あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロ 青い雪と赤い雨-08



深夜、まるで流れる風さえも眠ってしまったかの様な静寂の中に、尋常ではない衝撃が響いた。
その轟音はかの雷神の槌を思わせる程で、夢の世界での生活を満喫していた生徒達は、強制的に現実に引き戻される事となった。
その中でも幾分寝起きが良い物は即座に外に飛び出し、その原因を知る事ができたが、知る事が出来た者の方が不幸であったかもしれない。
それは30メイルはあろうかという巨大なゴーレムであった。

『土くれのフーケ』
そう呼称される盗賊がいる。
強力な固定化を物ともせず、錠前や壁を『錬金』で土くれに変質させてしまう事かがその由来である。
しかしその手口に一貫性がある訳ではなく、先述の様な巨大なゴーレムを操り屋敷を粉々にして盗み出す等の手口が用いられる事も多々あった。
そして、誠に不名誉な事にトリステイン魔法学院の宝物庫もその一例に加えられてしまったという訳である。
―――決闘の際の流れ弾によって大きな亀裂が入っていた という原因もあるのだが。


この時、誰にとっての不幸かは知らないが、何者かが宝物庫から何かを持ち去る所を目撃したのが、
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、その人であった。



即座にその現場に共に居合わせたタバサ・キュルケは、更に轟音を聞きつけてルイズの元に現れたアトリを伴い報告の為オールドオスマンのもとへ赴いた。
教師達の不手際、怠慢を叱責した後にオールドオスマンは高らかに、且つ威厳を持って告げる。

「では、捜索隊を編成する。我と思う者は杖を掲げよ」

即座に揚がった杖が1つ。
燃え上がる様な髪を持った少女、キュルケの物である。
「やめとけ、何が起こるかわからねぇんだ。」
「あら♪アトリったら私の事心配してくれるの?さすがダーリンね♪でも、だからって態々この私の目の前で盗んでくれた盗賊に落し前をつけない訳にいかないでしょう?」
そう言い放つ彼女の灼眼は文字通り、灼熱の炎を湛えているかの様であり、「この女はもう止まらない」と周囲を諦めさせるのに十分な説得力を持っていた。
それを一瞥したタバサがため息交じりに杖を掲げる。
「キュルケが心配」
「お前ら・・・じゃぁ勝手にしな」
「ええ、勝手にさせて貰うわ」
「・・!おい、お前も行く気かよ」
キュルケとタバサの意思が揺らがないとみて突き放したアトリであったが、
ルイズが杖を上げると明らかに動揺しはじめた。
ルイズにとってはそれが見ていて面白かったのだろう、その表情は「いたずら娘」のそれにたちかわっている。
「いい?アトリも来るのよ!私の使い魔なんだからね!」
「チッ・・・しょうがねぇな」
人が忠告してやったのによ・・・、と思わないでもないが、
杖を軽く自分の顔に向け、上目使いにそうのたまう小さなご主人に、使い魔はぶっきら棒に応えるのだった。

余談になるが、アトリが主より命ぜられている事はこれまで、「主の身を守る」という一点のみであった。
即ち召喚されてから1週間強、仕事を呼ばれる様な事は何もしていなかった事になる。
本来ならば職務怠慢との誹りを免れ得ない所である。が、「身を守る様な状態にならない」事が一番良いのであり、
よってこれは怠慢ではない。というルイズの自己完結によって事なきを得ていた訳であった。
しかし遂に今、ここにアトリ脱NEET宣言が発令されたのだ。

閑話休題


明朝、教師たちの宝物庫の点検により、無くなっていたのが「破壊の筒」であると判明したのちに、
既にその場所を突き止めていたミス・ロングビルと共に一行は、雲一つない晴天の中、馬車で出発する事となった。
有数の貴族が揃い踏みでの馬車での移動ではあるが、
本を読む者、手綱を握る物、誘惑する者、制止する者、何を考えているか解らない者。
五者五様ではあったが、傍目にも"優雅"という言葉に似つかわしいと言える者は皆無であった。


暫く馬車を進めると開けた場所に出た。森の中の空き地と言った風情であり、彼女達の眼には中央に廃屋が映るのみである。

「付近の農家からの聞き込みでは、ここである事はほぼ間違いありません。」
とのミス・ロングビルの言を受け、一先ず茂みに身を隠し軍議―――もとい井戸端会議を開始する。
相手は『土くれのフーケ』用心するに過ぎたるはない。

「奇襲が一番」
とはタバサの言である。幼い体躯に似つかわしくない無機的な光彩を放つ瞳を持つ少女は、慣れた手つきで作戦を説明する。
その概要はこうである。
まず偵察係兼囮が小屋の中を視認、中にフーケがいるのであれば小屋ごと攻撃する。
居ないのであれば、それはまた追って考えればよい。
居た場合、廃屋は間違いなく壊れるであろうが、持ち主から苦情がくれば弁償すればいい。
貴族達にとっては造作もない事であるし、何よりそれくらいの経費は学園から出て然るべきである。
問題は最も危険な偵察任務を誰が行くかという事である。

「俺がやるぜ」
「アトリ、危ないわよ!」
いつも気丈な鳶色の瞳が、今は心配の色で塗り潰されている。
「ったく・・・お前がやったら危なくなくなる訳でもねぇだろう、俺なら大丈夫だ」
「でも――――」
使い魔の気づかいが嬉しくない訳では無いが、それで心配が薄れる訳ではない。
ルイズは即座に反語を口にしたが、アトリの優しい表情と頭に置かれた手がそれを遮った。

ずるい。 ルイズはただそう思った。
その顔されたらもう何も言えなくなってしまう。
叱る訳にもいかない。
ずるい。

「彼が適任」
「そうね♪ダーリンなら万が一攻撃されても平気そうだし」
ルイズの気も知らないで、蒼氷色の灼熱色の対照的な瞳を持った少女達が追認する。
ギーシュとの決闘を目の当たりにした2人に心配する気配は無い。

結論から言ってしまえば廃屋には何者も存在しなかった。
「誰もいねぇよ」
そうつまらなそうに呟いて中に入っていくアトリに続いて、キュルケとタバサが中に入っていく。
ルイズは表を見張り、ミス・ロングビルは「辺りを偵察してきます。」と廃屋の裏の方へ向かった。
「手掛かりを探す」
「手掛かりっていってもねぇ・・・・」
廃屋の中は外見通りあまり広くなく、そこにあるのはチェストと小さないすと机、そして簡素なベッドだけであった。
そして意外にもあっけなく「伝説の剣」はそのチェストの中から見つかってしまった。
タバサはそれを無造作に持ち上げると同行していたアトリとキュルケに見せる。
実戦向きに作られた物なのだろう、装飾等がされている訳ではなかったが、
それは"伝説の剣"と呼ぶに相応しい重厚な井出達の鞘に包まれた、恐らく大剣であった。
「あっけないわね!」
キュルケが叫ぶのとほぼ同時であった。
廃屋が音を立てて崩れだした。
30mを超えるゴーレムが現れ、その大きな腕を廃屋にたたきつけたのである。
廃屋は粉々に砕け散り、辺りに破片が飛散した。
ルイズは果敢にも魔法にて攻撃を仕掛ける。
「ファイヤーボール!」
しかし、ルイズのルーンの詠唱の帰結する先は常に爆発である。
今回もその例に漏れる事は無く、無情にもあらぬ方向で爆発が起きたのみであった。

「ルイズ、離れろ!」

突然の襲撃にアトリはキュルケ、タバサを外へ瞬時に両手に抱えて非難させるので手一杯だった。

「嫌よ、私は戦う」
キッとゴーレムを睨みつけながらルイズは続ける。
「私は貴族よ。魔法が使える者を、貴族と呼ぶんじゃないわ」
ルイズは杖を握りしめる力を強める。 「敵に後ろを見せない者を貴族と呼ぶのよ! 」
そして杖を振り下ろす。

これが彼女が小さな頃、姉にが呼んでくれたおとぎ話の世界であったならば、
ルイズは今魔法を成功させてゴーレムを倒し、ハッピーエンドとなっただろう。
しかし現実は非情である。結果は変わることはない。
またもあらぬ方向で爆発が起きるのみであった。

すかさずルイズは次の呪文を詠唱しはじめる。
しかしゴーレムがそれを待ってやる道理があろうはずは無い。
ゴーレムがその巨大な腕をルイズに叩きつけんと振り上げたその時―――



ルイズの視界の外、アトリの背に、烈しい光彩を放つ大輪が咲き誇っていた。








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