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三重の異界の使い魔たち-01


~プロローグ~

 半島状の大陸からなり、大きく5つの王国が存在する土地、ハルケギニア。
その西部に位置する、旧き時代からの伝統を重んじる王国、トリステイン。
この国の貴族の中でも筆頭とされるヴァリエール公爵家の三女、ルイズ・
フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、今人生の転機とも
いうべき儀式の最中にあった。

 ここはトリステイン魔法学院。その名の通り、魔法を使えるメイジ、即ち
選ばれた力を持つ存在たる貴族たちに、魔法の術を学ばせる場所。
そして今日という日は、そのメイジのパートナーである、使い魔召喚の儀式
の日だった。

「ミスタ・グラモン、前へ!」
「はい!」

 引率の教師コルベールに、クラスメイトの名が次々と呼ばれていく。
それとともにルイズの鼓動も早まっていく。
――大丈夫、きっとうまくいく…やってみせるんだから…
 手にした杖を握りなおしながら、必死に自分に言い聞かせてみる。
――今日のために必死に勉強したんだもの、できないわけ、
ないじゃない……
 しかし、
――それでも、もしまた失敗したら……?
 しかし、その思いは実に弱々しく、自信に欠けるものだった。

 それは、彼女が劣等生だったからだ。
 国内でも3本の指に入る大貴族の娘、その華々しい肩書と裏腹に、彼女は
魔法が全くの不得手だった。火、水、土、風からなる四系統の魔法はおろか、
基礎であるコモンマジックさえ使いこなせない。
 呪文を唱えて起きる結果は、ただ一つ。

 爆発――。

 どんなに正しく呪文を唱えても、どんな風に魔力を込めても、起こす結果は
爆発、爆発、爆発の繰り返し。
 両親からは、そのことを何度嘆かれたことか。2人の優秀な姉たちと自分を
比べ、何度劣等感を感じたことか。同級生たちに莫迦にされ、何度虚勢を
張ったことか。

 そしてついた二つ名は、『ゼロ』。魔法成功確率ゼロパーセントの、
『ゼロのルイズ』――

 これまでの結果が、そしてその二つ名が、ルイズから自信を奪っていた。
そして、今回も失敗しないという保証はどこにもなく、ルイズの心は
不安の鎖に締め付けられていく。

――でも、今日ばかりは失敗なんてできない

 それでも、やるしかないということも判っていた。使い魔の召喚はメイジ
にとって神聖なものであると同時に、進級のための試験でもある。
 今日失敗すれば、自分は落第、悪くすれば、退学させられて実家に連れ戻
されることになってしまうのだ。
 我知れず、ルイズは既に召喚を終えた同級生たちを見やる。皆様々な生き物を
召喚し、早速の交流に努めていた。
 果たして自分はあの中に加わることができるのだろうか。それを思うと、
胸が――大きくもないくせに――鉛と化したように重く感じられた。

――こんなこと、考えてちゃダメ!
 ルイズは小さくかぶりを振り、悲観的な考えを払おうとする。こんな気持ち
では上手くいくものもいきはしない。そう、技術がなくても、気持ちで負けては
そこでおしまいなのだ。

「ミス・ヴァリエール、前へ!」
 そして、とうとう自分の名が呼ばれた。
「は、はい!」
 心臓が鐘楼のようにけたたましく鳴り響く。できることなら、逃げ出したい
ほどの恐怖が、全身を苛んでいる。
 けれど、ルイズは真っ直ぐに前を見つめ、一歩を踏み出した。
 彼女は貴族、決して目の前のことから逃れるつもりはない。魔法が使えようと
使えまいと、その心得だけならば、彼女は間違いなく貴族だった。
「お、ヴァリエールの番だぜ」
「さて、今日はどのくらいの威力かな?」
「ルイズー、ほどほどにねー、私の使い魔が驚くから」
 クラスメイトが投げてくる野次が、その思いに拍車を掛ける。もし彼らの
言う通りになったらという考えが頭をよぎるが、あんな言葉に負けたくない
という気持ちの方が強い。
――見てなさい、私だって、私だってメイジなんだから!

「我が名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……」
 位置につき、呪文の詠唱を始める。
「5つの力を司るペンタゴン……」
 もはや後には引けない。希望と恐怖が胸の内でせめぎ合う中ルイズは呪文を
完成させた。
「我の運命に従いし、“使い魔”を召喚せよ!」
 その言葉が放たれた瞬間――

――彼女の眼前が爆ぜた。

 眩い閃光が宙を貫き、耳をつんざく轟音が虚空を揺らし、濛々たる黒煙が
周囲を覆う。
 その現実に、ルイズの心は折れた。
「……こんな」
 足から力が抜け、地にへたり込む。
「こんなのって……」
 頬を、冷たいものが伝った。もはやその心には絶望感さえなく、ただただ
虚しさが意識を支配していく。
 そのいたたまれない姿に、心ない生徒たちはいつものように野次を
飛ばそうとした。

 しかし――

「きゅいー!!」

 刹那、周囲の動きが全て止まる。突如上がった、イルカに似た高く澄んだ声。
それが、ルイズの起こした爆煙の中から聞こえてきたために。
――まさか……
 俯いていたルイズも顔を上げ、身を起こす。空虚だった心に、希望が差し
始めるのが判った。鼓動が、先程までとは違った意味で勢いづくのを感じた。

 徐々に晴れていく煙の中から、まず露わとなったのは、青い翼。コウモリに
似た、けれど青い鱗に覆われた一対の翼に、同じ色の胴から生えた四肢。
全長は6メイルほどで、尾と同じく長い首の先には角の生えた、そして耳の
ない爬虫類特有の頭部が付いている。

「おい、うそだろ?」
「あの、ゼロのルイズが……」
「これ、夢じゃないわよね?」

 同級生たちがざわめく。しかし、それが気にもならないほどに、ルイズは茫然
としていた。周囲もこの現実が信じられないようだが、それは彼女も同様だ。
嘘。信じられない。ありえない。その混乱とさえいえる心境のまま、彼女は
目の前の存在の、一般的な呼称を呟く。
「風……竜……」
 その言葉に反応し、周囲を見回していた竜は、彼女に目を留めた。

「きゅい?」

「……!」
 その声にルイズは我に返ると、思わずその竜に駆け寄り、そして抱きつく。
「きゅ、きゅいいぃぃ!?」
  召喚した風竜が戸惑ったようにいななくが、ルイズは手を緩めない。
「……よかった……」
 瞳から、滴が零れた。先程の冷たいものとは違う、温かな滴が。
「よかった……ちゃんと、来てくれた……成功、できた……」
「……きゅい」
 鼻をすすりながら言葉を続ける彼女に、風竜は、彼女の使い魔は、ただ
されるがままでいてくれている。それが嬉しくて、また抱きしめる力を強める。
「(なんだか、あまえんぼな子に召喚されちゃったのね、きゅいきゅい)」
 そして、今抱きついている者から小さな呟きが漏れたことに、最強の
幻獣種を召喚した感動のさなかのルイズは、気付くこともなかった。



 草地に腰をおろして本を広げながら、雪風のタバサは、ピーチブロンドの級友が
風竜を呼び出したことを、多少の驚きと、幾らかの納得を以って眺めていた。
「驚いたわね」
 その彼女の横では、親友であるキュルケが髪を掻き上げながら呟く。彼女
自慢の赤毛が舞い上がり、見るも華やかといった印象だ。
「まさか、あのルイズが風竜を召喚するなんてね」
 そうして話している間にも、件のクラスメイトはコントラクト・
サーヴァント、使い魔との契約をしていた。
「きゅ、きゅいいぃぃ……!?」
「だ、大丈夫、我慢して、使い魔のルーンが刻まれてるから、もう少し頑張って!」
 ルーンの刻まれる痛みに苦悶する竜を、ルイズが自身も泣きそうな顔で
宥めている。やがて契約を済ませ終わると、コルベールが珍しいルーンだと
スケッチを始めた。
 そこまで見届け、本に視線を移すと、キュルケが問い掛けてくる。
「貴方はあまり驚いていないのね?」
 不思議そうに尋ねるキュルケに、タバサは本を読みながら答えた。
「彼女の普段の姿なら、ある意味納得できる」
 必要最低限の答えだが、それは彼女の本心だった。普段の姿といっても、
教室で呪文を失敗している時の話ではない。その失敗を成功に変えようと、
ゼロの二つ名を返上しようと、陰で努力していることだ。
 あの必死な姿を一目でも見れば、それがこういう形で実ってもおかしくは
ないと思って然るべきだろう。
「そうねえ」
 キュルケもそれを理解しているのか、1つ溜息をつくと傍らの
サラマンダー、彼女が先程召喚した使い魔のフレイムを撫でた。
「今回は、この子を召喚したあたしが1番の当たり引いたと思ったけど、
流石に風竜には負けるかしらねえ」
 そういうキュルケの瞳には、嫉妬の類は一切浮かんでおらず、むしろ
どこか寂しそうなものが感じられた。彼女が、魔法を使えないルイズを
よくからかっていることは知っている。けれど、それが決して彼女を
揶揄するのが目的でないことも、またタバサは承知していた。

 ルイズはそのプライドの高さもあってか、失敗をする度にひどく落ち
込む。そんな時に限って、キュルケは負けず嫌いな彼女を挑発し、怒らせ
ついでに立ち直らせてきた。この赤毛の友人がいじめっ子な側面を
持っているのは確かだが、本当に苦しんでいる者にはいつもそれとなく
お節介をやく。タバサは、彼女のそんなところが好きだった。
 そしてそんなキュルケにとって、ルイズが成長の一端をみせたことは、
祝福と寂しさが入り混じった複雑な心境なのだろう。からかうのを楽しんでは
いるが、頑張ってももらいたい。成功したのは喜ばしいが、元気づけついでで
いじれないのはつまらない。わがままにもほどがあるが、とても暖かな
わがままさだ。
 タバサもまた、余り関わりのないクラスメイトの成功を、心の片隅で祝福した。

「ミス・タバサ、前へ!」
「あ、ほらタバサ! 貴方の番よ」
 コルベールの呼び掛けにキュルケが気付き、タバサの肩を揺らす。
「わかった」
 短く答えて本を閉じ、タバサは立ち上がった。その顔は、努めて
ポーカー・フェイスに保っている。
「あら? タバサ」
「なに?」
 キュルケに呼び止められて振り返れば、彼女は珍しいものを見る目で
こちらを見ていた。
「貴方、もしかして緊張してる?」
「……」
 表情を隠していたつもりが、あっさり見破られた。この勘の良さも、彼女の
特徴の一つだ。そしてその彼女は面白そうに微笑んでみせると、タバサの頭を
撫でる。
「大丈夫よ、貴方だったら、あの風竜に負けないような召喚ができるわ」
 妹にかけるような優しい声。タバサはそれに頷いてみせると、儀式へと
向かっていった。

 しかし、タバサの本当の不安は、儀式そのものとは別にあった。それは、
彼女の名前のことだ。

 タバサ。その名前は、本名ではない。そもそも、その名前は普通人に
つけるような名前ではない。そして、彼女の本当の名は、キュルケにさえ
話していない。

 けれど、彼女は儀式で本名を名乗るわけにはいかなかった。彼女が今
名乗っている名は、彼女自身の決意を表す名。その決意を達するまでは、
この名を捨てる気はない。

 そして、仮にここで本名を明かせば、キュルケは間違いなく偽名を
名乗っていた理由を自分に問い詰めるだろう。否、仮に追求するような
ことはないにしても、自分が今まで名乗っていたのが偽りのそれだったと
知れば、少なからず彼女を傷つけるはずだ。ハルケギニア大陸の貴族に
とって偽名を名乗ることそれ自体は珍しいことではないが、理屈と感情は
別なのをタバサはよく判っていた。

 そして、仮にその理由をキュルケが聞けば、必ず彼女を巻き込むことになる。
これはあくまで自分の個人的なこと。彼女を巻き込むことは本意ではなかった。

 だが、この儀式でタバサを名乗れば、それは神聖なるこの儀式を
汚すことになる。果たしてそれで儀式が成功するのかどうか、それが
彼女には不安だったのだ。

 その思いを抱えながらも、彼女は儀式の位置につく。
そして軽く息を整えると、意を決して使い魔召喚の呪文、
サモン・サーヴァントの呪文を唱え始めた。

「我が名はタバサ……」

――始祖ブリミル、どうか今だけは、偽りの名で儀式を行うことを
許してください……

 始祖と呼ばれ、神格されたメイジに祈りを捧げ、儀式を続ける。

「5つの力を司るペンタゴン……」

――どうか、私の決意を貫くために……

「我の運命に従いし……」

――私の今の名、タバサとして……

「“使い魔”を」

――私の力となってくれる者を……

「召喚せよ!!」

――私の許へ!!

 口と心で、呪文という名の祝詞を完成させた瞬間、銀色の閃光が彼女の前で
踊りだす。光はやがて扉を形作り、そして、目も眩むような白い光が、周囲を
煌々と照らし出した。

 しかし、彼女は知らない。彼女が祈った相手が、子孫へ残した秘宝の
秘密を、注意書きごと謎として残してしまうほど間の抜けた人物である
ことを。
 その上、自分の使い魔にさえ頭が上がらないほど情けない男でもあると
いうことを。

 そんな人間に祈りを捧げた後に、偽りの名で儀式を行った結果が
どうなるか、この時点では誰1人として知る由もない。



 力の女神ディン、知恵の女神ネール、勇気の女神フロル、黄金の
三大神と呼ばれた女神たちにより創造された光の世界、ハイラル。
 その南東部に広がる深き森で、妖精ナビィは生まれ育った。

 この森は、生涯子どもの姿で、自分だけの妖精をパートナーとする
種族コキリ族が住んでいる森。
 人が立ち入ることもなく、魔物に脅かされることもない、精霊たる
大樹デクの樹により守られた平和な場所。

 けれど、その平和は、野心に満ちた1人の盗賊によって破られた。

 呪いを受けたデクの樹の命を受けたナビィは、森に住む1人の少年の
許へと遣わされる。コキリ族でありながら、何故か1人だけ妖精を持って
いない、その少年の相棒として。
 少年をサポートしながら、ナビィたちは邪悪な呪いからデクの樹を
開放することができたが、それは遅すぎた。魔なる力に蝕まれ続けた
デクの樹は、ナビィたちが見守る中静かに息を引き取っていったのだ。
 彼に呪いをかけた盗賊の手から、三大神の力が宿りし黄金の聖三角、
トライフォースを守ることを、彼女たちに託して。
 それから、ナビィと少年、リンクのハイラルの命運を懸けた冒険が
始まったのだ。

 その旅路の最中には、様々なことがあった。神に選ばれた姫、
ゼルダとの出会い。さまざまな部族との交流と、邪悪な魔物たちとの
戦い。
 そして、やがてリンクとナビィは、彼がコキリ族ではなく、神の声を
聞くための長き耳を持つ民、ハイリア人であることを知る。

 時さえも越えるという信じがたい戦いの果てに、彼女とリンクは
全ての元凶、大魔王ガノンドロフとの決戦に臨んだ。伝説の戦士、
時の勇者へと成長したリンクは伝説の退魔の剣、マスターソードと
7人の賢者、そしてナビィの力を借りて、ガノンドロフに真っ向から
挑んでいった。そして、最強の魔物(モンスター)ガノンと化した
大魔王を、闇の彼方へと封印したのである。
 戦いが終わり、時は平和な流れを取り戻すことができた。
長い冒険の末、リンクは彼のあるべき時、あるべき姿へと帰ることが
できたのだ。

 そして、それは、ナビィとリンクの別れの時でもあった。

「(さようなら、リンク……)」

 時の神殿で、マスターソードを再び眠りにつかせた相棒から、
ナビィはそっと離れていく。
 自分が彼とともに旅していた理由は、ハイラルを危機から救うため。
そして、自分たちはそれを果たしたのだ。
 いずれ、森の民コキリ族でないリンクは、森を捨て外の世界へ旅立って
いくだろう。けれど、自分の住むべき場所は、あくまで森の世界なのだ。
 彼とともに、行くことはできない。

「(リンクはもう、ナビィがいなくても、大丈夫だよね)」

 リンクの方も、それを判っているのだろう。頭上はるか高くにある、
日の光がさんさんと差し込む窓へと向かっていくナビィの姿を、黙って
見つめている。

「(リンクと冒険できて、楽しかったよ)」

 羽を揺らすごとに、思い出が蘇ってくる。哀しかったこともあった。
楽しかったこともあった。驚くべきこともあった。それをこの、勇敢で、
優しくて、寝ぼすけな勇者とともに歩んできたのだと思うと、別れへの
辛さと、この上ない誇らしさが胸を満たす。

 最後に見た相棒の顔は、やはり淋しさが浮かんでいて、けれど、決然と
した凛々しさもあって、そして、僅かな涙が、その目尻に光っていた。

「(ありがとう、ワタシの相棒……)」

 そして、ナビィは日の光に満ちた窓の外へ出る。視界が、眩い白の光に
満たされていった。

「……え?」
 しかし、ナビィはすぐに異変に気付く。
「なに……これ……」
 窓の外へ出た瞬間、彼女を待っていたのは、白一色の世界だった。上下、
左右、どちらを向いても白い光で覆い尽くされている。
「……どうなってるのかしら? これも時の神殿の力?」
 困惑するも、ナビィはしいて気を落ち着かせ、この状況の分析に努めた。
この不可解な現象、時の神殿を入り口以外の道を使って出ようとした影響
なのだろうか。なにしろ7年もの時間を渡るような力を持っている場所
である。こういった奇妙なことが起きても、不思議ではないかもしれない。

 そこで、ナビィはこの場所がかなり強力なエネルギーを帯びた場所で
あることに気付いた。灼熱の火山や氷の洞窟、はては湖の底でも活動
できる妖精には問題になるレベルではないが、普通の生物ならば相当の
苦痛を与えるだろうことが判る。

「ああっ……がぁ……」
「?」
 奇妙な声に目を向けてみれば、いつのまにかそこには人影があった。
青いフードつきの服を着た少年がこの白い空間に浮かび、悶えている。
「ちょっ、貴方! 大丈夫!?」
 慌ててナビィはその少年の方に飛んでいくが、少年はよほど痛みが
ひどいのかまるで気付いた様子がない。
 あまりの悶絶ぶりにナビィの持ち前のお節介根性が膨れ始めるが、
生憎と彼女は他人を癒す類の能力に持ち合わせがない。

 どうしたものかとやきもきしていると、視界に何か別のものが近づいて
くるのが見えた。
「なんだろう、あれ?」
 目を凝らす間にも、その輪郭が徐々に明らかになってくる。
 それは仮面だった。輪郭はハート型をしていて、上部の縁に角が1対、
中央から下方の縁にそれより小さい角が4対ずつ生えている。色遣いは
全体的に毒々しくなされていて、大きなオレンジ色の眼が存在感を
主張していた。
 そして特筆すべきは、その仮面からかなり強力な魔力が感じられると
いうことだ。

 ナビィが少年と、仮面の両方に注意を向けていると、俄に周囲の空気が
揺らぎ始める。
「え!? 今度はなに!?」
 驚きながら周りを見回していくと、急に体が何処かへ引っ張られて
いくのを感じた。
「すっ、吸い込まれていく!? いったい、一体何なの!?」
 叫びながらも、ナビィと少年、そして仮面は、謎の吸引力そのままに
運ばれていく。

 そして次に視界が開けたときには――

「……」
 草原の上で、小柄な青い髪の少女の視線を、謎の空間の道連れ2名と
ともに浴びていた。
「(もう、なにがなんだか……)」

~続く~



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