あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ルーン・ゼロ・ファクトリー-04


「はあぁ~~~~」
ルイズはあの騒ぎの後から自分の部屋へと帰ってすぐ、自分のベッドの上にうつぶせに倒れこんだ。
そしてぐるんと寝返りを打ち、天井をぼんやりと見つめた。
見慣れた天井を見つめながら、ルイズは今日のことを思い返していた。


自分の召喚した幻獣、マイスの覚醒。
マイスが人の言葉をしゃべったこと、記憶喪失だったこと、持っていたリュックがとんでもない代物だったこと、マイスが話せることを秘密にされてしまったこと、秘密を知ってしまっていたシエスタに口止めすべく、あちこち散々探し回ったこと。


「・・・冗談じゃないわよー・・・」
走り回ったせいで疲れきった体を横たえつつ、ルイズはつぶやく。
ルイズには、疲れたことよりもマイスが話せることを秘密にしなければならなくなったことのショックの方が大きかった。

人の言葉を話せるような幻獣を召喚したとなれば、皆を見返してやれると思っていた。
私はこんな立派な使い魔を召喚できたとだと、召喚魔法をつかえたのだと。
『ゼロ』という屈辱的な二つ名で呼ばれることもなくなるはずと考えていた矢先。
最大の長所を見せるのを禁止されてしまうとは思いもよらなかった。
むろん、禁止されてしまう理由も理解はしたつもりだし、秘密は守らなければならないことも重々承知している。
しかし、やはり納得は出来ても不満は残ったままだった。

そして、ルイズは力なく寝転んだまま視線をマイスに向けた。所在無さげな様子で床に座り、その手には今回の騒動の原因たるリュックが握られている。
あの後、何か思い出せるかもしれないという理由から一応はリュックを返してもらった。
ただし、リュックからは中身の大半が抜かれている。公にするのは危険だということと、少し中身を調べたいという要請を受けたからだ。
調べてもらえば何かわかるかもしれなかったため、それについては了承することにした。

「結局、手がかりにはならないし、しゃべるのは禁止されちゃうし・・・ もう最悪」
「・・・・・・・・・」
ルイズの言葉に、マイスも何も言えなかった。
正直なところ、手がかりになるどころか、かえって謎を増やしただけのような気がした。
入っていた物も気になるが、何より厄介なのはその統一性のなさだ。
武器が入っていたと思ったら、今度は農具が出てきた。
農具が出てきたと思えば装飾品が出てきたり、植物の種が出てきたりと、物に一貫性がない。
大体、中身のほとんどがマイスのサイズに合わない。
マイスの身長は1メイル足らず、あの武器や農具はどうみても1メイル後半、おそらくは人間のサイズに合わせて作られた代物だ。
自分に扱えないような代物を、何故持つ必要があるというのか。

持ち物を探れば自身の情報も探れると思っていたが、これでは話にならない。
むしろさらに深くなった問題に対し、両者は深くため息をついた。


「あー・・・ そういえばさ、ルイズ」
重い雰囲気を少しでも和らげようと、マイスは努めて明るく尋ねた。
「そういえばずっと聞いてなかったけど、使い魔って具体的には何をすればいいの?」
マイスの問いかけを聞いたとたんに、ルイズはベッドから跳ね起きる。
その表情は先ほどとは打って変わって明るく、『よくぞ聞いてくれましたっ!』みたいな表情を浮かんでいた。
「そうね! せっかくだからあんたにも説明しといてあげる!
いい?使い魔の役目は大きく分けて3つあるわ!」
「3つ?」
「ええ。まず一つ目。使い魔には主人の目となり、耳となるべく感覚の共有ができるようになるわ。わかりやすく言えば、あんたの見たもの聞いたことが、わたしにもわかるようになるってこと。」
「おおー」
おもわずマイスは感嘆の声を漏らしていた。
それは確かに便利かもしれない。
互いの視界が見えれば、その分活動範囲が広がる。
また、互いに行けないところ、入れないところを補い合ったりも可能だろう。
「じゃあさ、早速やってみせてよ」
マイスが期待しながらそういうと、ルイズはバツの悪そうな表情になる。
「あー・・・ なんというか、その・・・・・・できないのよ」
「・・・・・・え?」
マイスが思わず聞き返した瞬間、ルイズは顔を真っ赤にして怒鳴った。
「だから! できないの!! 何でかわからないけど、感覚の共有ができないのよ!!」
「ええ!? なんで?」
「だから、わたしにもわからないって言ってるでしょう!!」
そこまで叫んでから、ルイズはゼイゼイと肩をおろす。
「・・・まあ、いいわ。たまたまうまくいかないだけかもしれないし。ひょっとしたら一時的なものかもしれないし・・・ とりあえず次!!」

「2つ目は、使い魔は主人の望むものを見つけてくるの!」
「望むもの?」
「そうよ。秘薬に使う硫黄とかコケとかね。だから・・・」
「・・・僕、この辺の地形とか、何が取れるとか全然わからないんだけど」
朗々と語っていたルイズだったが、そういわれた瞬間に表情が固まった。

そういえば忘れていた。こいつは記憶喪失だったんだ。

記憶喪失ではどの辺りに何があるとか、秘薬に必要なものが何かとか分かるはずもない。
「み・・・3つ目よ! これが一番大事なのよ!!
使い魔はその能力でもって主人を・・・守って・・・・・・・・」
そこまで言い切ったところで、ルイズの話し声が徐々に小さくなる。
ルイズはマイスの体をじっと見つめた。


体はあまりに小さい。自分の半分程度しかない。
見た目は完全に羊。犬や猫のように牙や爪があるわけでもない。
体はモコモコの毛に覆われているが、それだけだ。耐久力など皆無だろう。


こいつがはたして敵から自分を守ってくれるのか


―――――――無理だ―――――――

どちらかというと守られる側でしょ、これ。


そこまで考え付いたところでルイズは思わず眩暈がした。
「ル・・・ルイズ?」
マイスの声が聞こえたが、もはや聞いてる余裕もない。ふらっと再びベッドに倒れこんだ。
「な・・・なんてことなの・・・ 使い魔として出来ることが何一つないじゃない!」
体を怒りと失望に震わせながら、握り締めた拳をベッドへと叩きつける。
「あー・・・その・・・なんというか・・・ ごめん」
暗くなった雰囲気を和らげようと質問したつもりだったが、完全に逆効果になってしまった。マイスは内心頭を抱えつつ申し訳なさ気に頭を下げた。


さらに重くなった雰囲気の中で、ルイズはふてくされつつ考える。
完全に予想外だった。
これでは使い魔としての役割をさせられるのかどうかも怪しい。
しゃべるのを禁止させられただけでこんなことになるとは思いもよらなかった。
かといってこのままにしておくのもなんか悔しい。
せっかく人並みの知能を持っているというのに・・・


そこまで考えたところで、ふとルイズはひらめいた。
そして、おもむろにブラウスのボタンを外し、服を脱ぎ始めた。
「ちょ、ちょっと! いきなり何してるの!?」
「何って、着替えてるのよ」
「まだ僕がいるのに!?」
「何いってんの。あんた使い魔でしょ? 使い魔が見てるからって何がまずいの」
「う・・・」
確かに、自分はあくまで使い魔だ。どうみたって羊だ。 着替えを見られたからといってどうということはない。というのはわかる・・・様な気もする。
だがなんとなく、見てはいけないというような予感がしたためマイスはとっさにルイズとは逆の方向を見ることにした。
しばらく布のこすれるような音がした後、ばさっと何かがマイスに被さった。
なんだろうと思い、手にとって見てみると、レースのついたキャミソールに、パンティだった。
ぎょっとして思わずそれを放り投げる。
「な、何だこれ!?」
「下着に決まってるじゃない。あと、明日それ洗っといて」
「・・・・・・・・・・・・はい?」
あまりに突然、かつ予想だにしなかった言葉に目が点になる。
「え?洗うって?僕が?ええ?」
「そうよ。あんた使い魔の仕事何一つできないんだもの。だから代わりに」
そこまでいってからルイズはにやりと笑う。
「掃除洗濯、その他もろもろの雑用をしてもらうわ」
「ええっ!?」
「だってせっかく人並みの知能を持ってるんだもの。それぐらいはやってもらうわ。
それに、雑用のできる幻獣ってことならまだ使い魔としての面目も立ちそうだし」

「・・・・・・・・・・・はぁ」
どうやら従うしかないらしい。居候させてもらう身の上である以上拒めるわけもない。マイスはため息をつきながら肩を落とした。
せめて下着くらいは自分で洗って欲しいところだが、文句を言ったところでこの少女が承諾するとは思えなかった。

「それじゃあ、それ頼んだわよ。あと、明日の朝になったら起こしなさいよね」
そういいつつルイズはベッドに潜り込んだ。
「・・・僕の寝る所は?」
「そこ」
ルイズの指したところは床だった。何かが置かれているわけではない。ごく普通の床だった。見るからに硬そうだ
たぶん普通に寝たら体が痛くなることは必須だ、背中とか。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
流石にマイスの戸惑うような、悲しそうな視線が気になったのか、ルイズは『毛があるんだからいいじゃないの・・・』とぼやきつつも毛布を1つ投げてきた。
人間が寝るのには物足りない代物だったろうが、マイスは体が小さいため十分だった。普通に体に巻きつけることが出来るくらいだ。
「それじゃあ、お休み」
「うん。おやすみ」
互いに言い合った後、ルイズが指を鳴らすと同時に机の上におかれていたランプの火が消えた。
これも魔法なのかと妙に感心していると、走り回っていたせいで疲れていたのか、早くもルイズの寝息が聞こえてきた。


ふと、マイスは包まっていた毛布から音を立てないようこっそりと抜け出す。
そして部屋にある窓から外を見る。
見上げた空には無数の星と、色の違う2つの月。
その光景に何か違和感を覚えつつも、マイスは今日のことを思った。

突然召喚されたこと、怪我のこと、自分が記憶喪失なこと、持っていたリュックのこと、その中身のこと、そして使い魔をすることになったこと。

自分が誰かわからない。何をしていたかも、ここがどこかもわからない。
ほぼ成り行きに彼女の使い魔をすることになったが、はたしてどうなるかはわからない。
わからないことだらけの不安だらけの状況だが、それでもやるしかない。
「やるしか・・・ないか」
一言そうつぶやいてから、マイスは眠るために再び毛布にくるまった。



翌日
部屋に差し込み始めた日の光と、外でさえずり始める小鳥の鳴き声でマイスは目を覚ました。
自身がくるまっていた毛布から這い出た後、まだ少し寝ぼけ気味の頭であたりを見渡す。
見覚えのない部屋に一瞬首を傾げるが、意識がはっきりするにつれ、昨日のことを思い出した。
「ああ、そうか・・・使い魔をすることになったんだっけ・・・」
そしてルイズのほうを見る。まだ彼女はぐっすりと眠っているようだった。
とりあえず昨日言われたとおりにルイズを起こそうとするが、ふとその時窓の様子が視界に映った。
「・・・今日はいい天気だ」
なんとなくそんなことをつぶやきつつ窓から外の様子をうかがう。
外はまだ少し暗い。
春先ということもあるのだろうが、おそらくはまだ早朝なのだろう。その証拠に太陽はまだ出てきたばかりのようだった。
少し考えてから、マイスは窓から廊下への扉へと移動し、扉を開けて辺りの様子を伺う。
部屋周辺にはまだ人が活動している様子はない。まだ誰も起きてないのだろう。
そこまで確認してからマイスは部屋に戻る。
どうやらルイズを起こすべき時間より、だいぶ早く起きてしまったようだった。
こんな時間にルイズを起こせば、気の短そうな彼女のことだ、おそらく癇癪が爆発するだろう。
しかし、もう一度寝るつもりにもなれない。
どうも体のほうは完全に起きてしまっている様子で、目も完全に覚めてしまっていた。
どうしたものかと考えていた時に、昨日ルイズから投げ渡された洗濯物が目に入る。
「せっかくだし、今のうちにやっておくか」
とりあえず、洗濯物をその辺に置いてあった籠へと入れてから、マイスは籠を抱えつつルイズの部屋を後にした。



しばらく後

マイスは洗濯に出てきたことを後悔し始めていた。
洗濯の場所が全くわからなかったからだ。
この学院の広さを甘く見ていた。てっきり部屋からはそんなに離れていないだろうと思っていたのだが、その辺を探してみてもそれらしいものが全く見られない。
昨日学院中を走り回った彼だったが、あの時はシエスタを見つけるのに必死だったせいで学院の構造を見ているヒマがなかった。
何より最悪だったのは慣れない場所を変に動き回ったせいで、自分の現在位置が完全にわからなくなってしまったことだ。これではルイズの部屋に帰れるかも怪しい。
誰かに道を聞くことも考えたが、辺りには人の気配がない。それ以前に自分はしゃべるのを禁止されてしまっている。
正直なところ、打つ手がない。正に八方塞の状態。

「・・・どうしよう・・・」
完全に途方にくれてしまい、マイスはつぶやいた。
せめてルイズに洗濯の場所を聞いておくんだったなぁと思うが、もはや後の祭り。
どうしたものかと頭を抱え込んだその時、廊下の曲がり角から見覚えのある人影が見えた。
そして向こうも自分に気がついたらしく、こちらへと近づいて来る。
その人影が近づいてくるにつれ、沈んでいたマイスの表情が明るくなる。
マイスには近づいてくる人影が、それこそ救いの神に見えていた。

「マイス・・・さん?」
「シエスタさん!」
そう。手に大きい籠を持ちつつマイスの前に現れたのは、学院内でも数少ない自分がしゃべることの出来る人物。シエスタその人だった。


―――――――――――――――――――――――――

「で、洗濯する場所がわからない上に、部屋への戻り方もわからなくなってしまったと」
「は、はい」
恥ずかしげに頭をかいたマイスに、シエスタはくすりと笑う。
「ふふ、気にしないでください。 これだけ広いと迷ってしまうのも仕方ないですよ。私だって最初はどこに何があるかわからなかったですし」
そういいつつ、シエスタは地面に置いていた籠を再び持ち上げた。
「私も今から洗濯に行くところだったんです。せっかくですから案内しますよ」
「本当ですか? ありがとうございます!!」
素直に喜ぶマイスの様子に、微笑みつつ洗濯場所に移動しようとしたシエスタだったが、ふと何かおもいたったように歩みを止めた。
「シエスタさん?」
「あの、案内する代わり・・・というわけではないですけど、ひとつだけお願いしたいことがあるんですがいいですか?」
「え? あ、はい。僕にできることなら」
突然のシエスタの申し出に一瞬面食らうマイスだが、断る理由もないし、何より助けてもらう以上、出来る限りのことをしようと考えていた。
「あ、ありがとうございます。―――ではその・・・」
シエスタはそこまで言ったところで少し迷うようなそぶりをみせる。
「えっと、その・・・ す、少しだけ・・・」
「?」
首をかしげるマイスの様子を見て決心が付いたのか、ぎゅっと表情を引き締め・・・



「あの、少しだけ・・・抱かせてもらっていいですか?」
予想外の言葉にマイスはおもわず目をぱちくりとさせた。




ちなみにこの後、望みどおりにマイスを抱きかかえたシエスタだったが、その抱き心地と愛らしさに、意識がしばらくあっちの世界へいってしまったようで、マイスが『洗濯の時間がなくなるから』と、静止の声をかけるまでシエスタに抱きかかえられ続けるのだった。




「それにしても、洗濯なんて引き受けてよかったんですか?」
あの後、洗濯場所にたどり着いたシエスタとマイスは、互いに洗濯の準備を始めていた。
「まあ、居候・・・っていうか使い魔としてお世話になるわけだし、これくらいの雑用は」
屈託なく語るマイスだったが、シエスタのほうは正直気が気でない。
何せ彼は幻獣なのだ。確かに知能は高いが、それだからといっていきなり家事ができるとは限らない。
それに洗濯は見た目よりも難しい。
ただ桶の水のなかに突っ込んで洗えばいいというものではない。
特に貴族の持つ衣服は上質な物が多く、扱いにくいものが多いことをシエスタは経験上よく知っていた。
もし洗濯に失敗して服を破いたりなどしたら、主人のルイズから間違いなくお叱りを受けるだろう。
彼女がそうひどい罰を下すようには思えないが、それでも彼が怒られるというのは忍びなかった。
だから、シエスタは彼がもし失敗しそうならすぐにサポートしてあげようと少しながら張り切っていた。
そう思っていたのだが・・・


「・・・なんというか・・・普通にうまいですね」
「え?そうですか?」
マイスがきょとんとした顔で聞き返すが、話しつつも手はしっかり動いている。
そのかたわらには洗い終わった洗濯物が積み上げられ、残っているのはほぼわずかだった。
最初のうちは多少のぎこちなさもあったものの、シエスタが少し手ほどきしたところ、あっさりとコツをつかんでしまったのか、ほぼ完璧に洗濯ができるようになっていた。
「マイスさんがここまで器用なんて思っていませんでしたわ。これでは教えがいがなくてつまらないくらいです」
そういいつつ、シエスタはすねたような表情でぷいとそっぽを向いた。
「す、すみません」
おもわず表情をこわばらせてしまったマイスに、変わらず不機嫌な表情なシエスタ。
どうしよう、気を悪くさせただろうかと、半ば本気でマイスが悩み始めた時、
「クスッ、冗談ですよ」
と。いたずらっぽい笑みを浮かべながら、クスクスとシエスタは笑った。
そんなシエスタの様子にからかわれたことに気がついたマイスだが、クスクスと笑い続けるシエスタを見ていると、なんとなく自分もおかしな気分になり、その口から自然に笑みがこぼれた。
そうして、1人と一匹は、しばらくの間笑い続けていた。


「あれ?シエスタ? 今日の洗濯当番ってあんただったの?」
突然後ろから聞こえてきた声にマイスとシエスタはびくっと体を震わせた。
さっと後ろを振り返れば、そこにはシエスタと同じような姿をした学院のメイドと思わしき少女が数名、似たような洗濯籠を持って立っていた。
「ロ、ローラ・・・ ど、どうかしたの?」
先ほどの会話を聞かれていたかもしれないという不安から、若干シエスタの声は上ずっている。マイスもとっさのことに思わず洗濯籠の影に隠れながら、事の成り行きを不安げに見つめている。
ローラと呼ばれた先頭に立っていた金髪の少女はそんなシエスタの言葉にふんと鼻を鳴らした。
「どうかしたもなにも、私たちも洗濯に来たに決まってるでしょ。
ほら、最近雨が多かったじゃない?そのせいで洗濯物が溜まってたみたいで。
ほら、見てよこの量! おかげで皆急に洗濯係に回されちゃってさぁ。
雨続きだったからって何もこんなに溜め込むことないでしょうに・・・」
そんな不満を言いながら少女らは籠を下ろしていく。
どうやら先ほどの会話は聞かれていなかったらしく、シエスタとマイスは内心胸をなでおろした。
「っていうか、居るのあんただけ? 何か来る途中話し声が聞こえてたんだけど?」
ローラの言葉に再びシエスタとマイスに緊張が走る。
シエスタは顔を引きつらせ、マイスはよりいっそう息を潜めて籠の影に縮こまった。
「え!? う、ううん?さっきから私ひとりだけよ? 誰かいたなんてそんなこと全然ないわよー アハハー・・・・・」
シエスタは必死で否定するが、顔色は悪いは視線は泳いでるはで怪しさ満載である。
なんかもう、マイスからみてもひどく怪しい。他のメイドたちから見ればどれだけ不審に見えることか。
「なんか怪しいわね・・・」
案の定。シエスタのあわてた様子はかえって他のメイド達に不信感を与えてしまったのか、全員不審そうな表情を浮かべている。
そんな皆の様子にさらに慌ててしまったシエスタは、思わずマイスが隠れている籠の方に視線を向けてしまう。
こっち見ちゃダメー!と内心叫びたくなるマイスだが、もはや手遅れ。それを見逃すローラでもなかった。
「・・・そこに誰かいるの?」
シエスタの顔がさらに青くなった。マイスも大きく息を呑む。
会話をしていたのがばれるのではという危機感に、両者とも緊張が高まる。
ローラが周辺のメイドたちに目配せをした。皆も何をするつもりか察したのか一斉にうなずいた。
そしてローラは洗濯籠の方へ素早く近づいていく。それを見たシエスタが慌てて駆け寄ろうとするが、他の少女らによって行く手を阻まれてしまった。
「あ! ちょ、ちょっと待って!ローラ!!」
とめようとするシエスタを無視し、置いてあった洗濯籠を勢いよく引き剥がす。
そして、その影にいたものを目にした瞬間、少女らの目が大きく見開かれた。

「モ・・・モコー(ど、どうもー)」
それは、完全に出てくるタイミングを逃し、少し恥ずかしげに愛想笑いを浮かべて手を振るマイスの姿だった。



『か―――』

「・・・・・・?」
『かわいい―――――――――!!』
言うがはやいか、少女らは一斉にマイスへと走りよる。

「なにこの子――――!かわいい――――!!」
「きゃー!!ふわふわ――――!!」
「もこもこ――――!!」
それはまさに肉食獣に群がられる哀れな子羊のごとく、マイスの姿は突如走りよってきた少女らに埋もれて見えなくなった。
「モッ!モコ―――――ッ!!??」
「ああっ!! マイスさん!? マイスさ―――――ん!!」
シエスタの制止の声もむなしく、マイスは圧倒的な女子パワーの前に、触られ、掴まれ、抱きとめられ、もみくちゃにされるのだった。



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