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ソーサリー・ゼロ第四部-03

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三六六

 マザリーニの後を追おうと席を立つと、エレオノールは驚きと非難の眼差しで君を見る。
「ちょっと、あなた! 枢機卿猊下のお言葉を聞いていなかったの!? 座りなさい!」
 エレオノールの言葉に構わず、君は枢機卿に声をかける。
 アルビオンの使者と会見するその場に、自分も立ち合わせてはくれぬか、と。
 マザリーニは君を値踏みするようにじっと見据えるが、やがて小さくうなずき
「よかろう、来たまえ。遥かなる異国の者の眼には、我らには見えぬ物が映るやもしれん」と言うと、
戸口をくぐる。
 部屋の中にいる全員の注目を浴びながら、君はマザリーニについて部屋を出ていく。

 マザリーニは廊下を大股に歩む。
 三歩ほど後についた君のほうを振り返ろうともせず、前を見たまま
「『神聖アルビオン共和国』からの使者が来たのは、これで二度めだ」と言う。
「彼らが最初に来たのは、今日の正午過ぎのことだった。カステルモール卿の報せを受けて騒然としていた宮殿内に、どこからともなく現れたのだ。
その者たちはクロムウェルから遣わされた使者を名乗り、私との会見を要求した――拒絶すれば、リュティスで起きたような好ましからぬことが、
ここでも再現されるであろう、と。使者のひとりは、アルビオン貴族議会議員のサー・ジョンストン。内乱の前に何をやっていたかは知らんが、
クロムウェルに媚びへつらって出世した愚物だとひと目でわかる、つまらん奴だ」
 君たちが来る前に何があったかを語るマザリーニは、平静をよそおってはいるが、内心の怒りといらだちを隠しきれずにいる。
「もうひとりは、奇妙な風貌の異国の男。男は、カーカバード国の軍団を率いるカルトゥーム将軍と名乗った」
 ふたたびカーカバードの名を耳にして、君の考えは混乱する。
 クロムウェルは七大蛇だけでは飽き足らず、あの無法地帯の荒くれどもや怪物の群れを、何百人もまとめて召喚したとでもいうのだろうか?
 それにしても、『カーカバード国の軍団』というのは奇妙な響きだ。
 闇の大地カーカバードはあまりに無秩序なため、いまだかつて誰の支配も受けたことがない――統治されておらぬということは、
軍が存在せぬことを意味する。
 かの大魔法使いでさえ、マンパン砦とその周辺の支配者にすぎない。
 だからこそ、大魔法使いはカーカバードの王――ゆくゆくは世界の王――となるために、持ち主に指導力と叡智を与える秘宝≪諸王の冠≫を、
アナランドから盗んだのだ。三二八へ。

三二八

「会見の場で何が話されたかを、委細もらさず語る必要もなかろう」
 マザリーニの話は続く。
「クロムウェルの言葉を伝えるのは、もっぱらジョンストンの役目だった。カルトゥームとやらは口を開こうともせず、
にやにやと不気味な笑みを浮かべるばかりだ。
ジョンストンは、昨晩ヴェルサルテイル宮殿を襲った惨劇の事は聞き及んでいるだろうか、と尋ねてきた。
私がうなずくと、奴めは得意になって、今回の件がどういったからくりなのかを説明した。
奴の言葉によれば、『神聖皇帝』――神をも恐れぬ肩書きだ!――クロムウェルは≪虚無≫の力によって、『ロバ・アル・カリイエ』のさらに向こう、
さいはての未知の国であるカーカバードとアルビオンをつなぐ≪門≫を作り出し、かの地の王と同盟を結ぶことによって、
百万の援軍を得たというのだ」
 ≪門≫という言葉を聞き、君の混乱に拍車がかかる。
 ハルケギニアの各地をつなぐ魔法の≪門≫といえば、オスマンの旧友リビングストン男爵が研究していたものが思い出される。
 しかし、男爵が作り出した≪門≫はすぐに消えてしまう不完全なものだった。
 また、どういうわけかハルケギニアとカーカバードをつないでしまうという、やっかいな代物だったようだ。
 君が遭遇したスナタ猫やバドゥ甲虫、ジブジブなど、多くのカーカバードの生き物たちがその≪門≫をくぐって、
ハルケギニアに迷い込んでしまったと考えられる。
 リビングストン男爵は死に、≪門≫の研究は途絶えたはずだが、クロムウェルはなんらかの方法で男爵の研究の成果を手に入れたのだろうか?
「そして、今度はリュティスに≪門≫を出現させ、そこから軍を送り込み、ヴェルサルテイル宮殿を壊滅させた。
攻撃の主力はカーカバード軍の先遣隊であり、彼らはクロムウェルの命令にしたがって、アルビオンを侵略した≪無能王≫に応報の罰を下した、
とジョンストンは言った」
 マザリーニの言葉に、君は目を丸くする。
 クロムウェルは二つの世界をつなぐ≪門≫だけではなく、男爵が望んでいた本来の形の≪門≫をも作り出したということになる。
 君は、≪レコン・キスタ≫の首魁の底知れぬ魔力に驚嘆し、恐怖すら覚える。
 彼が≪虚無≫の系統の使い手だという噂も、まんざら嘘ではないのかもしれない。
「使者たちがこの王宮内に突如現れたのも、そうやって≪門≫を使ったからだ。敵はいつでも望む時に、望むだけの兵力で、
このトリスタニアに攻め入ることができる。
≪門≫という未知の魔法兵器の前には、城壁も魔法衛士隊も役に立たない。楽に勝てるはずだった≪レコン・キスタ≫討伐の戦が、
まさかこのような形勢になろうとは……」
 そう言って、マザリーニは肩を落とす。
 話を聞いた君は、かつてニューカッスルの城でルイズが口にした、≪門≫についての言葉を思い出す。
「使い方しだいでは戦争のやり方を変える恐ろしい武器にもなるわ」
「敵の城のなかに直接、暗殺者を送り込めるのよ。大きな≪門≫を作れば、軍隊をまるごと送ることだって……」
 あの時の君は、ルイズの柔軟な発想に関心こそしたが、彼女の危惧するような事態はありえぬ事だと思っていた。
 しかし、それは現実となった。
 これこそが、風大蛇の言っていた『百万の軍勢でも千フィートの城壁でも防げぬ、まったく新しい武器』に違いない。九九へ。

九九

 マザリーニは足を止め、部屋を出てから初めて君のほうへと振り返る。
 鋭い目つきで君をじっと見つめながら、
「君が遥かな異国からやって来たメイジだということは、知っている」と告げる。
 君はぎょっとしてしらを切ろうとするが、マザリーニには通用しない。
「パリー卿から聞いたのだ。君はウェールズ皇太子殿下と知り合って、殿下にみずからの身の上を明かしたそうだな
――≪四大系統≫とも≪先住≫ともまったく異なった、遠い異国の奇妙な魔法の使い手だと。
クロムウェルの邪悪なたくらみを知った皇太子殿下は、君の助力を得ようと、腹心のパリー卿を遣わしたのだ。
異国の知恵と魔法で、あの≪門≫をどうにかできるのではないかと、一縷の望みを託して」
 そこまで言って、君の答えを待つ。
 君は枢機卿に詫び、自分にとっても≪門≫はまったく未知の魔法であり、打つ手がないと説明する。
 君の言葉にいつわりがないことを確信したマザリーニは、小さく溜息を漏らすと、再び歩みだす。
「とにかく、その眼で実際に≪門≫を見てみたまえ。何か得られることがあるかもしれん。クロムウェルが我らにのませようとしている、
悪辣な条件については、のちほど話そう……さあ、ここだ」
 マザリーニは中庭へと通じる戸口をくぐり、君もそれに続く。

 戸口の向こうの光景は、心騒がせられるものだ。
 そこは広々とした中庭で、日没から間もない薄暗がりのなか、宮殿の衛兵や従僕たちが集まり、人垣を作っている。
 彼らが遠巻きに見守っているのは、不気味な六人連れと、その背後にある物――うっすらと銀色に輝く、平べったい半円形の何かだ。
 表面を覆った光がちらちらと揺れるさまは、池の水面(みなも)が持ち上がり、壁を作っているかのように見える。
 それは高さ二十五フィート、幅二十フィートにも達する巨大なものであり、その大きさと形は、何かを連想させる……そう、まるで城門だ。
 あれこそが、クロムウェルの起死回生の兵器である≪門≫に違いない!
 ≪門≫と六人連れがよく見える場所へと進み出るか(三八四へ)、それとも、姿をさらさぬよう周囲を取り巻く人々にまぎれ込むか(三四六へ)?

三四六

 君は人垣に混ざると、目を凝らし、耳を澄ませる。

 ≪門≫の正面に立つのは、不安げな表情できょろきょろと周囲を見回す中年男だ。
 きらびやかな服装とマントを見るに、彼がアルビオンからの正使なのだろう。
 マザリーニの話に出てきたサー・ジョンストンその人なのではないかと、君は見当をつける。
 彼の隣に立つのは、がっしりとした体格の初老の男だが、顔つきも服装も異国風であり、ハルケギニアの人間には見えない。
 ごわごわした黒髪と髭に覆われた顔は浅黒く、笑みの形に歪んだ口元からは、黄ばみ黒ずんだ歯が覗いている。
 さっきの貴族がジョンストンだとすれば、この男はカルトゥーム将軍だろうか?
 他の四人は護衛のようだが、よく見れば、異国人どころか人間ですらない。
 背の低いほうのふたりは黒エルフだ――つり上がった眼ととがった耳、灰色の肌を見れば間違えようがない。
 革鎧に身を固め、腰に三日月刀を差した彼らは、互いにひそひそと耳打ちを交わしている。
 残りのふたりは、六フィートをゆうに越す巨体を鋼の鎧で包んだ、ごつごつした見た目の人間もどきの怪物、トロールだ。
 ハルケギニアの同名の怪物にくらべればずっと小さいが、粗暴で残虐なことではひけをとらない。
 トロールたちは周囲のざわめきを気にした様子もなく、石像のようにじっと立っている。
 欲望のままに動く、トロールの一般的な性質を考えれば驚くべきことであり、彼らは、本格的な兵隊としての教練を受けているのかもしれない。
 トロールのひとりは細長い麻袋を肩にかついでいるが、中には何か生き物が入っているらしく、時おりもがくような動きを見せる。

 マザリーニは護衛の『亜人』たちを見てもおびえず、アルビオンからの使者の前に堂々と進み出る。
「サー・ジョンストン! これはいったい、何のおつもりか!? 回答の期限まで七日あると申されたばかりではないか!」
 マザリーニの口からほとばしったのは、怒りの声だ。
 サー・ジョンストンと呼ばれた男は、その剣幕にひるみつつも、作り笑いを浮かべる。
「いやいや、我らは捕虜の引渡しに来ただけですぞ、枢機卿猊下。神聖皇帝陛下の慈悲と寛大さを知らしめるために来たのです」
 ジョンストンは猫なで声を出す。
「しかし、これを見られれば、トリステイン宮廷の総意はまとまり、回答もすみやかかつ賢明なものとなりましょう……」
 口調こそへりくだっているが、内心の嘲笑と侮蔑は明らかだ。
「さて、互いに多忙の身ゆえ、用件は手早く済ませてしまいましょうぞ。ド・ポワチエ将軍をお渡しいたしましょう。さあ、カルトゥーム殿!」
 ジョンストンに声をかけられた黒髭の男は、麻袋をかついだトロールのほうを振り返ると、
「降ろせ!」と胴間声を張り上げる。
 トロールは一声うなると麻袋を乱暴に投げ出し、口を縛った紐を力まかせに引きちぎる。
 袋の中から何かが這い出してくる……五五八へ。

五五八

 麻袋から出てきたのは、立派な髭をたくわえた中年の男――だったもの、だ。
 その顔は青ざめ、眼はうつろ、服も皮膚もいたる所が切り刻まれ、乾いた血がこびりついている。
 首はなかば断ち切られており、彼がもはや生きてはおらぬのは明らかだ。
 それにもかかわらず、男はゆっくりと立ち上がる。
 周囲を取り巻く衛兵や従僕たちの間から、押し殺した悲鳴が上がる。
「あ、あれはド・ポワチエ将軍閣下だ」
 君の隣に立つ衛兵が、おびえた声を出す。
 君はその名を聞いて、動く死体が何者かを知る――トリステインがアルビオンに送り込んだ軍団の司令官だ。
「では、アルビオン遠征軍は敗れたのか? それに、将軍はなぜ動けるんだ? どう見ても死んでいるのに……おお、始祖よ!」
 衛兵は恐怖に震えるが、君は落ち着き払っている。
 ≪旧世界≫の危険な地域では、生ける屍のゾンビーやぎくしゃくと動く骸骨男に出くわすのも、そう珍しいことではない。
 邪悪な黒魔術によってよみがえったこれらの怪物は、己の意思を持たぬ最も下等な≪不死≫であり、衛兵や奴隷として主人に仕えるのだ。
 だが、このハルケギニアでは事情が違う。
 ゾンビーと化した将軍を目にしてマザリーニは絶句し、杖を取り落とす。
 死者を操る妖術は、この世界の魔法使いたちにとっては常識をくつがえす驚異なのだ。
「神聖皇帝陛下の偉大なる≪虚無≫の御業をもってすれば、トリステインの軍勢が不法に居座るシティ・オブ・サウスゴータに≪門≫を開くなど、
たやすい事」
 酒に酔ったかのようにふらつくゾンビーをちらちらと不安げに見やりながら、ジョンストンが口を開く。
「本来は生け捕りにする予定だったのですが、カルトゥーム将軍の兵たちが血気に逸りましてな……」
 ジョンストンは引きつった笑みを浮かべる。
「ガリア軍も敗走し、アルビオンにおける戦の勝敗は明らか。枢機卿、我らの要求への回答は、急がれたほうが賢明ですぞ。
遅れれば、司令官を失って右往左往しておるトリステインの兵どもが皆、このような『捕虜』にならぬとも限りませんからな。
≪虚無≫の力で死してなお魂を縛りつけられ、始祖の御許へ旅立てぬというのは、たいへんな苦痛でしょうな」
 そう言ってジョンストンが笑うと、カルトゥームもくぐもった笑いを漏らす。
「死者をはずかしめるなど……冒涜……恥知らずな脅しを……!」
 マザリーニは言い返そうとするが、怒りと驚きのあまり、まともに口をきけずにいる。

 君はこのままなりゆきを見守るか(三三九へ)、それとも進み出て、ゾンビーなど恐れることはないと声を上げるか(二九八へ)?
 術を使うこともできる。

 YAP・六一一へ
 ZIC・七八八へ
 DIM・六三八へ
 TEL・七五七へ
 MAG・六八六へ


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