あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

確率世界のヴァリエール-10


「それでは学院長、今日の任務に行って参ります!」

午前の授業も終わり、学院長室でルイズが任務前の報告を行う。
「うむ、気をつけてな。
 皆にはいつも通りに 『ワシの頼む秘密のお使い』に
 行かせた事にしておくからの」
「あのー、、、学院長。
 私が授業を休むその言い訳、何か他のになりませんか?
 最近みんなが私を同情の目で見るんですけど。
 この前なんかモンモランシーが涙を浮かべながら、
 「学院長に変な事されて無い?」とか聞いて来てましたし」
「うむ、生徒諸君がワシを何じゃと思っとるのか
 一遍ハッキリさせとかんといかん様じゃな。
 それはそうとしてじゃ」

オスマンがルイズの体を眺め回す。
「な、何ですか?」
その視線に引き気味になるルイズへ、オスマンが尋ねる。
「始祖の祈祷書はワルド子爵から預かっとるな?」
「はい。 肌身離さず持つように言われましたので」
「それと、アルビオン特別大使の証も持っとるな?」
「水のルビーですね? 姫殿下に頂いてからずっと指に付けてますけど?」
「で、何かこう、変わった感じは無いかの?」
「変わった感じ、、、? いやだ、学院長!
 何か猥褻な魔法でもかけてるんじゃないでしょうね!?」
「うむ、ミス・ヴァリエール。 君にもワシを何じゃと思っとるのか
 一遍キッチリ聞いとかんといかん様じゃな」



 確率世界のヴァリエール
  - Cats in a Box - 第十話



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「本当にここなの? シュレ」
砦の中は窓を閉め切り明かりも無く、昼間とは思えぬほど暗かった。
何より人の気配が一切無い。
懐にしまってある手渡すはずの密書を思わず探る。
「だと思うんだけどなあ~」
会議室らしき広く薄暗い空間を眺め回す。
部屋の中央には大きく長いテーブルと、その周りに椅子が置かれている。
天井には、、、何かの横断幕?

「あ」
「ど、どうしたの!? シュ、、」
言いかけてルイズも気付く。
正面の扉の向こうに不意に現れた気配に。
体中の全ての細胞が大音量で警報を鳴らす。
ルイズの全身が総毛だっていく。
途轍もなくヤバいものが、あの向こうに、居る。
「シュレ!」
慌てて使い魔の頭を引き寄せようとすると、扉の向こうから声が響いた。
「まーま、そう急がんでも良かろう?」
扉の向こうの気配に似会わぬ鈴を振るような声と共に、部屋の中に明かりが灯る。
テーブルの上にはワインとグラスが置かれ、天井の横断幕には
『ようこそ! 虚無の魔女殿』と書かれている。

ゆっくりと扉が開く。
扉の向こうに居たのは真っ白な少女だった。
白いスーツ、白いコート、白いマフラーに純白の毛皮の帽子。
黒髪のその少女がにっこりと笑う。
「はっはっは、やっと会えたの」


「うわちゃー、やっぱりアンタだったの?」
顔を引きつらせるシュレディンガーに少女が返す。
「連れない言い方じゃな、シュレディンガー。
 この前もわざわざ世界の果てまで行っておきながら
 とっとと帰りおって」
「あー。 『虚無の地平』で感じたあの気配、
 あれってやっぱりアンタだったんだ。
 でもアレ? じゃあ、アッチとコッチで二人?」
小首を傾げるシュレディンガーの袖をルイズが引く。
「シュレ、この娘、っていうかこの人って、もしかして、、、」
「そう、僕の、僕らの宿敵だった吸血鬼。 『死の河』さ」
白づくめの少女が優雅に一礼をする。
「お初にお目にかかるの、魔女殿」

その後ろから数人の男が走ってくる。
「シェフィールド殿!」
少女は鬱陶しげに後ろからやってきた男の一人を睨む。
「こ、この娘が?」
球帽をかぶった聖職者風の男がルイズを見つめる。
その後ろには武装した兵士達が控えている。
「無粋なヤツじゃな、クロムウェル。
 せっかくの対面に水を差しおって」
「クロムウェルって!」
ルイズが驚きの声を上げる。
「ほお、魔女殿も名前は知っておられたか。
 左様、この背の高い変な帽子をかぶった男が
 レコン・キスタの総司令官、オリヴァー・クロムウェルじゃ。
 ん? もう神聖アルビオン共和国の王様なんじゃったっけ?」
「い、いや、まだ、その、、、シェフィールド殿?」
「あっそ。 まーどーでもいーや」
興味なさげに目線を外し、二人に向き直る。

「まあ、せっかく会えたんじゃ。
 立ち話もなんじゃし座らんか、ん?」
言いながらワインのビンを手に取る。
「、、この砦に居た人たちをどうしたんですか?」
「そんな小難しい話は置いといて」
問いかけるルイズにワインを注いだグラスを差し出す。

ルイズがシェフィールドと呼ばれた少女を睨みつける。
そしてその後ろに立つ聖職者風の男を。
レコン・キスタ総司令官、クロムウェル。
アルビオン王家の、トリステイン王国の、姫殿下の、そして私の敵。
軽く目を閉じ、目を開く。
ワイングラスをひったくると中身をそのまま飲み干し、
たん! と、テーブルの上に置く。

「この砦に居た人たちをどうしたの!!」

白い少女は眉を上げてにんまりと笑い、ひゅう! と口笛を吹く。
そして楽しげに後ろの男を振り返る。
「クロムウェル、客人にお食事を」

  。。
 ゚○゚


シュレディンガーが椅子を引き、ルイズが腰掛ける。
対面には白い少女、そして自分の横には使い魔の3人きり。
「安心してくれて良い。
 元々この砦には王党派の連中はおらんよ。
 どうしても魔女殿に会いたくての」
くすりと少女が笑う。
「良い鴨が手に入っての。
 腕を振るうたのは久しぶりじゃがな。
 ランチはまだじゃろ?」

「へー、料理出来るの?」
シュレディンガーが軽く驚く。
「当ったり前よ。 期待してくれて良いぞ。
 ただ、良いオレンジが手に入らなんでソースの出来は今一つだがの。
 そうそう、トリステインには良いオレンジの産地があると聞く。
 タルブと言うたか? 今度クロムウェルをもがせにでもやるか」
無言で睨むルイズをよそに、少女がワインを傾ける。

「それにしても随分と変わっちゃってなーい?
 あのアーカードともあろうものが」
「ふん、まるでルーク・ヴァレンタインの様に、か?」
突然出てきた名前にシュレディンガーが苦く笑う。
「うわ、知ってたの?」
「死の河に取り込まれた際に、この私の血が混じったのだろう。
 お主らが何処で何をしておるのか位は何となく判る。
 それにな、シュレディンガー。
 私は『あのアーカード』では無いよ。
 アーカードであってアーカードでない。
 しかしアーカードそのものとも言える。
 なにせ、、、」

アーカードがグラスを置く。
「私の中には、あの人間好きで狗嫌いの
 ツンデレのヒゲ親父はおらんからのう。

 お前と同じよ、シュレディンガー。
 全てが溶け合い混ざり合う境目の無い世界から
 『私』だけが切り取られ、『私』だけが呼び出された。
 世界の果てを漂う死の河から、此方へな」
「アーカード? アンタって一体、、、」
シュレディンガーがしばし言葉を失う。

「言うたとおりさ。

 神を信じる余りに神を裏切り化物と成り果てたあの狂王は、
 永い永い時の中で、幾千幾万の命と同化を続けるその内に、
 永い永い時の中で、幾千幾万の記憶と魂に犯され、蝕まれ、
 そもそもの自分自身すらも無くしかけた。
 その時に、狂王に代わり死の河を統べる為に死の河より生まれたもの。
 それこそが青年の姿を持つ『あの私』であり、少女の姿を持つ『この私』だ。

 伯爵と呼ばれたその化物を打ち倒したヘルシング卿は
 自らの打ち倒した化物の中にあの私やこの私を見出し、
 それらの持つ力を拘束制御術式【クロムウェル】と名づけ、
 そして百年をかけて作り上げていったのじゃ。
 吸血鬼アーカードをな。
 そのアーカードの中から切り取られ召喚されたのが
 『この私』だ」

「じゃあ、こちらに呼び出されたアーカードは
 ええと、つまり、その、ロリカードだけって事?」
シュレディンガーが眉をしかめ腕を組む。
「誰がロリカードじゃ。 だがまあそういう事だ。
 この私の中にはあの串刺し公ヴラド・ツェペシュも
 あの吸血鬼ドラキュラ伯爵も居らん。
 それらは今も世界の果てを漂っておる。
 この世界にこの身一つで召喚され、シェフィールドという名を
 与えられた死の河の切れはし、 今の私はただそれだけに過ぎん」
「あの変な帽子に?」
「あの変な帽子は私のメシ当番に過ぎん。
 わしを呼んだのはムサくてヒネこびた青髭のおっさんじゃ」
吸血鬼がため息をつく。

「私はそんなおっさんに呼び出されたと言うのに。
 全くお前が羨ましい。 シュレディンガー」

それまで黙って話を聞いていたルイズに目を向ける。
「幼いながら大層なご活躍よの。
 アルビオンの戦艦を落としも落としたり21隻。
 おかげでレコン・キスタは北方の制空権を失って昔ながらの陣取りゲーム。
 戦線より向こうの反乱蜂起を治めることもままならん。
 火薬庫や鉱山もあっちこっち潰されて弾薬不足の物不足。
 スカボローは連絡不通になって久しく、ダータルネスも時間の問題。
 正規軍は二万近くもの欠員を出し、傭兵の賃金はうなぎのぼり。
 戦場稼ぎどもは大喜びじゃろうのう。
 南は南で「アルビオン解放戦線」のゲリラが
 農民を中心に勢力を拡大するカトリック信者と手を結んで
 あの変な帽子が苦心してかけた洗脳をはしから解いて回る始末。
 野火は南端の軍港ロサイスに迫る勢い。

 今やこの浮き島は、あっちもこっちも死体の山じゃ。
 いやはや、全く見事なお手前で」

「当然よ」
自分のもたらした戦火と被害が頭をよぎるが、
それでもその声は平静を保っている。
「レコン・キスタは、私の主の敵だもの!
 主の敵を打ち倒すこと。
 それこそが貴族の務めよ」

「ほう」
嬉しげににんまりと頬を上げる。
「あ奴の言うたとおりか。
 幼いながら、は失礼であったの。
 お詫びしよう、虚無の魔女殿」
軽く頭を下げ、ルイズの瞳を覗き込む。

「実にいい目をしておる。
 世界の果てで覗いてきたのであろう?
 虚無の深遠を」
ルイズの瞳の中に果ての無い闇が映りこむ。
「顕現しつつあるな、お主の中の虚無が。
 成程、担い手に相応しい」

「担い手? 何の話!?」
睨み返しつつ、ルイズがアーカードに聞き返す。
「こちらの話さ。
 それよりどうじゃ? 魔女殿。

 この私を 使い魔 にしてみんか?」

「、、、、、。
 はああ゛!?」
「なに、使い魔を2匹持ってはいかんという法もあるまい。
 わしとしてもあんなおっさんよりお主の方が面白そうじゃ。
 そもそもあのおっさんとは契約とやらもしとらんしの」
突然の展開に一人と一匹がうろたえる。
「ちょ、アーカード!?」
「なな、何言ってんのよ!
 アンタ私の敵でしょ!」
「え? 知らんよ?
 ワタシここにお呼ばれしとるだけで
 レコン・キスタとかじゃないですもの」
「じゃないですもの、じゃなくって!」
「んー、じゃあの」
  アーカードがゆっくりとその手を差し出す。


「お主が私になる、というのはどうだ?」


その目が優しくルイズを見つめる。 その心の奥底を。

「私は吸血鬼だ。
 だが吸血鬼たり得ない。
 人から化物に成り果てたモノではなく、
 人から切り離されたモノに過ぎぬからだ。
 だからこそ、人が愛おしい。
 だからこそ、人を知りたい」

アーカードの瞳が、ルイズ自身をとろとろと飲み込んでいく。

「私となれ。

 私の力を与えよう。
 夜を統べる力を。
 死を統べる力を。
 血を統べる力の全てを。
 あの狂王のように、あの男にしたように。
 私はお前を選ぼう。
 だからお前は私を選べ。
 私と一つになり、この御座に座れ。
 そしてお前を教えてくれ。
 私となれ、ルイズ。

 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」

「私は、」
血の匂いが部屋に満ちてゆく。
あれほど渇望した「力」が今、目の前にある。
甘やかなその匂いに誘われるように、
ルイズはゆっくりと自らの手を伸ばす。
「私は、、、」
「駄目! ルイズ!!」

シュレディンガーが叫んだその時。
閉ざされていた扉が開け放たれ、十数人の兵士達が
部屋の中になだれ込み、テーブルの三人を囲む。

「シェフィールド殿」
怯えと、しかし決意のこもった声が響く。
兵達の向こうからクロムウェルが進み出る。
「今回ばかりはあなたに従う事は出来ません。
 そこにいる虚無の魔女は、我らの悲願を妨げる者。
 あなたには悪いが、今、この場で、禍根を断たせて頂く」
青ざめた顔で告げると、己の右手を振り上げる。

ゴズンッ。

突然に響いた低い金属音に、アーカードを除く全員の視線が集まった。
兵士の一人が宙に浮いている。
がらんっ、と音がして兜が床に落ち、不思議そうな表情をした顔が現れた。
兵士は自分の腹から生えた黒く細い棒のような物を見つめている。
それは床から伸びていて、自分の背中を刺し貫き天井を砕いていた。
何かを喋ろうとして、替わりにごぽり、と血の泡を口から溢れさせた。

「クロ~ムウェ~ル?」
椅子に座ったままのアーカードが首だけをかくりと後ろへ倒し、
何が起こったのかを理解できていない球帽の男へ目をやった。
椅子越しにさかさまになった少女のその頭からは黒髪がこぼれ、
串刺しになった男の下へと伸びている。
そして、他の兵士達の足元にも。

「私は客人の食事を持って来い、と言うたんじゃぞ?
 私の食事を持ってきてどーする」

兵士の数だけの金属音と、悲鳴が響いた。
断末魔と、血の滴る音が部屋を包む。
「三度は言わんぞ? クロムウェル」
出来の悪い生徒に語りかける様に、呆れ顔で短く告げる。
クロムウェルはぺたんとその場に座り込むと、
蚊の鳴くような悲鳴を上げてずるずると廊下の向こうに消えていく。


兵士達の死体は影の中に飲み込まれ、消えた。
しかし穿たれた天井から落ちる石片と、何より部屋に立ち込める
濃密な血と臓腑の臭気が、今の出来事が現実だと告げている。
アーカードが席を立ち、ルイズへ歩み寄る。

「はっはっは、おっちょこちょいな奴でのう」
「貴方は私の敵よ、アーカード」

席を立ったルイズが、アーカードを見据える。
「貴方を私の使い魔になんてしない。
 私は貴方と一つになんてならない。
 レコン・キスタもウェールズ様も姫殿下も関係ない。
 貴方は私の敵よ、アーカード」

「ほう、それは残念」
満足げな顔でアーカードが言う。

「そうか。
 そうなのか。
 お前がこの私を、打ち倒してくれるのか」

一歩。 一歩。 吸血鬼がルイズへ歩み寄る。
部屋の中に灯された明かりが、広がる影に殺される。
目の前の吸血鬼が、部屋に広がる闇そのものとなっていく。

「ええ。
 その通りよ。
 私が貴方を打ち倒すわ、吸血鬼(ヴァンパイア)」

飲まれず、逸らさず。
目の前に立ったアーカードの視線を
ルイズは真正面から受け止める。

ふっ、と。
アーカードが目を閉じ軽い笑みを浮かべる。
闇の気配が薄らいでゆく。

「そうか、
 それは楽しみだ。
 とてもとても楽しみだ」

アーカードがうっとりと、楽しげにつぶやく。
その視線はルイズを見つめながらも、
遥か先へと向けられていた。

「ではその時を、
 再び戦場でまみえるその時を楽しみに待つとしよう。
 こんな借り物の闘争なぞでない。
 私とお主との戦場(いくさば)でな、
 虚無の魔女殿」

そう言うとアーカードはきびすを返し、
扉をくぐると廊下の先の闇へと溶けていった。
ルイズに差し出していたその手を背中越しに掲げて。
闇に消え入るその後姿をルイズは見送り、
シュレディンガーはにんまりと主人の横顔を見つめた。


「シュレ、、、」
気配の消えた廊下の先をじっと見つめたまま、
ルイズがシュレディンガーの袖口を掴む。
「うん! ルイズ」
シュレディンガーが誇らしげに返事をする。
「ぶふぇああ゛あ゛ぁぁ~~!!」
肺に溜まった空気を吐き出し、ルイズがその場にへたり込む。
「ごわ゛がったああ~~!」
「はいはい、よく頑張ったね~。
 えらいえらい!」
シュレディンガーがニコニコとその頭をなでる。

座り込み、床を見つめたままルイズがつぶやく。
「シュレ、わたし、、強くなりたい」
その手を握り返し、シュレディンガーが応える。


「なれるよ、もちろん。
 だって、ルイズはルイズだもの!」

  。。
 ゚○゚




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