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第三話 ガンダールヴ 後編


第三話 ガンダールヴ 後編


ヴェストリの広場で始まった決闘は、才人からクラースに代わって続行された
両者は相手の出方を見るように、間合いをとって構えている
「(まさか、異国のメイジを相手にするなんて…あっちが相手なら楽勝だったのに。)」
口では勇ましい事を言っていたが、ギーシュは内心怯えていた…クラースと戦う事に
異国のメイジなら、自分達の知らない魔法を使ってくるかもしれない
そう、エルフ達が使う先住魔法のような、恐ろしい力を…
「(お、怯えるな僕…さっき言ったとおり、見せてやるんだ…僕の力を!!)」
自身を奮い立たせると、ギーシュは杖を振るった
指示を受けたワルキューレが、クラースに向かって動き出す
「(どんなに凄いメイジでも、詠唱が出来なければ…。)」
詠唱をさせない為の攻撃…ワルキューレの腕がクラース目掛けて振り下ろされる
だが、クラースはそれを難なく避けた

「せぇい!!」

後ろに回りこむと、持っている本の角でワルキューレの首を狙った
ゴキンという音と共に首が折れ、頭部が地面に転がる
「え…ええっ!?」
ギーシュは驚いた…驚いて目の前の光景に自身を疑った
何せ、自分のワルキューレが魔法ではなく、本で壊されたのだから
観客達もまさか、本なんかで…と騒いでいる
「脆いな、これくらいで壊れるとは…これの材質は青銅か?」
なら、仕方ないな…と呟くと、また本を振るってワルキューレを吹き飛ばした
地面に倒れるワルキューレだが、すぐに立ち上がって襲い掛かってくる

「たぁ、やっ、はっ!!」

その後も、クラースは向かってくるワルキューレに攻撃を繰り返す
ワルキューレの間接を狙って本を振るい、徐々に壊していく

「す、すげぇ…あのメイジ、本だけで青銅のゴーレムと戦ってる…。」
「つーか、本で戦うのもそうだが、それで青銅を壊すってどうなんだよ。」
「…本は武器じゃない。」

クラースの異様な戦いぶりに、周囲は別の意味で感心するしかなかった
ある程度の攻撃を終え、クラースはワルキューレから離れる
散々クラースに本で殴られたワルキューレは、本来の姿の大部分を失っていた
「き、君は本当にメイジなのか、メイジならメイジらしく、魔法を使ったらどうなんだ!!」
杖をクラースに向かって突き出しながら、ギーシュが叫ぶ
自分のワルキューレを凄いとはいえ、本で壊されるのが堪らなかったのだ
「まあ、確かに本ばかりでは決着がいかんからな…では、これを使わせてもらおう。」
クラースはワルキューレに向かって右手を構え、詠唱を始める
すると、彼の右手に光の球体が現れた
「……吹き飛べ、バースト!!!」
詠唱が終わり、クラースはワルキューレに向かって呪文…バーストを唱えた
これは自分の子孫がいる未来世界で覚えた、クラース自身が使える唯一の攻撃呪文だ
光弾はワルキューレに直撃し、バラバラに破壊する
『おお~~~~~!!!!』
ようやく魔法らしいもの…それも、見た事も無い術に観客に歓声が上がる
ギーシュも少しばかり驚いたが、すぐに平静を装った
「や、やっと本気を出したようだね…中々の魔法じゃないか。」
「それはどうも。」
まあ、これは自分の本気にも満たないのだが…面倒なので、クラースはこれだけしか言わなかった
「(あれが異国の魔法か…あれぐらいなら、恐れる事はないな。)」
あれがクラースの限界に違いない…と勝手に思い込むギーシュ
彼は一気に勝負を決めるべく、杖を振るって先端にある造花のバラの花びらを散らした
すると、六枚の花びらが、武装した六体のゴーレムへと変貌する

「ほぅ、ゴーレムはこう作っていたのか…本当に興味深いな、此処の魔法は。」
「君相手には手加減はいらないようだからね…此処からは本気でやらせてうよ。」
ギーシュが指示を出すと、ワルキューレは前後二体ずつの三列に並ぶ
後衛は自分の護衛に回し、前衛の三体をクラースに差し向ける

「行け、僕のワルキューレ達…ハルケギニアのメイジの力を思い知らせるんだ!!!」

その言葉と共に、ゆっくりと動いていたワルキューレ達の動きが早まった
持っている武器をクラースに向け、一斉に襲い掛かる
「おっと。」
クラースは三体の間を潜り抜け、攻撃を避ける
即座に一体が追撃を行うが、クラースはこれを回避
続けて二体が襲ってくるが、それもまた紙一重でかわした
「(うむ…これは…。)」
クラースはワルキューレを避けながら考えた…今の自分の体の変化に
「(今日は調子が良いのだろうか…何時もより素早くなった気がする。)」
決闘が始まってからずっと、クラースはこの調子だった
ワルキューレ達の動きも遅いように見え、普段よりも早く回避行動がとれた
何故…そう考えているクラースの左手に刻まれたルーンは、淡い光を放っている
「フッ…どうやら、避けるのに精一杯で、魔法が使えないようだね。」
そんなクラースの疑問など知らないギーシュは、余裕の笑みを浮かべている
今自分が優勢だと思っている為、普段の調子に戻ってきた
「クラース~~~、遊んでないでさっさとやっつけなさいよ!!」
後ろから、ルイズが少し痺れを切らしながらクラースに向かって叫んだ
彼が本気を出せば、この程度は楽勝の筈だ
「おっしゃる通りだ…そろそろ私も本気でいかせてもらおうか。」
クラースはこれ以上の回避を止めると、その場に踏みとどまった
構えを取って、詠唱を始めようとするが…
「魔法を使うつもりか…そうはさせないよ!!」
その前に決着を付ける…ギーシュはクラースに向けて杖を振るった
ワルキューレ達は一斉に、クラースに向かって攻撃する

「はっ!!!」

が、クラースは大きく振りかぶって本を振るい、ワルキューレ達を攻撃する
本の角を受け、ワルキューレ達はそれぞれ三方に散らばる
「なっ…。」
「邪魔をするのは無粋だな…これから私の本領を見せてやろうと言うのに。」
クラースは持っている本を開き、ある程度ページを捲らせた
「き…君の本領だって!?」
「そうだ…先ほど見せたあれは、私の力のほんの一部分にしか過ぎん。」
ギーシュの問いに答えながら、ページをパラパラと捲っていくクラース
そして、何ページ目かを開くと、目をカッと見開く

「見せてやろう、奇跡の体系…召還術!!」

その言葉と同時に、クラースの周囲に魔方陣が出現する
魔方陣から溢れる光がクラースと、周囲を照らした

何だこれ…これは魔法なのか?こんな魔法見た事ないぞ…
ギーシュは光り輝く魔方陣と、その中央にいるクラースに見入っていた

「何だ、何だ!?」
「何が始まるんだ!?」

周囲からも戸惑いの声が聞こえる…彼等もこれが何なのかを知らない
それを知っている才人とルイズだけが、黙って見守っている

「我が名はクラース・F・レスター…指輪の契約により、この儀式を司りし者なり」

そんな彼等に構わず、クラースは詠唱を開始した
彼の口から発せられる言葉がギーシュに…そして周囲の耳に聞こえてくる

「我が契約に答え、我に秘術を与えよ…我が身に御身と、知恵と、栄えあり」

淡々と、クラースは詠唱を続け…それに呼応するように魔方陣は輝きを強める
見たことも無い光景に放心し続けていたギーシュだが、顔を振るって正気を保つ
そうだ、攻撃…攻撃しなければ

「こ、こんなの見せ掛けだ…い、行け、ワルキューレ!!!」

ギーシュは杖を振るい、前衛の3体をクラースに向けてけし掛けた
三体のワルキューレは、クラースに向かって行く…
が、その判断は少しばかり遅かった

「出でよ、風を司りし者…三人の乙女達よ…」

武器をクラースに向け、接近してくる三体のワルキューレ達…
だが、それに恐れる事無く、クラースは詠唱を続ける
そして、ワルキューレ達がすぐ傍まで来た時…彼は目を見開いた

「契約は完了せり…シルフ!!!」

風の精霊の名を叫んだ時…クラースを中心に竜巻が発生する
その竜巻に阻まれ、ギーシュのワルキューレは弾かれた
「うわっ…な、何だ!?」
竜巻によって砂煙が舞い、観客達のマントがはためく…
自分が知る風魔法より強い突風に、吹き飛ばされないようにギーシュはクラースを見る
しかし、凄まじい竜巻で中にいる筈のクラースの姿は見えない
「な、なんて魔法なんだ…こんな竜巻は初めてだ。」
「これは魔法とは違うな…古より伝わりし秘術…召還術だ!!」
ギーシュの言葉に答えるように、竜巻からクラースの声が聞こえる
召還術…召還術ってなんだ?
そんなギーシュの疑問をよそに、再びクラースの声が響く

「そして、私のような者を人はこう呼ぶ…召還術師《サモナー》と!!」

やがて、竜巻が弱まり、中からクラースが現れた…が、現れたのは彼だけではなかった
彼を守るように、それぞれ剣と弓と盾を持った三人の乙女達の姿があった

クラースが呼び出した者達…それを見た観客達は、騒然となった
あれは何だ、妖精か、そんな馬鹿な事が…
口々に囁かれる言葉…そのどれもが、目の前の光景を信じられないでいる
「これは…僕は幻を見ているのか?」
それと対面している筈のギーシュでさえ、この調子だ
それだけ、彼等の見ている光景が想像以上だったのだ

『お呼びですか、マスター?』

昨日出会ったシルフが、最初にクラースに声を掛ける
クラース自身も少し驚いた様子で、二人のシルフを見比べる
「驚いたな…他の二人まで、姿が変わっているとは…。」
『そう言えば、この姿でマスターに会うのは初めてだね…僕はシルフ三姉妹次女のユーティス。』
弓を持った勇ましいシルフが、最初に自分の名を告げる
『私は三女のフィアレスです、よろしくお願いします。』
次に、盾を持ったシルフが礼儀正しく、頭を下げながら答える
『そして、私は長女のセフィー…例え姿は違えど、我等三姉妹は貴方の風となります、マスター。』
最後に、剣を持ったシルフが名乗り、彼女達は主であるクラースの指示を待った
「そうか…じゃあ早速で悪いが、あのゴーレム達と戦ってくれないか?」
そう言ってギーシュのゴーレム達を指差し、三姉妹は一斉に其方へ目を向ける
相手が一斉に此方を見たので、ギーシュは「ヒィ」と短い悲鳴を上げる
『……なんだ、あれ只の青銅じゃないか、あれくらいじゃ僕達の敵じゃないよ。』
すぐに相手が青銅のゴーレムと分かったユーティスは、気だるそうに呟く
『ユーティス、相手が誰であれ全力をつくすものですよ。』
『それは…分かってるよ、姉さん。』
姉の言葉に、ユーティスは気を取り直して弓を構えた
セフィーも自分の剣を、フィアレスも盾を構えて戦闘体勢を整える
「こっちはこれでよし、と…おい、ギーシュ君、そっちは準備良いのか?」
「えっ、あっ…えっ?」
クラースの声に、未だに呆けているギーシュは、間抜けな声しか出せなかった
「何だ、さっきと違って威勢がないな…こないなら、こっちからいくぞ。」
「えっ…ちょ、まっ…。」
「いけ、シルフ!!」
待って…と言い終える前に、クラースがシルフ達に指示を出した
シルフ達はそれぞれの武器を手に、ギーシュに向かって飛んでいく
「わ、わわわ…ワルキューレ!!!」
慌てて杖を振り、三体のワルキューレでシルフ達に応戦する
青銅の乙女達の武器がシルフ達を襲うが、攻撃が当たる前に姿が消える
「き、消えた…ど、何処だ!?」
ギーシュはビクビクしながら、シルフ達を探した
観客もどうなったのかと辺りを見回すが、彼女達の姿は見えない
だが、ギーシュ達の目が他所に向いている間に、三姉妹はそれぞれ自分の相手の背後に現れた
「いきます!!」
最初はセフィーが、ワルキューレをその剣で一刀両断にする
「いっけぇ~~!!!」
続いてユーティスが弓を引き、無数の矢がワルキューレを破壊する
「いきますぅ~~~!!!」
最後にフィアレスが持っている盾で体当たりし、ワルキューレを粉々にする
ギーシュのゴーレムは何も出来ず、ただやられるだけだった
「えっ、あっ…ええっ!?」
気付いた時には既に遅し…ギーシュの目の前には、ワルキューレ達の無残な姿が散らばっていた

騒然となっていた広場は、シルフ達の戦いによって静寂が支配していた
見た事がないクラースの召還術、その姿が伝説の妖精に似ているシルフ達…
それによって、観客達は歓声を上げる事が出来ずにいる
「凄いわ…これがクラースの本気なのね。」
決闘がクラースの優勢に進んでいるのを見て、ルイズはそう呟く
その表情には喜びよりも、驚きが多くを占めていた
「ああ…これが英雄の力ってやつなんだろうな…。」
自分が苦戦したワルキューレを、三体相手に圧倒的な差を見せ付けた
やっぱり、クラースさんは凄い…
「………。」
だが、才人の心の中は晴れ晴れとはいかず、ある想いが才人の中で犇いている
…本当に、このままクラースさんに任せたままで良いのだろうか…と
「さて、ギーシュ君…これでもまだ続けるか?」
無残に散らばったワルキューレ達の残骸をはさんで、クラースが呼びかける
シルフ達はクラースの周りに浮かび、何時でも戦えるように待機している
「ば、馬鹿にするなよ…ま、まだ勝負はついちゃいないんだ。」
そう、まだ僕には三体のワルキューレが残っている…
どうあっても、ギーシュは自身から降参するつもりはないらしい
「素直じゃないな…やはり、一度そのプライドを叩き壊さないと更生は無理か…。」
仕方ない、此処で一気に畳み掛けるとしよう…クラースが攻撃しようと、手をかざそうとするが
「クラースさん、待って!!」
その直前、突然の才人の声がクラースの耳に届いた
「どうした、才人?」
攻撃の指示を止め、クラースは才人の方へと振り向く
才人自身も、自分の行動に戸惑う素振りを見せたが、意を決して口を開いた
「クラースさん…俺に、やっぱり俺にやらせてください。」
才人の言葉に、ルイズが少し驚いた様子で彼を見つめる
「あんた何言ってんの、さっきあんだけやられたんだから、クラースに任せれば良いじゃない。」
「でも、この決闘騒ぎを始めたのは俺だ…けじめは自分でつけたいんだ。」
「けじめって……。」
才人は視線をルイズからクラースへと向け、真剣な眼差しを送る
クラースから見ても、それは生半可なものではない事は解った
「………。」
しばらく目を合わせ…やがてクラースは、隣にいるシルフ達の方を振り向いた
彼女達に向けて手を翳すと、シルフ達はクラースの意思を悟って姿を消した
どうしたんだ…そんな声が周囲から聞こえるが、クラースは気にせず才人に歩みよった
「けじめは自分で…本気なのか?」
「はい…でないと俺…俺自身が納得出来ないんです。」
クラースの問いに、才人は答える…その言葉と表情に嘘偽りはなかった
そうか…そう呟くと、クラースは持っている道具袋へと手を伸ばした
しばらくして、彼は道具袋から何かを取り出す
「なら、これを持ってみろ…これを使えるのなら、後は君に任せる。」
取り出したのは、一本の剣…前にクラースに持たされた、あのロングソードだった
鞘から抜くと、クラースはロングソードを地面に突き刺す
「流石に、生身一つで戦うのは無理だからな…どうだ?」
「………。」
あの時、持つのがやっとだった長剣…かつてクラースの仲間が愛用していた英雄の剣
才人は黙って、左手を剣に向かって伸ばす
「あんた本気でやる気?剣なんか持っても平民が…そもそも、そんな体で勝てるとおもってるの?」
ルイズだけが納得できず、才人の体の事を持ち上げた
グミで少しは回復したとはいえ、彼の体は完全には癒えていない
そんな体で、剣を持った所で何が出来るか…
「…俺、よく負けん気だけは強いって言われてんだ…だから…」
少しばかり息を吸い…吐くと、剣を握るのと同時に叫んだ

「もう…絶対に負けねぇ!!!」

才人が剣を握った瞬間…彼の左手に刻まれたルーンが輝いた

気がついた時、才人はロングソードを片手に持って一人立っていた

今自分がいるのは、何処とも解らない荒野だった

地平線の先には、沈んでいく太陽が見える

何故…どうして俺は此処にいるのだろうか

確か、俺はギーシュっていけ好かない奴と決闘を始めて…

クラースさんに代わってもらって、もう一度あいつと…

そんな事を考えている中、ふと才人は顔を上げた

沈みゆく太陽…黄昏の光に包まれるように、誰かが立っている

風にのってたなびくマント…

茶髪の髪にハチマチ…

体には鎧を纏っている…

腰に剣を差している姿は、どう見ても彼が剣士である事を意味していた

才人は何故か、あの人を知っているような気がした

何故……

その時、彼が此方の方を振り向いた…顔は太陽の光のせいで、よく見えない

…待っていたよ、才人…

彼が喋ったのか…声が才人の頭の中に響いてきた

貴方は、貴方は一体…そう尋ねようとすると、また声が頭に響いてくる

…僕と戦おう、本気でね…

彼はそう言って、才人に向かって持っている剣を構えた

才人も、自然に持っているロングソードを構えた

…俺も、俺も貴方と…

「才人…おい、大丈夫か?」

クラースは蹲る才人に向かって声を掛ける
剣を握った途端、才人は地面に膝をついて動かなくなったのだ
何度も呼びかけるが、返事は返って来ない
「ちょっと…どうしたのよ、サイト!!」
ルイズが呼びかけても、体を揺すっても才人から返事は返って来ない
まるで、体だけが残った抜け殻のようだ
「どうしたというのだ、一体…。」
あれだけの傷を受けた体で、戦う事も剣を扱う事も出来る筈がない
それを解らせる為に、こうして才人の前にロングソードを出したのだが…
「クラース、何とかしなさいよ。あんたがあんな事を言ったからサイトは…」
「それは解っている、解っているが…。」
ルイズにせがまれ、クラースは道具袋から道具を取り出そうと探してみる
ミックスグミ、ミラクルグミ、ライフボトル、パナシーアボトル…
何かないかと探していると、突然才人がゆっくりと立ち上がった
「才人…大丈夫なのか!?」
「………。」
クラースが声を掛けるが、相変わらず返事は返って来ない
才人は剣を持ったまま、ゆっくりと前に歩き出した
「ねぇ、ちょっと…あんた本当に大丈夫なの!?」
ルイズが声を掛けても、才人は何も答えない…黙って歩き続けた
そして、ギーシュの近くまで歩み寄ると、剣を構えた
「な、なんだい、君…君との戦いはもう終わったんだよ!?」
予想外の事ばかり起こった為か、ギーシュは才人が出てきた事に不安を感じていた
まさか、彼まで何かとんでもない事をするつもりじゃ…
「…かった。」
「えっ?」
そんな中、才人が何か言ったようだが、声が小さくてよく聞こえなかった
少しして、才人は顔を上げると、さっきより大きな声で言った

「俺も…貴方と戦いたかった、クレス・アルベイン…。」

クレス・アルベイン…聞いた事のない名前にギーシュとルイズは首を傾げる
ただ一人…クラースだけが、その名に反応した
「クレスだって…才人、君は…。」
クラースが尋ねようとするが、才人は剣を大きく振りかぶった
そして、鋭い目つきになると、一体のワルキューレを見据えた

「魔神剣!!!」

そう叫んで剣を振るった…と同時に、剣先から衝撃波が発生した
衝撃波は地面を駆け抜け、立っているワルキューレを一体吹き飛ばす
ワルキューレはギーシュを横切り、観客達の間を縫って学院の壁に衝突する
「……へっ?」
数秒経って、ようやくワルキューレが吹き飛ばされた事に気づいたギーシュは背後を見る
後ろを見ると、壁に打ち付けられて粉々になったワルキューレの姿があった

「なっ…何だ今のは、剣から何かが出たぞ!?」
「あれ、魔法か…あの平民、メイジだったのか!?」
「でも、何で剣から…。」

周囲からどよめきが走る…が才人はそれを別に気にしてはいなかった
「何よ、あれ…あいつ一体何をしたの!?」
ルイズも目の前の光景に、ただただ驚くしかなかった
只のオマケだと思っていた少年が、あんな事をするなんて…
「あれは…魔神剣か、しかし何故…。」
クラースだけが、才人が使ったあの技を知っていたが、彼が何故使えるのかは解らない
周囲がざわめく中、才人は剣を構えなおすと、今度はギーシュに向かって走り出した

「わっ…わわわっ!?」
ギーシュは向かってくる才人を恐れ、杖を振るった
ワルキューレは持っている槍を、才人に向かって突き出す
が、正面に向かってくるそれを、才人は体をずらしてよける
「はっ!!」
剣を振り払い、ワルキューレの持っている槍を叩き折る才人
それによって体勢を崩したのを、彼は見逃さない

「飛燕連脚!!」

ワルキューレに向かって飛び掛ると、今度は二段蹴りを繰り出す
一撃目で右腕、二撃目で左腕をもぎ取り、最後に剣を胴体に突き刺した
突き刺した箇所からヒビが入り、ワルキューレは砕け散った

『……………』

観客達は勿論、ギーシュも、ルイズも、クラースさえも唖然となっていた
誰が、このような展開を予想できただろうか?
観客達は思った、あれが平民の…いや、人間に出来る事なのだろうかと
「………。」
だが、才人の快進撃はまだ終わらない…残った一体のワルキューレへと駆け出す
指示を出すのも忘れたギーシュのせいで、ワルキューレは動く事が出来ず…
「アルベイン流奥義!!」
そう叫びながら、才人は風の如く駆け抜け…
「魔神…」
最初に放った衝撃波を、ワルキューレに向かって放つ
放たれた衝撃波によって、青銅のゴーレムは宙を舞い…
「飛燕脚!!!」
続けて、先程使った二段蹴りでワルキューレを蹴り…剣を突き刺した
一連の攻撃を受けたワルキューレは、ギーシュの目の前で粉々に砕ける
「ひ、ヒィィ!!!」
ギーシュは尻餅をつき、情けない声を出してしまった
逃げろ、逃げなければ……
そう思って体を動かそうとした所で、剣が顔先に向けて突きつけられた
「………。」
才人はギーシュに剣を突きつけたまま、無言で睨み付ける
あ、う…と何か言いたそうに声を漏らしたギーシュは…
「ま…参った…。」
降参の言葉を出した…それを聞いて、才人は剣を引いた
くるりと剣を回すと、高々と剣を頭上で掲げる

『……………。』

決闘は終わった…様々な出来事が起こった中、才人の勝利によって
あまりに想像以上の出来事が続いた為、喝采は起こらないと思われたが…

「………す、すげぇ!!!」

静寂が支配する中、観客の一人が正直な感想を告げた
それを皮切りに、周囲から喝采が沸き起こる

「凄いぞ、平民!!!」
「あれが異国のメイジとその使い魔の実力ってやつか!!」
「何かわけが解らない事があるけど…とにかく凄い!!」

観客達は決闘の勝者である才人とクラースを、兎に角称えた

「サイト!!」

拍手喝采が起こる中、ルイズが才人に駆け寄った
クラースもそれに続き、才人は二人を見る
「サイト、あんた凄いじゃない!!そんな凄い力を隠してたなんて。」
「…えっ?」
ルイズの声に、才人は自分が持っている剣を見つめる
…あれ、俺どうしたんだ…
「才人、今の技…何故君がアルベイン剣術を使えたんだ?」
「クラースさん…俺、何を…。」
続いてクラースも問いかけてくるが、才人自身もどう答えて良いのか解らない
剣を握ったと思ったら、変な光景が見えて…そして…
続きを考えようとすると、突然体のバランスを失った
「えっ…あれ?」
反射的に剣を地面に突き刺して杖代わりにするが、体中から力が抜ける
剣から手を放し、そのまま地面に倒れそうになったのを、ぎりぎりでクラースが支えた
「おい、才人…大丈夫か?」
「すいません…何だか凄く疲れた感じが……。」
疲れだけではなく、睡魔までもが襲ってくる
眠たい、眠たいのだが…まだやる事がある…
才人は何とか顔を上げると、ルイズの方を見る
「ルイズ…悪いけど、少し頼まれてくれねぇか?」
「何、どうしたの?」
「あいつに…ギーシュに言伝頼むわ、ちゃんとシエスタに謝れよって…。」
そう、この決闘を始める時、ギーシュに交わさせた約束だ
ギーシュはそんなのはありえないと笑っていたが…
「主人に言伝を頼むなんて…まあ良いわ、ギーシュにちゃんと伝えてあげる。」
「ああ…それと…お前の事…馬鹿に…し…て…本島…悪かっ……。」
最後に、途切れ途切れでルイズに謝罪すると、才人はだらりと首を下ろした
「ちょっと、サイト…大丈夫なの?」
「……いや、どうやら眠っただけのようだ。」
クラースの言うとおり、才人は眠っていた…鼾をかきながら
「眠っただけ…ま、全く、最後まで主人を困らせる使い魔ね。」
怒った素振りを見せるルイズ…だが、それとは裏腹に何処か安堵している様子も感じられた
「兎に角、決闘騒動は終わったんだ、才人をベッドに寝かせないとな…よいしょっと。」
クラースは才人を自分の背に背負うと、ゆっくりと歩き出した
行く先には、決闘の光景に呆然としていたシエスタの姿があった
「シエスタ…悪いが、才人を寝かせられる場所まで案内してくれないか?」
「えっ…は、はい、此方に…。」
シエスタはおどおどしながらも、クラースを救護室まで案内する
「………。」
ルイズはクラースと、その背に背負われる才人を見つめる
先住魔法のような術を使うメイジ、凄い剣技を見せたオマケと思っていた少年…
何故か、これから凄い事が始まるんじゃないかと、予感めいた思いを抱いていた
「おい、ルイズ…彼等は一体何者なんだ?」
ギーシュは未だに震える足で、何とか立ち上がってルイズにたずねる
それはギーシュだけでなく、周囲の観客達も知りたい事だろう
その言葉に、ルイズは少し考えると…
「…決まってるでしょ、遠い国から来た私の使い魔達よ。」
笑みを浮かべながらそう答え、ルイズは二人を追って駆け出した
観客の間を潜り抜ける前に、思い出したようにギーシュの方を振り向く
「あっ、そうだ…あんた、後でメイドに謝っておきなさいよ。」
約束したんでしょ…そう言ってルイズは再び駆けていく
その後姿を、ギーシュは呆然としながら見送るしかなかった

『………。』

同じ頃、学院長室…
遠見の鏡で一部始終を見ていたコルベールとオスマンは言葉を失っていた
先程の決闘の光景を、どう表現すれば良いのか考えているようだ
「……オールド・オスマン、彼等が勝ったようです。」
しばらくして、ようやくコルベールが口を開いた
うむ、とオスマンは頷く
「あれは…一体何なのでしょう、ミスタ・レスターは妖精らしきものを呼び出しましたし、彼の使い魔である少年は…。」
そこまで言うと、コルベールはうーんと唸った
「あれは異国の人間だからこそ使えるものなのでしょうか…それともガンダールヴの力…。」
「解らんのう、あんなのわしも初めてじゃったし…えー、確かガンダールヴとは…。」
「はい…伝承によると、あらゆる武器を使いこなし、主である始祖ブリミルを守ったそうです。」
「おお、そうじゃったな。」
伝承によると、始祖ブリミルの扱う魔法は強力だが、詠唱がとても長かったそうだ
詠唱を行わなければ魔法は発動しない…そして、詠唱中メイジは無防備状態になる
始祖ブリミルが魔法を使えるよう、守っていたのがガンダールヴだという
「千人もの軍団を一人で屠り、並みのメイジは歯が立たなかったとか…。」
「ふむ…ミスタ・レスターは兎も角、あの少年はその伝承通りのような戦いぶりじゃったな。」
「そうですね…では、ミスタ・レスターのあれは異国の魔法なのでしょうね。」
とりあえず、二人はクラースの召還術を異国の魔法という事で納得する事にした
それでも、色々と謎や問題は多くあり…
「オールド・オスマン、この事を王都には……。」
「報告するか、かね…止めておきたいと思うのが、わしの意見じゃな。」
今回の事を王都に報告すれば、彼等の身柄を拘束するのは間違いない
それは彼等にとって酷であるし、何より色々と話がややこしくなるだろう
「この件は私が預かる…時が来るまで外部には漏らすでないぞ。」
「そうですか…いやぁ、良かった…。」
オスマンの決定を聞き、何処か安堵した表情で呟いた
「良かった…とはどういう事かね?」
「あ、いえ、その…彼等は異国から来たそうなので、色々と話を聞きたいと…その…。」
それを聞き、成程…とオスマンは納得した、この男は探究心や好奇心が人一番強いのだ
「まあ、程々にするんじゃぞ…それよりミスタ・コルベール、確かミスタ・レスターにガンダールヴの事を話したそうじゃな?」
「あ、はい…ほんの少しだけですが。」
「なら、隠しても仕方ないのう…すまんが、ミスタ・レスターを此処に呼んできてくれんか?わしから彼に説明したい。」
それに、彼の素性についてもう少し聞き出しておいた方が良いだろう
彼等はもう、『ミス・ヴァリエールが呼び出した使い魔』という枠だけで捉える事は出来ない
「解りました…では、失礼します。」
指示を受けたコルベールは一礼すると、学院長室を後にした
残ったのはオールド・オスマンただ一人…ふぅ、と溜め息をつく
「異国のメイジとその使い魔、それにガンダールヴ…ミス・ヴァリエールはとんでもない人物を召還したようじゃのう。」
よっこいせ…と、オスマンは立ち上がると、傍にある本棚へと歩み寄った
そこにある自身が所有する書物の中から、古ぼけた一冊の本を取り出す
「異国から来た、特殊な力を持つ者…これもまた関係しているのかのう?」
この本の表紙に刻まれた文字は『黄昏の4戦士』と書かれている
黄昏の4戦士…それは、始祖ブリミルの時代に存在したと言われる伝説の4人の戦士達である
遠い異国の地よりやってきた彼等は、その特殊な力で始祖ブリミルを幾多の苦難から救ったと言われている
彼等に関する資料は少なく、本当に実在していたのか定かではないが…
「流石に考えすぎかな…それにしても…。」
オスマンはパラパラと、古ぼけた本のページを捲っていく
そして、挿絵の描かれているある一ページを開いた

「あの少年の構え…まるで、この剣士のようじゃったのう。」

オスマンが見る挿絵…そこには、剣を掲げる勇ましき剣士の姿が描かれていた




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