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ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王-03



「サ、サイト!? サイトーーッ!」
 桃色がかったブロンドの髪の少女、ルイズが悲鳴を上げた。
 彼女は昨日のサモン・サーヴァントで平民を使い魔として召喚した生徒である。
 その彼女は今、涙を両目に浮かべながら少年の形をした鉄像を抱いている。
 少年の像は先ほどまで人間であった。
 決闘でギーシュを追い詰めていた少年こそが彼である。
「ほーっほっほっほっほっほ。他愛の無いこと」
 閉ざされていた口を巨人が開く。
 その言葉にギーシュは自分がまだ決闘の最中であったことに気がついた。
 上空に向けていた目線を下げると、何故か黒い鉄の塊と化している少年と彼に縋り付いて泣くルイズがいる。
「すげえ! ギーシュの使い魔が平民を錬金した!」
 事の一部始終を見ていた者達が歓声を上げる。
 少年がギーシュを圧倒したときのように、再び観衆が沸いた。
「いや~、いい見物だったね!」
「よかったなギーシュ、これで平民に負けずに済んだな」
「見直したぞ! ただのガラクタを召喚したと思ったら、まさかこんな凄い亜人だったなんて!」
 観衆はルイズ達には目もくれずにギーシュを褒め称えた。
 そもそも彼らが決闘に望んでいたのは正々堂々の真剣勝負ではない。
 この決闘が貴族に刃向かった平民への粛正の意味を込められたものであるからだ。
 それ故、使い魔を戦いに介入させたギーシュを非難する者はいない。
「ねぇタバサ、これって……」
「すごく、危険」
 赤い長髪の女生徒、キュルケの問いに青い髪のタバサが答える。
 現在、彼女達のように事の重大さに気づいている者はほとんどいない。
 使い魔は常に主に従順であるという先入観が、彼らが本来感じるべき危機感を薄れさせているのだ。

「しかし驚いたよ。まさか君がこんなにも素晴らしい女性だったなんて」
 学友達からの称賛に上機嫌なギーシュは意気揚々と巨人に話しかけた。
「ふふん、お世辞はいらないよ」
 巨人は細長い黒金の指を口に宛がい零れそうになった笑みを隠す。
 ギーシュと巨人の談笑は一頻り続いた。
「でも、どうやって彼を錬金したんだい?」
 ギーシュは思い出したように尋ねた。
「なんだい見てなかったのかい? それじゃあ今度はよぉく見ておくんだよ、ギーシュ」
 そう言って巨人は杖を持っていない方の手をヴェストリの広場に向け、10メイルはあろう人差し指を振り下ろした。
 すると黒い薔薇の花が一本ギーシュ達目掛け、まるで弾丸のような速度で撃ち出される。
 そしてギーシュの隣に居た金髪の女生徒に命中した。
「モ、モンモランシー!?」
 胸に薔薇の茎が突き刺さった女生徒の名前をギーシュが叫ぶ。
 彼女の姿はサイトと同じような黒い鉄の像に変わっていた。

「うわあぁぁ!!」
 ギーシュを中心に集まっていた群衆が一斉に離散する。
 ここに来て、ようやく広場にいる全員が自分達の置かれた状況に気づいたのだ。
 恐怖に駆られた学生達が飛行の魔法、フライでその場から一斉に逃げ出す。
 まだ地上に残っているのは鉄像を抱くギーシュとルイズ、そして地に伏せたタバサとタバサにマントを抑えられて逃げられずにいるキュルケだけだ。
「逃がさないよ」
 巨人が目を見開いた。
 鋼の皮膚の下に身を潜めていた黄金色の眼球が露になる。
「そぉれぇー!」
 風を切って突き出された杖の先端――黒い薔薇の中心を暗闇が包む。
 球状に広がった黒い靄がはち切れ、大気をうねらせる。
 学院上空に黒い嵐が吹き荒れた。
「きゃあぁぁああ!!」
 飛翔していた学生達は一人残らず旋風に呑み込まれる。
 十数秒間の荒天の後、静けさと共に黒い氷雨が訪れた。
 降り注ぐ鉄像と舞い落ちる薔薇の花びらが穏やかな昼の空を黒く染めていた。

「あ……あ、あわ、あがが」
 信じ難い光景を目の当たりにしたギーシュは言葉を失って立ち尽した。
 彼女は本当に自分の使い魔なのだろうか。
 そんな気持ちがギーシュの中に沸々と湧き始めていた。
「うふふ」
 地面に転がった鉄像を眺めながら巨人が目を細める。
「酷い! 酷い酷い! 酷すぎるわ!」
 目元を赤くし拳を握り締めたルイズが巨人に向かって怒声を上げた。
「あ、あんた! こんなことしてただで済むと思ってるの!?」
 抑え切れない怒りにルイズは肩を震わせ、精一杯の睨みをきかせる。
「そ、そそそそうだ! き、君のせ責任は僕の責任になるんだぞ!」
 ルイズの後に続き、ギーシュも声を荒げた。
 使い魔の主として、最低限の威厳を保つためである。
「ふん、関係ないね」
 しかし、巨人ははにかんだ笑顔を崩さない。
「私が何をしようと私の勝手だろう? それに私はね」
 腰を捻らせ、巨人はギーシュとルイズに向けて首を伸ばす。
「お前達みたいにケバケバした色の奴らが」
 黄金色の眼球、紅色の血に染まった瞳に広場の俯瞰図が映る。
 そこには金色の巻き髪、桃色がかったブロンドの髪、燃えるように赤い長髪、透き通るような青い髪があった。
「大っ嫌いなんだよ!!」
 真っ赤な瞳孔が開いた。
 影が差す巨人の顔には既に笑みは無い。

(……来た)
――紫電一閃。
 突如、青い物体が学院に飛来した。
 タバサはキュルケを浮遊の魔法、レビテーションでその物体に乗せ、自らもその首元に飛び乗った。
 高速で低空飛行する青い竜はギーシュとルイズを両前足で抱えヴェストリの広場を後にする。
 そしてその直後、先ほどまで四人が立っていた場所に槍のような茨が鋭い刃をそり立たせた。


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