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第四話 謎の少女タバサ 後編


第四話 謎の少女タバサ 後編

道中様々な事があったが、クラース達はようやくガリア王国へと到着した
王都リュティスのヴェルサルテイル宮殿…その中央グラン・トロワから離れにあるプチ・トロワ
イルククゥはそのプチ・トロワの前庭へと降り立った
「此処からは私一人で行く…貴方は此処で待っていて欲しい。」
「解った、彼女と一緒に待っているよ。」
タバサは一人、イルククゥから降りると入り口へと向かって歩き出す
すると、入り口を警護している衛兵達が彼女を出迎える
「来たな、姫殿下がお待ちだ…後ろにいるのは?」
「私の使い魔…それと、彼は知り合いのメイジ。」
クラースとイルククゥの事を説明すると、衛兵が何人か前に出てクラース達を見張った
何もしなければ、大丈夫…タバサは視線を送り、クラースは黙って頷く
「さあ、中へ…お前の使い魔と知り合いとやらは我々が監視しているからな。」
こくん、と頷くと黙ってタバサは建物の中へと入っていた
ゆっくりと、奥の王女の部屋まで歩いていく
「………。」
タバサが歩いていると、周囲の衛兵やメイド達がちらちらと彼女を見る
中にはヒソヒソと話をする者もいる…タバサには慣れた光景だった
そんな時、柱の影から出てきた誰かとぶつかってしまった
「あっ…ごめん、大丈夫?」
尻餅をついてしまったタバサを、ぶつかった相手が心配して声をかけてくる
自分に声をかける人がいた事に少し驚きながら、タバサが顔を上げる
そこには自分と同い年くらいの少年の姿があった
「大丈夫…問題ない。」
そう答えて自分で立ち上がると、タバサはぶつかった少年を見た
少年は金髪に、この辺りでは見ない不思議な格好をしていた
タバサはこの少年を知らない…新しく入ってきた召使だろうか
「貴方は?」
「僕?僕はロア、イザベラの使い魔なんだ。」
よろしくね、と言って少年…ロアは手を差し伸べた
自然と、タバサも手を差し出して彼と握手を交わす
「ごめんね、よそ見していたから…此処はバンエルティアより広いから迷ったんだ。」
そう言って辺りを見回すロア…本当に道に迷っているらしい
何故こんな少年が自分のいとこであり、この国の王女であるイザベラを呼び捨てにするのか…
そもそも、彼女の使い魔とは…色々と気になる事はあるが、任務の方が先だ
「悪いけど、私は行く…イザベラ王女に呼ばれているから。」
「イザベラの所に行くの?だったら、一緒に行っても良いかな?」
僕もイザベラの所に行きたいんだ…と言って、持っている小さな袋を見せる
どうやら、それを彼女に渡したいらしい。タバサは黙って頷くと同行を許可した
そして二人で王女の部屋に向かう…その途中で、タバサはロアに質問する
「貴方は王女の使い魔だと言った…本当に?」
「うん、僕も良く解らないけど…皆の所に戻る途中にイザベラが僕を呼んだんだって。」
皆…家族の所に戻る途中で、サモン・サーヴァントによって召喚されたのだろうか?
しかし、彼は今自分が置かれている状況を苦には思っていないようだった
「コントラクト・サーヴァントって言うのしてないから、正式な使い魔じゃないらしいけど…帰る当てが見つかるまで、此処で働いているんだ。」
「そう……。」
タバサはロアの顔を見る…その表情は、純真な心を表しているようだ
このガリアの現状やいとこの性格から考えると、何故そんな表情でいられるのか不思議だった
そんな事を考えていると、ようやく二人は王女の部屋の前へと到着した
「此処…此処が王女の部屋。」
「うん、そうだね、見覚えがあるよ。ありがとう…えっと…。」
「…タバサ。」
「タバサって言うんだ…ありがとう、タバサ。」
ロアは笑顔でタバサに感謝した…心の中に暖かさを感じる笑顔だった
そして、ロアが部屋への扉を開けると…彼の顔に何かがぶつかった


「あっ…。」

そんな間抜けな声を出したのは、奥にいるドレスを着飾った少女だった
彼女こそ現国王ジョゼフ一世の娘であり、この国の王女イザベラである
手には卵が握られており、ロアにぶつけられたのも卵だった
「ろ、ロア…何であんたが先に入ってくるんだよ!?」
どうやら、今の卵はタバサにぶつけるつもりだったらしい
ロアは卵の黄身で汚れた顔を拭うと、ゆっくりとイザベラの元へと歩み寄った
そして、彼女の傍まで歩み寄ると…
「卵を粗末にしちゃ駄目だよ。」
そう言って、イザベラを注意した…その言葉に、イザベラの肩の力が抜ける
「あ、あんたね…私はこの国の王女なんだ。だから、あんたみたいな奴が軽々と…。」
「駄目だよ。」
少し力を込めたロアの発言に、うっとイザベラは声を漏らす
そして、彼の真剣な眼差しを受け、耐え切れなくなった彼女は…
「わ……解った、解ったよ、私が悪かったよ。」
これで良いんだろ、とイザベラは謝罪した
それを聞いて納得したロアは、持っていた小さな袋を彼女に差し出す
「はい、これ…食後のおやつのクッキーだよ。」
イザベラが受け取った袋を開けると、確かに中にはクッキーが入っていた
その匂いをかいだ後、一つを口の中に放り込んだ
「……うん、美味い。本当にあんたの作るものは美味しいねぇ。」
「ありがとう。」
タバサは驚いた…あのイザベラが人に謝り、褒めている事に
しばらくクッキーを味わっていたイザベラだが、タバサがいる事に気付いて、顔を硬直させる
「あっ、あんた…ち、違うんだよ、これは…ロアのクッキーが美味しいから…って、そうじゃなくて!!!」
イザベラは何とか普段どおりにしようと怒り出し、袋を投げ捨てようとする
だが、一歩手前で留まると、ロアに押し付けた
もういらないの、と尋ねるロアをイザベラは睨み付ける
「ロア、これから私は仕事なんだ、あんたはあっちに行ってな。」
「うん。」
素直に返事を返すと、ロアは隅の方に歩いていった
一呼吸置いた後、イザベラはタバサを見据える
「ふん、ようやく来たようだね…遅いから寝ちまう所だったよ。」
何時もの嫌な笑みを浮かべて、タバサに嫌味を言おうとする
しかし、タバサは別に気にすることもなく、ロアに視線を向ける
「彼…あなたの使い魔というのは本当?」
「なっ…ち、違うよ、ちゃんと契約してないから、あいつは唯の召使さ。」
どうやら、知られたくない事だったらしい…イザベラはロアをにらんだ
だが、ロアは笑顔のままで、イザベラは肩を下げるしかなかった
「と、兎に角…これが今回のあんたの任務だ、さっさと行っちまいな。」
早くタバサを退出させたいイザベラは、任務内容が書かれた書簡を彼女に押し付けた
黙って受け取ったタバサはそれ以上問いただす事無く退出しようとすると、ロアが駆け寄ってくる
「待って…これからお仕事するの?」
ロアの問いかけに黙って頷くタバサ…すると、ロアは袋を取り出して彼女に渡した
「これ…薬とか色々入っているから、良かったら使って。」
「ちょっとロア、私の許可なく勝手に人形娘に差し入れなんかするんじゃないよ。」
「あっ、そうなんだ…じゃあ、良いかな?」
イザベラの言葉に、ロアは振り返って彼女に許可を求めた
まさか、本当に許可を求めるなんて…イザベラはあ、うと言葉を捜す
「だ、だから、こいつには……ああ、もう、良いよ、そいつにやっちまいな。」
結局、その純真さに耐え切れなかったイザベラは許可を与えてしまう
本人が良いと言ったので、タバサも遠慮なく袋を受け取る
「くぅぅぅ…人形娘、あんたも受け取ったらさっさと出ていきな、早く!!!」
ヒステリックに叫ぶイザベラに、タバサは何も言わずに部屋を後にした
行ってらっしゃい、と去っていくタバサに向かってロアは手を振った

「翼人退治?」

王都リュティスから離れた、街道の外れに在る小さな森の傍…
プチ・トロワを出たクラース達はそこで野宿をし、タバサが任務内容を話していた
「そう…今回の任務はエギンハイム村近くの森の一角を占拠する翼人達を討伐する事。」
ガリア王国アルデラ地方エギンハイム村…そこが次の目的地だった
そこは『黒い森』と呼ばれる、ゲルマニアとの国境沿いを覆う森林地帯がある
エギンハイム村の村民達は、そこで伐採した木を売って生活しているらしいが…
「その翼人達が村の秩序を脅かしているから退治しろ、ってわけか。」
タバサの話では、翼人はこのハルケギニアに数多くいる異種族のうちの一つらしい
その名の通り羽の生えたヒトで、森林などに生息する
また、エルフと同じ先住の魔法の使い手で、平民では歯が立たないそうだ
「秩序を乱すか…彼等の生息地に手を伸ばしたから、反撃を受けているんじゃないのか?」
「そうだとしても、これは任務…私はやらなければならない。」
どんな事情があろうともしても、任務である以上はやるしかない
例え、翼人全てを相手にする事になったとしても…
「貴方がやりたくないのなら、私一人でする…貴方は待っていれば良い。」
「そうは言ってない…だだ、無益な争いなら、しないほうが良いってだけさ。」
そう言って、クラースは枯れ枝を焚き火の中に放り込んだ
パチパチっと、炎の中で枯れ枝は燃えていく
「豊かさを求める事は悪くはない…それで世界は発展していくのだからな。」
だがな…とそこで一度区切ると、話を続ける
「豊かさを追い求めるばかりでは、何時かは過ちを犯す…償えない程の大きな過ちを…私の世界もそうだった。」
「私の…世界?」
「ああ、いや…私の故郷の話だ…正確には、そうなりそうだったと言うべきかな。」
クラースの言い方にタバサは疑問を浮かべるが、彼ははぐらかすだけだった
そう言えば…と、タバサは衛兵が話してくれた事を思い出した
「最近、翼人だけでなく魔法を操る、巨大な斧を持った怪人が現れると聞いた。」
「魔法を操る、巨大な斧を持った怪人だって!?」
過剰に反応するクラース…彼のその様子に、タバサは首を傾げる
「何か知っている?」
「あ、いや…そんな奴に該当する人物を知っているんだ…私が会ったのは偽者だがな。」
最後の方だけぽつりと呟きながら、クラースは答える
そう、あの巨大な斧を持ち、ロングウェーブをした超人
その話は、戦闘中にアイテムや魔法を使う事を許さない、あの男の事を言っているようだった
「そう…でも、これは未確認の情報で、エルフだとも、二人組みだとも言われている。」
そうなると、ますます解らなくなってくる
翼人に、謎の人物…一体何が待ち受けているのだろうか
ただ、確かにいえるのは、この件は一筋縄ではいかないだろうという事だ
「兎に角、明日の朝早くに出発する…今日はもう休む。」
「そうだな…では、私が火の番をしよう…君は寝ると良い。」
この辺に獣はあまりいないが、用心に越したことはない
因みに、イルククゥは既に眠っている
クラースの言葉に、タバサは頷いて毛布を被り、杖を持ったまま横になった
「眠れないなら、御伽話でも聞かせようか?私の故郷に古くから伝わる話があるからな。」
「……じゃあ、聞かせて欲しい。」
冗談のつもりで言ったのだが、意外と素直に返されたのでクラースは驚く
どうしようか迷っていると、タバサはジッと此方に視線を向けてくる
「そ、そうか…じゃあ、話そうかな…昔々、これは遠い昔の話…。」
観念したクラースはタバサに語って聞かせる…『月の精霊様』と呼ばれる、御伽話を
タバサは子ども扱いされたので、ちょっと困らせるつもりで言ったのだが、段々と物語の中に入り込んでいった


それは昔々、悪い人々が世界に毒を撒き散らし、月の精霊様を捕らえたお話…

そして、月の精霊様と、精霊様に恋をしてしまった兵士のお話…

その物語を語り終える頃にはタバサは眠り、クラースは火の番を続ける

こうして、ハルケギニアの夜は更けていくのだった


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