あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

五月蠅いゼロの五月蠅くない使い魔-02



  第2夜
  決闘よ!


 学院に着いた時点で、ルイズがマルモについてわかったこと。
 マルモは別の世界から来たということ。マルモの呪文と動くタマゴのクリオがその証拠。
 マルモは『賢者』でありかつ『モンスターマスター』であるということ。使い魔の主従とはまた別のものらしい。
 マルモはこちらのコモンマジックを使えるが、系統魔法は使えないということ。ただし召喚魔法と契約魔法は除く。
 学院についた時点で、マルモがルイズについてわかったこと。
 ルイズはこのトリステインで屈指の大貴族の三女であること。
 ルイズは魔法の成功確率がほとんどゼロのため、『ゼロのルイズ』と呼ばれていること。
 そして――使い魔は一生涯その主人に仕えるということ。
 だが、マルモはそれでもいいと考えていた。冒険が終わって、帰れる場所があり、迎えてくれる人がいるというのは心地よい。
 思わず微笑みがこぼれ出た。
「それにしても、四系統全部に通じているなんてすごいわね」
 泣いてすっきりしたルイズは嫌み僻みなくマルモを尊敬した。主従関係など、今のルイズには二の次だ。
「系統魔法じゃない。私の使っているものはこっちの系統魔法とは別。それに土系統に該当する呪文は、私の知る限りない」
「ルーンじゃないものね。先住魔法も疑ったけど、あれは口語だし」
 マルモはルイズにせがまれて、召喚を行った場所から学院に向かう途中で色んな呪文を披露してみせた。
 ベギラマ、メラミ、バギマ、イオラ、スカラ、ピオリム、……などなど。
 最上級魔呪文は使わなかった。魔法力の消費が激しく、また威力が高すぎるためである。
 イオ、イオラを見たときのルイズは、マルモが同じ失敗をしたのではと驚いたが、マルモはそういう呪文なのだと教えた。
「イオは少し修行を積んだ魔法使いが使える攻撃呪文。イオラはさらに修行を積んだ一人前の魔法使いなら使える」
 もっともマルモの場合は魔法の才能が並ならぬものだったので、幼いうちにどちらも覚えてしまった。
 先の言葉は師匠賢者の数少ない受け売りの一つである。
「わたしも、マルモの魔法を覚えられるかな。わたしの魔法は全部爆発……何を唱えてもイオみたいになっちゃうから」
「多分無理。私はこっちの魔法……コモンマジックと系統魔法のうち、コモンマジックは使えたけれど系統魔法はダメだった。おそらく生まれと魔法の体系が違うせい。だから、ルイズもだけど、こっちの魔法使いは私の使う魔法は扱えないと思う」
「はあ……光明を見出せたとおもったのになあ…………」
 ルイズは溜息を吐きながら、校門をくぐった。


 五本の塔や広場を案内して回った後、二人とタマゴは一際高い本塔の中に入った。
「ここがアルヴィーズの食堂よ。学院の生徒と先生は一日に三回、ここで食事を共にするの」
 マルモは食堂を見回した。百人は優に坐れるであろう長いテーブルが三つ並び、奥の中二階にもテーブルが見える。
 メイドが一人だけで清掃作業をしているところを見ると、もうほとんど終わりかけているらしかった。
「ちなみに『アルヴィーズ』っていうのはね、壁際にある小人の像のことよ」
 気分はすっかり観光案内人のルイズである。
「こいつらは昼間は普通の彫像なんだけど……夜中になると踊るのよ。『アルヴィー』はガーゴイルの一種で、与えられた命令の中では自律的な行動をとることができるの」
 なおも続けるルイズであるが、マルモはそっと一体のアルヴィーに触れてみる。
 すると、マルモの額のルーンがうっすらと輝き始め…………。
 マルモは、アルヴィーを自在に使いこなせる気がした。
「踊って」
 途端に食堂中のアルヴィーが踊りだす。
「ちょっ、一体何?!」
 ルイズは俄かに踊りだしたアルヴィーにとまどいを隠せなかった。
「もういい」
 すると、先ほどまでのダンスが嘘のように食堂が静まり返った。練度の高い軍隊並みの統制であった。
「き、き、今日は気分が違ったのかしら……?」
 驚きが抜け切っていないルイズは、よろよろとマルモに倒れ込むように抱きついた。マルモはそれをしっかりと受け止める。
 マルモはルイズを抱いたままもう一度食堂を見回すと……、先程のメイドが床に倒れていた。
 とりあえずルイズを椅子に預け、床に倒れたメイドに駆け寄る。
「大丈夫?」
 声をかけつつメイドを引っ張り起こした。見た目は少女のマルモであるが、経験値が莫大にあるので力は結構ある。
「あ、申し訳ありません! 私、とんだ粗相を……!」
 と、メイドは頭を深く、深く下げた。切り揃えられた黒髪が床に向かって垂れ下がる。
「あの人形達が踊りだしたのは私のせい。だからあなたは悪くない、悪いのは私の方。私こそごめんなさい」
 マルモも目の前のメイドと同じ低さまで頭を下げる。
「そ、そんな! こちらこそ貴族様にお手を煩わせてしまって……」
 メイドはぶんぶんと手を振った。
「畏まる必要はない。私は貴族じゃないから」
「……お気を遣わせてしまって申し訳ありません」
 黒髪のメイドは、マルモにどう接していいか計りかねていた。見た目はどう見ても貴族、しかし当人は貴族でないという。本人が貴族扱いを望まなくとも、学院という公の場で、貴族と思しき少女に平民と同じように扱うのは不味い。
 結局、当たり障りのないような言葉でその場を凌ぐことにした。


「マルモ」
 ルイズが不機嫌そうに声をかけた。どうやら混乱から立ち直ったらしい。
「ご主人様を放っておくなんて、どういう料簡よ」
 仁王立ちで構えるルイズ。眉間にはありありとしわが寄っている。
「私のせいでこの女の子が転んでしまったから……ごめんなさい」
 素直に頭を下げるマルモにいらつきをぶつけられず、こちらも素直に話を合わせようとする。
「アルヴィーズが踊りだしたのは、マルモのせいじゃないわよ」
「……私が命じたから、アルヴィーズは踊りだした。それは間違いない」
「どういうことよ? マルモは今日初めてここの食堂に来たんでしょう? ガーゴイルの命令を上書きできるのは制作者だけよ」
「なぜだかはわからないけれど、実際に命令できる。見て」
 と、マルモは近くのアルヴィーに手を伸ばした。再びマルモの額のルーンが淡く光り……。
「踊って」
 今度は、そのアルヴィーだけが踊りだす。
 ルイズは驚愕した。食堂のアルヴィーズは当然学院の物、すなわち教師達が魔法をかけたガーゴイルである。たとえスクウェアクラスのメイジといえども、制作者でない者が勝手に操るのは至難の業。それをマルモはやってのけた。
「どういうこと?」
 いくらマルモが強力なメイジとはいえ、易々と他人のアルヴィーを操れるはずがない。
「多分、この額のルーンが関係していると思う。アルヴィーに触れると、頭脳が活性化してきてアルヴィーの操作方法がわかる」
 マルモは踊っていたアルヴィーを静かにさせた。ルーンが光を失い、ただの模様に戻る。
「そのルーンがガーゴイルの制御を奪うっていうの?」
 鳶色の目が、マルモの額を覗き込む。
「確証はないけど、今のところはそう思う」
「うーん……使い魔のルーンは、特別な能力を与えたりするけど…………。さすがに特別すぎるわね」
「……そうなの?」
「ええ、そもそも使い魔がガーゴイルを操るなんてありえないもの」
「…………」
 ルイズは考え込む。ガーゴイルはいわば自動的なゴーレムだ。ゆえに、まれに制作者の意図を離れて暴走することがある。しかし、それはあくまで暴走であって、制御権が他者に奪われることはない。
 一体どういうことだろう……と、ルイズが考えているところに、「ぐう」という音が響いた。
 ルイズは反射的に顔を上げる
「何? 今の音」
「…………私」
 呟いたのはマルモだった。


「マルモ、お腹空いたの?」
 静かに頷くマルモに溜息を吐きながらも、その唇は微笑むルイズ。
「しょうがないわね。何かいただきましょう、昼食は済んだけど何かあるでしょ。ええと……そこのあなた」
「はっ、はい?!」
 今まで口を挟まずにいたシエスタである。
「あなた、名前は?」
「シエスタと申します」
「そう。シエスタ、悪いんだけどこの娘に何か食べさせてもらえる?」
「はい、かしこまりました」
 厨房に向かおうとするシエスタであったが、その手をマルモが掴んだ。
「……別にいい」
「何言ってるのよマルモ。主人たるもの、使い魔を養うのは当然のことだわ」
「でも」
「変に遠慮しないでちょうだい。どっちみちこの学院の食堂のお世話になるんだから。そしてこれはご主人様の命令よ
わかった?」
「……わかった」
 マルモが頷くと、シエスタが厨房に入っていった。
 しばらく経ってシエスタが盆に食器を載せて戻ってきた。
「賄い食ですが……パンとシチューです」
「ありがとう」
 マルモは礼を告げると、早速食べ始める。そんな様子をルイズとシエスタは温かい目で見守った。
「ところでミス・ヴァリエール……その、失礼ですが、先程の『使い魔』というのは…………」
 シエスタが好奇心を抑えきれないように言った。
「ああ、そのまんまよ。わたしが『サモン・サーヴァント』でマルモを召喚して契約したの」
「はあ、なるほど……」
 学院で奉公し始めていくつか経ったシエスタであるが、人間――しかもメイジを使い魔にするなど聞いたことがなかった。そのためにいまいち納得がいかないのであるが、貴族の子女にこれ以上余計な口を利くのはよくないと思って口を閉ざした。
 やがてマルモが食べ終えると、立ち上がってシエスタに向かい頭を下げた。
「ごちそうさま」
「おかわりはなされますか?」
「もうお腹いっぱい。……おいしかった」
「ありがとうございます、ミス・マルモ」
「それじゃあ行くわよマルモ。仕事の手を止めて悪かったわね、シエスタ」
「とんでもございません!」
 シエスタは、マルモとルイズに謝辞を言われて恐縮した。貴族が平民の名前を呼んで挨拶を言うことなど普通はない。
 二人が食堂を出て行くのを確認してから、シエスタは大きく息を吐いた。


 時と所が移り、夕食前のルイズの部屋。
 夕日が地平に差し掛かり、二つの月が昇ろうと控えている時である。
 ルイズとマルモはベッドに腰掛けて話に花咲かせていた。タマゴのクリオはマルモの膝の上で抱かれている。
 内容は、始めマルモのルーンについてであったが、次第に昔のことに転換していって、今はルイズが話し手である。
「それでね、ちいねえさまが……」
 ルイズがヴァリエール家の次女カトレアについて話すときは、微笑みが絶えない。
 マルモは、ルイズが家族について話すときの温かみにまぶしさを感じた。自身には家族といえる存在はない。仲間や友達といった関係の方が何よりも濃い。だが、別に卑屈に感じたり嫉妬しているわけでもない。
 マルモがルイズに感じているのは、かつて共に修行した女の子と同じような愛しさ。それがマルモには快い。
 実はルイズがこうして話すのはいままで学院において一度もなかったのだが、それをマルモが知る由もない。
「あ、そろそろ夕食の時間ね」
 ルイズが部屋に差し込む夕日を見て言った。
「夕食を食べた後は、学院長……オールド・オスマンのところにいくんだっけ」
 確認のように独り呟いて、ルイズは身だしなみを整えた。
「行きましょう、マルモ」
 マルモは頷いて、二人そろって部屋を出た。その姿は主人と使い魔ではなく、仲睦まじい親友のようである。

 二人は食堂に着いた。クリオは騒ぎになると面倒なので、ルイズの部屋で待機させてある。
 入り口近くに坐っている二年生メイジがルイズとマルモに気付き、ひそひそと話をし始めた。
「見ろよ、ゼロのルイズと召喚された女の子だぜ」
「かわいそうに、ルイズなんかの使い魔にされちゃって……」
 ルイズがマルモを使い魔にした話は、既に広まっているらしかった。
 ルイズとマルモはそれらを無視して席に着こうとすると、マルモがルイズの為に椅子をひいた。
「マ、マルモ、別にそんなことしなくてもいいのよ」
「私は使い魔。主人を立てるのは当然の義務」
「それはまあ、そうだけど……」
 メイジと使い魔の関係である以上は公私の区別をつけましょうとルイズは言ったが、一日で心を通わせたマルモにそんなことをされると、どうにも悪い気がしてしまうのだ。
 ルイズが席に着くのを確認してから、マルモはルイズに許可を貰ってルイズの隣の席に腰掛けた。昼のうちにアルヴィーズの食堂を案内した後、マルモも席に着いて食べるように言ったのだ。
 マルモは学院の生徒でないことと使い魔であることを理由に断ろうとしたが、ルイズが強く言ったので了承したのだった。
「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今夜もささやかな糧を我に与えたもうたことを感謝いたします」
 目の前の豪華な食事にルイズとマルモは手をつけていく。
 しばらくすると、ワインを運んでいるメイドが二人に近付いてきた。カチューシャで纏めた黒髪とそばかすが可愛らしい。
 空になったワインボトルを交換していると、ルイズとマルモがそのメイドに気付いた。
「あら、シエスタ」
「お食事のお手を止めて申し訳ありません、ミス・ヴァリエール、ミス・マルモ」
「そんなことないわよ」
「『ミス』はいらない。マルモでいい」
 マルモは敬称をつけられた経験がこれまでになく、どうにも違和感を感じるのである。
「お昼はどうもありがとう」
「も、もったいないお言葉でございます。あれは本来平民の食べるもの、貴族様に召し上がっていただくのは……」
「いいのよ」
「私は貴族じゃない」
 昼にもマルモは貴族ではないと説明したのだが、その見た目と雰囲気から貴族だと思い込んでいるらしかった。
「シエスタには感謝している。何かあれば力になる」
「あ……ありがたく存じ上げます」
 深くお辞儀をして、シエスタは厨房へと引っ込んだ。


「さて、充分食べたし、いったんわたしの部屋に戻ってから学院長室に行くわよ」
 マルモは頷いた。
 ルイズとマルモが立ち上がったのを見計らったかのように、二人の人物が近付いてくる。
「ハ~イ、ルイズ」
「……」
 声をかけた方は燃えるような赤い髪のグラマラスな女の子、キュルケ。
 無言のまま本から目を放さない方の青い髪の背の低い眼鏡をかけた少女は、タバサ。
 ルイズは眉間にしわを寄せた。
「キュルケ、何の用よ」
「あなたなんかに用はないわよ、ルイズ」
「なんですってぇぇ! ツェルプストー!!」
「ルイズ、落ち着いて」
「……」
 キュルケは髪をかき上げながらルイズの憤りを受け流していた。タバサはその横でページをめくっている。
「あたしが用があるのは、そっちの娘」
「マルモ?」
「へえ、マルモっていうんだ。かわいそうに、『サモン・サーヴァント』でルイズなんかに呼び出されちゃって」
「わたしなんかって何よ!」
 再びルイズが怒り出すが、マルモが一歩前に出てキュルケの前に立つ。
「私は別にかまわない。ルイズと知り合えてよかったと思っている」
「あら、泣かせるじゃない。あたしはキュルケ・フォン・ツェルプストー。『微熱』のキュルケよ」
「……タバサ」
 キュルケは含みを持って挨拶し、タバサは本から目を放さずに言った。
「で? 一体マルモに何の用なの?」
「大したことじゃないんだけどね。その娘の属性は?」
「……そんなこと訊いてどうするの?」
 ルイズは怪訝な顔をする。
「あなたねえ……。その娘の属性がわかれば、あなたの属性もわかるかもしれないでしょ? 使い魔でメイジの属性を固定するんだから」
「あ」
 そういえばそうだった。
 正確には、メイジの属性に合った使い魔が召喚されるのだが、学院ではそれで系統ごとにカリキュラムを決めることになっている。
 でも、マルモは土系統以外の三系統を難なく使いこなす。加えて四系統には分類できないような魔法も使える。
「ツ、ツェルプストーなんかに教える義理はないわ!」
「ケチくさいわね。それともその娘も『ゼロ』なのかしら?」
「マルモはあんたなんかよりずうぅっと優秀よ!!」
 その言葉にキュルケは軽くルイズを睨みつけた。
「言ってくれるじゃない、ヴァリエール。なんなら決闘してみようかしら、その娘と」
「上等よ! ギッタンギッタンのグッチョグチョにしてやるわ!」
「ルイズ」
「……」
 ルイズとキュルケがヒートアップする最中、蚊帳の外であったマルモはルイズを止めに入った。
 タバサは我関せずを決め込んでいる。
「マルモ! あなた悔しくないの!」
「全然悔しくない。そんなことより、早く部屋に戻ろう」
「そんなことって何よ! いい?! ツェルプストーっていうのはね……」
 と、ルイズがヴァリエール家とツェルプストー家の因縁を語ろうとしたところで、
「申し訳ありません!!」
 と、大きな声がそれを阻んだ。


 何事かと四人が声のした方を向くと、メイドが男子生徒に頭を下げていた。
「いいかい? メイド君。僕は君が香水の壜をテーブルに置いたとき、知らないフリをしたじゃないか。話を合わせるぐらいの機転があってもよいだろう?」
「そ……そんな……」
 男子生徒はフリルのついたシャツを着ており、その胸ポケットに薔薇を挿している。金髪の巻き髪をいじりつつ難癖をつけているのは、ギーシュだ。
 そのギーシュに頭を下げているのが、シエスタ。
「ちょっとギーシュ! あんた何してるのよ!!」
 ギーシュに頭を下げているのがシエスタだと確認して、ルイズが割り込んできた。
「ルイズ、君には関係のないことだ。下がっていたまえ」
 ギーシュとルイズの目線が火花を散らす。
「ギーシュ、二股かけてるお前が悪い!」
「やつあたりすんなよ!」
 と、周りにいた男子生徒が囃し立てた。
「ルイズ、どうやらギーシュが二股かけたのがそこのメイドのせいでばれちゃったんだって」
 と、周りの生徒から聞き出したキュルケが言った。
「つまりはギーシュ、あんたが悪いんじゃない」
 そうだそうだ、と群集も乗ってくる。
「君には関係ない。いいから下がりたまえ」
「あんた、貴族として恥ずかしくないの?」
 ルイズの言葉に、ギーシュは嘲笑した。
「おや、まさか『ゼロ』のルイズから貴族たるべしを教えられるとは思わなかった。このメイドを庇うのも、同族意識の現れかね?」
 周りからも忍び笑いが漏れる。
「決闘よ! ギーシュ!! ラ・ヴァリエール公爵家が三女を侮辱した罪は重いわ!!」
「魔法を使えない君が公爵家を名乗る資格はないよ、『ゼロ』のルイズ」
 そうだそうだ、と同じ連中が乗ってくる。
「それに、貴族同士の決闘は禁じられているはずだ」
「だったら、代わりに私がその決闘を申し込む」
 その場にいた人間は、誰がそんなことを言い出したのか一瞬わからなかった。
「マ、マルモ?!」
 ルイズの言葉に、ようやくそこに見慣れぬ少女がいることに気付いた。
「誰だね、君は」
「マルモ」
「マルモ? ……ああ、ゼロのルイズが召喚したメイジの使い魔か。君の出る幕じゃないよ」
 と、意に介さぬように手を振った。
「決闘を受けなさい!!」
 マルモが叫んだ。杖はまっすぐギーシュに向いている。
 マルモ以外の人間は皆一様に驚いた。特にルイズは、マルモが怒鳴るなんて思いも寄らなかった。
「……そこまでいうのなら、受けて立ってやろう。ヴェストリの広場で決闘だ」
 ギーシュは食堂を出ていった。
「うおーッ! ギーシュとルイズの使い魔が決闘だ!」
 一気に食堂が騒がしくなる。当の本人であるマルモは、シエスタに駆け寄って慰めていた。
「大丈夫?」
「ミ、ミス・マルモ……私、とんでもないことを……」
「あなたのせいじゃない。私が勝手にやったこと。あと、『ミス』はいらない」
「し、しかし……」
「いいから、奥にいって休んで」
「そんな! 私が原因なのにそんなことできません! 私、マルモ様のご勝利をこの眼で確かめます!」
「シエスタ……」
 と、いい雰囲気を展開しようとしている二人のところへルイズが割って入った。
「マルモ! これはわたしの決闘よ! わたしが出るわ!」
「私は貴族じゃない。だったら決闘をしてもいいはず」
「そういう問題じゃないわ!」
「私はシエスタに『力になる』と言った。それを果たすだけ。それに……」
「それに?」
「私はルイズの使い魔。主人を守るのが役目。だから、ルイズの戦いは私の戦い。ルイズには傷一つつけさせない」
 真っ直ぐルイズの目を見て言った。思わずルイズは顔を赤らめて視線を外す。
 何よそれ、とルイズは小さく呟いた。その呟きは誰にも届かなかった。



新着情報

取得中です。