あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

PERSONA-ZERO -04 後編


「……ちっ、もうやられちまったのかい」
 爆音と地鳴りと、そしてゴーレムと自分の繋がりが絶たれたことを感じてフーケは舌打ちした。
「今の音は『アレ』か? だったら少しは持ったほうか……まあいいさ、目的の物は見つかったしね」
 フーケの手には一枚の鏡が握られている。
 額や装飾がところどころ欠けている古ぼけた鏡だが、その鏡面だけは曇り一つなく美しく輝いている。
 よく見ると、まっすぐきれいに割った跡のような繋ぎ目が一筋入っていた。
 元々一つだったものを分けたのだろうか。それとも二つを組み合わせて使うものなのだろうか。
 オスマンはこれを『神魔の鏡』と呼んでいた。
 それは奇跡を具現化した物であり、正しい使い方で使えば神にも悪魔にもなれるという。
「問題はその使い方だけどね……まあ、今はさっさとオサラバする方が先か」
 ルイズと番長がここまで飛んでくる手段を得ていたとしても、到達するまではもう少しかかるはずだ。
 その間に身を隠し気配を殺してしまえば、彼らに自分を見つける手段はない。
 よもやロングビルが『土くれ』のフーケだとは気付いてもいまい。
 後はなんとか鏡の使い方を聞き出し、頃合いを見て学院長秘書を辞職すれば……いや、長居は危険か?
 フーケがそう考えながら、自ら開けた壁の穴へ向かおうとした時だった。
「そこまでだ! 『土くれ』のフーケ!」
 今まさに向かおうとしていた方向から意外な声がかかる。
「なっ……!?」
 もうアイツらが? まさか、早すぎる!
 フーケがそう驚き、薄暗い宝物庫で目を凝らす。しかし、そこにいたのは。
「もう逃げられないぞ! 観念しろ!」
 ギーシュであった。
 ギーシュはフーケに杖を突き付け、行く手を阻むように壁の穴の前で左手を広げている。
 その腕にはマントがひるがえっていた。
「……はっ、驚かせるんじゃないよ」
「なに?」
 ギーシュが凄みを利かせようとするが、フーケはギーシュを見てもいない。
 やれやれと肩をすくめると、フーケは自分の杖を左右に振った。
「むやみに杖を人に向けるもんじゃないとママに教わらなかったかい坊や」
「なっ……」
 今の事実を客観的かつ単純に語るとこうだ。
 フーケがギーシュを馬鹿にした。見下した。実力のある者が、そうでない者を言う様に。
 当たり前だ、上位にいる者がより下位の者をそう評するのは。フーケはただそれにフーケなりの味付けをしただけだ。
 ―――いつだったか、ギーシュがルイズにそうしたように。
「ふ、ふざけるなっ!」
 だが、ギーシュは激昂した。それも当たり前だった。
 ギーシュがバラを模した杖を振るう。
 揺れ落ちた花弁が一枚、床につくと同時に淡い光を伴って、甲冑を身にまとった戦乙女の姿へ変化する。
 『土』系統のメイジ、ギーシュが得意とするのは『錬金』。それが生み出した青銅のゴーレム、『ワルキューレ』である。
「いけ『ワルキューレ』! フーケを捕えろ!」
 フーケはギーシュを軽く見て、魔法の詠唱準備にすら入っていない。
 実力は遥か上といえど、盗賊メイジなど魔法がなければただの人、詠唱させないまま押しきれば捕えられる。
 しかし、そのギーシュの目論見をフーケはあっさりと裏切って見せた。
「ふん、甘いんだよ」
 大振りの戦乙女の攻撃を軽くかわし足を引っかける。
 バランスを崩した『ワルキューレ』の肩を掴み、前に引き倒した。
 床に叩きつけられ、拉げ割れた頭部に空洞が見える。
「舐めてもらっちゃ困る。坊やとは潜ってきた修羅場が違うんだよ」
「くそっ……」
「さて、お遊びはここまで。私は退散させてもらうよ」
 フーケが足早に近づいてくる。目的地は壁の穴。ギーシュは進行方向にいるだけだ。
 あくまでフーケはギーシュなど眼中にないらしい。
(逃がしちゃダメだ。逃がしちゃダメだ。逃がしちゃダメだ逃がしちゃダメだ逃がしちゃダメだ!)
 しかしどうする? 『手持ち』はフーケに通じない。
 フーケは聞くところによるとトライアングルメイジらしい。戦闘経験もギーシュとは雲泥の差。
 油断されていてさえ、ギーシュの杖はフーケに届かない。
 先程の動きから見て、『ワルキューレ』1体を7体にしたところでフーケには通じないだろう。
 だが、それでも屈せない。貴族として。ここを守り得る者の一人として。
 いつか、立とうと思っていた。メイジとして。貴族として。『戦場』に。『戦士』として。『騎士』として。
 いつかっていつだ? 『いつか』は『今』だ。
「まだだっ!」
 杖を握り『立つ』。ギーシュが一度に作り出せる『ワルキューレ』7体のうち、5体分の魔力を集中させた。
「なんだって!?」
 フーケが思わず後ずさる。
 見上げると、そこには宝物庫の天井にも届かんばかりの『ワルキューレ』がいた。
 その姿には先ほどの『ワルキューレ』のような優雅さは殆どない。ただシルエットのみが戦乙女のイビツな姿であったが
 今までにない威圧感がある。5体分のわりに小さいが、その分質量があるのだろうか。
 流石にコイツを体術ではどうこうできない。
 慌ててフーケが杖を振るうと、そこに『ワルキューレ』より一回り小さなゴーレムが出現した。
「舐めるなと言った!」
 『青銅』対『土くれ』。激突。激しく組み合う。
 体勢はわずかに『青銅』が有利だ。
「くっ……しまった」
 魔力を消耗し過ぎた。ゴーレムに自律行動能力と自己再生能力を付与するには多大な魔力を必要とする。
 実際の戦闘での再生にも随分消耗させられた。こうして遠隔操作のゴーレムにしても出力が足りない。
「このっ……レディは優しく扱うようにって学校で習わなかったのかい!」
「生憎この『ワルキューレ』は乙女でね! 乙女に押し倒されるなんてゴーレム冥利に尽きるだろうさ!」
「くっ……上手いこと言ったつもりかい!」
 ミシミシと双方のゴーレムが軋む音が聞こえる。その重圧に耐えきれず、床に亀裂が入る。
 正直見くびっていた。この少年の意思を見誤っていた。
 あわよくばヒーローに。そんな程度だと思っていた。
 無理もない。事実、先ほどまでのギーシュの心の内に、それはわずかながら確かにあったのだから。
「く……そ……っ!」
 だが、フーケにも引けない理由がある。犯罪に手を染めても尚、守りたいものがある。
 意地と意思のぶつかり合い。覚悟と矜持のせめぎ合い。
 数秒でしかないそれが、永遠にも感じ始められた頃。
「ギーシュ!」
 声が2人に時間を取り戻させた。
「遅刻だよルイズ……レディが時間にルーズなのは、感心……しないな……っ!」
「ギーシュ! なんでアンタがここに!?」
「は、話は後だ……早くフーケを……っ!」
「アイツがフーケ?」
 キュルケがゴーレム2体の向こうにいるメイジの姿を確認する。番長とタバサもその場に駆けつけていた。
 フーケの顔は深くかぶられたフードに隠れてよく見えない。だがどこかで見たことがあるような気もする。
「ここまでよフーケ! もう逃げられないわ。大人しく観念しなさい!」
「はんっ……それはさっき聞いたよ!」
 その時、2体のゴーレムに限界が訪れた。
 組み合った腕から全身に亀裂が走り、物理法則を無視するように粉々に砕け散る。
「ちっ……!」
 フーケが5人から距離をとるように後方へ飛ぶ。だが、そちらに出口はない。
「なら言い方を変えてあげる。終わりよフーケ。終わり、お終い、フィナーレよ」
「そうでもないわ」
 そう言ってニヤリと笑うと、フーケは杖の先を5人に向けた。
「詠唱は既に完成している」
「!」
 魔法はあらかしめ呪文の詠唱を終了させておけば、いつでも発動できる。
 この状況で使う魔法といえば、攻撃的なもので間違いないだろう。
「動くな……この魔法は石つぶてを飛ばすだけの単純なものだけど、その速さはマスケット以上。
 防御のための魔法は間に合わない。威力は低いけどその分魔力の消耗は少ない。
 それに威力が低いと言っても、急所に当たれば怪我じゃすまないよ」
 マスケット銃。それはこの世界における銃のことである。
 番長の世界の銃より性能は劣るものの、至近距離で撃たれれば避けきれるものではない。
「ハ、ハッタリだわ」
「そう思うなら試してみればいい。言っておくけど範囲は広いよ。みんな巻き添えに死ぬかい?」
 しかし、その言葉を無視して動く者がいた。
「……私も詠唱を完成している」
 タバサだ。タバサは杖をフーケに向けて睨みつけている。
「はん、それこそハッタリだね」
「……試してみる?」
「…………」
 その場に一抹の緊張が走る。誰も動けない。空気が鋭利な氷柱のように冷たく肌を刺激する。
 しかし、その空気を氷解させる者がいた。
「『ワルキューレ』!」
「な……っ!」
 突如、フーケの後ろで誰かが立ち上がった。
 いや、誰かではない。何か。『青銅』のゴーレム、『ワルキューレ』だ。
 ギーシュが杖を振るうと、『ワルキューレ』はフーケを羽交い絞め、杖を持つ手を捻り上げる。
「バカな! 『触媒』になる物はなかったはずだよ!」
「悪いけど、ひっかけさせてもらった。状況に助けられたとは言え、魔法勝負で五分に持ち込めるとは思ってなかったからね」
 見ると、『ワルキューレ』の顔は歪み、砕け、中の空洞が見えていた。
「まさか……最初から!?」
「いや、『ワルキューレ』がそこにいたのは偶然さ。ただ、もう1体操作できる魔力を残しておいた。それだけさ」
「……! くそっ!」
 やられた。ただのボンボンだと思っていた少年に、戦術さえも上まわられた。またしても見くびった。
「早く、フーケを……長くは持たない!」
 その声にいち早く反応したのは番長だ。
 短刀を抜き、距離をつめるために駆け出す。
「動くなと言ったよ!」
 それに応じたフーケが無理矢理手首を動かし、杖を番長に向ける。
 激痛が走ったが、フーケにそれを感じている余裕はなかった。
「……!」
「バンチョー!」
 弾丸並の速さで石つぶてが番長に襲いかかる。
 タバサが魔法を発動させようとしたが、範囲内に番長がいることに気づき急停止した。
 キュルケが息をのむ。
 ルイズの悲鳴のような声が聞こえる。
 ―――だが。
 石つぶてが番長の五体を貫かんとした瞬間。それは跳ね返るように急激に、その進行方向を変えた。
 『マカラカーン』、全ての魔法攻撃を反射するペルソナスキルである。
「―――なっ」
 跳ね返った自らの魔法に襲われたフーケは、出口とは反対の壁まで吹っ飛んだ。
 その衝撃で、フーケにしがみついていた『ワルキューレ』は今度こそ粉々になった。
 さらに、フーケの懐に入れてあった『神魔の鏡』が床にこぼれ落ちた。
 とっさにフーケが手を伸ばす。しかし、番長の足元まで転がっていったのを見て諦めた。
「くそ……『土』系統は『反射』できないんじゃなかったのかい……」
 思わずフーケがそう言葉をこぼした。
 番長がその言葉に反応するが、フーケは傷ついた体で即座に次の行動へ移る。
「ち……この私が獲物もつかめずに逃げ出すことになるなんてね……」
 そう言って懐から『何か』を取り出した。
(あれは……?)
 番長が見覚えのあるそれに目を見張る。
「この状況で逃げられると思っているの? 往生際が悪いわよ」
 ルイズがフーケに杖を向ける。いまだにルイズは自らの魔力を制御しきれていないが
 今のフーケにはそれでも驚異に見えるだろう。
「ふん……だからアンタ達はひよっこなんだよ。自分達の知らない物は『無い』ものかい? 違うだろう」
「……気を付けて。……アレ、なにか変な力を持ってる」
 そう言ってタバサがフーケの右手を指差す。
 その言葉に生徒達が緊張するのをフーケは見逃さなかった。
 まだ活路―――『神魔の鏡』を手に入れつつ脱出する方法は残されている。
「さあて……なんだろうね? ヘタしたらここにいる全員が無事じゃすまないかもよ?」
 ハッタリだ。そんなことはあり得ない……いや、あり得るかも知れない。
 二転三転する状況に学生達が戸惑いを覚える。
 人間が未知に遭遇した時、湧き上がる感情は好奇と恐怖。アレはなんだろう、もしかしたら危険な物かもしれない。
 切り札として持っていたとしても、自らをも傷つける物だとしたら、今まで使わなかったことにも一応の説明がつく。
「させるかっ!」
 だが番長は動いた。
 番長はアレを知っている。それの効果を知っている。しかしそれはこの場には無い筈の物だった。
 八十稲羽町を離れる前、自分たちが戦う為に必要だった武器・アイテム類はある人物に預けていた。
 中には必要だった人に分け与えたものもあるが、
 それらの中には現実世界に持ち込むにはいろんな意味で危険な物もあったからだ。
 だから、それらは全て『TVの中』で管理してもらうことにしたのだ。
 なのに、アレが何故ここに―――?
「……ちいっ!」
 番長がフーケに詰め寄る。
 まずい、コイツは何をしでかすかわからない。
 フーケはそう判断し、瞬時に思考を切り替えた。『神魔の鏡』は諦めるしかない。
 かくして番長の手がフーケに届く寸前、その体は眩い光とともにその姿を消した。
「今のは……」
 ルイズは今の光景に見覚えがあった。
 主観と客観の違いはあれど、今の力は自分と番長、
 そしてシュヴルーズが爆発寸前の教室内から脱出したものと同じと見て間違いない。
「バンチョー、今のは」
「ああ……すまない。逃げられた」
 脱出スキル『トラエスト』と同じ効果をもつアイテム。その名を『カエレール』と言う。
 オヤジギャク満開のネーミングだがこの際気にしないでおこう。
「ま、これが無事だっただけで良しとしましょ」
 そう言って、キュルケが番長の足元にあった鏡を拾い上げる。
「これがフーケが狙ってた獲物?」
「多分そうでしょ」
 そうルイズに答えながら、キュルケが【ディテクトマジック】をかける。
 次の瞬間、キュルケの目が驚きに見開かれた。
「な、なにこれ……凄い魔力……魔力とはちょっと違うかも……でも物凄い質量と密度」
 キュルケにはそれ以上のことはわからない。
 だが、それだけでこの鏡がただのマジックアイテムでないことは想像できた。
「ん……? なにか書いてあるわね」
 鏡を裏返すと、そこには明らかに後から誰かが書いたと思われる文字のようなものがあった。
「ん~? なんだろ……見たこともない文字だわね」
 ルイズとタバサも覗き込む、それは明らかにこの国の言語体系にはない文字だった。
 最後に番長がそれを見て、驚きに息をのんだ。
「これは……」
 そこには、子供が書いたようなたどたどしい『平仮名』で、こう書かれていた。

 ―――『そのむら まい』



「結局、一番おいしいトコロは君に持っていかれたな」
 ギーシュが自嘲気味に呟く。
 妬んでいるわけではない。その証拠にギーシュの顔はやり遂げたような清々しい表情をしている。
「そうでもないさ」
 番長は鏡に書かれた『名前』が気になったが、いったん置いておくことにした。
 まずは報告が先だ。そろそろ騒ぎを聞きつけて誰かやってくるだろう。
 これについてはオスマンがなにか知っているかもしれない。
「おま……ミスタ・グラモンがいなければ間に合わなかっただろう。さっきの機転にも助けられた。
 ルイズの素早い行動。キュルケの作戦。タバサの魔法と使い魔。ミスタ・グラモンのゴーレム。
 そのどれが欠けても駄目だった。その中でも一番の功労者は君だよ」
 番長は思い出していた。
 互いに足りないものを補い合い、助け合い、ともに戦った仲間たちの姿を。
「そうよ、見なおしたわギーシュ。もっと胸をはりなさい。いつものナルシストなアンタらしくないわよ」
 そう言って、キュルケがギーシュの背中を叩く。
「そ、そうかな……」
 この男は。この番長という男は。
 なぜこの期に及んでそんなことが言えるのだ。しかも今、彼は自分のことを敬称で呼んだ。
 敬称? 敬意を払ったというのか。彼が、自分に。
 憎しみと怒りに満ちた目で自分を見ていたのは、つい先ほどの事だというのに。
「……一つ聞きたい」
 ギーシュは番長のその瞳をまっすぐに見つめた。
「なぜあの時、決闘を断った? 僕は見たぞ。あの巨大なゴーレムを消し去った魔法。
 あんなものがあるなら、僕を打ち負かすのは難しくなかったはずだろう」
「ギーシュ! アンタまだそんなこと……!」
 詰め寄ろうとしたルイズを番長が手で制した。
「その問いにはもう答えたはずだよ。力でなんでも解決しようとするのは好きじゃない。
 きっとそれは、ミスタ・グラモンがフーケに立ち向かった理由と同じはずだ」
 その言葉に、ギーシュの心にその時の気持ちが蘇る。
 負けたくなかった。屈したくなかった。
 力で及ばないことはわかっていた。それでも立ち向かった。
 それは何故か。守りたかったからだ。明らかな犯罪を犯す彼女を見過ごしたくなかったからだ。
 力では解決できない。しかしそれでも立ち向かわなければならない意思がそこにあった。
 ―――同じだ。言葉は真逆でも、言わんとすることは同じものだ。
 すなわち、『力だけが全てではない』と。
「……ギーシュでいい。君に敬称で呼ばれると、なんだか恥ずかしい」
 そう気づいた時、ギーシュは自然と番長に手を差し出した。
「わかったギーシュ。俺のことは番長と呼んでくれ」
 番長がその手を握り返す。
 2人がその手を離すとギーシュはルイズに向きなおり、その頭を深々と下げた。
「ちょ……ギーシュ?」
「すまなかったルイズ。僕はあの時頭に血が上っていたとはいえ、何も知らずに君を侮辱した。許して欲しい」
「……な、なによそんなこと……別にいいわよ。それより、謝るべき人は他にいるんじゃない?」
「ああ、わかってる。シエスタと言ったっけ、あのメイドには後で謝っておくよ。それから、不義理した2人の女性にもね」
「そう、ならいいわ。私は別に気にしてないから」
「そうか、ありがとうルイズ」
 ルイズは照れくさそうに、そっぽを向いている。
 その光景を、微笑ましそうに番長は見つめていた。
「それから……バンチョー、君にも謝っておかなければならないな。随分失礼な事を言った」
「いや、それは俺も同じだよ。お互い様だ」

 下の方がなにか騒がしい。どうやら騒ぎを聞きつけた警備員や教師が集まってきたようだ。
 野次馬根性の生徒達の姿もちらほら見かけられる。
「まったく、今更ノコノコ集まって……遅すぎだっていうのよ」
 キュルケが下を覗き込みながら、そう悪態づいた。
 タバサは全てが終わってすぐに本を読み始めている。この薄明かりしかない中でよく読めるものだ。
「さて、そろそろ下に降りようか」
 番長がそう宣言する。壁の外ではシルフィードが既に待機していた。
「これからまだ忙しくなるよ。いろいろ聞かれるだろうし」
 タバサ以外の3人が「うげ~」とウンザリするような顔をした。
 深夜の乱闘騒ぎで疲労もピーク。体が睡眠を求めている。
 だが全員が、どこかやり遂げたような笑顔を浮かべていた。




新着情報

取得中です。