あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのゴースト 1-2

 学院の存在価値は貴族の子弟に魔法の教授をする事のみならず、外に出す訳にはいかない物の保管庫の役割をも担っていた。
 その重要な場所である宝物庫に眠る、『破壊の杖』なる貴重な物を、最近貴族を脅かす盗賊、土くれのフーケに盗まれた事で、学院長室は大騒ぎとなっていた。
 が、秘書ロングビルがフーケの逃走場所をつきとめ、報告した。そこで、追跡者志願に挙手したルイズ、キュルケに、キュルケの友人でありシュヴァリエの称号を持つ優秀な少女タバサを加えて、勝手に憐も含めて5名でフーケ追跡に向かう事になった。

(……ミス・ヴァリエールはともかく、ミス・ロングビルや優秀なメイジ二人いれば、追跡軍の編成の時間稼ぎになるじゃろうて。
 ただ……)

 オールド・オスマンには一つ懸念があった。会議終了後、重要な話があるとコルベールを残して人払いを行い、以前の報告についてもう一度尋ねた。

「ミス・ヴァリエールの使い魔がおかしいと言っておったが」
「前回の報告通り、使い魔に刻まれたルーンは珍しい物―――恐らくガンダールヴと思われます。が」
「何かね?」
「遠目ながら何度か見た所、ルーンが薄くなっているようでした。一度確認で、手の甲を見た時に、確信となりました」
「ふむ……」
「加えて、ディテクトマジックです。召喚時の確認では只の人間でした―――そう見えましたが、今では余り人間の反応を出しておりません。言い換えれば、体と言う器が色落ちして透明になり、魂だけが辛うじて色を見せているだけの様に。
 これは予想なのですが、遠からずあの使い魔は、自らミス・ヴァリエールの元から離れるのではないかと」

 使い魔の契約を解除するには、使い魔が死ぬしかないと言われている。普通は、そうではないかと言っているように聞こえるが、コルベールの考えは少し違っていた。

「それも、生きたまま契約解除です。今までそんな例は、聞いた事がありませんので」
「ふむ……どう思う?」
「想像がつきかねます、としか言いようがありません」
「成程……分かった。以上かな?」

 はい、と答え、コルベールは部屋を後にしようとする。が、扉を開けた所で何かに気付いた様に振り向いた。

「オールド・オスマン。何故先程から、ふむとか成程とか、一言二言しか喋らないのですか?」
「いや、促していれば勝手に喋ってくれるから便利じゃのうと」
「くたばれジジイ」



 馬車に乗り込んだ5人は、目撃場所である小屋に着くまで、打ち合わせを始めた。

「フーケは、土のゴーレムに乗って逃走を?」
「はい。素早い動きでしたが、幸い目撃者がいましたので」
「おかしいわ。あたしとヴァリエールが見た時は、土ゴーレムは壊されたわ。
 そういえば、白いゴーレムはなんだったのかしら」
「土の方は、もう一度造ったのでしょう。世間を騒がせる程の能力であれば、不可能では無いでしょうから。
 白い方は、学院で残骸を調査しているようです」

 3人の会話中、タバサは本を読んでいるだけのように見えるが、キュルケ曰く「聞いている」ようであった。
 なりゆきで憐も連れて来る羽目になったが、本人は何も知らずくぅくぅ昼寝をしていた。使い魔は主人の守りになるとはいえ、

(連れて来てよかったのかしら……)

と思わなくもなかった。

***************

 フーケが最後に目撃され、アジトにしているとされる、小屋の近くにたどり着いたところで、作戦を立てる事にした。
 どんな仕掛けをしているか解らない。タバサが偵察兼囮に「すばしっこく動ける者」を提案したが、メンバー内に誰もおらず、仕方なく全員で警戒しつつ小屋に接近する事にした。

 タバサが前につき、両脇をキュルケとロングビルが固める。憐はルイズの前、一番安全なポジションに立たせ、抜き足差し足の気持ちで小屋に近付くが、迎えが何も無かった。
 タバサが魔法で確かめるが、罠すらない。タバサ、キュルケが入り、憐にべったりされていたルイズは外で見張る。ロングビルは偵察をすると言い、森の中に消えた。
 そして、外にはルイズと憐の二人だけが残された。

「お姉ちゃん、どうしてこんな所に来たの?」

 憐は相変わらずこの行動が何かを理解していないようだったが、ピリピリとした痛い空気だけは感じていたのだろう、ルイズにすがりつくように尋ねた。

「悪い泥棒を、退治に来たのよ」
「どろぼうさん?どうして?」
「それは……」

(フーケを捕まえるぐらいの手柄を立てれば、ゼロのルイズって馬鹿にする奴も少なくなるわ。そうしたら、憐をゼロのルイズの使い魔って馬鹿にするのも減るはず。
 使い魔を守る為に、主人たるわたしがしっかりしなきゃいけないのよ!)

「って言っても、分からないだろうし……どうしたの?」

 いつの間にかすがりつく手が離れている事に気付くが、憐は上を向いて固まっているだけだった。
 あれ、いつの間に曇ったのかしら?そう思ったのも束の間、憐の見る先に、いつの間にかあった土の壁がぐらぐら動き出して―――

「違う……ゴーレム!?」
「きゃあああっ!!」

 咄嗟に―――むしろ本能でルイズは憐を押し倒し、同時に倒れ込む。二人して転がりながら見上げると、ゴーレムが小屋の屋根を拳で吹き飛ばしていた。
 ほぼ同時に、中にいたキュルケとタバサが飛び出す。二人はゴーレムの姿を認めるや否や、即座に得意属性の魔法を放つ。
 学院でも有数の実力者たる二人の魔法はかなりの威力を持つ筈だったが、直撃を貰ったゴーレムはビクともしていなかった。

「全然効いて無いわよ!」
「退却」

 分が悪いと判断したタバサの言葉により、二人は破壊の杖を持ったまま逃げ出す。口笛一つで駆け付けた風龍に飛び乗り、天高く舞い上がる相手を、何も出来ず見上げるゴーレム。
 しかし、ルイズは逃げなかった。失敗の爆発魔法を何度もぶつけるが、ゴーレムの装甲表面を小さく砕くだけにすぎない。
 そのうちうっとおしく感じたのか、または獲物と判断したからか、巨人はルイズの方に歩き出した。

「ばか、逃げなさいよ!」
「逃げられないわよ!フーケを捕まえて、わたしを『ゼロ』なんて呼ばせたりなんかさせないんだから!」

 拘りが強すぎて、ルイズは既に正気を無くしていた。
 何度も何度も魔法を乱射する。しかし、象が蟻一匹を気にも止めない様に、何の障害も無く歩みを続ける。
 そして無情にも脚が振り上げられ、ルイズを踏みつぶそうとした時―――

「―――え?」

 青い影に、突き飛ばされた。そう理解した時には、岩の壁が目の前にあった。尻餅をついたルイズの前には、自分に振り降ろされた筈の、脚。
 そして、ルイズの代わりにあの下にいるのは―――

「あ…!?」

 正気を取り戻した。取り戻して、自分のした事がどんな結果を読んでしまったのか、理解してしまった。名誉名声に囚われ、自分と相手の実力も考えず闇雲に動いて、

―――憐が死んでしまった。わたしの代わりとなって。

 使い魔の役目は主を守る事だと知っていたのに。そうである事が、当然だと学んだ筈なのに。実際にそれをしてくれた使い魔の成れの果てを見て、頭の中には後悔しか浮かばなかった。

「あ……あ……あああああっ!!」

 ただ、叫ぶ事しか出来なかった。



 その様子は、風龍に乗るキュルケ達も目撃していた。
 しかし生半可な攻撃が通じない事は十分に思い知らされていたし、上空から何か出来そうな方法が無かったので、つまりはどうしようも無かった。

「この破壊の杖ってのも、うんともすんとも言わないし」

 脱出間際に小屋の中で見つけた、破壊の杖を振る。振るどころか、叩こうが杖らしく魔力を通そうが、反応一つ無い。
 そもそも、形からして杖らしくない。刃のように伸びた板がついていて、まるで剣のように見えた。

「ああ、もう役立たずねこの杖!」



 森に隠れていた犯人、フーケもその光景をしっかりと見ていた。元々全員始末するつもりだった。破壊の杖をあらかじめ渡しておき、ゴーレムをけしかける事でその使用方法が分かればよし、分からなければ次の生徒や教師を「釣る」だけだ。
 空の龍に乗っている―――確かミス・ツェルプストーだったか―――は破壊の杖を叩いたり振ったりしているようだが、そんな事はとうに試した。
 今回の人選は外れらしい。ゴーレムの近くのもう一匹を片付け、さっさと空の二匹を仕留めるとしよう。




 だが、三者のそれぞれの顔は、後に誰もが想像しなかった光景を見た事で、一気に変えられる事になったのだった。
ルイズは悲痛から困惑に。キュルケは焦りから呆然に。そしてフーケは、余裕から驚愕に。


 使い魔を下に踏み締めていたゴーレムが突然原因不明の力で引きちぎられ、半身が光の粒子となって消し飛んだ。

 憐は思い出していた。どうして、私はこんなところにいるのだろう。どうして、私は呼ばれてしまったのだろう。
 どうして……?


 本当は、知っていた。理解していた。その理由を。
 ただ、それを思い出したくなくて。思い出すのがとても辛くて。
 だから、自分で忘れてしまったのだ。記憶に、鍵をかけて。

 世界が発達し、電脳世界に精神だけで入り込めるようになった時代。
 憐は幼い頃から、『肉体と精神を切り離してどこまで死なずに活動できるか』という実験に使われていた。
 その結果、彼女の精神は肉体を離れて何年間も、ひとりぼっちで、誰とも話す事なく電脳世界を彷徨っていた。
 そして、生き別れの『兄』とともにやっと、念願の肉体の場所を突き止めた。


 ―――入れ物は、既にこの世から消えていた。
 彼女はもう、この世の存在ではなかったのだ。


 彼女は別に特別な事なんて、望んでいなかったのに。
 自分の体で、誰かと話して、誰かと遊んで、誰かと楽しむ。
 それが永遠に出来ないと知った。沸き上がる絶望の衝動に身を任せ、彼女は知らずその事実を、そして『兄』を殺した。

 ストーカー中にこの世界に来たと言うのも、彼女が造ったまやかし。絶望の海に落ちた彼女の、ほんのささやかな願いが、『虚無』に聞き遂げられたから、この世界に来る事が出来た。
 その願いが、叶う世界に。

 それらを全て、思い出した。自分で殺した事実を、ゴーレムに殺された事で思い出した。
 そして、やらなければならない事も、思いだす。
 けど、今はその前にやりたい事がある!


「憐……!」

 『姉』の言葉を背に受ける。たった一週間少しの使い魔人生だったけど、大切に優しくしてくれた私のご主人様。
 だから、ほんの少しの恩返しを。お別れをする前に。

「行って……!」

 突然、空間に稲妻がほとばしる。土煙が舞い上がる。たった、それだけ。それだけで、残り半身のゴーレムは空中をコマのように回りながら、跳ねて砕けてバラバラになり、空間に溶けていくように消えていった。
 その光景を、ルイズは目撃した。稲妻と砂の壁の奥に、目玉のような何かが光っていたのを。その奥に黒くて大きな、50メートルはゆうに超える、宙に浮いた球体を。
 その物体が、全身から様々な色の帯を一斉に発射し、ゴーレムに命中させたところを。
 あれは、いったい……?

「ヴァリエール、大丈夫!?
 土煙で急に見えなくなって、晴れたらゴーレムが急にいなくなって……」

 空から降りてきたキュルケ達が駆け寄ってくる。その間に憐はルイズに手を差し伸べて起こした。

「ごめんね……ごめんね、憐」
「ううん、気にしないで、お姉ちゃん」
「けど、どうやって踏まれて生きてたの?わたしが聞くのも何だけど……」
「あ、それ、私も知りたいわ」

 キュルケに続いてタバサも頷く。流石に気になるらしい。

「あのね、私は……死んでいるの」
「だから、踏まれても平気だったの?」
「ちょっと……違うの。ええと……いめーじがなんとかで、だから…自分が何ともないって強く思ったらその通りになるし、触りたいと思ったら触れる…だったっけ?」
「わたしに聞かれても困るけど。まあどうでもいいじゃない、無事なんだから!
 ……憐にあんな事させちゃったわたしが言うのもなんだけど」
「気にしなくていいよ、お姉ちゃん」
「ありがとう、憐。本当に、ありがとう。
 あたし、憐が一緒にいてくれて良かった」

 抱き合い、喜ぶ二人。それをやれやれと見物するキュルケとタバサ。

「って、あれ?死んでるってところ、スルーしていいの?ゴーレムをどうやって倒したかも。
 結構重大だと思うんだけど」
「いいと思う」

 そして、一戦が終わった後の緊張の低下も重なっていた。だからだろう、今更ながら駆け寄って来たロングビルの、様子のおかしさに誰も気付かなかったのは。
 やっと抱擁を終わらせたルイズが、あの黒い球体は何かと尋ねようとした時。

「ご苦労様」
「ミス・ロングビル……?」

 ロングビルはひょいとキュルケの手から破壊の杖を取り上げ、

「きゃあっ!?」
「お姉ちゃん!」

 後ろからルイズの首根っこを引っ張りあげ、人質の形で引き寄せる。首に取り上げた破壊の杖の先―――剣に例えれば刃の部分―――をつきつけて。

「ゴーレムを倒すなんて驚いたわ。ここは大人しく引こうかしら」
「ミス・ロングビル……あなた、まさか?」
「土くれのフーケ」
「そうよ。以前から潜入し、破壊の杖を盗んだのはいいけれど、使い方が解らない。
 学院の誰かが知ってると思って、わざと討伐を募ったけど、今回は外れみたいね」
「ヴァリエールを放しなさい!」
「おっと、二人ともその杖は離して貰うわよ。遠くまで投げてね。この杖、剣みたいな形してるだけあって、よく切れるのよね」

 フーケがルイズの白い肌に一筋の血の跡を走らせ、キュルケとタバサが悔しげに杖を横に捨てる。それを確認し、ルイズの杖も掴み、横に捨てる。
 これで、フーケ以外はすぐに魔法を使えない。どうせ全員殺すつもりだが、今は言わなくてもいいだろう。

「後、他の使い魔も動かさない事ね。そうそう、ヴァリエールの使い魔。貴方も、少しでも変な動きをしたら、貴方の主人の命は無いわ。
 ゴーレムに踏まれたと思ったら無事で、謎の力で逆に粉砕。今注意すべきは貴方だから」

 フーケが念をさすが、そんな事をせずとも憐はどうしていいか分からずオロオロしている。

 誰もどうにも出来ない。ルイズは歯がみした。
 きっと動けないままあたしを人質にして逃亡、後に殺害。もしくはこのまま新たなゴーレムを呼び出して、纏めて殺されるか。
 どちらにせよ、自分の命はこの泥棒に握られているのだ。

(何か、何か手は無いの……あれ?)

 ふと、フーケの言葉を思い出す。
 彼女は確かに、「謎の力」と言った。何故そんな言い方を?
 あんな今までに見た事も無い物なら、謎の物体かゴーレムとでも呼べばいいのに。
 そもそも、あれだけ大きな物なら、森の奥にいてもそうそう見えない筈は無い。
 もしかしたら―――

「あは、あはははははっ!」

 ルイズは突然、狂った様に笑い出す。いや、実際恐怖に心をやられ、狂ったと言えるほどおかしな笑い方だった。

「ヴァリエール!?」
「あら、ミス・ヴァリエール。貴族を名乗っていても、所詮は人間。自分の命が危なくなって、おかしくなったのかしら」
「違うわよ、土くれのフーケ。貴方こそ、所詮こそ泥ね。わたしの、もう一匹の使い魔に気付かないなんて」
「なっ!?」
「ほら、あそこにいるじゃない!見えないの?
 そこで『浮きながら、貴方を見つめているわ』!」

 もう一匹、の発言に本気で驚いたフーケだったが、ルイズが指差す方向はフーケの対面上空であり、何も無いただの青空だった。
 フーケだけでなくキュルケやタバサすらも、いたたまれない顔をしていた。
 なんだ、本当に××××になっただけか。そう判断し、フーケは破壊の杖の柄に力を込める。
 キュルケもタバサも同級生のどうしようも無い姿に悲嘆し、憐はただルイズ達の様子を見るだけだった。

「はいはいそうですか。
 ゼロと言われてるから一番人質にしやすいと思ったけど、頭までゼロだったなんて」
「何よ!信じて無いわね!後悔するわよ」
「後悔したわよ、一瞬でも真面目にした私にね。
 夢は寝てから見るものよ、今から永遠に見られるように」


『―――憐。紹介してあげて』


「してあげ―――え?」

 刃を振り切ろうとしたフーケは、何かに圧迫されるような雰囲気を感じ、腕を止めた。
 その正体を確かめようとその方角を見上げ、全身を硬直せざるをえなくなった。

「な……!」
「何、これ!?」
「……!?」

 そこには何かがいた。黒く、大きな、浮遊する丸い球体。憐の頭上に位置し、中心にある瞳のような物が、確かにフーケを見据えていた。
 その姿はルイズにも見えていた。さっきのようなぼんやりしたものでは無く、はっきりと。
 同時に確信を得る。この驚き方、やっぱり見ていなかった!

 一方、それが出て来た瞬間、フーケはルイズの思惑通りに後悔した。信じられない!まさか本当の事を言っていたなんて!?

 そして、そのまま「何故本当の事を教える必要があったのか」まで考える暇が無いまま、思考をやめざるを得なかった。
 ルイズに隙ありと腕を振り払われ、ついでに一発顔を殴られて怯まされて逃げられ、フーケは急いで杖を手に取った。

「くっ……初めからこうしておけばよかったわ!」

なりふり構わぬ方法に出たフーケは、憎々しげに顔面を押さえながら早口で詠唱を開始し、

「出なさい、ゴーレム!」
『お兄ちゃん来てっ!!』

一瞬立ち上がった土の塊は、憐が不思議な言葉を放った途端にまたも光の粒子となった。

「なん……!?」

 自分の魔法を一瞬にして解除される『ありえない事』に、フーケは完全に動きが止まった。

 その隙に、杖を取り戻した二人が、

「覚悟しなさい、土くれのフーケ!」
「とどめ」

体勢を立て直す暇無く炎と風の一撃で容赦無く吹き飛ばし、

「これで…終わりよっ!」
「きゃああああっ!!」

 ルイズの強烈な失敗魔法が炸裂し、フーケは悲鳴をあげて大地に沈んだ。


***************


「やっと…捕まえたわね、土くれのフーケを」
「驚いたわ、ヴァリエール。あの時、絶対気がおかしくなったと思ったもの」
「あれは、あのぐらいしなきゃフーケの動きを止められないと思ったからよ」
「敵を騙すにはまず味方から」
「そうそれ。憐も、あれで分かってくれてありがとう」
「うん、何となく分かったの」
「ヴァリエールはうまい事やったけど、そういえばその前に無茶したから、プラスマイナスゼロよね」
「それは言わないで……もう反省してる」
「あの丸い物、何?」
「あ、そうよ!本当に、あれあんたの使い魔なの?」
「勿論違うわよ。正直言うと、わたしじゃなくて憐の……何?」
「私の……友達、かなぁ?」
「って、いつの間にかいないし」

 ろくでもない友達もいたものである。

「ふう、何だかんだで疲れたけど、これで仕事は終わりね。
 後はフーケの身柄と、この破壊の杖を届けないとね」

と、キュルケが杖をコンコンと叩き、


 ピシ。


「今……不吉な音が聞こえたんだけど」
「奇遇ねヴァリエール、あたしもよ」
「ヒビ入ってる」
『現実逃避してるのに空気読んでお願い』

 ノットエアリーダー・タバサへの二人の同時口撃も空しく、杖に一旦入ったヒビは次々と広がり続け。

 つまりは、バラバラになった。

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