あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

時の使い魔-02



「で、あんたどこから来たの?」
 本日の授業も終わり、ルイズと時の君は部屋に戻って来ていた。
「時間妖魔のリージョンだ。」
「聞いたことが無いわね。」
「まぁ、知っているやつの方が少ない。位置的には、ムスペルニブルが一番近い。」
「ムスペルニブル?判らないわ…もしかして、ロバ・アル・カリイエの方かしら?」
「ムスペルニブルを知らない?…ここは、トリニティの管理下にあるリージョンでは
無いのか?」
 指輪の君ヴァジュイールは妖魔の君の中でも三本の指に入るほど有名な妖魔である。
通常、知らないはずは無い。
「トリニティ?リージョン?何それ。全く聞いたことが無いわ。どうやらとんでもない
田舎から来たようね。」
「リージョンという概念自体が無いのかどうか…ふむ…まぁどうでもいいか。」
 上級妖魔は、単独ならリージョン移動が出来る。時の君は下級妖魔だが、努力により
下級妖魔としては稀な、上級妖魔と同等の力を持つ。 なので、どこにいても、どこに
でも移動できるので未知のリージョンだからといって、特に困った事ではない。
「そんな田舎者に、使い魔としてすべき事を教えてあげるわ。」
「そうだな。何をすればいいんだ?」
 そういえば、使い魔の契約はしたが何をすればいいのかまだ聴いていない。
「使い魔はまず、主人の目となり耳となる能力を与えられるわ。」
「見たり、聴いたりした事を伝えればいいのか?」
「そういうことじゃないわ。視覚や聴覚を共有できるの。…無理ね、何も見えないわ。」
「そうか。」
「それと、主人の望むものを見つけてくるの。秘薬の材料との硫黄とかコケとか…出来
る?」
「地理が判らないから無理だな。いずれ何とかしよう。」
「そうよね…」
 一瞬、がっくりとうな垂れたが、立ち直り言葉を続けた。
「そしてこれが一番重要なんだけど、使い魔は主人を守る為の存在なのよ、その能力で、
主人を敵から守るのが一番の役目!……あんた妖魔なのよね?……なら、大丈夫よね?」
 見た目はただの人間にしか見えない。やはり不安になってくる。
「妖魔だが?護衛か、まぁ大丈夫だろう。」
「な、何か証拠とか…そう!証拠を見せなさい!」
 聴きたくないが、聴かなければならない。いざというとき人間でした。では話になら
ない。
「証拠といわれてもな…そうだ、私の血は青い。人間は赤いだろう。」
 そういうと、唇の一部を歯で噛み切った。唇の切れた部分から、青い血が滴り落ちる。
「うわっ痛っ、あ…本当だ血が青い…本当に人間じゃないのね…そうだ!タオルタオ
ル!」
 クローゼットからタオルを取り出し、時の君の口に当てる。
「血が止まるまで当ててなさい。人間じゃないことは判ったわ。後は、あなた強いの?」
「弱くは無いつもりだ。並みの妖魔にはひけはとるまい。」
「でも、先住魔法は使えないんでしょう?その代わり、時を操れるとか何とか言って
たけど…」
「他の術もある程度は使える。今は魔力が無いが、明日には回復するだろう。護衛に使え
るかどうか、明日見せよう。」
「そうね、明日見せて貰うわ。ふぅ…今日は疲れたわ、もう寝ましょう。」
 眠そうな顔でルイズは服を脱ぎだし、時の君へ服や下着を投げてよこした。
「それ、洗濯しておいて。あとこれをあげるわ。」
 そういい毛布を投げると、よほど疲れていたのか横になった途端、寝息を立て始めた。
「寝たか…今日は魔力も無いし大人しくしているか…」
 妖魔である時の君には、休息は必要だが寝る必要が無い。この未知のリージョンの妖
魔を見てみたかったが、大人しく休むことにした。

 朝になり、時の君は部屋にあった籠に洗濯物を入れ外へ出てきていた。
「そういえば、場所を聞いていないな。」
 洗濯物を持ってウロウロしていると、同じく洗濯をするのであろう荷物を持ったメイ
ドが前から現れた。
「洗濯はどこですればいい?」
「ひゃっ!あぁっ!」
 急に声を掛けられて驚いたのか、洗濯物が散乱してしまう。
「す、すいません。びっくりしてしまって…あっ、拾って頂いてありがとうございます。
洗濯場はあちらです。私もこれから行きますので、ご案内致します。」
「助かる。よろしく頼む。」
「では、行きましょう。…そういえば初めてお会いしましたが、どちら様でしょうか?」
「…ヴァリエール様に昨日召喚された者だ。」
「あぁ!ミスヴァリエールの!昨日噂になっていましたね、何でも妖魔を召喚したとか。
……妖魔?」
 メイドの顔がみるみる青ざめていき、また洗濯物を落とした。
「ひぃっ!い、命だけは命だけは助けて下さい!わ、私の仕送りを待っている家族がい
るんです!き、兄弟が多くて私が稼がないと!ど、どうか…」
 がくがくと震え、その場にへたりこんでしまった。
「落ち着け。洗濯場を聞いただけだろう。」
 散乱した洗濯物を拾いながら、パニックになっているメイドに釈明する。
「せ、洗濯場で私の血を…!」
「何を言っている、目撃者も居なかったんだ。襲う気なら初めに会った時に襲っている
だろう。」
「ひぃっ!目撃者の居ない洗濯場で私の血を吸う気なんですね!?」
 もはや、混乱しすぎて会話が全く通じない。
「…秘術《杯》」※秘術《杯》:状態異常を治療する。
 突如、上空にカードが現れ、カードに描かれた杯から溢れ落ちた水がメイドの頭に当
たった。
「安心しろ。人間を襲う気は無い。」
「はっ…す、すみません!急に取り乱してしまって…そうですよね、襲うならこんなに
騒がれる前に襲いますよね。」
「判ればいい。じゃあ案内してくれ。」
 手を貸しメイドを立ち上がらせ、服に付いた土を払ってやる。
「あ、ありがとうございます!それに洗濯物まで拾って頂いて…」
 思わぬ行動に、やや赤くなりながら深々と一礼し、そしてようやく洗濯場へ向け歩き
だした。
「さっきは本当にすみませんでした。妖魔と聞いて吸血鬼を連想してしまって…」
「別に構わないが、吸血鬼は相当恐れられているようだな。」
「ええ…最悪の妖魔と呼ばれています。人間と全く区別がつかなくて、先住魔法を使う
のでメイジでも返り討ちにあったりするんです。あっ洗濯場はここです。」
 洗濯場に到着し、並んで洗濯を始めた。
「まだお名前を伺ってませんでしたね。私は、シエスタと申します。」
「時の君だ。」
「時の君様ですね。」
「時の君はあだ名だ。様は要らない。」
「ではお名前は何と言うんですか?」
「長い間一人だったからな、忘れてしまった。」
「自分の名前を忘れちゃったんですか!?ふふっ可笑しな方ですね。」
「妖魔の中でも変わり者と言われていたな。」
 二人は話しながらも手際よく洗濯をこなしていく。
「それにしても、言い方は失礼ですけど、妖魔と並んで洗濯をする事になるなんて思っ
ても見ませんでした。」
「そうだろうな。」
「しかも洗濯物を拾って頂いたり、手伝って頂いたり、話しに聞いていた妖魔とは全然
違います。」
「私は前に人間達と旅をしていたからな、特殊なんだろう。」
「人間と妖魔が旅を!?本当に変わった方ですね…今度、機会があればその時の話を聴
かせてください!」
 やがて、洗濯を終えて時の君は部屋へ戻った。

部屋へ戻ると、すぐに周りの部屋でも人が起き出した気配がしたので、ルイズを起こす
事にした。
「朝になったぞ。そろそろ起きろ。」
「…んん?」
「周りの人達も起き出して来ている。」
「はっ!だ、誰!?」
 突如知らない人が目の前に現れ、ルイズは動転した。
「昨日、お前に呼び出された者だ。」
「ああ、そう、そうだったわね…ていうか、お前って呼ぶのはやめなさい!ちゃんと御
主人様と呼ぶのよ!」
「わかった。」
 この使い魔は妙に物分りがいい。ルイズは、色々教育方法を考えていたのだが、どう
しようか迷ってしまう。
「…とりあえずいいわ。着替えるから、下着と服を持ってきて。そこのクローゼットに
あるわ。」
 言われたとおりクローゼットから服と下着を持ってくる。
「これでいいのか?」
「着替えさせて。」
 そういい、両手を前に出す。
「人を着替えさせたことは無いな…どうやるんだ?」
「しょうがないわね…いい?ちゃんと覚えるのよ。」
 着替えを終え、朝食を取るために食堂へ向かった。
「あんたの食事はこれよ。」
 指を差した足元には、スープとパン切れが二つある。いくら従順だとはいえ、今後の
為にも上下は、はっきりさせておく必要がある。明らかに少ないが、我慢も覚えて貰わ
なくては…
「そうか。」
 そういうと、床に座り文句ひとつ言わず食べ始めた。
「…それで、足りるの?」
 ここまで従順だと、いくらなんでも罪悪感を覚える。
「今はこれでいい。いずれにせよ、普通の食事じゃあ効率が悪いんだ。」
 ルイズは『効率が悪い』という言葉に不安を覚える。…妖魔、人間、血…
「ま、まさか人間を襲うの?」
 周りに聞こえないよう小声で話す。
「そんなことはしない。私たち妖魔は、栄養は必要ないが生命力が必要だ。例えば、生
きた人間の血を奪ったりするのはその為だが、別に人間である必要は無い。だから、人
間を襲う妖魔等から生命力を頂くさ。それならいいだろう?人間も助かるだろう。」
「そ、そう…い、いいわ。でも、これも食べなさい。効率が悪くても、少しは足しにな
るんでしょう?」
 一応は安心?したが、妖魔が見つからなくて腹が減ってきたら人間を襲うかもしれない。やはり、妖魔は危険な存在なんだと改めて実感した。

 食事も取り終わり、授業に出るため教室へと移動する。教室に入ると、ルイズと時の
君の方を見やり微かに笑っている生徒がいる。
「ところで、私はどこにいればいい?椅子に座ってもいいのか?」
「そうね…ここはメイジの席だし、とりあえず後ろのほうにいなさい。」
 そう言われ、後ろにある壁によりかかる。まもなく教室に教師らしき女性が入ってきた。
「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって
新学期に、様々な使い魔達を見るのがとても楽しみなのですよ。」
 シュヴルーズと名乗った教師は辺りを見回し、時の君へと目を止める。
「随分、変わった使い魔を召還しましたね。ミス・ヴァリエール、何でも妖魔だとか?」
 シュヴルーズがそう言うと、教室に笑いが起こる。
「おい、ゼロのルイズ!本当は妖魔じゃなくて、平民を召還したんだろう!」
 その言葉を受け、ルイズが立ち上がる。
「違うわ!あいつは妖魔よ!」
「嘘をつくな!お前が妖魔なんか召還できるわけないだろ!そもそも召還できたのかも
怪しいぜ、その辺の平民を連れて来ただけだろう!」
「ちゃんと召還も成功したし、あいつは妖魔だって言ってるでしょ!」
「だったら証ムグッ!」
 シュヴルーズが杖を振ると、ルイズを囃し立てていた小太りの生徒の口に、赤土の粘
土が押し付けられる。
「お友達を侮辱してはいけませんよ。さあ、授業を始めましょう。」
 授業が始まり、各種の魔法の説明がなされ、時の君は、自分が知っている術とは違う
魔法に、研究欲を駆り立てられていた。どうやらこのリージョンでは、他のリージョン
と交流が無い為に独自の魔法体系になっているらしい。
「今から皆さんには、土系統の基本である、《錬金》を学んでもらいます。そうですね、実際にどなたに見せて頂きましょう。えー、ではミス・ヴァリエールお願いします。」
 ルイズの名が出ると、教室に緊張が走った。生徒たちがざわめき出す。
「はい、わかりました。」
 そのルイズの答えに、赤い髪の少女が立ち上がった。
「先生、危険です!」
「ミス・ツェルプストー、何故ですか?」
 シュヴルーズは、疑問を口にする。
「ルイズを教えるのは初めてですよね?とにかく危険なんです!」
「確かに初めてですが、努力家で座学も優秀だと聞いています。ミス・ヴァリエール、
失敗を恐れずやってみなさい。」
「わかりました。」
 ルイズには自信があった。召還も成功したし、何より皆は信じないが妖魔を呼び出し
たのである。
 時の君は明らかな周りの変化に疑問を持った。ルイズが教壇に近づくにつれ悲鳴が起
こり、机の下に隠れたり、教室を出て行くものまでいる。
「何だ?」
 時の君が辺りの様子を伺っている間に、ルイズが教壇に立ちシュヴルーズの時と同様
に杖を振り上げ、そして、短く呪文を詠唱し杖を振り下ろした。
瞬間、轟音とともに、目が眩むほどの閃光が起きた。爆風が巻き起こり、使い魔の生物
達が騒ぎ出す。そして、シュヴルーズ教師は大きく吹き飛ばされ目を回していた。
 生徒達は避難していたので被害は軽微だった、爆心地であるルイズは体中を煤だらけ
にして呟いた。
「ちょっと失敗したみたいね。」
「どこがちょっとだゼロのルイズ!」

 ルイズは散乱した部屋の後片付けを命じられていた。
「何でゼロのルイズって呼ばれてるかこれでわかったでしょ。座学は得意でも、一度も
魔法が成功した事がないの。」
 俯き、一瞬手を止める。
「さっきの爆発は魔法じゃないのか?」
「はぁ?皆の反応を見れば判るじゃない!あれは失敗したのよ!馬鹿にしてるの!?」
 軽く苛立ちを憶え、時の君の方へ向き直る。
「違う、そういう事じゃない。確かに、土の魔法は失敗したんだろう。だが、爆発とい
う結果は魔法なんじゃないのか?」
 机や壁の破片を集めながら疑問に感じた事を口にした。
「それは魔法でしょう。失敗だけど…」
「普通、失敗すると爆発が起きるのか?あれだけの威力が只の失敗とは思えないが。」
 只の練金の失敗で片付けるには教室の惨状は凄まじい。
「え?普通は何も起こらないわ…爆発するのは私だけよ。」
 時の君は、何やら考え込み掃除の手を止める。
「何考え込んでるの、手を動かしなさい!終わらないじゃない。」
 再び片付けを始め、考えまとめた事をルイズに語った。
「…推測だが、あの爆発こそが御主人様の魔法なんだろう。」
「何よ、どういうこと?」
「私のいた所の術は相反関係にある術は習得出来ない。仮に、四大魔法とあの爆発が相
反関係にあるとすれば…」
 時の君の言葉を遮り、ルイズが声を上げる。
「じゃあ何だって言うの!?私には普通の魔法は使えなくて、あんな失敗魔法しか出来
ないって言いたいの!?」
 ルイズは、今まで従順だった使い魔にまで馬鹿にされた気がして、うっすらと目に涙
を浮かべた。 
「あくまでも推定の話だ。術と魔法が同じものかは判らないだろう。ただ、相反関係の
可能性があるという話だ。」
「じゃあ、その推定が正しければ、私は爆発させる事しか出来ないって事じゃない…」
 確定した訳ではないのに、何故かもう爆発しか出来ない気がしてくる。
「そうとは限らない。推測が正しいとしても、あの爆発が、空気の燃焼に依るものか、
魔力が暴発して起きるのか、それ以外の起因により引き起こされているのか、その原因
を突き止められれば、空気の燃焼なら火の魔法が使えるだろう。魔力の暴発なら暴発し
ないよう形を整える。それ以外の起因に依るものでも、その対策を打てばいい。そうや
って擦り合わせていく事で応用の幅は広がる。爆発が基本でも、使い方は様々だ。」
「爆発の使い方…」
「そうだ。座学の成績は優秀なのに、今まで対策を打てなかったのはその前例が無かっ
たからだろう。無ければ自分で一から創ればいい、魔法を。」
「自分で魔法を創るぅ?随分壮大な話しになったわね。」
「まぁ前提が推測だからな、こういう考え方もあるという事だ。ただ、これから行き詰
まってしまったらもう一度思い出してくれ。」
「もうずっと前から行き詰まってるわよ!どれだけ努力しても爆発しか起きないわ!こ
のまま普通の練習をしても、もう…。」
 涙を堪え、力強く言い放つ。
「だから協力しなさい!時の君も術だっけ?魔法みたいなもの使えるんでしょ、何か参
考になるかもしれないわ。ていうか、まだ何も見せてもらってないわ…試しに今使って
みてよ。本当に使えるんでしょうね?」
 人間でないことは判ったが、まだ術は見ていない。
「そうだな…その前に、もう正午だ。掃除も終わった、とりあえず昼食が済んでからに
しよう。」
 ルイズが話しに夢中になっている間も手を止めずに掃除をしていたのであろう。すっ
かり教室は片付いていた。
「もうそんな時間?そうね、昼食が終わってからゆっくり見せてもらうわ。」
 そう言って二人は教室を後にした。


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