あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

悩みも苦しみも無い世界

悩みも苦しみも無い世界



月明かりも満足に射さない夜の暗い廊下を、ルイズは息を切らせながら必死に走っていた。
時折立ち止まっては辺りを見回し、誰も居ない事が解ると暫し休息する。
そして、呼吸が整ったら再び駆ける――その繰り返しだった。

「…もう嫌よ」
ルイズは呼吸を整える為に立ち止まり、消え入りそうな声で呟く。
明かりの一つでも欲しい所だが、生憎と明かりになりそうなものはここには残っていない。
”あいつ”が全て壊してしまったからだ。

――どうしてこんな事になってしまったのだろうか?
自分はただゼロでない事を……魔法を使えるのだと言う事を証明したかっただけなのだ。
だから、何十回、何百回と失敗しようと、日が沈んで夜の帳が落ちようと使い魔召喚の儀式を続けた。
そして、漸く何かを召喚できたのが…つい先ほどの事。
…その召喚した者の所為でこんな事になるなど、誰が想像できようか?
いや、それ以前に…あんな物が呼ばれるなどと言う事自体、前例が無い。

一際大きな爆発が巻き起こった時、自分は確かに不気味な音が響くのを聞いた。
その音が聞こえなくなり、爆発による煙が晴れた後、真っ黒な召喚のゲートの手前に”あいつ”は居た。
召喚した”あいつ”は不気味な姿をしていたが、最初こそ優しそうな口調で話しており、害は無さそうに思えた。
しかし、コントラクト・サーヴァントを行おうとして近づいた自分の首を”あいつ”は、いきなり締め上げてきた。
それを助けてくれたのはコルベール先生だったが、直後にあいつの持っていた銃のような物で瞬く間に蜂の巣にされた。
その時、彼の背後の黒いゲートから巨大な芋虫のような不気味な生き物が、何匹も何匹も這い出てきたのだ。
不気味なその生物は倒れたコルベール先生に、そして自分にも近づいてきた。
その様子に自分は恐怖を感じ、その場から逃げたが、あいつは相変わらずの優しげな口調で語りかけながら後を追いかけてきた。
学院へと逃げ延びる事はできたが、果たしてその判断は間違っていたのだろうか?

あの後直ぐに自分の召喚した”あいつ”や、開いたゲートから際限無く湧き出るあの化け物は、他の生徒や教師を無差別に襲い始めたのだ。

そして、殺された生徒や教師はその後――


「――っっ!」
恐怖に震える肩を抱きながら、唇を噛み締める。
…怯えるなと言われても無理だ。あのような”不気味な姿”にされた彼等を見れば…嫌でも震えが来る。
「帰りたい…」
こんな地獄のような所にはもう一秒でも居たくない。
魔法なんか使えなくていい…、使い魔なんか居なくていい…、ゼロと言われていてもいい…。
今のルイズの頭には当初の目的など欠片も存在していない。
ただ、優しい姉の居る実家に帰りたい、という思いだけが彼女の中に在った。
「う、うう……ちい姉さま…、怖いよ…」
ルイズは姉を呼びながら人知れず涙を流した。

『悪い夢を見て苦しいのか?』

――突然聞こえた声に、ルイズは反射的に身を起こす。
凄まじい勢いで辺りを見回し、声の主の姿を探すが、何処にも姿が見えない。
否、何時の間にか辺りには黒い霧のような闇が広がっていたのだ。

『だったら悪い夢からは早く覚めないとな…』

遠くから語りかけているようでもあり、直ぐ近くで話しているようにも感じる。
まるで位置が掴めず、ルイズは恐怖と焦りでパニックになりそうだった。

『俺も前は色々と苦しんだ…。だが、今はそんなに苦しんでいたのが嘘みたいにスッキリしている…』

「ど、何処に居るのよ!?」
たまらず叫ぶ。しかし、声の主は姿を見せない。


『お前の悩みを解決してやるよ…、要らない殻を脱げばいい…。そうすれば悩みは解決さ…」
『そうだ…ミス・ヴァリエール。君も殻を脱ぎなさい』

新たに聞こえた声にルイズは驚愕し、両目を見開く。
「ミ、ミスタ・コルベール!?」
そう…、その声は紛れも無く殺されたはずのコルベールの声だった。
死んだはずの彼の声が聞こえる…、それの指す意味は――

『こいつも結構苦しんでいたみたいだが、今はスッキリしているそうだ…』
『ああ…、君のお陰だよ。わたしは昔、大罪を犯してその罪に長く苦しんでいた。
だが、今はその苦しみもまるで感じない。そう、生まれ変わった気分だよ。実に良い…、殻の具合もね」

実に楽しそうな、満足感に包まれた声で姿の見えないコルベールは語る。
彼の罪とは何なのか…、だがルイズには気にしている余裕は無い。
杖を構え、不安と恐怖に押しつぶされそうな自分を支えるのに精一杯だ。

『ヴァリエール…、貴方も大人しく殻を脱ぎなさいよ? そうすれば、今度はお互い仲の良い友人になれるわよ?』
『何も苦しむ必要が無くなって、悩みも無くなる。わたしも復讐の事なんかどうでも良くなった』
『ルイズ、君もこうなれば本当の意味で仲間になれるぞ? 少なくとも、ぼくはモンモランシーと最良の関係を築く事ができたさ』
『そうよ、ルイズ。貴方も早くこっちに来なさい』
『ゼロのルイズ~、他に何も無いんだから、大人しく殻を脱いじゃえよ』

知っている、知りすぎている声が次々と聞こえてくる。
ああ、もう皆は変わってしまったんだ…と、ルイズは察した。


この学院においてゼロのルイズと馬鹿にされる自分に、友人など皆無だった。
今聞こえてきた声の持ち主も、大部分は自分を嘲笑していた。
なのに、どうしてこんなに申し訳ない気持ちになるのだろうか?
やはり嫌っている相手であろうと、あんな姿になってしまう事は良しとしないからだろう。

『ほら…こんなにお友達が呼んでるぜ? お前も早く要らない殻を脱ぎな。それとも…』

足音が聞こえ、ルイズは振り返る。

『遊びたいのか? なら、遊ぼうか」

大きな顔がニヤニヤと笑っていた。

「あ、ああ…」

恐怖が限界に達し、ルイズは後退る。

そんな彼女を見つめながら、手にした銃を構え、優しそうな…狂気に満ちた声で語りかけた。

『ル~~イズちゃ~~ん、一緒に遊びましょ~~~う』

「いやああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」



――闇の中に少女の絶叫が木霊した。



平賀才人が覚ますと、そこは先程まで居た場所とはまるで違う”異世界”だった。
黒い太陽が天に昇り、辺りは赤黒く染まっている。

何故このような場所に自分は居るのだろう? 才人は記憶を辿る。

修理したパソコンを受け取り、家へと戻る帰り道、目の前に突如として現れた黒い鏡のような物。
何故かサイレンのような不気味な音がするそれに不信感を抱きつつも、彼は持ち前の好奇心でそれを潜ってしまった。
その途端、真っ赤な津波が自分に襲い掛かり、そのまま飲み込まれた。
そして、濁流にもまれる中、意識を失ってしまったのだ。

「で、目が覚めたら…こんな所に」
と、呆然としている彼の背後から声が聞こえてきた。

『やった、また成功した。召喚の成功回数、私が一番だね』
『うん、なかなかやるじゃん。こいつも良い殻になりそうだ』

妙に歪んだ男女の声。男は大人の物のようだが、女の声は少女の物だ。
「だ、誰ですか――」
尋ねながら振り返り、彼は言葉を失った。

そこに居たのは、およそ人とは掛け離れた姿をした二体だった。
一つは巨大な頭の上に人の上半身が乗っかったような姿で、
もう一つは四つん這いで、細い手足に正面から見たら体が隠れてしまうほど頭部が巨大な姿をしている。
見ているだけで恐怖と嫌悪感を覚えさせる醜悪な異型である。


「うわあああ!? な、何なんだ!?」
悲鳴を上げる彼を見て二体は笑う。
『そんなに怯えなくていいわよ? 直ぐに済むから。そうしたら楽しく過ごせるから』
『お前も俺達と一緒に行こうぜ』
二体の言葉の意味を才人は理解できない。いや、理解したくも無いというのが本音だ。
「こ、ここはどこだよ!? 俺を元の場所に返せよ!?」
『帰る必要なんて無いわよ。ここは良い場所よ? 悩みも苦しみも無い世界だから』
『お前も悩んでいるようだな? 大人しく殻を脱ぎな。久しぶりに最高の気分が味わえるぜ』
二人の言葉が終わるや、才人を芋虫のような姿の化け物が取り囲む。
「い、いやだ! 来るなーーーーーーー!!!」
彼の叫びは怪物の群れに飲み込まれた。
それを二体は優しそうな目で何時までも見つめていた



ここは嘗て別世界の地上から追放された存在が支配し、黒い太陽が昇る世界、ハルケギニア。
全てが一つの存在となったこの世界には、最早悩みも苦しみも悲しみも、種族の違いによる争いも無い。
ここを天国と呼ぶか、地獄と呼ぶかは人しだいだ。

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SIREN2より三沢 岳明(闇人甲型)と闇霊を召喚




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