あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

PERSONA-ZERO -03 後編

 結局、キュルケとタバサの2人は厳重注意と決して口外しないことを言い渡され、解放とあいなった。

「まったく……油断も隙もないんだから」

 夕食のために食堂へ向かう最中、苛立ちを隠そうともせずルイズがそう言った。

「あら、い~じゃない。もう過ぎたことよ。ね? ダーリン」

 キュルケが艶めかしく番長に絡みつく。
 豊満な乳房と肉々しい太ももが必要以上に押し付けられ、大人への過渡期にいる少年の三大欲求の一つを否応なく刺激しようとした。
 どこで気に入られたのだろうか、番長に心当たりはない。

 振り向きざまにその姿を見止めたルイズが、さらに怒気をあげる。

「な、ちょ、キュルケ! アンタなに人の使い魔に色目つかってるわけ!?」

「なによ。使い魔だろうと下僕だろうと恋愛は個人の自由よ。ね? ダ~リン」

「そういう問題じゃないわよ!」

 とりあえず歩きにくいので離して下さい。

「それに、ダーリンだってこんな貧相な娘より私の方が良いに決まってるじゃない。ねぇダーリン」

 そう言われて、思わず2人を見比べた。
 ルイズとキュルケ。松永綾音と上原小夜子。
 うん、問題ない。

「好き嫌いはアリマセン。何でもよく食べマス」

 しまった。つい本音が出た。

「バ……バ~ン~チョ~!?」

「あら、ダーリン意外と手練なのかしら」

 何がだ。何のだ。

「でも、そういうのもいいかも。最近の男は初心なのはいいけど意気地もなくて……激しく組みし抱かれるのも燃えるわね」

 何をだ。何でだ。

「キュ、バ、キュルバンケ!」

 ルイズはどっちに怒りの矛先を向けたらよいのかわからず、右往左往していた。
 タバサは我関せずと、歩きながら本に集中している。

「どうせこの子のことだから、夜も床で寝させられたりしてるんでしょう? ああ、可哀そうなダーリン」

「か、勝手なことを……」

 図星である。

「私のところに来れば、ふかふかのベッドで眠れるわよ。
 ちょっと狭いかもしれないけど……私も一緒だ・か・ら。―――ほ・ら、フッカフカ」

 そう言ってキュルケが、番長の手を自分の胸へと導こうとしたその時。

「ちょ、いい加減にしなさいよ!」

 ルイズの怒りがリミットを超えた。
 番長に抱きつくようにしてキュルケとの間に割り込む。

「あら、女の嫉妬はみっともないわよ?」

「しっ……誰が! 誰によ!」

「……アンタ、自分で気がついてないの?」

「何が!」

「今の自分の姿」

「……へ?」

 上を見る。番長の顔がある。困った顔をしている。
 前を見る。暗い。少し離す。番長の胸があった。
 自分。抱きしめている。誰を?

「くぁswでrftgyふjきぉp;@:!!!」

 残像を残してルイズが飛びのいた。番長の短刀技よりも速い。
 顔が真っ赤だ。頭のてっぺんからケトルが鳴り響いている。

「な、なななななな、な!」

「ふふ、初心なのねルイズ。ちょっとだけ可愛いわよ?」

「な、なにいってるろ! ほ、ほら! さっさと行くわよ!」

 ごまかした。

「キュルケさん……うちのご主人様をあんまりからかわないでくれるかな」

 取り残された番長が、苦笑を浮かべる。

「あら、からかってるだけじゃないわよ? 半分はホ・ン・キ。
 あと、私のことはキュルケと呼んで。呼び捨てで……ね? ダーリン」

 そう言うと、キュルケはウィンク一つルイズに続く。
 とんだクセ者だった。

「なにしてるのよバンチョー! 早く来なさいよ!」

 進む先からルイズが番長を急かす。
 これからの人間関係を考えると頭が痛い。

「…………」

 一歩後ろを歩いていたタバサが番長を追い越す。
 どうやら今までの喧騒の中、眉ひとつ動かさず本に集中していたらしい。

「……大物だな」



 ※※※



 食堂は多くの生徒達で賑わっていた。
 どうやら今日の夕食は人気メニューらしく、普段見ない顔までちらほら見かけられる。
 ルイズがその場に足を踏み入れると、賑やかな談笑は徐々にざわめきに変わっていった。

「あら、もう噂になってるのね」

 キュルケがどうでも良さ気にそう言った。
 当然と言えば当然か。あれだけの規模の爆発が生徒達の主生活場で起こったのだ。
 少し興味をもって調べれば、その原因は瞬く間に広まるだろう。

「おい、あいつだぜ」

「あいつって……ゼロのルイズじゃないか」

「ああ、あいつが今回の事件の張本人らしい」

「嘘だろ? だってゼロだぜ?」

「確かに、あのルイズにあれだけの魔力があるなんてなぁ」

「じゃあ、その魔力を制御できたら……」

「ないない、あのルイズだぜ。魔法の成功もゼロ。制御の確率もゼロさ」

「……違いない」

 本人を前に、はばからず陰口が食堂に充満していく。
 その有様は、事件前よりも悪化しているようにも見えた。
 中には「危険じゃない?」「隔離した方が……」なんて声も聞こえてくる。

「……さすがにこれは」

 そうキュルケが眉間に皺をよせる。
 そこにルイズと罵り合う時の影は一欠片もなかった。

「言わせとけばいいわよ」

 その言葉に番長・キュルケ・タバサの3人が注目した。
 ルイズは怒りでも悲しみでもない目でまっすぐ前を見ている。

「近いうちに、なにも言えなくなるんだから」

 そう嘯きながら、ルイズはざわめきの中に足を進めた。

「……あの子、なんか変わった?」

 キョトンとキュルケが首を傾げる。

「……かもね」

 番長が、眩しそうにルイズを見守りながらその後に続いた。

(……ふ~ん)

 さらにその番長を、キュルケが嘗めるように見つめる。
 その瞳は、獲物を見つけた捕食者のようであった。

 4人が食事の席に着く。
 ルイズ・番長・キュルケ・タバサの順で横並びに座った。
 初めは床に座らされて硬いパンでも齧らせられるのかと何故か思っていた番長は、ルイズが隣を勧めたことに多少戸驚いていた。
 「平民が貴族と食事を同席できるなんてありえないんだからね。感謝しなさい」とはルイズの言。
 まあ、その前にキュルケが番長の隣に座ろうとしたところで一悶着あったのだがそれは余談だ。

 食事が運ばれてきた際、タバサの前に並べられた食事を見て番長は目を見張った。
 野菜? 山菜? 雑草? そう、どう見ても雑草だ。
 よく見ると、番長の前に置かれたパスタの上にもちょこんと同じものが置かれている。パセリのようなものだろうか。
 だが、タバサのそれは量が違う、山盛りだ。メインのパスタが殆ど隠れてしまっている。
 パスタが3、草が7だ。繰り返す。パスタが3、草が7だ。
 しかも全体の量が他人のそれと比べてやたら多い。これを全部食べるのだろうか。

「……おいしい」

 タバサが美味しそうに―――表情は変わらないが―――ただの草としかいいようのないそれを咀嚼しながら、勧めるように番長を見た。

「……やめといたほうがいいわよ」

 ルイズが視線を合わさずに、ボソリとそう言った。
 「何故?」と聞き返しても答えは返ってこない。ルイズの皿では草だけが横に除けられていた。

 ゴクリと番長の喉が鳴る。
 草―――その姿はまるで、奈々子が何故か冷蔵庫にしまっていた雑草のようだ。
 それを食した夜、腹を壊してなかなか寝付けなかった事を思い出す。
 ―――物体Xよりましだったが。
 だがしかし、奈々子の雑草をはじめ、カビの生えた味噌、賞味期限の切れた牛乳、泥団子、
 果ては奈々子が楽しみに取っておいたプリンでさえもたいらげてしまう『豪傑』級の勇気をもった豪の者、番長である。
 ―――物体Xは無理だったが。
 この挑戦を受けないわけにはいかない。

 おそるおそる、草を口に運ぶ。租借。
 まずは草らしい青臭さ。その直後、強烈な苦みが口内に充満した。少々の渋みがアクセントとなってエッセンスが隠し味にまったりと。
 ―――まずくはない。むしろ、割といけるかも。

「……悪くないね」

 その声に、ルイズとキュスケが「ギョッ」と注目した。

「天ぷらにしたら美味しいんじゃないかな」

「……天ぷら?」

 タバサが天ぷらに興味をもったようです。

「ああ、天ぷらっていうのはね……」

 番長が天ぷらについての説明を始める。タバサは割と真剣な表情で聞いている。
 間に挟まれて、キュルケが迷惑そうにしていた。
 ちなみに番長の世界で、雑草をなんでも天ぷらにして食べるタレントがいる、というのは余談である。

「……後で詳しく教えて」

「ああ、いいよ」

 番長がグッと親指を立てる。
 タバサがそれに応える。
 奇妙なところで意気投合する2人であった。



 食事も半ばの頃。―――ちなみにタバサは人の3倍の量の食事を既に終えていた。
 食堂の中央付近でなにか騒ぎが起こっているのが聞こえた。
 どうやらその中心にいるのは、一人の男子生徒とメイドのようである。
 男子生徒は何を怒っているのか、一心にメイドの少女を怒鳴りつけている。

「あら、ギーシュじゃない」

 ルイズの知った顔のようだ。
 見ると番長も見たことがある顔……だと思うがよく覚えていない。
 隻眼に軽いウェーブがかかった金髪の美少年だが、何故か鼻につく。
 その少年の怒りを一身に受けているのは―――

「……シエスタ?」

「シエスタ? って確か昨日の朝の……」

 ルイズも思い出したようだ。
 ルイズは昨日の朝の、番長とシエスタの出会いを聞いていた。というより聞く前から知っていた。
 昨日の朝、時間より随分早くに目が覚めたルイズは、2度寝を決め込んだがなかなか寝付けず、
 朝の散歩にでもと洒落込んだところで番長とシエスタを発見したのである。
 その後の会話までバッチリたっぷり盗み聞きした後で、番長が帰る前にベッドに戻ったのだが、
 そこで再び眠気が襲ってきてしまい2度寝したのである。
 それが昨日のルイズの寝坊と不機嫌の理由であった。

 シエスタは頭から胸元まで水に濡れている。ギーシュにかけられたのだろうか?
 ルイズはギーシュについて、自惚れ屋でナルシストで、名門の出であることを鼻にかけているが実際はヘタレのボンボン。
 だが女性には決して手を上げない似非紳士だと聞いていたが、相手が平民だと範疇外なのだろうか。

「ギーシュね……顔はまあ良いんだけど……私はパスかな」

 キュルケが聞いてもいないことを口にした。

 ルイズが番長を見やる。その瞳は、静かな怒りに満ちていた。

「行ってもいいわよ」

「……え?」

 ルイズがため息ながらに番長を促す。

「……友達なんでしょう? 彼女、今にも泣き出しそうよ。行って助けてあげなさい」

 言われるまでもない。
 ルイズの言葉があと2秒遅かったら、番長は例え主の制止があろうとこの場を飛び出していただろう。
 しかし、その言葉に驚いたのはキュルケである。あのルイズが平民のメイドを気遣うとは。

 キュルケがその番長の方を向いたとき、すでにそこに番長の姿はなかった。



「いったいどう責任をとるつもりなんだ!」

 ギーシュと言うその少年は、激しい剣幕でまくしたてていた。

「申し訳ありませんグラモン様! 申し訳ありません!」

 声の先では、シエスタが半泣きになりながら頭を下げている。

「申し訳ありません、申し訳ありません」

 申し訳ありませんしか言わない、もとい言えなくなったシエスタにギーシュの苛立ちが増す。
 その怒りの形がテーブル上のパスタに変わった時、その腕を掴み止める男の姿があった。

「……食べ物を粗末にするものじゃないな」

「な、なんだ貴様は!」

「アンタは少し落ち着いた方がいい」

 もちろん番長である。

「なんだと!? 貴様! 平民の分際で貴族の僕に意見する気か!」

 ギーシュの激昂が番長に飛ぶ。
 しかし番長は、それをどこ吹く風とシエスタに歩み寄った。

「大丈夫? シエスタ」

「あ……バ、バンチョーさん!」

 ハンカチを取り出し、シエスタにかかった水を丁寧に拭いていく。
 その手が胸元に近づいたあたりで、番長の手が止まった。

「あ……っとゴメンよ」

「い、いえ……」

 シエスタの顔がほのかに赤く染まる。

「じゃあ、これあげるから。あとは自分で」

「は、はい。洗ってお返しします」

 シエスタには番長が、自分の危機を救ってくれた白馬の王子様に見えたことだろう。
 2人が挟む空間が、ピンク色に染まる。
 少し離れたテーブルでは、ルイズが「やっぱり行かせなきゃよかった」とばかりに顔を歪めていた。

「おおいぃぃ! 僕を無視するな!」

 怒りで顔を赤くしたギーシュが番長の肩をつかむ。
 しかし、振り向いた番長を見て、「ヒッ」と息をのんだ。
 ギーシュを睨みつける、その瞳に灯る光の色は『紅』―――

「き、貴様、その平民のメイドを庇うのか? その娘は2人のレディの名誉に傷をつけたんだぞ。それに―――」

 ギーシュは一方的に自分の主張を翳している。
 やれやれだ。一方の意見だけを鵜呑みにしてはいけない。
 番長はシエスタに向きなおり、声をかけた。

「なにがあったの? シエスタ」

「あ、あの……その……」

 2人の話を纏めるとこうだ。
 ギーシュは2股をかけていた。自業自得でどっちにも振られた。以上。

 もう少し詳しくするとこうだ。
 ギーシュが2股をかけていた。
 そのギーシュの懐から落ちた香水を、シエスタが拾って返そうとした。
 それが原因で2股がばれ、どっちにも振られた。さらには平手打ちのおまけつき。

「なんだ、ギーシュが悪いんじゃねぇか」

 近くで話に聞き耳を立てていた男子生徒が、呆れたようにそう言って去っていった。

「……ふん、どいつもこいつも。薔薇は多くの人を楽しませる為に咲くのだ。
 特定の誰かの元で咲いてはならないのだよ。それくらい理解してほしいものだが……」

 勝手なことをいう男である。

「それと貴様……俺は貴様を知ってるぞ。たしかゼロのルイズに召喚された、平民の使い魔だったな。
 なるほど、飼い主が飼い主なら、使い魔も使い魔ということか」

 馬鹿にするように、ギーシュの口元が歪んだ。
 ピクリと番長の眉間が歪む。

「そ、そんな顔をしても無駄だよ、礼儀を知らない使い魔クン」

「こんなことだから、教室を全壊なんてさせても、のうのうと授業を受けていられるんだ」

 番長の眉間の皺が、更に濃くなっていく。

「魔法が使えない落ちこぼれの役立たず。おこぼれで在籍させてもらってる身でありながらあんな事件まで起こしてさ。
 学院もアレだよね。あんな危険なクズ、さっさと追い出してしまえばいいのに。君もそう思わな……」

「―――黙れ」

 番長が低く唸った。
 武器を持っていないはずの番長の、左手の紋章が一際強く輝いている。

「お前がルイズの何を知っている? ルイズがどれだけ悩んだか、ルイズがどれだけ努力したか、お前になにがわかる。
 俺も全ては知らない。でもルイズの涙を俺は知っている。ルイズの痛みを知っている。ルイズの願いを知っている」

 ―――その声は、少し離れたテーブルにも届いていた。

「バンチョー……」

 2股をかけていたのは、まあいい。―――いやよくないが。
 番長的にはまぁ……アリなんじゃないかな? アリかも知れない。まぁちょっとは覚悟しておけ。

 だが彼は、ギーシュは。

 この世界に来て、初めての友達の少女を理不尽に罵倒した。
 誇り高き、我が主を侮辱した。

 すなわち―――ギーシュは番長を怒らせた。

「クズはお前だ」

「なっ……」

 言い返したいギーシュだが、あまりの番長の迫力に声が出ない。
 もとより、筋が通っていないのはギーシュの方だ。言い返せるわけがないのである。

「……っ、い、いいだろう」

 そんなギーシュが、やっとのことで口にした言葉は。

「そこまで言うのなら」

 ギーシュが左の白手袋を脱いで、番長に叩きつける。

「―――決闘だ」




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