりと咀嚼して飲み込んだ後、彼女もまた感想を述べた。

「あ、美味しい…」




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