あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

五月蠅いゼロの五月蠅くない使い魔-06



  第6夜
  どうする?


 太陽が地上を照りつける中、ルイズとマルモは森の横、ちょうど日陰になる所を歩いていた。
 未だモンスターとは遭遇せず、代わりに見つかったのはアイテム――『薬草』や『魔法の聖水』――である。
「ねえマルモ。ここって本当に異世界なの?」
 マルモは無言で頷く。
 だがルイズには実感が湧かない。確かにここはトリステイン魔法学院ではないが、かといって異世界かどうかもわからない。
 しばらく歩くと、マルモはまたアイテムを発見する。今度は『アモールの水』だった。ちなみに『薬草』と『アモールの水』は傷を癒す効果があり、『魔法の聖水』は魔法力を回復する効果がある。
 マルモは拾ったアイテムを眺めて、この世界のモンスターのレベルに大体の当たりを付けていた。おそらくは二十前後、少なくとも十以上。ルイズの緒戦では少々手厳しいかもしれないが、『賢者の書』で修行してきたマルモにとってはお遊びのレベルである。
 異世界にやってきてからまだ三十分も経っていない。二人は歩くことを続けるが、出現するモンスターはゼロだった。

 一方のキュルケとタバサはというと。
「一体なんなのよここは?!」
 キュルケの杖先から炎球が放たれ、目前の一本角を生やした大ウサギのようなモンスター『アルミラージ』が炎に包まれる。
 だが、モンスターはそれだけではない。腐った片目がぶらさがる犬『アニマルゾンビ』と宙に浮く短刀『ひとくいサーベル』がタバサに襲い掛かる。
 タバサは『フライ』を唱えて回避し、充分な距離をとる。片目でキュルケの方を確認すると、彼女のサラマンダーと大ウサギが互いに牽制しあっていた。
 大丈夫だと判断したタバサは迫り来る二体に杖を構える。
「ラグーズ・ウォータル・イス・イーサ・ウィンデ」
 『風』二つと『水』一つが合わさった『氷の矢』が何本も対象に向かう。二体とも回避行動をとるが、犬には四本の『氷の矢』が突き刺さり、その場に倒れ伏した。短刀にも三本命中したが、あまり効いている様子はない。
 再び呪文を唱えようとしたタバサだったが、詠唱の途中で唐突に脱力感がめぐった。
 何だ、と思うタバサに短刀が突撃してくる。
 タバサは知らぬことだが、『ひとくいサーベル』が魔法力を吸収する呪文マホトラを使ってタバサの精神力を奪ったのだ。
 動揺したタバサの隙を突いて短刀の切っ先が向かうが――、飛来する竜がタバサを口にくわえて助けることによって難を逃れた。
 そして行き場を失った短刀を、竜の尾が叩く。それによって短刀は動かなくなった。
 竜はタバサの使い魔、幼生の風竜シルフィード。幼生といえどもその力は侮れない。
「ありがとう」
 自分の使い魔に礼を言って地上に降りる。キュルケもモンスターを倒したようで、タバサの方に駆け寄ってきた。
「タバサ、大丈夫?」
「平気」
 二人とも特に怪我はない。
「ったく、出先でいきなりモンスターと出くわすなんてね。早いとこあの二人を見つけないとまずいわ」
 キュルケとタバサは、ルイズたちと同じ旅の扉を経由してきたのだが、出現地点が異なっていた。マルモの設定が『特定の地点』ではなく漠然とした『異世界』としたことでそうなったのだ。
「タバサ、あなたの使い魔で上空から見つけられそう?」
「やってみる」
 二人と一匹はシルフィードに乗り、一気に二百メイルほど上昇する。眼下にはむき出しの大地や湖、森などが広がっている。
 竜の視力は人間とは比べ物にならない。ぐるぐる旋回していると、やがて目標の二人を見つけ、飛んでいった。
 その頃のルイズたちは、適当な岩場を見つけて休憩していた。未だモンスターとは遭遇せず。
 マルモとしては、クリオの経験値を稼ぐことも含めてこの異世界にやってきたのだが、どうにもモンスターと遭遇しない。
 ルイズの方はというと、もう修行のことは忘れて遠足気分だった。
 何せマルモと二人っきりである。メイドもギーシュもいない、二人だけの(異)世界。まるで遠乗りをした恋人のようではないか。
 ルイズはちらっとマルモの顔に目を向ける。普段マルモは無表情とはいかないまでも表情があまり変わらない。だが(ルイズにとって)非常に濃い一日と半日をマルモと過ごし、マルモが何を考えているのか大体見当がつくようになっていた。
 今のマルモの顔は、何か考えている顔だ。きっとモンスターが出なくて悩んでいるのだろう。
わたしのために悩んでいるのね、と思うとルイズは嬉しくなる。あながち外れてはいないのがルイズのある意味恐ろしいところだ。
 そのようにルイズがマルモの顔を眺めていると、不意にマルモがこちらを向いた。突然のことにルイズはどぎまぎしてしまう。
 マルモは杖を持って立ち上がった。
「ど、どうしたの? マルモ」
「ドラゴンが来る」
「へ?」
 マルモの見つめる先に目をやると、確かに上空からドラゴンがこちらに飛んできていた。
「マ、マルモ! いきなりドラゴンなんて無理よ!!」
 ハルケギニアではエルフに次いで強力な生物、それがドラゴンだ。その強さはトライアングルメイジでも敵わない。
「いざというときは助ける」
「今がいざというときよ!」
 マルモのにべもない答えにルイズが突っかかっている間にも、ドラゴンはどんどん接近してきている。
「あーもう! こうなったら自棄よ!」
 と、ルイズは杖を構える。だが、呪文を唱えようとしたその矢先、
「ルイズぅーー!!」
 という声がドラゴンから聞こえてきた。ルイズは驚いて詠唱できなくなった。
「ルイズの知り合い?」
「ドラゴンに知り合いなんていないわよ! というか、あれって韻竜?!」
 ドラゴンが器用にルイズたちのいる岩場の前で着陸すると、二人の人物が確認できた。
「キュルケにタバサ?! どうしてここに?!」
「あなたたちのせいよ」
 キュルケは竜から降りるなりそう言い放った。続いてタバサとキュルケのサラマンダーも降り始める。
「どういうことよ」
「そこのマルモって娘の変な渦に引っ張られてこっちにやってきたのよ。こっちに着いた途端にモンスターに襲われるし……」
 このような言い方ではまるで巻き込まれたかのように思えるが、実際はキュルケの方から首を突っ込んだのである。
 ルイズは冷や汗をかいた。
「こ、ここってやっぱりモンスターが出るの?!」
「はあ? あなた行き先のことも知らないでやってきたの?」
「だ、だって、異世界なんて初めてだし……」
 ルイズが緊張しながらいうと、今まで様子を見ていたタバサがルイズに口を開いた。
「異世界?」
「あ、うん。マルモが言うにはそうらしんだけど」
 タバサはルイズの傍に控えているマルモに興味深そうな目を向けた。
「ここは異世界?」
 マルモは頷く。
「あのねえタバサ、異世界なんてあるわけないでしょ」
 キュルケのハルケギニア的常識の言葉に、タバサは首を振る。
「さっきのモンスターは私の知る限りハルケギニアには棲息していない。たとえここが異世界でなくてもハルケギニアでない可能性は高い。そしてそんな所に一瞬で移動できる彼女の魔法はとても気になる」
 いつになく饒舌な親友に驚くキュルケであるが、タバサの考えを覆すほどの言葉が浮かばない。
「でもまあ、ここが異世界かどうかなんて大きな問題じゃないわ。先に知るべきなのは、あたしたちが学院に帰れるかどうかよ」
 その言葉にはタバサも頷く。
「大丈夫よね、マルモ?」
「大丈夫」
 ルイズの疑問にすっぱりと答えるマルモ。そして目の前に旅の扉を作り上げる。広場で見たのと同じ青白い渦が回っていた。
「これで学院に帰れる」
 ほっとするキュルケとタバサであるが、旅の扉には入ろうとしなかった。
「これっていつでも出せるの?」
 キュルケはマルモに訊ねた。
 マルモが頷くと、キュルケは口角を上げた。
「出してもらって悪いけれど、今はまだ必要ないわ」
「どういうことよキュルケ」
 ルイズがじっと睨みつける。
「その通りの意味よ。いつでも帰れるんだったら、もうしばらくこっちで冒険してみるのもいいじゃない?」
「なっ」
 ルイズは怒りで顔を赤らめた。せっかく二人だけの(異)世界だったのに、このツェルプストーはそれを邪魔するのか。
「駄目よキュルケ!」
「なにが駄目なのかしら? ひょっとしてデートのお邪魔しちゃった?」
「と、とにかく駄目なものは駄目なの!!」
 キュルケは冗談で言ったのだが、ルイズにとっては的を射ていた。
 埒が明きそうにないので、キュルケは照準をマルモに合わせることにした。
「ミス・マルモ。あたくしたちがいてもよろしくて?」
「マルモ! こんなツェルプストーの言うことなんて聞いちゃ駄目!!」
「…………」
 マルモは悩んでいた。
 現在のパーティはルイズとマルモ、そしてクリオ。一人あたりの経験値を多くしてルイズを早くレベルアップさせるためにも、パーティ内の数は最小限に留めたい。戦力面でもマルモ一人で充分カバーできる。
 しかし、キュルケとタバサが旅の扉のせいでこの異世界にやってきたのも事実。
「マルモ、悩む必要なんてないのよ。キュルケは帰れるのに帰らないと言っているんだから、マルモの責任はもう果たしたわ」
「『まだ』必要ないとは言ったけれど?」
「同じことよ!」
 ルイズとキュルケは目線で火花を散らしている。タバサはというと、何も口出しせず周囲の地理を観察していた。
「大体どうしてあなたたちはこんな所にきたのよ」
「うっさいわね。あんたには関係ないでしょ」
「あててみましょうか? 『修行』でしょ?」
「ど、どうしてあんたがそれを!?」
「さあ~、どうしてでしょうね?」
 慌てふためくルイズを、にやにやと飄々とキュルケは楽しむ。昼の食堂でのマルモとルイズの言動を見て半ば鎌をかけたのだが、見事にルイズが引っかかったので愉快としかいいようがない。
「と、とにかく! わたしたちはわたしたちでやるから、あんたたちはあんたたちでやりなさいよね!」
「つれないわねー」
 男なら胸の一つや二つ押し付ければ済む話だが、生憎とルイズは女である。
「どうする、タバサ?」
 キュルケは傍らのタバサに耳打ちした。そもそもマルモたちを観察しようと決めたのはタバサであって、キュルケは補助に過ぎない。もっともここまでついてきたのは猫の命でも足りぬ好奇心のせいではあるが。
「要は彼女らの邪魔をしなければいい」
「わかったわ」
 二人だけに聞こえる声で互いに了承したキュルケとタバサは、そろってルイズを向いた。
「ルイズ、あなたたちの邪魔はしないわ。その代わりこっちも好きでやらせてもらうし、あたしたちが帰りたくなったら帰れるようにしてもらうからね」
「……わかったわよ」
 ずいぶんと偉そうに感じたが、ルイズはマルモとの時間を確保できれば上々なので渋々頷いた。
「それじゃいきましょ、マルモ」
 ルイズが岩場から降りて歩き出すと、マルモとクリオは追従していった。タバサたちは風竜のシルフィードに乗って空に向かう。
上空ならばモンスターに襲われる心配もあまりない。


 マルモは考えていた。
 さっきのキュルケの言葉からして、この世界にモンスターはいる。けれども、自分のパーティは一回も遭遇していない。今も野原を歩いてはいるが、モンスターの影は見当たらない。弱敵回避呪文トヘロスでもかかっているかのような状況だ。
 可能性としてはまず三つの原因が考えられる。
 一つ目はこの世界が永らく『平和』であること。邪悪な意思から解き放たれた魔物はむやみに人間を襲わない。
 二つ目はモンスターの絶対数が少ないこと。もしそうであるならば別の世界で修行する必要がある。
 三つ目はクリオの存在。クリオはマスターのマルモでも未だ全容が明らかではない。可能性としては低いが、クリオの『何か』がモンスターを避けさせているかもしれない。
 いずれにせよ今のマルモには現在の状況は打破しがたい。別の世界に行くにしても、キュルケとタバサを学院に帰してからだ。
 ルイズとクリオのために悩むマルモであったが、ルイズはそんなマルモの横顔を眺めてよだれを滴らせるだけである。

 タバサは考えていた。
 マルモの魔法は今のところ『火』の魔法と『移動』の魔法しか見ていないが、それでも驚異的だ。
 特に移動の魔法は上手く使えば暗殺や誘拐、窃盗など思うがままである。今のマルモに邪心はないが、どうなるかはわからない。
 しかもまだまだ引き出しはありそうだ。一体どんな呪文が使えるのか見当もつかない。
 いきなり「見せて」といって自分の魔法を見せるメイジはあまりいない。逆に警戒される恐れもある。
 さらにはあの『クリオ』とかいうタマゴ。タマゴが自らの意思であんな軽快に動くなどタバサの知る限りあり得ない。あれもまた『異世界』の生物なのだろうか。
 興味のつきないタバサであるが、結局離れて観察するしかないのであった。

 さて、世界は離れてトリステインの魔法学院。そこの宝物庫の扉の前で女性が一人立っている。
 緑の髪を流して眼鏡をかけるその女は学院ではロングビルと名乗っているが、偽名である。その理由は学院に潜入し、多くの秘宝が眠るという宝物庫から宝を盗むためだ。
 学院長オスマンが居眠りしている隙に宝物庫の調査をしようとしたのだが、扉は『アンロック』では開かない。学院長の持つ鍵が必要なのだ。『錬金』を扉にかけてみるも、強力な『固定化』に打ち消されて効果なし。
 ミス・ロングビルが考え込んでいると、階段を上ってくる足音に気付いた。
 杖を折りたたんでポケットにしまうと、コルベールが現れた。
「おや、ミス・ロングビル。ここでなにを?」
 間抜けな声で訊いてきたコルベールに、ミス・ロングビルは愛想のいい笑顔を浮かべた。
「ミスタ・コルベール。宝物庫の目録を作っているのですが……」
 話題はオスマンのクソ爺っぷりから昼食の誘い、そして宝物庫の中のことに及んだ。
「ところでミスタ・コルベール。『銀の竪琴』はご存知?」
 虚無の曜日の二日前のことである。



ドラゴンクエストモンスター図鑑その1

  • アルミラージ
 成長が早く、HPも持続して伸びるがMPと賢さが伸び悩む。配合で強化しよう。
とくぎ ラリホー ちからをためる すてみ

  • アニマルゾンビ
 LVアップがとても早いが、総合して能力は低い。守備力と耐性は強化が必要だ。
とくぎ ルカニ ボミエ マホトーン

  • ひとくいサーベル
 氷系に強く、守備力と素早さも高いが、MPはほとんど成長しない。特技を活かして戦おう。
とくぎ マホトラ あくまぎり マヒこうげき



新着情報

取得中です。