あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

瀟洒な使い魔‐07b


所変わって、大浴場。ここは元々学院全ての女生徒や女教師達が一斉に入れるよう、
縦15メイル、横25メイルという、深さを除けばプールのような広さを持つ浴槽を有している。
湯には香水が混ぜられ、貴族の女子が入るに相応しい香りを放っている。
普段は大勢の少女達で賑わっている浴場だが、今この浴場を利用しているのは僅か数人。
各人が思い思いの場所で湯に漬かり、日ごろの疲れを癒している。

「あぁ……このなんかセレブでゴージャスな香りがなんとも……
 ここの皆は毎日こんなお風呂なんですねぇ、いいなあ、羨ましいなあ。ああブルジョワジー!」

「紅魔館の品位が疑われるからそれ以上貧乏臭い発言はやめなさい美鈴」

湯に身をゆだね浮かびながら叫ぶ美鈴と、その横ですこんと彼女の頭をはたく咲夜。

「ええと、タバサちゃんでしたっけ。お風呂で本を読むなんて本、痛みませんか?」

「問題ない、持ち込む本は固定化や他の魔法で保護している」

浴場でもなお読書に勤しむタバサと、それを横から覗き込む小悪魔。

「いやぁ、まさかつい二・三日前にガチでやりあった相手と知り合いになった挙句風呂とはね。
 このマチルダ、予想だにしなかったよ」

「ほんと、サクヤが来てから退屈しないわね。男漁りなんかよりよっぽど楽しいわ」

咲夜が来てよりめまぐるしく変化する日常に溜息を漏らすマチルダと、逆に楽しそうに笑うキュルケ。
だが、その一角で、怨念にも似たどんよりとしたオーラをまとう人物が1人居た。
浴槽の隅の方で桃色のロングヘアを湯に揺らめかせている、1人の少女。『ゼロ』のルイズである。
その視線はその場に居る全員、正確には全員の胸元、要するに胸に向かっている。
小さいを通り越してまっ平らなタバサを除き、その胸は例外なく出っ張っていた。
咲夜はまだいい。大きすぎず小さすぎないそれはまだ『美しい』と言う感想が浮かぶ。
だがそれ以外は駄目だ。極刑をもって然るべきである、とルイズは思う。

まずキュルケ。ヴァリエールの仇敵ツェルプストーの人間であると言う時点でアウトなのに、
あのはちきれんばかりに出っ張った胸は反則である。よって極刑に処すべきだ。
次にマチルダ。色々と世話になったが奴はあの『土くれ』のフーケだ。
程よく肉がつき、出るところもしっかり出ているあの肢体は反則だ。よって極刑に処すべきだ。
その次に美鈴。咲夜の知り合いだと言うから勘弁してやろうかと思ったが、
あの奔放に存在を主張する、湯に浮かぶほどの脂肪の塊は反則である。よって極刑に処すべきだ。
最後に小悪魔。師と仰ぐパチュリーの使い魔ではあるが、それとこれとは話が別だ。
キュルケや美鈴ほどではないが、豊満に飛び出た胸部は反則である。よって極刑に処すべきだ。

今ほど杖を置いてきた事を後悔したことは無い、とルイズが歯軋りしていると、
小悪魔が見られていることに気付いたのか、こちらに近づいてくる。
丁度いい、まずはこいつから血祭りに上げてくれるわ! と気炎を上げていると、
その小悪魔に手を掴まれて引っ張られる。予想外の事に対応が送れ、バランスを崩し前のめりに倒れる。
その軌道上には当然ながら小悪魔がおり、2人の身長差もあり、
ルイズの頭が小悪魔の胸元に飛び込む形になってしまったのは仕方のないことだ。

ふよん、とでも表現される感覚と共に、ルイズの視界が肌色に包まれ、
顔全体に柔らかい圧迫感を感じる。息は出来なくないが少し息苦しい。
なんだこれは。でもこの感覚はどこかで覚えがある。ルイズは記憶の糸を手繰る。
そうだ、確か2番目の姉に抱きしめられたときに感じた感覚に似ている。
ということは、つまり――――

そして、ルイズが『小悪魔の胸に顔を突っ込んでいる』という事実に思い至った直後、
ルイズの意識は闇へと落ちた。主に酸欠で。気絶する前のルイズの脳裏をよぎったのは、

―――なんで小悪魔なんて名前なのにここはこんな大きいのよ。

というどうしようもない事であったという。

ルイズを「のぼせた」としてメイドに医務室に連れていたせた後、
咲夜達は改めて湯に漬かり直していた。

「いやぁ隅っこで黒いオーラ垂れ流してるからちょっと一緒にお話しようと思っただけなのに、
 まさかこんな漫画みたいな展開になるとは……」

頭を掻きながら、頭の横の羽をパタパタと動かす小悪魔。
彼女個人としては全く予想外の事態だったためか、なんともばつの悪そうな顔をしている。

「ま、どうせ詮もない逆恨みでしょうからいい気味ね。
 さ、それよりどんな話してたのか教えて頂戴な」

キュルケがひらひらと手を振って咲夜たちを促し、咲夜達は先程の話し合いの内容を話し出す。
開始初期に咲夜のナイフで昏倒していた小悪魔は話の内容の大半を知らなかった為、
「なるほどー」等といいながら聞く側に回っていたりするのだが。
また、命蓮寺の話になるとタバサが何故か身を硬くしたが、その理由を本人は黙して語らず、
周囲に疑問を残した事を記しておく。




「……なるほどねえ。そりゃ確かに命拾いしたわね。運がいいわ、あの子。
 あ、そうだ咲夜。最後に行ってた、エンマ様の言葉ってのは何?」

話が終わると、キュルケはレミリア相手に顔を蒼くしていたルイズのくだりを思い出したのかくすくすと笑う。
そして最後の部分にやはり興味を引かれたのか、ずいっと身体を咲夜に寄せてきた。
やっぱり話さないと解放してくれないだろうなぁ、と嘆息し、咲夜は口を開く。

「大したことじゃないわ。その人、お節介焼きな人でね。
 貴方は人に冷たすぎるからもう少し人に優しくなりなさい、ってお説教されたわ。
 おかげで体にいいお茶を飲むようになったけど」

「それは、何か違う」

「そうかしら?」

タバサのツッコミをするりと受け流し、咲夜は浴槽から抜け出て入り口へと向かう。

「まあ、人間なるようにしかならないものよ。それがどんな良い事だったって、
 急にああしろこうしろなんていわれて素直に受け取る人間なんかいるわけ無いわ。
 特に幻想郷じゃあね。さて、それじゃあ私は上がらせて貰うわね。
 いい加減ルイズが目を覚ます頃合だわ」

そう言い残して立ち去る咲夜を見送ると、美鈴はふう、と溜息を吐く。

「うーん、全くの異世界に放り出されてちょっと変わってないかな、
 って淡い期待を持っては見ましたが、やっぱり咲夜さんは咲夜さんですねぇ」

「ゲンソウキョウに居た頃もやっぱりサクヤはあんな感じなのかい?」

マチルダの相槌に、美鈴は「あんな感じの瀟洒なメイドさんでした」と語る。
美鈴は咲夜が幻想郷にやってくる前からずっと紅魔館におり、
咲夜が来たときは一時期色々と世話を焼いていた。もっとも、
主人のレミリアがあの性格であり、友人のパチュリーもまた本の虫で、
何も知らない少女を世話出来るような人材が美鈴しかいなかったというのもあるが。

「まあ来たばっかり頃はホント可愛かったんですよ。なんていうかこう、借りてきた猫と言うか。
 まあ私も母性本能刺激されるされる……いつのまにか私もさん付けで呼ぶようになりましたけど」

「へぇ。あの無敵のメイド長にも可愛らしい少女時代があったわけかい。
 ま、あたしも楚々としたお嬢様だった時分があったわけだし、別におかしかないやね。
 ……って、なんだいあんたら、その物凄い顔は」

「いや、ミス・ロングビルの今の性格から楚々としたお嬢様時代を連想することが出来なくて。
 どう考えてもおてんばで跳ねっかえりなじゃじゃ馬しか想像できないわよ」

もっともなキュルケの茶々入れに、全員が首肯する。
あまりにもあまりなそのリアクションに腹が立ったのか、マチルダのこめかみに青筋が浮く。

「ほっほーう……中々勇気ある発言をするじゃないか、ミス・ツェルプストー?
 でもあんたみたいに男とっかえひっかえしてるようなのに言われたかないのさ、あたしもね」

バキボキゴキベキ、とさあ撲殺準備完了とばかりに指を鳴らすマチルダに、
キュルケの背筋を冷たいものが這う。やべえ地雷踏んだ、どうにか話を逸らさないと……
殺気の篭ったマチルダの視線に思わず視線をそらしたキュルケの目には、
浴槽の隅っこで頭を抱えて縮こまる美鈴の姿があった。これだ! とキュルケの脳細胞に電流が走る。

「メ、メイリン! ほら、もっとサクヤの話を聞かせて頂戴!
 お屋敷に着たばっかりの頃とか、ネタはまだ尽きてないでしょ!?」

「はは、はいぃ! マ、マチルダさんも落ち着いて!
 今から取って置きの咲夜さんのネタをお話しますから!」

そんなこんなでなんとかなだめる事には成功。このままでは上せるからと一旦上がり、
脱衣所で美鈴を囲んで椅子を並べ、その『取って置きの話』を聞くことにした。

「そうですね、これは今から何年か前の話なんですが……」

そこまで言いかけて、美鈴の語りが止まる。何事かと思って美鈴を見れば、
その頬を掠めるようにして1本のナイフが壁に突き立っていた。全員の肝が一気に氷点下に突入する。
なぜなら、そのナイフの飛んできた方向には1人のメイドが居たからだ。
ただしメイドの名前は、十六夜咲夜と言った。

「あ、咲夜さんこれはええとそのあのなんといいますかですね……」

「ああ、別に良いのよ美鈴。場を和ませようとしたんでしょう?
 貴方そう言うのは得意だものね。まあ、全員歯ァ食いしばりなさい」

入り口に陣取った咲夜は立てた親指で首を掻っ切るジェスチャーを行った後、腕を一振り。
宙に浮いて切先を正面に向けた尋常でない量のナイフが、魔法のように出現する。
悲鳴が起こるのと、咲夜が指を鳴らすのとはほぼ同時。
その日、『不慮の事故』により女子大浴場、正確にはその脱衣場は全壊する事となった。






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