あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

『先生の長い一日!!!』の巻


扉の残骸を踏み越え、ルイズの後を追って隠された通路の奥へと進むアバン。
程なくして、暗闇の中を手探りで進む彼女に追いついた。
驚かせぬようそっと声をかけ、懐からたいまつを取り出して握らせると、ゆれる灯りに照らされて、口をキッと結んだルイズの顔が見て取れる。

貴族の邸宅に忍び込み、閉ざされた隠し扉の先を進む……慎重に越したことはない。
緊張した面持ちで頷きあうと、ルイズとアバンは無言のまま移動を再開する。
突き当たりまで直進し、角を曲がると今度は下へと伸びる階段が続く。
2人は足元に十分な注意を払いつつ、足元の段差をゆっくりと下へ下へと降りていくのだった。

壁伝いに一段、また一段と降りていく内に、アバンは視界の端に『何か』を捉えた。
「ミエールの眼鏡」を通して見えた『何か』は、デコボコの壁に埋まった形で肉眼では判別し難く、ましてこの暗がりの中では、まず見つけることはできないだろう代物である。

「……ルイズ!」
「わぁ!?」

すわ何かの罠なのか!? と思わず後ろから制止をかけたアバンの声に驚いて、こちらも思わず体勢を崩して足を踏み外したルイズは、階段から転げ落ちるすんでのところで抱きとめられる。
そして振り上げられたルイズの足から勢いよく飛び出した小さな靴が、まるで狙ったかのように壁に埋もれた『何か』に命中した。

「……………………………………」
「……………………………………」

低く重い唸り声をあげて作動する何某かの気配を感じつつ、靴を拾って地下へと降りる2人、ついにたどり着いた秘密の地下室では、槍を構えた二体の動く石像が、準備万端といった様子で待ち構えていた。

「ふぅ、やれやれだわ」
「全くですね、ええ、本当に」

(もしかしたら、人物を認識して攻撃を止めるかもしれない)
現在モット伯に化けたままのアバンはそこにわずかばかりの期待をこめ、眼鏡を外して前に進み出てるも、石像たちが声をかける間も無く槍を繰り出してくるのを見て、その期待を即座に捨てた。

もはや正面衝突は避けられない!

初撃に突き出された二本の槍を横っ飛びに左に避け、追って出された二の槍も身を捻ってかわすと、その柄を両手で掴む。
そのまま渾身の力を込めて槍を握った相手ごと振り回すと、振り飛ばされた石像がもう一体を巻き込み、二体揃って壁へ激突した。

アバンは逆手に握った槍を素早く構え直すと、敵の倒れる壁際に瞬時に詰め寄る。
石像が立ち上がり体勢を整えるより速く、追撃の槍を繰り出した。

『武芸百般』を自認する彼が、自身の体の僅かな違和感に気付くより早く、流れるような動きの中から繰り出した、その槍の一撃が届くまさに直前、ルイズの杖が彼らに高らかに突きつけられる。

「ラナ・デル・ウィンデ!」

その瞬間、二体の石像は大きな音を立ててコナゴナに弾けとんだ。

「冥土の土産に覚えておきなさい。これが『エア・カッター』よ!」
部屋中に立ち込める土煙を払うように、マントを翻してのたまうルイズ。

「そうですね、見事な『大爆発』でしたね、ええ」
爆風やら砕けた破片やらをもろに浴びて、床にひっくり返ったまま呟くアバン。

しかし、こちらを振り返ると同時に親指をグッと突き上げる、ルイズの愛嬌に溢れる顔を眺めていると、なんだか自分まで嬉しくなってくる……
ルイズはそんな愛らしい笑顔の持ち主だった。

ルイズの手を借りて身を起こしたアバンは、まずは改めてこの秘密の地下室を見渡した。

入り口から横に大きく広がる長方形の室内、向かって左には棚や机、向かって右にはなにやら怪しげな四本足の置物? などが並ぶ。
石造りの壁には、紐状の武器などがたて掛けられ、壁と鎖で繋がれた鉄枷が四本伸びている。
鎖で繋がれた鉄枷は天井からも伸びていて、どうやら脇のレバーと連動して高さの調節ができるようだ。

「……………………………………」

先程の格闘(というより爆発)の影響で壁から落ちた鞭を拾いつつ、アバンは一転不快の念に包まれる。
モット伯は、どこまでも彼の性向には馴染まない人間だったようだ。

そんなアバンを尻目に早速机側の物色を開始したルイズは、引き出しを開けるために机を回り込み、回り込んでからふと気が付いて、後ろの壁に埋め込まれたあるものを発見した。
「ねえ、これって金庫じゃない?」

石の壁の中にそこだけ黒い鉄の板が埋め込まれているのだ。これが金庫でなくて一体なんだろうか?
ルイズが板の表面を撫でるようにして調べると、すぐに取っ手が見つかった。が、引っ張っても開かない。
鍵が掛かっているようだが鍵穴も見当たらない……

そこまで調べたところで、ルイズの声を聞いたアバンが合流する。
ルイズは調査内容を手短に説明し、最後に自分の考えも付け加えた。

「フムフム、つまりこの金庫は魔法で施錠されている、と」
「鍵穴がないんだから、つまりはそういうことでしょ。メイジ以外には開けられないようにしたのね。ウンウン」

そういって自ら目を瞑って頷くルイズの横で、アバンはさっと金庫に手をかざして一言呟いた。

「アバカム」
アバンの右手が僅かに光ったかと思うと、目の前で金庫の扉がひとりでに開かれる。

そのまま何事も無かったかのように物色を始めた彼の横、ようやく目をあげたルイズは(アレ? なんで開いてるの?)と思いつつ、とりあえず金庫の中身の確認に加わる。

この竜もどきと付き合っていると、もはやこの程度ではイチイチ驚いていられないのだ。

金庫の中から出てきたのは、何かがぎっしりと詰まった幾つもの皮袋、積み上げられた金の延べ棒、鈍い光を放つ指輪やネックレス、古そうな手鏡、小ぶりの鐘、怪しい色をした薬品、薄汚れた人形、そして大量の書類と手紙の束、等々だった。

アバンはまだまだ彼の手に余る、ハルケギニアの文章が書かれた紙の山をルイズに手渡すと、残りの品々の鑑定を始めた。

まず皮袋の中身は大量の金貨だった。どの袋にも洩れなく金貨がびっしり。
試しにかじってみたが、粗悪品や偽者というわけでもなさそうである。

次に調べたのは指輪やネックレスの類、手にとってみると僅かに魔力を感じる。
どうやら装飾に使われている宝石部分に魔力が込められているようであり、また同じく見るからに怪しげな薬品からも魔力を検出したが、どれも実際に効果を試してみるにはリスクが高すぎるので、それ以上の調査は断念せざるを得なかった。

手鏡については覗き込んだ瞬間に効力が現れた。鏡に映った姿が本来の自分のものだったのである。
アッと思った次の瞬間には、アバンの『モシャス』の効果は消えてなくなっていた。

アバンはやれやれと苦笑しつつ、(むしろ屋敷に進入した直後に変化を解かれずに済んで良かったというべきか)などど考えていると、これまでそんな彼の様子など一切意に介してこなかったルイズが書類から顔を上げた。

「多分ビンゴね、これ。詳しいところまでは判らないけど、限りなくクロいと思うわ」
どうやらそれらの書類の束は、彼らがこの屋敷に乗り込んでから一貫して捜し求めている『モット伯の不正行為を示す証拠』となり得るものだったようだ。

「そうですか! ついに見つかりましたか……本当にご苦労さまでしたルイズ。ではそろそろ仕上げに入りましょうか!!」

ルイズから手渡された書類を懐にしまうと、別途取り出した大きな袋の口を片手に握り、金庫から取り出した品々を片っ端からその中に突っ込んでいくアバン。
その様子にルイズは小首を傾げる。

「アレ? 書類以外も持ち出すの?」
「ええ、私たちには必要ありませんが『今回の犯人』には必要でしょうから。こういった『稀少なマジックアイテム』の類はネ」

悪戯っぽくウインクするアバンに「ああそっか」と頷くルイズ。
最後に『どう見ても不気味なだけのただの人形』も念のために袋に突っ込むと、袋の口を縛って肩に背負い、金庫の扉に以下の文章を記した紙を貼り付け、2人は地下室を後にした。


『伯爵秘蔵の品々、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』



地下室から件の通路を抜けて執務室まで出た2人は、クローゼットの中のモット伯の様子を再度確認すると、そそくさと屋敷を抜け出した。
時刻は既に深夜遅く、もはや館内に残る人影も見かけない。

さて何事もなく敷地の門までたどり着いたはいいものの、モット伯の屋敷から魔法学園まで、人間の足で帰るにはいささか遠い。
1時間やそこらはかかるのだ。

それまでのプレッシャーからの開放感を感じつつもその遠路を思えば、(夜通し歩いて風邪を引いたりしないかしら?)などと気が重い様子のルイズ。

それを見たアバンはその肩をそっと抱き寄せると、キョトン、と見上げる彼女に微笑みかけ、空を見上げて呪文を唱えた。

――そういえば、眼鏡をかけてないじゃない。よく見れば、こんな顔をしてたのね。

2人は一筋の光となって暗い夜空を切り裂き、気が付けば学園に程近くの森の中に居た。

これはメイジの飛行どころではなく、それこそ竜に乗るより早いかもしれない。
『もはや生半可なことでは驚くまい』と思っていたが、

「直接学園に飛んで行くと誰かに見られる可能性もありますから、ここから歩いて戻りましょう」

そういって彼女の手を引き歩くアバンの後ろ姿を眺めていると、驚きを超えてなにやら夢の中に居るような、そんな不思議な気分になるルイズ。

さらに思い返してみれば、今夜の行動自体が全て、以前の彼女なら考えられないようなもののオンパレードであり、深く考えずとも、生まれてこの方こんな危険な橋を渡った試しはないが、それを終えた今となってもまだ実感が湧かない。

なんだか急に全てが非現実的なものに思えてきて、しかも、それが何故だか心地よかった。

興奮と驚き、開放感と安心感、それに眠気とが合わさった、軽いトリップ状態である。

手を引かれるままに歩いていたルイズは、高揚感に身を任せてアバンの背に飛びついてみた。
何も言わず首に手を回してぶら下がると、アバンもそっと足を抱えてルイズをおんぶする。
まるで遥か昔、幼い少女の頃に戻った気がした。あの大きな手に、背中に憧れた、あの頃に……

背に負ったルイズの様子に笑みを漏らしたアバンは、今後の推移についてもう一度考えて見た。

まず今回のそもそもの動機であるシエスタの身の安全については、伯爵家はしばらく未曾有の大混乱に見舞われるので、再び彼女に手を伸ばしてくる暇はないだろう。
各地に散った元使用人たちによって、伯爵の悪評はあることないこと国中に知れ渡ることになる。
そんな逆風の中、わざわざ自ら火に油を注ぐような行動も取るとも思えない。

また彼女には「伯爵からの使いが来て、件の話は延期になったと聞かされた」と証言するように言ってある。
落ち込む彼女に無理をいって午後も一日通常業務をこなしてもらったので、アリバイはバッチリ。
罪を着せられる心配も無い。

あとは『神出鬼没の大怪盗』に罪を被ってもらう算段だ。

フーケの犯行を完璧に再現できたわけではないので、厳密には疑いの余地はあるが、伯爵にとっても、国中に広がるであろう『不正が発覚して王室の調査隊に立ち入り調査がどうの』というような巷の疑惑を払拭するには『巷でも悪名高いフーケに一杯食わされた』という一種の汚名を甘受するのが一番の近道で、伯爵側も消極的にはそちらを望むだろう。

そもそも本当は『不正』が事実である上に、その証拠も他人の手に渡ったとあっては、生きた心地はしないだろうし、勢い早まって演説の通りに『国外に逃亡』でもするかもしれない。

いずれにせよ、権威を笠にきた横暴なやり方は当分慎まねばならず、伯爵には今回の事件を『高い授業料』だったと思って、自らの態度を改める良い機会にしてもらいたいものだ。

……改められなかった場合には、『不正発覚』の『噂』を『事実』に変えてやることもあるだろう。


そんなようなことを考えている内に、トリステイン魔法学院の門にたどり着いていた。

「……着きましたよ、ルイズ?」
そっと背中に声をかけてみたが、スースーと寝息が返ってくるばかり。

なんの利益もないにも関わらず、口では文句を言いつつも、実際には彼のために危険も冒し、親身に協力してくれたルイズ。

ルイズを負ぶったまま静かに部屋へと向かう際、この小さなお姫様の誠意に心からの感謝の念を抱きつつ、アバンは己の運命を想わずにはいられなかった。

(誰かのため、他人のために生きる……それが人間として生きる道であり、私の意思でもあります。ダイ君の消息を求めて旅に出て、今ここでルイズと出会う。はたして私は誰のために生きるべきなのか――ごめんなさい、フローラ。私はまだまだ帰れそうにありません……)



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