あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

五月蠅いゼロの五月蠅くない使い魔-03



  第3夜
  終わり?


 マルモ達が『風』と『火』の塔の間にあるヴェストリの広場に着いた頃には、食堂にいた生徒よりも多くの人だかりができていた。二つの月がちょうど地平を昇りきった頃だった。
「諸君! 決闘だ!」
 ギーシュの言葉に観客が沸く。娯楽の少ない学院生活、生徒はこういった騒ぎが何よりの好物である。
 キュルケは賭けの胴元をしていた。タバサは本を読んでいた。シエスタはマルモを見守っていた。
 マルモはギーシュの前に立った。ルイズは仁王立ちにそれを見ていた。
「ふん、君もメイジなんだろうが、あのゼロのルイズに召喚されたんだ。どうせ魔法もろくなものじゃないだろう」
 と、見下した態度だった。頭に血が上っていたこともそれに関係しているだろう。
 マルモはギーシュの言葉を受け流して睨みつけた。
「謝って」
「は?」
「私が勝ったら、シエスタと、ルイズに謝って」
 マルモは迫力のある声で言った。
「よかろう。万が一君が勝てたならの話だが」
 ギーシュは余裕の態度を崩さなかった。若さゆえの、己の能力への過剰な自信である。
 そして二人は十メイルほど離れ、決闘が始まった。
「僕の二つ名は『青銅』。『青銅』のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」
 そう言ってギーシュは薔薇の杖を振って、花びらを三枚宙に舞わした。
 すると、三体の甲冑を着た女戦士の青銅人形が現れた。
「君は名乗らないのかね?」
「……私の名前はマルモ。『賢者』のマルモ」
「ハハハッ! まさか自分で賢者とはね! こいつは恐れ入ったよ!」
 ギーシュは完全に油断していた。隙だらけだった。そして、ワルキューレをマルモにけしかけようとする直前、隙を突かれた。
「ギラ」
 高熱がワルキューレ三体の上半身を融かした。

 時刻を少し戻しての学院長室。
 ミスタ・コルベールと学院長オールド・オスマンはルイズとマルモを待っていた。
「では、その召喚された娘を使い魔にしたのじゃな?」
「はい」
「んで、その娘の名前を聞き忘れたと」
「も、申し訳ありません」
「その娘がたとえばアルビオンやガリアの有力貴族の娘であったとしたら、君はどうするつもりかの」
「も、申し訳ありません! そこまで考え至りませんでした!!」
「のう、君は謝ってばかりじゃのう、ミスタ……」
「コルベールです」
「ふむ……ま、大丈夫じゃろ。いざとなったら何とかなるじゃろて」
 ほっほっほ、と好々爺振りを演じる。
 コルベールは頭に汗をかきながら、百歳とも三百歳ともいわれるオールド・オスマンが大人物なのか単なる楽天家なのかわからなくなった。
 そのとき、ドアがノックされた。
「誰じゃ?」
「私です。オールド・オスマン」
 オスマン氏の秘書、ミス・ロングビルだった。
「何じゃ?」
「ヴェストリの広場で生徒が決闘をするそうです。大騒ぎになっています。止めに入った教師がいましたが、生徒達に邪魔されて、止められないようです」
「まったく、暇をもてあました貴族ほど、性質の悪い生き物はおらんわい。で、誰が暴れとるんだね?」
「一人は、ギーシュ・ド・グラモン」
「あの、グラモンとこのバカ息子か。オヤジも色の道では剛の者じゃったが、息子も輪をかけて女好きじゃ。おおかた女の取り合いじゃろう。相手は誰じゃ?」
「……それが、生徒ではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔の少女のようです」
 オスマン氏とコルベールは顔を見合わせた。
「教師たちは、決闘を止めるために『眠りの鐘』の仕様許可を求めております」
「アホか。たかが子供のケンカを止めるのに、秘法を使ってどうするんじゃ。放っておきなさい」
「わかりました」
 ミス・ロングビルが去っていく足音が聞こえた。
「オールド・オスマン」
「うむ」
 オスマン氏は、杖を振った。壁にかかった大きな鏡に、ヴェストリ広場の様子が映し出された。

 ギーシュは驚愕に包まれた。
 自慢のワルキューレ三体が、一瞬にして融かされたからである。視界が明けて杖を構えるマルモが見えた。
「もう終わり?」
「くっ……なめるなあ!」
 ギーシュは薔薇の杖を振り、四体のワルキューレを生成する。それらの手には剣や槍が握られ、
まさに攻撃寸前である様子だが……。
「ベギラマ」
 マルモはワルキューレが動き出す前に呪文を展開した。燃え盛る炎がワルキューレを包み込み、四体全てを跡形もなく融かした。
「終わり?」
「ひっ」
 マルモが一歩前に進むと、ギーシュは三歩後ろに下がった。歴戦の傭兵のごとき迫力がそうさせていた。
 マルモが距離を詰めようと直進すると、ギーシュもまた後ろ退った。
 その気迫たるや、あまりにも圧倒的。もはやギーシュは、ドラゴンに睨まれたドラキーだった。
「来るな! 来るなぁ!!」
 やがて、ギーシュは壁際まで追い込まれた。杖を振るが、恐怖で心乱れた彼はうまく精神力を練れない。
 マルモはギーシュの眼前に杖を突きつけた。後ろは壁、前は杖の詰みである。
「謝って」
「ご、ごめんなさい!! ごめんなさいぃぃぃ!!!」
「私にじゃなくて、シエスタとルイズに」
「わ、わかりました……」
 ギーシュはふらふらとシエスタとルイズの前へ行き、平謝りした。
 その後なぜか二人の女生徒にも土下座して謝った姿があったが、マルモにとってそれは重要ではない。
「マルモ様!!」
 シエスタがマルモに飛びついた。
「マルモ様! 私信じておりました! もう、言葉では表せないほど感謝で胸がいっぱいです!!」
 シエスタは額づきそうな勢いである。実際、地面に頭をつけようとしていた。
「そんなことしなくていい。私が勝手に決闘しただけ」
「そんなことないです!! マルモ様は、私の命の恩人です!!」
 ギーシュは命まで取ろうなどとは毛頭思っていなかったが、シエスタは命を救われたと感じた。
「私、マルモ様に命をかけて仕えます! 何があろうと、私はマルモ様のご命令に従います!!」
「別にいい」
「はい! かしこまりました!」
「……」
 扱いに困ったので、とりあえず食堂の方に帰した。
「マルモ」
 呆れたようにルイズが声をかける。
「まさかマルモが負けるとは思わなかったけど、万が一を考えてね。まあでも、勝てたから別にいいわ」
 やれやれ、と首を振る。
 マルモは、ルイズに一歩近づいた。
「ルイズ」
「何?」
「ごめんなさい」
「え?」
「私、言うこと聞かずに勝手に決闘を奪って……使い魔なのに」
 ルイズは目を白黒させた。
 そりゃあまあ、勝手に決闘申し込んだり、メイドといちゃいちゃしたり、メイドを手なずけたりしたのには、ちょーっとだけ怒ったりしたかもしれない。
 でも、マルモは。私をご主人様として立ててくれてる。私のことを思って行動してくれてる。
 そう思うと、何故か許してしまいそうな気持ちになる。
「こ、今回だけよ! 次からは私の許可なしに行動するなんて許さないんだから!! どんなことでも、まずわたしに話しなさいよね!!」
「……わかった」
 でもでも、やっぱり主従関係はきちんとつけておかなければいけない。そうじゃないと、大変なことになる。
 ……何が?
 何が……何が……、そう、あのメイド! あのメイドが気安くマルモに近付くと大変だ。
 マルモはわたしの使い魔、パートナーだ。あんな平民のメイドのものじゃない。
 マルモは、わたしのものだ。

 オスマン氏とコルベールは、『遠見の鏡』で一部始終を見終えると、顔を見合わせた。
「オールド・オスマン」
「うむ」
「あの少女が、勝ってしまいました」
「うむ」
「まさか、あそこまでの『火』の使い手とは……」
「うむ、あの威力じゃと、少なくともトライアングルじゃの。あの年ではなかなかないことじゃ」
 メイジのレベルは『ドット』、『ライン』、『トライアングル』、『スクウェア』に分けられる。後者になるほど強力なメイジだ。ちなみに『炎蛇』のコルベールは、火のトライアングルメイジである。トライアングルメイジであるということは、魔法学院の教師並の魔法の使い手というわけだ。
「それより私が気になるのは、あの娘の使っていた魔法じゃ」
「魔法?」
「うむ。あの娘はルーンの詠唱なしにあれだけの魔法を繰り出しおった」
「そ、それじゃあ先住魔法ですか?!」
「慌てるでない。先住魔法は口語を用いて魔法を発現させるものじゃ。彼女が口語で火を操ったとは考えられん」
「では、一体……」
「ふうむ。彼女の持つ杖に火石でも仕込まれていたのか、それとも……」
 まったく異なる、未知の魔法なのか。
「コルベール君」
「はい」
「ミス・ヴァリエールとその使い魔を学院長室まで連れてきなさい」
「はい。……あ、あと、学院長」
「何じゃ」
 何かを思い出したように、コルベールが口を挟んだ。
「あの少女の額のルーン……それが彼女の魔法に関係しているかもしれません」
「どういうことじゃ」
「あの少女の額に浮かんだルーンは、見たことのないものでした。おそらく、それが彼女の魔法に影響を与えたのではないかと」
「うむ。かもしれんな。ミスタ・コルベール。明日からその娘の額のルーンについて調べるんじゃ」
「もとよりそのつもりです、オールド・オスマン」
「うむ。では、呼んできなさい」
「はい」
 実は額のルーンとマルモの魔法はまったく関係ないのだが、このとき二人はまだ思い違いをしたままだった。

 その頃のキュルケはというと、賭けでそれなりに儲けていた。一口買ったタバサもそれなりである。
「ルイズの使い魔にはいい思いをさせてもらったわ。今度お礼しなきゃね」
「…………」
「あら、どうしたの? タバサ」
 そのタバサは、本に顔を向けてはいるが、読んではいない。それが何か考えているときの様子だとキュルケは気付いた。
「あの使い魔の娘がどうかしたの? そりゃあ、あの炎はあたしに匹敵しようかというものだったけど」
「……確かに彼女の魔法は強力。けれど……」
「けれど?」
「彼女が使ったのは系統魔法じゃない。かといって先住魔法でもない」
 タバサは先住魔法をその身で体験している。先住魔法はその場のものを利用して発動する。木の枝が伸びたり、葉が刃となったり。
「どういうことよ」
「私は彼女の口元を観察していた。彼女はルーンも口語も唱えていなかった」
 タバサはある程度の読唇術ならできる。読書による膨大な知識と豊富な実戦経験の賜物だ。
「彼女の魔法は全く未知のもの。要調査」
「なんだかよくわからないけど、あたしも付き合うわ」
「助かる。ありがとう」
 キュルケは返事の代わりに抱きついてうりうりとタバサの頭を撫で回す。
 体形も性格も正反対な二人だが、互いのことをよく理解している。どうすべきかは、言わずともわかっていた。

 学院が決闘の興奮で覚めやらぬ夜、ルイズとマルモ、そしてクリオは学院長室にいた。
 二人の少女と一つのタマゴの向かいには、学院長オスマンと、二人と一つを連れてきたコルベール。
 ミス・ロングビルは席を外してある。もちろんオスマンに命じられたせいだ。
「さて……」
 オスマンが、長いあごひげを撫でながら口を開いた。ルイズは緊張した面持ちであるが、マルモは普段どおりの顔である。
 クリオはマルモの杖の上で静かに待機中だ。
「……決闘の一部始終は見させてもらった。なんともまあ、最後の方は圧巻じゃったのお」
 ルイズはいよいよ顔が赤くなったが、マルモとクリオは相変わらず。
 オスマンは二人に構わず言葉を続ける。
「グラモンがまだまだドットのひよっことはいえ、青銅のゴーレムを一瞬で! いやはや、あそこまでの炎を、その齢で使いこなすとは……」
 オスマンは興味深そうにマルモに目を向けるが、マルモは軽く見つめ返すだけである。
 ルイズはどうしていいかわからず、コルベールに助けを求めた。気付いたコルベールが、オホン、と咳払いをして口を開く。
「学院長」
「なあに、わかっておるよ。本題は今夜の決闘についてではない。今回君らを呼んだのは、今後その娘の処遇をどうするかということじゃ」
「どういうことでしょうか」
 ルイズは一旦ほっとしたものの、オスマンの言葉が気になってすぐさま返した。マルモは自分の使い魔。それで解決だ。
「もし、そこの……名はなんと?」
「……マルモ」
 マルモが、部屋に入って初めて言葉を発した。
「ではミス・マルモ。お主の生まれはどこかのう」
「憶えてない」
「ほお。それはどういうことかね」
「そのままの意味。私は――」
 と、ルイズに語ったことと同じ内容をオスマンに話した。
 自分の生みの親を憶えていないこと。別の親に貰われるも、追い出されてしまったこと。自分は異世界の人間であり、旅の末、ここハルケギニアに着いたこと。
 オスマンとコルベールは、黙って話に耳を傾けていた。
 ルイズはというと、自分もよくこんな話を信じたなあ、と今更ながらに感じていた。
「ふうむ。異世界か……」
「俄かには信じがたいですぞ」
 オスマンとコルベールは難しい顔をする。あの世以外の異世界という概念を持たないハルケギニアの住人にとって、マルモの話は与太話もいいところである。まだ没落貴族の娘であるという方が信じられるというものだ。
「失礼ですが……マルモのタマゴでは証拠になりませんか?」
「ピー」
「確かにのう、タマゴの殻に閉じこもったまま動き回る動物など聞いたこともないが……」
 オスマンとコルベール、そしてルイズは、杖の上ですりこ木のように回っているクリオに目をやった。
「加えて、マルモの魔法は……系統魔法とは異なっているようです」
 ルイズの言葉にオスマンの目が光る。先程コルベールと話題になった事柄だ。
「というと?」
「マルモの魔法は……ルーンの詠唱ではなく、呪文の名前を唱えることによって発動するようです。また、四大系統という分類もなく――当然先住魔法でもありませんが、呪文の用途や呪文ごとの系統で分類しているようです」
「実に興味深いのお。ミス・マルモ、何か呪文を唱えてみてはくれんかね」
 オスマンは、じっとマルモの口を見据えた。
「メラ」
 マルモが呪文を唱えると、マルモの指先から『ファイヤーボール』程の炎球が現れる。
 攻撃呪文の初歩の初歩の初歩、メラだ。
「……確かにルーンでも口語でもないのう」
「しかも杖からではなく手から出るとは…………」
「あ」
 ルイズはそのことに今しがた気付いた。
「マルモ、あなた杖の媒介なしに魔法を使えるの?!」
「……それが普通」
「あー、マルモは知らないんだっけ。メイジは杖がなければ一切の魔法が使えないの。杖がなくても魔法が使えるのは、ハルケギニア先住民……つまり先住魔法の使い手だけよ。だから、人前で魔法を使うときは絶対に杖から出してね」
「どういう意味?」
「えっとね、もし先住魔法の使い手だと思われたら、色々面倒なの。最悪の場合、亜人と間違えられて殺されちゃうわ」
 先住民の中には姿形が人間に近いものや、人間に化けられるものもいる。そしてそれらは人間とは相容れない存在である。吸血鬼などが最たる例だ。
「ミス・ヴァリエールの言う通りじゃな。ミス・マルモ、くれぐれもそのことには注意してほしい」
 コクリとマルモは頷く。
「さて、話がそれた。ミス・マルモの処遇についてじゃが…………使い魔とすることに問題はなかろう」
 コルベールはほっと溜息を吐いた。状況によっては己の首が飛んでいたかもしれない。
「ミス・マルモは異存はないかね?」
「ない」
 即答した。ルイズはその答えに満足げな笑みを浮かべる。断られる不安もわずかながらにあった。
 オスマンはひげを撫でながら微笑んだ。小さな子供を見守るそれである。
「もし他人から出身を尋ねられたときは、東の世界=ロバ・アル・カリイエと答えなさい。お主の魔法も、そこの魔法ということにしておけばおそらくは大丈夫じゃ」
 マルモは再び頷いた。
「では、今夜はもう部屋に帰りなさい。今夜の決闘は不問に処すが、今回だけじゃぞ」
「ありがとうございます。失礼しました」
 ルイズが頭を下げたのを見て、マルモもそれに倣う。
 二人が出て行ったのを確認すると、オスマンとコルベールは口を開いた。
「やれやれ……我々はついていたのう、コルベール君」
「まさにそうですな」
 肩の力を抜き、二人は自然体となる。しかし決してだらけているわけでもない。
「これでミス・マルモの魔法については解決しましたが……彼女の額のルーンについては、明日から調査を開始いたしますぞ」
「よろしく頼む。今日はもう寝る。疲れた」
「はは、私もですよ。では、失礼します」
 野郎二人きりでずっと同じ部屋にこもるわけもなく、夜は更けていった。
 一方、部屋に戻ったルイズとマルモは、同じベッドに二人一緒に入っていた。
 ルイズはいつもの習慣でネグリジェに。マルモは髪をほどき、下着姿となっている。上等な布団が肌に触れて心地よい。
 色々あって疲れている二人だが、まだ眠らずにぽつぽつと会話をしている。ランプは既に消え、二つの月明かりのみが照らす。
「ねえマルモ。あなたのルーンのことだけど、明日から一緒に調べてみない? 明日の午後いっぱいは使い魔の交流にあてられているから、時間は充分あるわ。」
「うん。けれど、ルイズはそれでいいの?」
「何言ってるのよ、これも使い魔との立派な交流よ。ご主人様の言う通りになさい」
 言葉だけを見ると偉ぶっているが、その声には思いやりが柔らかく包まれていた。
「わかった。ありがとう、ルイズ……おやすみなさい」
「ええ、おやすみなさい」
 マルモはゆっくりまぶたを閉じた。その動作にルイズは不意に胸が高鳴った。
 通りの良い髪と長いまつ毛が月明かりに透けて見え、白い雪肌が月明かりを受けてその肌理の細かさを見せ付ける。陰影も、少女の白さを強調していた。
 マルモの顔を間近で見詰めるルイズはのどが渇いていくのを感じた。なんだか、見ているだけでいけないことをしているような、そんな気がする。
 だからこそ、新雪に足跡をつけたくなるような衝動に駆られた。部屋にはルイズとマルモの二人きり。邪魔者はいない。
 ルイズは恐る恐る布団の中でマルモの手を優しく握る。起きはしないだろうか、と思いながらも、マルモの体温を感じて小さな達成感に浸る。
 しかし、さらに求めてしまうのが人の性。杖を普段から持つマルモの手の平の皮は、見た目とは裏腹に固い。
 ルイズはさらに柔らかな部分を求め、マルモの肩までかかる布団に目を向けた。
 胸の部分が小さく上下し、首筋は細く柔らか。決闘のときは、その意志の強さ、その闘気の烈しさで強くしなやかに見えたが、寝入って脱力した今、なんとかぐわしい乙女であることか。
「ちょっとぐらいなら、布団めくっても構わないわよね」
 だがしかし、マルモが目覚めてしまったときのことを考えるととまどわれる。
「あれをめくれば桃源郷が……桃源郷が」
 ルイズが悶々としていると、マルモが少し身体をよじらせた。びくっとして手を引っ込めるが、マルモにかかる布団が少し開けて、鎖骨まで露わになっていた。
 ふおおおおおおおおお、と叫びそうになるのをこらえ、ルイズは更なる葛藤にさいなまれ続ける。
 結局、ルイズが寝るに至ったのはそれから一時間後のことだった。



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