ロングビルを先頭に、一同は鬱蒼と茂る茨の森を飛び進んでいた。
女王が攻撃を止める瞬間、ロングビルは一人群衆の中から抜け出し森の奥へと逃げ出していた。
そして取り残された者達は一人二人と彼女の後を追ううちに、全員がそれに釣られて同じ方向に逃げ出していた。
女王が何故後ろに振り返ったのか、などと考える暇は無かった。
可能な限り飛行速度を上げ、ひたすら皆の進む方向に自分も突き進むことしかできなかった。
女王が攻撃を止める瞬間、ロングビルは一人群衆の中から抜け出し森の奥へと逃げ出していた。
そして取り残された者達は一人二人と彼女の後を追ううちに、全員がそれに釣られて同じ方向に逃げ出していた。
女王が何故後ろに振り返ったのか、などと考える暇は無かった。
可能な限り飛行速度を上げ、ひたすら皆の進む方向に自分も突き進むことしかできなかった。
「ちっ……」
後方を一瞥したロングビルは眉を顰めながら舌打ちをした。
自分より遥かに後ろで飛行する生徒達は彼女にとって目障りな存在だった。
女王の真後ろにゴーレムを造り出し、女王の気を引きつけたのは彼女だ。
しかし、彼女が咄嗟にそのような行動を取ったのは皆を救うためではない。
あの時の彼女は自分一人だけが逃げるための隙を作ろうとしていた。
足を竦ませた大勢の生徒達は囮としてあの場に残ってくれるものと思っていた。
(く……この様子だと絶対に追っ手が来る)
ロングビルは急激に高度を上げると、地上約100メイルの位置でフライの魔法を中断した。
彼女は高速で呪文を唱えながら落下する。
詠唱を完了させた彼女は再びフライの魔法を使う。
地面に直撃する寸前、彼女の体は跳ねるよるに宙に舞い上がった。
浮力を得た彼女は後ろを向きながら大声で叫んだ。
「ゴーレム! 奴らを押さえろ!」
後方を一瞥したロングビルは眉を顰めながら舌打ちをした。
自分より遥かに後ろで飛行する生徒達は彼女にとって目障りな存在だった。
女王の真後ろにゴーレムを造り出し、女王の気を引きつけたのは彼女だ。
しかし、彼女が咄嗟にそのような行動を取ったのは皆を救うためではない。
あの時の彼女は自分一人だけが逃げるための隙を作ろうとしていた。
足を竦ませた大勢の生徒達は囮としてあの場に残ってくれるものと思っていた。
(く……この様子だと絶対に追っ手が来る)
ロングビルは急激に高度を上げると、地上約100メイルの位置でフライの魔法を中断した。
彼女は高速で呪文を唱えながら落下する。
詠唱を完了させた彼女は再びフライの魔法を使う。
地面に直撃する寸前、彼女の体は跳ねるよるに宙に舞い上がった。
浮力を得た彼女は後ろを向きながら大声で叫んだ。
「ゴーレム! 奴らを押さえろ!」
ロングビルの後ろを進んでいた生徒達の前に、突如10メイル程の大きさのゴーレムが出現した。
ゴーレムは生徒達の行く先を塞ぐ。
「う、うおわぁ!」
ゴーレムの拳を避けるために、彼らは横にある道に進んだ。
今まで、考え無しに先を行く者の後を追っていた生徒達が別々の道を進み散り散りになっていく。
「待て! 待つんだ!」
ルイズを背負いながら飛ぶコルベールが叫んだ。
「集団から離れては危険だ! ゴーレムの上を飛べ!」
焦りのためか、コルベールの語気は荒かった。
まだ横道に逸れていない生徒達の多くはコルベールの指示に従った。
ゴーレムは生徒達の行く先を塞ぐ。
「う、うおわぁ!」
ゴーレムの拳を避けるために、彼らは横にある道に進んだ。
今まで、考え無しに先を行く者の後を追っていた生徒達が別々の道を進み散り散りになっていく。
「待て! 待つんだ!」
ルイズを背負いながら飛ぶコルベールが叫んだ。
「集団から離れては危険だ! ゴーレムの上を飛べ!」
焦りのためか、コルベールの語気は荒かった。
まだ横道に逸れていない生徒達の多くはコルベールの指示に従った。
「うぎゃあああああ!!」
「きゃああああ!!」
巨大な茨の蔓の群れの中、若い男女の声が木霊した。
コルベール達の進む道の横から聞こえるその大きな悲鳴は、ロングビルの耳にも届いていた。
(ふふ、どうやらあいつらはやられちまったようだね)
高く聳える茨の塔の間をくぐり抜けながらロングビルはほくそ笑む。
(このままたっぷりと時間を稼いでおくれよ)
その時、ロングビルの真下の地面が裂けた。
無数に生えた人間の腕ほどの太さの細い茨が彼女の体を締め付ける。
「そ、そんな、まさか!? う、うわあぁぁぁあ!!」
身動きを封じられた彼女は地中深くに引きずり込まれたいった。
「きゃああああ!!」
巨大な茨の蔓の群れの中、若い男女の声が木霊した。
コルベール達の進む道の横から聞こえるその大きな悲鳴は、ロングビルの耳にも届いていた。
(ふふ、どうやらあいつらはやられちまったようだね)
高く聳える茨の塔の間をくぐり抜けながらロングビルはほくそ笑む。
(このままたっぷりと時間を稼いでおくれよ)
その時、ロングビルの真下の地面が裂けた。
無数に生えた人間の腕ほどの太さの細い茨が彼女の体を締め付ける。
「そ、そんな、まさか!? う、うわあぁぁぁあ!!」
身動きを封じられた彼女は地中深くに引きずり込まれたいった。
「この悲鳴は……」
前方から聞こえる悲痛な叫びがコルベール達の前進を止めた。
先の見えない道を進む不安と後方に控える女王に対する恐怖が彼らを苛む。
「ミ、ミスタ・コルベール……」
ギーシュは全身を震わせながらコルベールの名を呼んだ。
この先どうすればよいのかを訊ねようとしたのだ。
ところが、ギーシュが質問の言葉を口にする直前に彼らの周りから細い茨の群れが伸し出した。
「いやあああああ!!」
生徒が一人地面に引きずり込まれた。
高速で伸びる茨は逃げ惑う生徒達を次々と地中に呑み込んで行く。
「くぅ……!」
コルベールは考えた。
彼らの姿は女王には見えていないはずだった。
事実、高く聳える茨の森は彼らの姿を女王から隠していた。
しかし、地中から現れた茨の蔓はまるで目があるかのように彼らを追い、そして捕らえていく。
(頼む……!)
コルベールは自らの予想が当たっていることを願いながら地上に降り立った。
そして杖を後方に向け、大きな炎の玉を発射した。
すると、先ほどまで彼らを追っていた茨の動きがピタリと止まった。
数十本の茨が炎の玉を追う。
炎の玉に一本の蔓がぶつかると、炎の玉を追っていた茨は互いに絡み合い、そのまま地中に潜っていった。
(よし!!)
コルベールが無数の火の玉を上空に向かって発射した。
茨の群れは彼らを残し、火の玉を追っていった。
「熱です! あの茨は熱に反応して私達を追っています!」
森中に響き渡る悲鳴が止み、代わりにコルベールの声が辺りに木霊した。
前方から聞こえる悲痛な叫びがコルベール達の前進を止めた。
先の見えない道を進む不安と後方に控える女王に対する恐怖が彼らを苛む。
「ミ、ミスタ・コルベール……」
ギーシュは全身を震わせながらコルベールの名を呼んだ。
この先どうすればよいのかを訊ねようとしたのだ。
ところが、ギーシュが質問の言葉を口にする直前に彼らの周りから細い茨の群れが伸し出した。
「いやあああああ!!」
生徒が一人地面に引きずり込まれた。
高速で伸びる茨は逃げ惑う生徒達を次々と地中に呑み込んで行く。
「くぅ……!」
コルベールは考えた。
彼らの姿は女王には見えていないはずだった。
事実、高く聳える茨の森は彼らの姿を女王から隠していた。
しかし、地中から現れた茨の蔓はまるで目があるかのように彼らを追い、そして捕らえていく。
(頼む……!)
コルベールは自らの予想が当たっていることを願いながら地上に降り立った。
そして杖を後方に向け、大きな炎の玉を発射した。
すると、先ほどまで彼らを追っていた茨の動きがピタリと止まった。
数十本の茨が炎の玉を追う。
炎の玉に一本の蔓がぶつかると、炎の玉を追っていた茨は互いに絡み合い、そのまま地中に潜っていった。
(よし!!)
コルベールが無数の火の玉を上空に向かって発射した。
茨の群れは彼らを残し、火の玉を追っていった。
「熱です! あの茨は熱に反応して私達を追っています!」
森中に響き渡る悲鳴が止み、代わりにコルベールの声が辺りに木霊した。
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「うふふふふふふ」
女王の前には地中に呑まれた生徒達の鉄像が並べられていた。
「あー面白ーい。この絶望しきった顔がたまらない」
痛みと恐怖に歪んだ顔のまま固められた人間達を見て、女王は心底喜んでいた。
女王にとって他人の不幸ほど愉快なものは無かった。
「フッフッフッフッフ」
手の甲を口に宛がい、女王が笑い声を上げる。
「楽しみだねぇ……この学院の奴らをみんな黒くしたら、今度は隣の国を滅ぼしてやろう」
女王が腰を折ると、直径20メイル程の茨が彼女の後ろから生え出した。
互いに巻き付き合う茨は巨大な椅子となり、後ろに倒れこむ女王を迎え入れる。
「そうしたらまた次の国を滅ぼして……誰も私に逆らえない私のための世界になるのさ!」
世界中の人間やモンスター達が一同に並び、無様に平伏す光景を想像して女王は笑いを抑えきれなくなった。
「おーっほっほっほっほっほっほ!!」
女王の前には地中に呑まれた生徒達の鉄像が並べられていた。
「あー面白ーい。この絶望しきった顔がたまらない」
痛みと恐怖に歪んだ顔のまま固められた人間達を見て、女王は心底喜んでいた。
女王にとって他人の不幸ほど愉快なものは無かった。
「フッフッフッフッフ」
手の甲を口に宛がい、女王が笑い声を上げる。
「楽しみだねぇ……この学院の奴らをみんな黒くしたら、今度は隣の国を滅ぼしてやろう」
女王が腰を折ると、直径20メイル程の茨が彼女の後ろから生え出した。
互いに巻き付き合う茨は巨大な椅子となり、後ろに倒れこむ女王を迎え入れる。
「そうしたらまた次の国を滅ぼして……誰も私に逆らえない私のための世界になるのさ!」
世界中の人間やモンスター達が一同に並び、無様に平伏す光景を想像して女王は笑いを抑えきれなくなった。
「おーっほっほっほっほっほっほ!!」