あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの戦闘妖精-07 Intermission 01


ntermission 01「ワルドの 『家族に乾杯!』」

♪~しーあーわせをあーりがーとー ぬくもりとどきましたー(以下略)

例えばである。
貴方が、どこかの会社に勤めていて そこで課長クラスの役職だったとしよう。
幸運にも、貴方は可愛いお嬢さんと婚約することが出来た。
それも、貴方の会社から見て親会社に当る大企業の 重役の娘さんである。
ある日、その娘さんが会社を訪ねてきて、貴方の会社・貴方の部署で働きたいと言ってきた。
試験を受けさせると、大変優秀であり 適正も高かったので採用した。
ところが、その後 ご両親の承諾を得ていないことが判明する。
正式に採用した以上 簡単に取り消す事も出来ず、かといって親会社重役の機嫌を損ねる訳にもいかず…
つまりは、そういうこと。

あの『黒ワイバーン一味 宝飾店襲撃事件』から、一週間が過ぎた。
ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド、グリフォン隊隊長にとって、『刑の執行を待つ死刑囚』の気分を満喫した日々だった。
再び巡って来た 虚無の曜日。ルイズを伴ってヴァリエール邸を訪問する日である。
こちらの願い出る件が、何の問題も無く受け入れられる可能性は…限りなく、いや 完全にゼロだ。
なにしろ あの家族である。
宮廷イチの子煩悩(というより『親バカ』)のヴァリエール公が、どれだけ末娘を溺愛しているか、宮中に知らぬ者は無い。
長姉のエレオノール女史は、苛烈な性格でアカデミーの全ての研究員から畏れられているが、そもそも 二人の妹が抱えた問題を救ってやりたい、必死でそれを探しているうちに 気がつけば学者になっていたという人物である。
(傍目には とてもそうは見えないが、)妹達の為に己の生涯を懸けるほど、その愛情は深いのだ。
次姉 カトレア嬢は 生まれつき身体が弱く、この面子で唯一の癒し系だ。
他人をを攻め立てるような姿は想像も出来ないが、逆に 誰であっても 彼女に無理な要求を突きつける事は出来ないだろう。
おっとりとしているようで、物事の本質や嘘・欺瞞を見抜き、慈母の如く優しく相手を諭す。
ワルド自身、カトレアに反対されれば翻意しかねない。実に手強い相手だ。
そして、ルイズの母上 カリーヌ様。
現役時代、鉄のマスクを常用し 素顔を晒す事が少なかった為、その事実を知る者は少ないが、彼女こそ、
『生ける伝説』 『歴代最強の衛士隊長』 『一人機甲師団』
こと 元・マンティコア隊隊長 『烈風』カリンその人である。
『鉄の規律』をモットーに、自分の部隊を『最強の軍団』に育て上げた女隊長が、ワルド配下の『魔法愚連隊』を どう評価しているか、考えるまでも無い。

難攻不落のヴァリエール家を どうやって攻略するか?
ワルドの頭の中に浮かぶのは 『無理』の二文字だけだった。

夜明け前、ルイズの雪風がグリフォン隊舎に到着したが、
「学院の方で どうしても外せない用事ができたから 先に行ってほしい」
と告げ、連絡用にデルフリンガーを置いて飛び去ってしまった。
なんでも、先日話に出た『無線機』の試作品が出来上がったらしい。ならば、仕方ない。その機械には ワルドも大いに期待をかけている。
とはいえ(ルイズめ… 逃げたな!)という気持ちも捨てきれない。
隊舎からヴァリエール邸まで、馬車なら二日 グリフォンでも半日弱はかかる。のんびりもしていられなかった。
「さて 行こうか、デルフ君。」
ワルドは、剣と二人で 憂鬱な空の旅に出発した。

数回の休憩を挟んで 昼前にはヴァリエール領に入った。
「ほぉ。この辺りが『嬢ちゃん』の故郷か。いいとこそうだな。」
グリフォンの鞍に括り付けられたデルフリンガーが のんびりと言う。
「ああ、今 トリステイン国内で、生産性 治安 領民の忠誠、どれをとっても一番安定しているのが このヴァリエール領だよ。
 それを背景とした経済力 軍事力も国内有数、ただし真っ向過ぎる性格と 跡継ぎの嫡子が居ない事で、政治的に第一線にはお立ちにならないのさ。」
「そんならよぉ、おめぇさんが後を継いでやりゃーいーじゃねーか?」
「ハハハ、やめてくれよデルフ君。僕にヴァリエール公の代わりなんか務まらんさ。
 魔法衛士隊の隊長なんてものになって、下っ端ながら宮廷にも顔を出すようになり 痛感したよ。
 僕は『現場の人間』だって。
 権力だとか一国一城の主とか 考えないわけじゃなかったが、宮廷は泥沼だ。腐臭を放つ 金色の糞溜めさ!
 あんな所で毒虫と戦いながら 肥え汲み人夫として働くなんて とてもじゃないが僕には出来んよ。
 それだけでも、僕は公を尊敬するね。」
(だがな、そーいうマトモな感覚の持ち主が、王宮に居なくなっちまった時 国ってヤツは滅ぶんだけどね・・・)
珍しい事に、デルフリンガーは その思いを声にしなかった。

それから四半時程で ヴァリエール邸に到着した。
羽振りのいい貴族が最近建てている 『機能度外視 外観重視』の館と違って、ここは旧来の『城』に近い。
隣国ゲルマニアと国境を接するヴァリエール領は、あまたの戦役の舞台となった土地であり、平時である現在も 警戒の手は緩んでいない。
深い堀と高い外壁 ひとたび事あれば、半日で要塞へと変わるだろう。
その美しくも厳しい姿が、これから会うヴァリエール家の人々に重なって見えるワルドだった。

グリフォンを中庭に降ろすと、そこには既に出迎えが来ていた。
なんと ヴァリエール公爵とカリーヌ夫人、その人だった。
「良く来てくれた、ワルド君。
 久しい 本当に久しぶりだ!実に嬉しいよ!」
公爵は、喜色満面の笑みでワルドを迎えた。
「いえ、長きに渡る無沙汰の程、まことに申し訳ございません。
 ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド、ただ今 帰ってまいりました。」
挨拶を返すワルド。
『帰ってきた』。それは社交辞令でも何でもない 偽らざるワルドの本心だった。
父を亡くし、生活の為 家屋敷も売り払った。僅かな領地は残ったが、所有するのは名義だけ。実際には そこを耕す農民こそが 愛着を持って『オラが土地』と言えるのだろう。
そして母も神に召されて以来、ワルドにとって『帰るべき場所』は ヴァリエール家とグリフォン隊の二つだけだった。
(あぁ そうだ、帰ってきたんだ。)
ワルドは、自分の目に うっすらと涙が浮かんでいるのに気付かなかった。

「ルイズからの便りで 貴方が来ると知らされて以来、この方はずっとこんな様子なのですよ、『ジャン坊や』。
 いえワルド子爵、ようこそおいでくださいました。
 でも、ルイズの姿が見えないようですが、一緒ではなかったのですか?」
悪党共から『鬼』と恐れられるグリフォン隊隊長も、カリーヌ様にかかれば子供扱いだ。
「『坊や』は勘弁願いますよ、カリン元隊長殿。イロイロとシゴかれた記憶が蘇ってきますので。」 
「そういえば、最近の『グリフォン隊』は どうもヤンチャが過ぎているようですね。
 『尻叩き』にでも 行ってあげようかと思ってましたのに…」
にこやかに微笑んでいるが この方なら、やりかねないから怖い。ワルドは 話題を変えた。
「ルイズは 少し遅れて来ます。
 今日 学院でどうしても外せない用事があり、それを済ませてから来るそうです。」
「なんだ、それでは どんなに急いでも晩餐ぐらいにしか顔を出せないのか。」
がッがりとする公爵。
「あのおチビ、自分から連絡しておいてスッぽかすなんてぇ!」
ワルドの到着に気付いて、中庭に出てきたエレオノール女史が 不満げに声を荒げる。
「いえ、
 『昼食には間に合わせたい。』と言っていましたから 間も無く到着するでしょう。」
「ちょっとワルド、学院からここまで どれだけあると思ってるの!そんなの 仮に風竜に乗ってたって無理よ!」
「それが、出来るんですよ。
 彼女の使い魔、『雪風』なら。」

「おう 隊長さんよぉ、その『嬢ちゃん』から伝言だ。あともう五分もしないうちに着けるってよ。」
突然割り込んできた声に ワルド以外の一同が辺りを見回す。
「皆様、ご心配なく。今のは ルイズが所有するインテリジェンスソード『デルフリンガー』です。」
そう言って グリフォンの鞍に括り付けた剣を指し示す。
「そ そうなのか。
 だが、『ルイズの伝言』というのは?」
「ルイズと雪風は、特別な『絆』で繋がっています。お互いの距離に関係なく お互いの考えを伝え合う事が出来るんです。
 そして デルフリンガーと雪風の間でも、同じ事が出来ます。ルイズの言葉を雪風が聞き それをデルフリンガーに伝える。
 だから 僕は連絡用に、あのデルフ君を借りてきたんです。」
「ワルド。その説明 もっともらしいけど、おかしいわ!」
アカデミー主任研究員の目で、エレオノールが鋭く突っ込む。
「メイジと使い魔の間なら まぁそんな事もあるかもしれない。
 でも、なんで無関係なインテリジェンスソードと使い魔の間でも、同じ事が出来るのよ!」
「まぁ それは、雪風に刻まれた『伝説のルーン』のお陰なんですけどね。
 それより、聞こえませんか あの音。」

ワルドの見上げる 遠方の高空、その方向に注意を向けると、
…確かに 何かが聞こえる。かすかだが、聞き覚えの無い音が。
しいて言うなら 遠雷に近いかもしれないが、今日の空は 雲一つ無い快晴だった。
「あっ、あれ!」
エレオノールにやや遅れて中庭に現れたカトレアが 最初に気付いた、ほんの小さな影。
鳥? それにしては、あまりに高いところを飛んでいる。それに、早すぎる!
見る間に大きくなる音と姿。カン高い唸りと重い響き 全く羽ばたかない翼。予想をはるかに超えて大きくなる。
そして、屋敷の敷地 正門入り口から建物正面玄関へと続く馬車道に、謎の怪物は舞い降りた。
着地する直前に車輪を出したそれは、ゆっくりと中庭に進入すると、頭のガラスドームをやや後方移動させて開いた。
「お父ー様~、お母様~。」
ガラスドームから現れた、頭部をすっぽりと覆う兜を被った人物が 立ち上がって手を振る。
ヴァリエール公の前で停止した機体から降りて ヘルメットを脱いだのは…
「「「ルイズッ!?!」」」
「おかえりなさい、ルイズ。」
他の三人が驚きの声をあげる中、カトレアだけが普通に出迎えた。
「ルイズ・フランソワーズ・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、只今戻りました!」

いつもなら、ここでヴァリエール公が真っ先にハグしてくるのだが、今回は違った。
「ルイズよ…これがお前の…使い魔…」
いまだ驚きから回復しない様子で、愛娘に問いかけた。
「はい。これが私の使い魔、FRX-00 戦術偵察機『雪風』です。」
「すごく大きいけど、可愛いコねぇ。」
カトレアさん、雪風を目の前にして『可愛い』なんて言い出すのは 貴女だけです!(いや、深井中尉なら…?)
「おチビ!、いったい何なのよコレは。説明しなさい 今すぐ!!」
国内最高の研究機関 アカデミーの一員である自分の前に現れた 未知の存在。エレオノールが興味を惹かれないハズが無かった。
「簡単に言えば、『空を飛ぶ機械』です。ゴーレムやガーゴイルと 似て非なるものと思ってください。
 油を燃やして風を生み その力で飛びます。
 詳しく説明するには、『航空力学』の初歩から始めなきゃなりませんから、長いことかかりますよ。」
「うぅぅぅぅう…」
久しぶりの家族団らんの場で、それほど時間は取れない。エレオノールがしぶしぶ諦めると、
「ルイズ。そんな使い魔を召喚したという事は、お前の『系統』は『風』なのか?それとも『火』なのか?」
「お父様。それが まだ判らないのです。
 今までに成功した魔法は、この雪風の召喚と契約のみ。その後は 相変わらず失敗ばかり。
 それに 雪風は、空を飛ぶのに魔法の力を使っておりません。」
「あんたねぇ~、バカな事言ってんじゃないわよ!
 こんなデカい物が 魔法無しで飛べるワケが無いじゃないの!」
鳥や虫ならともかく、騎乗用の大型幻獣で、翼だけで飛行出来るものは少ない。翼はメイジの杖と同様、魔法を発動させるための器官である。
まして ルイズの使い魔は、生物には見えなかった。
これが魔法を使わずに飛ぶなど ハルケギニアの常識として、魔法を研究する者として、エレオノールには認められなかった。
「大姉様、でしたら、雪風にディデクト・マジックをおかけください。
 契約のルーン以外、何処にも魔法の兆候は見つからないはずです。」
「あんたがイイって言うのなら、やらせてもらうわ!」
エレオノールは、携帯用の杖を取り出し 妹の使い魔に向け『魔法探査』の呪文を唱えた。
結果は・・・ルイズの言った通りだった。
「こんな杖じゃ 細かい事は解らないわ!
 おチビ、この使い魔については 後日 アカデミーでキッチリ調べさせてもらうわよ!イイわねっ。」
「はい、お願いします。
 アカデミーには、これから色々とお世話になると思いますので。」
雪風と出会って まだ一月程しか経過していないにもかかわらず、ルイズの内面は大きく変化した。
あれほど苦手としていた姉と 対等に渡り合えるほどに。

「で、ルイズ。用事は済んだのかい?」
「はい隊長。『無線機』の試作第一号は、後部座席に積んであります。
 半導体の概念を理解してもらうのが難しいようで、トランジスタは作れなかったんですが、四系統のメイジ総がかりで なんとか真空管は作れました。
 大きさやら バッテリーの持続時間やら、まだ実用には程遠いんですけど、史上初のハルケギニア製電子機器としては 思った以上の出来ですね。」
不明な単語が頻出する会話だったが、カリーヌ夫人は ある事に気付いた。
「ルイズ。ひとつ聞きます。
 貴方は 何故 ワルド子爵を『隊長』と呼んだのですか?」
母親に声をかけられ ルイズの背筋が、ピィーンと伸びて『ギギギギ・・・』と効果音が入りそうな動きで 母の方へ向き直る。
「おお母様、そそそその件と、わっ私の しっ 将来の事で、じじ重大ぃな おは お話が・・・」
『姉』とは対等に話せるようになっても、『母』の壁は 厚かったようだ。
「ルイズ、そこから先は僕が言おう。 
 ヴァリエール公、奥方様、…」
だが、緊張しているのはワルドも同じ。
「ル、ル、ルィ…」
口を開いても、言うべき言葉が出てこない。
こんな時ほど 人は、トンデモない言い間違いをしてしまったりする。
プレッシャーを跳ね除けようと、最大限に声を張り上げた一言は、

『ルイズお嬢さんを、僕に下さい!』
『『『『!!!!!』』』』

「たたっ隊長ぉ~、それ違~うぅ!」
「そーかそーか。ワルド君、やっと決心してくれたか!
 いや~目出度い、実に目出度い。さっそく詳細を詰めていこう。
 なーに、式の方は こっちに任せたまえ! さーて、何処の教会を押さえたものか?」
「ワ~ル~ド~!それにルイズ!!
 アンタ達、判ってるわよね。
 姉である私をさておいて結婚しようだなんて、そんなこと 始祖だってお許しにならないわよ!!!」
真逆の方向で まくし立てる、父と姉。
「まっ、間違い 間違えました!
 訂正しま~す、
 『お嬢さんを 僕の『部隊』に入隊させてください』。」
瞬間、喧騒は 重苦しい静寂へと変化した。

「どうやら、こんな所での立ち話では 済まない事のようですわね。
 もう 昼食の頃合も 大分過ぎております。料理長やメイド達も、困っている事でしょう。
 続きは、お屋敷の方で。」
皆が沈黙する中、カリーヌ夫人に即され 一同は食堂へと場所を移した。

食堂では、待ち構えていたメイド達によって すぐに昼食の仕度は整えられた。だが、誰もそれに手を付けようとはしなかった。
「ワルド子爵、君は一体何を考えているんだ。
 何故、年端も行かない娘を 衛士隊になんぞ引っ張り込もうとする!」
「ヴァリエール公、これはルイズ本人の望んだ事なのです。」
「ルイズは まだ子供だ!!」
「お言葉ですが、僕がグリフォン隊に放り込まれたのは 今の彼女と同じ歳でしたが?」
「男と女では 話が別だ!!!」
「現在 わが国には『衛士は男性に限る』という規則はございません。
 その件については、偉大な先達が公のお隣にいらっしゃいますので 御理解いただけると思いますが。」
「それは あくまで『実力』あっての事だ。未だ魔法を使えんルイズは 只の無力な子供。」
「いいえ お父様。
 私自身は無力かもしれませんが、私には『雪風』がいます。 
 使い魔の力は、主人たるメイジの力の一部。
 そして メイジの力は、民の為 国の為に使われるもの。それこそ 貴族の責務。
 『大いなる力には、大いなる責務が伴う』
 昔の事ゆえ 誰から言われたものか判りませんが、そう教わりましたこと 私は忘れた事はございません。」
「ルイズ。貴族の責務とは、何も戦う事だけではないぞ。なのに 何故衛士隊に、戦いの場に出ようとする?
 それに、あの使い魔に どれだけの事が出来ると言うのだ?」
「雪風は、異世界において作られました『兵器』です。
 雪風自身が力となりますのはもちろん、その存在自体が他の兵にとっての力にもなります。」
「その件に関しては、既に実証されているんです。実は、先日の捕物の際に…」
ワルドは、黒ワイバーン一味を捕縛した際の顛末を語った。

「うーむ、『偵察と指揮』か…。 それが、そんなにも効果的だと?」
「ハルケギニアでは『物見の兵・偵察兵』は軽視されていますが、雪風の世界では、『情報』は個々の武勇よりも遥かに重視されています。
 もし 我が軍の本陣を奇襲せんとする伏兵がいたとして、それを相手より先に発見するか 見落とすか。極めて重要な 戦況の分岐となります。
 また 情報を如何に速く正確に伝えることが出来るか?それは、戦争の大局を左右しかねません。
 お父様は先ほど、
『戦うだけが貴族の責務ではない』とおっしゃいましたが、同様に
『剣を振るう、魔法を放つだけが戦いではない』のです。」
娘の語る内容に すっかり考え込んでしまう公爵。
軍略として間違ってはいない むしろ現状よりも進んだ考え方ではあるが…
「ルイズよ。お前は、本当にあのルイズなのか?
 前回の帰省からほんの数ヶ月、軍隊のぐの字も知らなんだ娘の語ることとは思えんぞ。」
「それもまた 雪風の『力』です。
 雪風が異世界の戦場で得た経験と知識、私はそれを共有できます。戦術・戦略についても 多くを学ぶことが出来ました。
 女子といえども『三日会わざれば、活目して見よ』ですわ お父様。」
公爵は思った。
見違える程しっかりとした 娘の成長を喜ぶべきなのか、戦場に出るなどと 親不孝な事を言い出す娘を悲しむべきなのか…。

「お父様、おチビなんかにやり込められて どうするんですか!
 ちょっとルイズ、あんたがいくら偉そうな事を言っても 自分の身すら守れないようなシロウト娘を戦わせるなんて 家族として許せるワケが無いでしょ! 
 少しは常識ってモノも考えなさい!!」
攻撃側の選手交代、今度はエレオノールだった。
「大姉様、雪風は偵察機ですが 決して弱くはありませんよ。
 敵も味方も『情報』を重視する戦場で、偵察機が狙われないハズはありません。
 雪風は、常にこう命じられていました。
『たとえ味方が全滅しようとも 助けようなどと思うな。
 武器は自分と自分の持つ情報を守る為だけに使え。
 絶対に帰って来い』と。」
「味方を見殺しですって!なんて卑怯な事を。貴族として いえ 人として許される行為じゃないわ。
 ルイズ、貴女まさか そんなつもりで…」
妹の意外な発言に、わなわなと身を震わせる長姉。しかし 父から、
「エレオノールよ。
 女のお前が戦場を知らんのは当然だが、己が命惜しさに友軍を見捨てるのと 任務の為に助ける事すら禁じられるのでは、全く意味が違うのだ。
 あの使い魔が、元々どのような戦場にあったものか 想像すら難しいが、そこにはアレを操る兵士が居るのだろう。
 その者は どのような決意と覚悟で戦っていたのか。お前の言う『卑怯者』であったとは とても思えんのだ。」
と 援護射撃が入り そして次姉も、
「そうですよ姉様。貴女の知っているルイズは、そんな卑怯な娘でしたか?
 大丈夫です。この子は いつだって真っ直ぐな頑張り屋です。貴族の誇りを忘れたりなんかしませんよ。」
そう言われ、エレオノールは普段の強気一辺倒の仮面が外れ 眼を潤ませながら 叫ぶように言った。
「わかってるわよ、そんな事。
 だから 、ルイズはきっと 頑張りすぎて…無茶をして…。私は、この子が大怪我したり…死んじゃったりして欲しくないのよぉ!」
ルイズは姉の手を取って その目を見つめながら言った。
「大姉様、でしたら 私に命じてください。
『絶対に 生きて帰れ』と。
 そうすれば、私も 雪風も誓いましょう。
『必ず 生きて帰る』と。」

「おおよその話はわかりました。」
それまで皆の話を聞くだけだった公爵夫人が ついに動いた!
「ルイズ。貴方は昔から 言い出したら聞かない子でしたね。
 貴族の責務、戦の意味、どちらも理解した上での決意だと言う事も判りました。
 そこまでは良いでしょう。
 ならば、最後の一つ『必ず 生きて帰る』 これを証明して見せなさい。」
「おっ、お母様。」
「ワルド子爵、すみませんが 貴方のグリフォンをお借りしますよ。
 私のマンティコアは 既に年老いて隠居中ですから。」
「はぁ かまいませんが、一体何を?」
「確か、ルイズの使い魔は 風竜よりも速いのでしたね。だから、何に追われても逃げ切れる。
 そうですね?」
「はい、お母様。雪風は 『最速』です!」
ルイズは自信を持って答えた。
「それを 私に確認させてもらいます。
 この館から周囲10リーグ、そうねぇ ウォーカーブリッジからキーストン牧場 トゥループの森の外れ辺りまでの範囲で、
半刻の間 私から逃げ切れたなら合格としましょう。
 その時は 貴方の好きな様にしなさい。
 けれど 私も本気で攻撃するわ。貴方の使い魔は、壊れるかもしれない。
 それでも 良いわね?」
母は 静かに問いかけた。
姉のように むやみに反対するのではなかった。大声を出したり 感情的になることも無かった。
ただ その身に纏ったオーラが、何よりも雄弁に『本気』『全力』『手加減無し』と告げていた。
ルイズの知る限りにおける 最大級のプレッシャー。物心つく前から 延々と刻み続けられたトラウマ。絶対に逆らってはならない存在。
だが これを乗り越えなければ、未来は無い。彼女は 無意識のうちに、使い魔に助けを求めていた。
(雪風!)
返事は無い。具体性の無い語りかけに 雪風は応えない。
慰め・励まし・叱咤。雪風のAIに そういった語彙はあっても、そのような思考は無い。電子知性体は 人間的感情を有しない。
ルイズと雪風を結ぶ絆は、愛でも友情でもない。それは ただの超高速情報回線。
今のルイズには、その事が逆に『頼もしく』思えた。
(落ち着きなさい、私。
 冷静に、冷静にならなくちゃ。雪風の様に。)

「承知致しました。お母様。」


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